暁光帝、いいことを思いつく☆ 戦争ごっこ? いいえ、人間との本気バトルです!!
ようやく、人間と戦う決意をした暁光帝……
いくら幻獣が強くても相手は多勢に無勢。
どう足掻いても数に押し込まれて幻獣は負ける…そして人間に負けた幻獣は捕まって見世物にされるか、奴隷にされるか。
麗しの♀幻獣は奴隷商に捕まり、性奴隷として卑しい男達の慰みものに……な〜んて、残念ながら、このシリーズが国産エロゲーのロマン展開になるわけがありませんね(>_<)
暁光帝、歩くだけで町や村を踏み潰すんでwwww
とりあえず、暁光帝vsリュッダ海軍精鋭部隊の勝負です。
さぁ、どんな戦いが始まるのでしょう。
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
「あの娘の死は演習中の事故ということにしますので、もちろん、みなさんは罪に問われません」
ニコニコ笑いながら。
「何でしたら、ガスパロ坊やと私で死体を海に棄てますのでご安心ください」
ジョルダーノ司令官の名前まで持ち出して、エルフのナンシーは死体の処理まで提案する。
「「「!?」」」
精鋭部隊の面々は全員、絶句している。
「お…おい…アンタ、あのガキの身内じゃないのか?」
一番、アスタを罵っていたチンピラ兵士ですら驚いている。
「身内ですよ。あっ、あの娘自身は親なしなので両親や親戚に訴えられる虞はありません。ご安心を」
「そーゆー心配してんじゃねぇー!! これだから亜人はっ! ほんと冷てぇな!! ヒトデナシがっ!!」
エルフの説明を聞いて、ますます怒りを強くするチンピラ兵士である。粗野で無教養だが、意外と情に厚い人物なのかもしれない。
「前金として1人1枚渡しておきましょう」
ナンシーは精鋭部隊の面々に金貨を渡していく。
「まだ、たっぷりありますからご安心を。アスタを殺せたらまた差し上げます。ああ、失敗しても前金は返さなくて構いません」
物凄い気前の良さだ。
「えっ? あ? あぁ…」
さしものチンピラ兵士もきらめく金貨の魅力には敵わない。見入ってしまって言葉もない。
だが、1人、これに動じない男がいた。
「ふむ…つまり、ナンシーさん、あなたは身内の子供を殺すことに10人の兵士を雇って、報酬を1人につき金貨2枚支払う…と?」
その男は大きい。精悍な面構えで、大柄な兵士の中でもひときわ、頭2つ、いや、3つ分は大きいだろう。他と違い、鎖帷子ではなく、より頑丈な黒の板札鎧を着ている。“ローリーカセグメンタータ”と呼ばれる、鉄の板金を重ねて作られた甲冑で重い分、強力だ。刺突にも打撃にも斬撃にも対応できる優れ物である。また、腕には五指篭手、足には脛当を着け、その巨体はまるで戦車のような威圧感を醸し出している。
ヒト族ではない。間違いなく、巨人族だ。
「ええ。十人隊長、おっしゃる通りですよ」
エルフはにっこり笑って殺人の依頼を肯定する。
「なるほど。よくわかりました」
こちら、十人隊長も顔色を変えない。
そのまま、上司に向き合う。
「百卒長、そういうことでよろしいか?」
「むっ! まぁ、リュッダ海軍の演習だしな…勢い余ってということもないわけではないだろうし…」
問われた百卒長は顔をしかめつつ、歯切れの悪い返事を口の中でモゴモゴさせている。
さすがに、子供の殺害には関わりたくないのだろう。
「ナ、ナンシーさん!」
「大婆様!」
更に階級の高い上司2人はあたふたしている。
そんなエライヒト達の狼狽を尻目にローリーカセグメンタータの男は落ち着いて部下達に向き合う。
「エルッキ十人隊長、只今をもって命令を受諾いたしました。諸君、仕事の時間だ。“演習”を始める!」
微妙にアクセントを強めつつ、宣言する。
「そ…そうだな。亜人のガキを殺してカネがもらえるなら文句もねぇ」
どうやら気持ちを切り替えたチンピラ兵士から動き出す。
それに釣られて他の兵士達も持ち場に向かうが。
「諸君、真剣を持て。木剣は置いて行くんだ」
やはり、十人隊長は顔色1つ変えずに命じる。
それは幼い子供の殺害命令に等しい。
「ええっ! 本気ですか!?」
