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人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ_〜暁光帝、降りる〜  作者: Et_Cetera
<<観光も冒険者の嗜みです>>
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暁光帝、昨今の軍事情勢について解説される。その平和が誰のおかげか、おまい、わかってるんだろうな?

海軍基地を散歩していたら海軍司令官と副官が出迎えてくれました。

エライヒトの身内といっしょにいたおかげです。

おかげで下にも置かぬおもてなしです♪

だけど、気をつけましょう。

正体がバレたら大変です。

もしも正体がバレたら…ええ、海軍基地が滅びますね(^_^;)

だから、くれぐれもバレないように遊びましょう☆

軍隊と冒険者パーティー、お互いのために。


キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/

 2人は一番大きな小島にやって来た。

 大きな兵舎が建ち並ぶ、リュッダ海軍の本拠地である。

 「これは、これは、ナンシーさん、よくいらっしゃいましたね」

 恰幅(かっぷく)の良いカイゼル(ひげ)の大男が出迎えてくれた。明らかに他と違う高級な服を着ている。

 「あらあら、ジョルダーノ司令官、御自(おんみずか)らお出迎(でむか)えいただけるとは光栄ですわ」

 エルフが笑む。

 「立場がありますので、この場で大婆様(おおばばさま)とお呼びできないのが心苦しいのですが、何ほどご容赦を」

 立派な服の司令官がエルフの手を取って口づけする。

 すると、向こうの兵舎から別の太った男が走ってくる。1人ではない。十人の屈強な兵士らをともなって。

 頭頂部の禿げたその男はナンシーと握手してペコペコと頭を下げている。

 どうやら、ジョルダーノの副官らしい。

 「ふぅむ…」

 軍隊では偉くなるとデブになるんだとか、また益体(やくたい)もないことを考えている童女アスタである。

 そして、じっくり2人のおっさんを観察していたら。

 「こちらはブタよりも小さいアスタさん。紫陽花(あじさい)の鏡の新メンバーですよ」

 エルフに紹介されてしまう。

 何とも心地よい。

 何しろ、冒険者パーティーの新メンバーとして紹介されたのだ。只の冒険者よりもずっと重要そうな感じがする。

 「うん。冒険者で、ブタよりも小さいアスタだよ。よろしくね」

 両の手のひらを前に突き出してから、左右に広げて一回転し、金属光沢に輝く紫のロングヘアーでワンピースの(すそ)をつかんで持ち上げ、わずかに膝を曲げる。腕組みしてふんぞり返るのも忘れない。

 宮廷風お辞儀、アストライアー式カーテシーが見事に決まった。

 “お辞儀”と言いつつ、まったく頭を下げていないのが特徴である。

 「……」

 心中で『ブレないなぁ』とつぶやくナンシーだが、領主夫妻の前でもそうだったし、『今更か』と感じ入る。

 いや、アスタは超巨大ドラゴン暁光帝が人化した童女だ。何者を(おそ)れることがあろうか。国王も、皇帝も、教皇も、魔王も、おしなべて格下。ましてや、軍の司令官など、国家の下でとぐろを巻いている(やから)などに下げる頭はないのだろう。

 「お…おぉぅ……」

 「は…はぁ……」

 2人のおっさんは驚いてしまい、二の句も継げない。建前(たてまえ)はともかく、実質的に自分達よりも格上のナンシーが敬称を付けることにも驚いている。

 「ど、どうも。ここ、リュッダ海軍司令官のガスパロ・ジョルダーノです。大婆様…もとい、ナンシーさんには冒険者になる手ほどきを受けて、今の地位を得ました。ナンシー様…いえ、ナンシーさんはジョルダーノ家そのものの後見人でもいらっしゃいます」

 口ごもりながら自己紹介するのはアスタの偉そうな態度に気圧(けお)されたからか。

 旧家であるジョルダーノ家は代々、瓦礫街リュッダの軍事に関わって来た。エルフのナンシーに多大な恩義を感じる名家でもある。

 この童女はそのナンシーが敬語を使う相手だ。

 ならば、自分もまた敬語を使うべきだろうと判断する。

 「我がジョルダーノ家の初代当主はナンシーさんに選ばれたのですからね」

 そのことに誇りを抱いているらしく、司令官は自信満々に語る。

 「いや、まぁ、選んだというか、あの子はみなし子だったんで……」

 ナンシーは少し困った顔をする。

 さすが不老のエルフである。かく言う“あの子”とは何百年も続く名家の初代であった。ナンシーは孤児(みなしご)だった初代を拾って、一人前に育て上げた経験があるのだ。

 しかも、その後、軍事に関わるようになったジョルダーノ家は将来有望な子供をナンシーに託して鍛えてもらうことが家の(なら)わしになった。このガスパロ・ジョルダーノ司令官も若かりし頃、ナンシーに教えを受けている。

