暁光帝、苛立つ。ドラゴンを悩ませる人間! 細工は流々。仕上げを御覧じろ☆
***作者から一言ご注意をば***
この一章をまるまるすっ飛ばして投稿してしまいました(>_<)
こちらは『こら! ナンシー先生の講義をちゃんと聞きなさい! 暁光帝の秘密を教えてあげますから☆』の後で『暁光帝vs人間、決着! ヒト軍の最強ファイアボールがドラゴンに襲いかかる! 勝つのはどっちだ!?』の話の前になります。
***以上、よろしくおねがいします***
何やら怪しい動きを見せる人間ども!
さすがの超巨大ドラゴンも怪しみます。
一体、何を企んでいるのやら。
まぁ、今のドラゴンは童女なんですけどね。
『世界を横から観る』わけで、今まで見下ろして来た人間が同じ目の高さで何やら仕掛けてきています。
暁光帝はどうしたらいいのでしょうか。
お楽しみ下さい。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
つま先で地面を叩く仕草、厳しい表情。腰に手を当てて仁王立ち、ナチュラルに偉そうな態度は変わらないが、明らかにアスタは苛立っている。
その周囲で踊る紫のロングヘアーも巻いたり、尖ったり、忙しい。
「この演習は真面目なものだと思っていたけれど…キミらは何をふざけているのかな?」
視線はチンピラ兵士を通り越して背後の魔導師3人組に突き刺さる。
「ボクをからかっているのかい?」
視線は鋭い。裸足のつま先がトントンと地面を叩いている。
あれほどまでに十人隊を翻弄した童女が苛立っているのだ。
何か、よほど我慢ならないという感じである。
「あったりめぇだ! ガキの! 女の! オメェなんか! 相手になるかよっ!!」
チンピラ兵士のファビオが吠える。歩兵は魔導師を守るのが仕事だ。何とか、冷静さを取り戻したようで持ち場から離れてはいない。
しかし、童女はこの罵倒を完全に無視。どうやら視界にも入っていないらしい。
3人娘を指差して。
「そこのキミが48gdr、そして右のキミが44gdr、左のキミが41gdrでしょ」
それぞれの魔気容量を言い当ててみせる。
3人が3人とも目を見開いて動揺したが、やはり作業は止めない。さすが精鋭部隊の魔導師である。
「キミ達が発動させようとしている魔法はファイアボール。その術式では最低でも魔気容量111gdr必要だよ。キミら3人の誰1人として必要な魔気容量に達していない。つまり……」
スッと視線が鋭くなる。
「魔法は発動できない」
断言する。
どう考えても無理なのだ。
消費魔力を低減させる手段はあるものの、特殊なマジックアイテムを使うか、珍しい幻獣の特殊能力に頼るか、一部の特異な魔女だけが使うマニアックな術式を用いるか、いずれもそんな無茶な方法だ。どれもおいそれと人間が使えるものではない。
人間の術式で発動できるファイアボールに必要な魔力は111gdr。それが今、まさに描かれている魔法陣や唱えられている呪文からも読み取れる情報だ。
しかし、角刈り女性らのいずれもが魔気容量は40gdr台でファイアボール発動に必要な111gdrの半分にも満たない。
術式に込めるべき魔力が足りなければ魔法は発動しない。不発に終わる。
彼らは絶対にファイアボールを撃てないのだ。
「ふざけているんでなければ、本気でその魔法を使う気なら…どういうことか、今すぐ説明したまえ」
声の調子に苛立ちの色が強く伺える。
魔法を使わない、攻撃に小指1本しか使わない、相手に先制攻撃を許すなど自分はさんざん十人隊を舐めきっておいて、相手のふざけた態度は許せない。
自分勝手なアスタである。
この態度にチンピラ兵士が激高する。
「四の五のうるせぇっ! ガキのっ!! 女のっ!! 臭ぇテメェに! わかんねぇだけどぅぁっ…ゲッホゲホゲホッ!!」
怒りに任せて怒鳴り過ぎ、咳き込んでしまう。
自分が他人を舐めても自分は他人に舐められたくない。やってることはまったくもってアスタと同類なのだが、本人は気付いていない。
「ゲーッホゲホゲホッ!! ゲッホゲホゲホッ!…ハァハァハァ……」
咳で苦しい。大盾を支えに何とか膝が地に着くのを防いで息を整えるが、苦しい。
「キミの鼻が病んでいるのはキミの責任であってボクのせいじゃないよ」
ようやくチンピラ兵士が童女の視界に入った。
もちろん、自分が臭うなどと考えるはずもなく、アスタは咳き込んで苦しむ兵士を嘲る。言外に『おまいの鼻が腐ってるからそんなことを考えるんだろ』とにじませつつ。
「テメェは殺す!」
言い返されて憎々しげアスタを睨むチンピラ兵士。悪意の視線で人間が殺せるなら、何回、童女は死んでいただろうか。
「殺ってみろ」
殺気のこもった視線を真正面から受け止めて動じず、不敵に嗤う。アスタは腰に手を当てて仁王立ちだ。
十人隊の背後でリュッダ海軍幹部達が呆然としていた。
「あー…これはひどい……」
「とても子供と兵隊の会話じゃありませんなぁ……」
「軍隊が守るべき市民を殺してどうするんですか?」
カイゼル髭の司令官とハゲの副官と小心者の百卒長はそれぞれにこぼす。
目の前で精鋭部隊の6人が倒されて、残る4人も前で護衛する兵士がチンピラのファビオで敗色が濃厚。もはや、童女に護衛が倒されて背後の魔導師3人組が蹂躙されるのを待つのみ。
気が短くて、考え無しの、粋がることしか能のない、あのファビオが変幻自在の巧者アスタに反撃する図が思い浮かべられやしない。