豊満な胸乳の女兵士が驚く。
「いいじゃねぇか。亜人のガキが死ぬんだ。リュッダの街がきれいになると思えば大したことじゃねぇ」
チンピラ兵士が口汚く罵る。
「ファビオ、余計な口を叩くな」
十人隊長はチンピラ兵士を冷静に諌めつつ。
「諸君。俺も余計なことを言わない。エルフのナンシーさんは『10人の兵士を雇って身内の子供を殺す』とおっしゃったんだ。その意味を考えろ」
部下達に命令の意味を考えるように促す。
「うへぇ! 剣呑、剣呑。やっぱり亜人はヒトデナシだぜぇ」
チンピラ兵士のファビオだけが嫌悪感を表わして持ち場へ向かう。
「……」
他の兵士達は何も言わなかったが、十人隊長の言葉で何か気付いたらしく、動きが真剣なものに変わる。
「ど…どういうことですか?」
「さすが、大婆様…そういうことでしたか。しかし、それほどまでとは……」
副官はあわてて、カイゼル髭の司令官は感心する。
小心者の百卒長は青ざめていたが。
「アスタさんという戦力を相手にするには、最精鋭の十人隊が殺す気で挑まなければ勝負にもならないということですよ」
およそ信じがたい、恐るべき事実を告げる。
「すべての親が子供を愛するなんて綺麗事は言いません。世の中には自分の都合で我が子を殺す親がいる」
顔をしかめながら残念な事実を告げる。瓦礫街リュッダほどの栄えた都市では資産家や名家がたくさんある。そして、家名を汚す子供というものも生まれてしまうことがあるのだ。残念ながら、その親が非情な決断を下すことは事実として知られている。
「けれども、どんなにひどい親だって幼い我が子を殺すのに殺し屋を10人も雇ったりはしません」
もうひとつの事実を告げる。
只でさえ無力な子供なのだ。それを死なせようと考えても殺し屋の10人は多すぎる。
それだけの戦力を、それも軍隊の最精鋭部隊を、ということは。
その子供がとんでもなく強いとしか思えない。
「事実、そういう事件があったでしょう」
「あっ!!」
「カサマツ屋敷の事件か!?」
百卒長の言葉に偉い人コンビがとある事件を思い出して驚く。
ここ、瓦礫街リュッダの有力者、カサマツ屋敷の当主が不義の子を亡き者にせんと企てた事件である。しかし、幸いなことに哀れな子供には友達がいた。魔法が使える、頼りになる友達が。
カサマツ屋敷の当主に雇われた暗殺団は返り討ちに遭い、いい大人が何人もボコボコに殴り倒されて捕らえられた。子供達は返す刀で卑劣な父親も叩きのめして名を上げた。
悪漢どもは全員が縛り上げられて悪事を白状したので全員が処罰された。
一躍、ヒーローになったのが狙われた子供達である。3人とも十歳に満たない児童でありながら、強力な魔法で大人の犯罪者を翻弄してやっつけたのだ。
何と、立派な子供達だろう。
リュッダは街を上げて彼らを礼賛した。
これは“瓦礫街”と揶揄されるリュッダの街が名誉回復のためだけにやったことではない。街にはびこる犯罪者どもへの警告でもあるのだ。
すなわち、『弱そうに見えるからといって襲うとひどい目に遭うぞ』という、犯罪抑止を狙った脅しである。
効果てきめんであった。
かつて、冒険者ギルドが設立された頃からか、世の中の情勢は少しずつ変わってきた。
いつの間にやら、ふつうのヒト族の中に魔法を使える者が現れて。
強化魔法で強くなった戦士が人食いライオンの攻撃を受け止めたり。
光魔法によって魔物の巣の奥を覗いた斥候が宝物を奪って来たり。
魔導師が雲衝くような妖巨人を雷の魔法で打ちのめしたり。
軍隊の兵士ではなく冒険者ギルドの冒険者が幻獣と戦うようになった。
“魔法”が珍しくなくなって。
“魔法使い”が名を馳せるようになって。
魔法が使える者は次々に常識を覆すようなことを成し遂げてきた。
それは目を背けられない、1つの厳然たる事実を明示する。
魔法使いは見た目でその能力を測れず、とんでもないことをやってのけるのだ、と。
魔法の才能は老若男女を問わない。
枯れ木のような老人が、実は天下無双の大魔法使いで、襲った強盗団が逆に壊滅させられた、とか。
生意気な少女が光魔法の使い手で悪党の企みをすべて暴いて潰してみせた、とか。
痩せこけた盗賊が『俺は王様の落とし胤だ』なんて与太話を風の魔法で流していたら信じられてしまい、いつしか反逆者の頭目として祭り上げられ、叛徒を率いて大国を滅ぼしてしまった、とか。
一見して弱者にしか見えない、子供や老人の活躍が巷を賑わすようになった。
ならば、目の前の童女がそうでないと誰が言えようか。
今、精強なことで知られるリュッダ海軍の幹部達がおののいている。
たとえ、魔法が使えなくても。
たとえ、その辺の通行人と同じくらいの力しかなくても。
たとえ、武器も持っていなくても。
たとえ、攻撃に際して小指しか使わなくても。
十人隊長の態度は、あの童女アスタが恐るべき脅威であることを示している。
「魔法使い…いや、魔法なしですら!? ば、馬鹿な!? そんなことが有り得るのでしょうかっ!?」
でっぷり太ったハゲ副官は言葉が裏返ってしまう。
「ええ。アスタは最強ですよ。もうどうしようもないくらいに」
ナンシーはため息を吐く。深く、深く。
先ほどまで湧き上がっていた希望の火はすっかり萎んでしまっていた。自信満々のアスタを見て、事実を思い出し、絶望したのだ。
あのアスタは恐るべき超巨大ドラゴン暁光帝が人化した童女。
掠っただけで豚人の大軍団を轢き潰した実績があるのだ。碧中海の覇権を巡って衝突しようとした人類最強の大艦隊もそこを通り過ぎただけで壊滅させている。しかも、当の本人がそれら大事件に気付いていないというおまけ付きだ。
『強いから戦ったことがない』と嘆く、世界で唯一無二の女帝様。
世界史レベルで“最強であること”が戦闘証明済みの、神殺しの怪物だ。
それに対して、こちらは兵士がたかだか10名?
リュッダ海軍の精鋭と言っても、だ。人類最強ですらない。
アスタ相手の勝負ではどれだけハンディキャップを与えてもらったところで勝ち筋が見えない。
「あのエルッキ十人隊長は気付いてくれたようですが……」
演習場の真ん中で笑んでいる、余裕綽々の童女を見つめる。
一体、どんな戦いが始まるのだろうか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
殺し屋さん、大変な苦労をしそう(^_^;)
精鋭十人隊が暁光帝と対決することになりました。
殺し屋は本業以外なので臨時仕事ですね。
Ich arbeite.
暁光帝もいずれアルバイトする展開になるんでしょうか。
いや、その前に目次の左上に燦然と輝く注意書き『この作品には 〔ガールズラブ要素〕 が含まれています』をどうにかしろよ、と(汗)
まぁ、これに関しては本格バトルシーンにちょいと♀×♀要素を入れようかと、いや、ねじ込もうかと。
さて、今回、悩んだのは「魔法」の取扱いでした。
どのていど、一般に浸透しているのか。その辺を描写しないと今後の展開にも差し支えます。
本作品の場合、魔法の素質=髪の毛の長さくらいに設定しています、一応。
髪の毛なら腰より下まで伸ばす奴もいればハゲもいるくらいに。
つまり、超特級魔導師もいればまったく魔法が使えない奴もいるんです。
そこで魔法がそれくらいに浸透した世界というものを想定するとどうなるのか。
まず思いつくのは反逆者ですね。
王様に楯突く反逆者が魔法を使えて、王様とその仲間が使えなかったら?
まちがいなく王国はとんでもなく不利になります。
叛徒の長が風の魔法使いで自分の演説を風に流すだけで王権を揺るがすことでしょう。
何せ、文明の利器がラジオからテレビに移行しただけで選挙の動向がガラリ変わるくらいですからね。
識字率の低い中世ナーロッパ社会は“風のうわさ”でかんたんにひっくり返ることでしょう。
そのへんも考えて社会構造を考察しないといけませんね(^_^;)
ちなみに、今回、ちょっと描いた“痩せこけた盗賊”のモデルはステンカ・ラージンですwww
ロシアの英雄(?)の逸話をちょいパクってしまいました(汗)
さて、次回からは本格的なバトルシーンになります。
すでにほぼ書き上がっていまして、最後のトドメをどう描写するのか、悩みちぅ。
お楽しみに〜