しかし、くだんの童女は残った4人を前にして何もせずに突っ立っている。
どうしたことだろうか。
アスタの動きが早すぎて精鋭部隊の中核である魔導師3人組は魔法を準備しきれなかった。護衛はチンピラ兵士を残してすべて倒されてしまっている。
魔法の準備は進行中だが、童女ならすぐにでも3人娘を倒せるだろうに。
それでお終い。今現在、精鋭部隊は王手詰みの状態なのだ。
それなのにアスタは動かない。
「攻めあぐねている…のでしょうか?」
小心者の百卒長が口ごもる。
あれほどの猛威を振るったアスタが攻めの手を緩めて精鋭部隊の生き残りを観察しているのだ。何かあると考えるのだ妥当だろう。
「ああっ!! あの娘は魔力が尽きたことがないんだわ!」
突然、ナンシーが叫んだ。
「えっ、それはどういうことですか?」
小心者の百卒長は目を白黒させる。
そんなことはまったくもって考えられない。
魔力の弱い者も強い者も魔法を使う限り、魔力切れは避けられないのだ。
魔法の得意な者は強いの魔法を使うが、その分、消費する魔気が大きくて連発は出来ない。だから、むしろ、魔気容量の大きな、魔法の得意な者ほど魔力切れを引き起こしやすい。
強敵に出会ってしまったり、大きな仕事を任されたり、そのたびに魔法の得意な者は無理をする。そして、魔力が尽きて苦しむ。それは魔法使いなら決して避けられない道だ。
理由はかんたん。魔法という、特異な才能を持ち、それを伸ばそうとする者は努力するからだ。努力して限界を見極めようとする、それで魔力切れを起こす。
そして、強力な魔法ほど消費する魔力は大きい。超特級の魔法ともなれば必要とされる魔力は数千gdrに及び、個人では発動させること自体が難しいほどだ。
だから、魔法使いは魔力切れを起こす。
魔力切れを起こさずに魔法使いが大成するのは、兵士が一度も転ばずに百卒長に出世するのに等しい。赤ん坊から一度も転ばずに大人になることさえ難しいのだから、それはもう不可能以外の何物でもない。
「けれども…」
その不可能を考えれば、アスタのためらいも理解はできる。
「どんなに強力な魔法を行使しても魔力切れを起こさないような、絶大な魔気容量を持った魔法使いがいれば……ああ、それなら、あの3人の様子に戸惑うでしょうね!」
うんうんとうなずく。
これにナンシーも考え込んだ。
「あの娘の常識では人間の魔法を計れない」
やはり、暁光帝の所業を思い出す。三日前のことだ。
超巨大ドラゴンは瓦礫街リュッダの昼夜を逆転させた。上空に都市を丸ごと覆うほどの魔力場を作って太陽光線を屈折させて、地上に光が届かないようにしたのだ。
そのせいでリュッダの住民は昼間に夜が来たのだと思って、恐怖し、偽りの夜を退散させようと、祈ったり、祭ったり、大変な騒ぎになった。
暁の女帝は昼夜という天文学的な事象にすら干渉するほどの大魔法を発動させたのだ。あの奇蹟を実現させるために必要な魔気は同じく天文学的な量だったのだろう。
しかし、そのことをアスタは気軽に話していた。ちょっとやってみたけど失敗しちゃったとでも言いたげな様子で。
やはり、ドラゴンの、暁光帝の魔気容量はとてつもないのだ。
世界をひっくり返すほどの大魔法を発動させても尽きないほどに膨大なのだ。ほぼ無限と言ってもいい。
だから、どんなに強い魔法も一頭で撃てるのだ。
『誰にもへりくだらず、何者も恐れず、只、自由に空を飛ぶ』、彼女を表現する言葉が思い出される。
誰にも頼らないから、誰かの力を借りるなんて発想そのものがないのだろう。
それなら、今、角刈りの3人娘がやろうとしていることは想像もつかないはず。
「これは面白い事になったわ。アスタの度肝を抜けるかもしれない」
エルフは目の前の演習を見つめる。
今や、生き残りは4人。リュッダ海軍の精鋭部隊を1人で倒した童女が圧倒的に有利な状況だ。
しかし、彼女は手が出せない。
彼ら、生き残りの4人が何をしようとしているのか、わからないから。
未知の現象については好奇心がうずくのだろう。アスタの性格からしてそういうことについては物凄く気になるはずだ。
いくら強くても、稀少で不可思議な現象を起こそうとする者達には手を出せない。
どうしてもそれが見たいから邪魔できない。
「フフ……」
ナンシーは演習が始まって以来、初めて笑うことができたような気がする。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ここで作者からお知らせと言うか、失敗報告です。
はい!
投稿の作業に失敗しました!
こちらのエピソードまるまる抜かして投稿してしまいました!!
投稿が1話ずれたんですね。
人間が手作業でやることにはどうしても失敗が付きものです。
このようなミスをなくすためにはどうしたら良いのか。
ええ。
もっと注意すればいいんです。
もっともっと注意すればいいんです。
はい。
違いますね。
上のような回答を「バカ」と言います。
人間ですからね。人間が手作業で章ごとのエピソードを投稿するわけですから、この手のミスはどんなに注意しても防ぎきれません。
じゃあ、どうしたら良いのかと言うと……
まぁ、防げない以上は読者の皆様に頼らざるを得ない。
そういうわけで、章のつながりがおかしいと感じられたらご遠慮無く指摘していただけたら幸いかな…と(汗)
よろしくおねがいします(ぺこり)
さて、次回は勝負の決着です!!
お楽しみに〜