 冒険者として経験を積み、荒事に慣れてから軍へ入隊する、それがジョルダーノ家の伝統なのだ。

 「まぁ、長く暮らしているとね、いろいろあるのよね?」

 ナンシーは背伸びして、自分よりも大きなカイゼル(ひげ)の司令官の頭を()でる。

 「ええ、まぁ」

 司令官も顔を赤らめ、恥ずかしがりながらも喜んでいる。

 腹も突き出て偉そうなカイゼル髭だが、エルフにとっては今でも“可愛いガスパロ坊や”なのだ。

 「孫がそろそろ大きくなりますのでまたよろしくお願いすることになろうかと」

 司令官にとってナンシーは両親や祖父母よりも尊重すべき相手ということになる。何しろ、その両親や祖父母が師事した大婆様なのだから。

 何百年も歳を取らずに1つの街で暮らしているとエルフに関わった者が出世して街の有力者になることはしばしばある。識字率が低く、学校も少ない、そんな世界では年寄りの知恵が頼られるものだ。ましてや、不老のエルフである。敬わられ、頼られ、良家の子女が教えを請う。そして、教えを受けたその子供達が長じて地位や名誉を得れば、師であるエルフの名声は更に高まる。

 その好例がこのナンシーなのだ。

 こうして安物の長衣(ローブ)に身を包み、遠目には只の小太りのおばちゃんにしか見えなくても、海軍司令官がすっ飛んでくるくらいに偉いのである。

 「へぇ、凄いんだぁ」

 アスタも素直に感心し、金属光沢を示す紫のロングヘアが踊る。

 「それにしても…この子が…いえ、この方が紫陽花の鏡の新メンバーですかな。それは、それは……」

 ジョルダーノ司令官はカイゼル髭を撫でながら童女を見つめて驚いている。

 「我が軍にもいない、超特級魔導師ばかり5人も集めた冒険者パーティーの6人目ですか…う〜む……」

 司令官は知っている。

 最近、活動を再開した“紫陽花の鏡”は歴代最強だと言われていることを。

 魔法の苦手なヒト族であっても魔法使いの最高位、超特級魔導師は極めて強力だ。多くが王宮で“宮廷魔導師”として囲われていて、国王の相談役だったり、国家の権威付けに利用されていたりする。

 ヒト族ですらそこまで行くのだから、それが魔法の得意な人種、妖精人(エルフ)族や闇妖精人(ダークエルフ)族なら“歩く決戦兵器”とも言うべき、およそとてつもない、激烈な火力を振るうようになる。

 実際、カイゼル髭の司令官はこの大婆様(ナンシー)が大型ガレー船をまるでなますでも作るかのように風魔法で切り刻んで廃材するところをその目で見ている。

 過去の海戦でも水魔法で敵の三段櫂船(トライレーム)転覆(てんぷく)させて味方の窮地(きゅうち)を救ってくれたなど、ナンシーの活躍は枚挙(まいきょ)(いとま)がない。

 そのレベルの、超高位魔導師が5人もいるのだ。

 紫陽花の鏡は。

 「それなら……」

 (ひたい)から流れる冷や汗を(ぬぐ)う。

 今ある、リュッダ海軍の全戦力を合わせたよりも大婆様の冒険者パーティーの方が強いのではないか、そんな懸念が脳裏を(かす)める。

 紫陽花の鏡はリーダーのナンシーが妖精人(エルフ)で、他も全員が不老の人種と聞いている。

 ぜひとも自軍に欲しい人材だが、不可能だ。立場的にも心情的にも大婆様(ナンシー)には命令しづらいし、他のメンバーにも強要できない。

 報酬を用意できないからだ。

 当たり前だが、奴隷を兵士には出来ない。

 軍隊の強さは兵士の数や肉体的な能力よりも士気に依存する。ろくに戦う気のない奴隷をいくら集めても、戦わないと殺すぞとどれだけ脅しても、軍隊としては機能しないのだ。

 軍隊に必要なのは兵士。兵士は、有力者に買われて円形闘技場(アンフィテアトルム)で戦わさせられる奴隷、“剣闘士”ではないのだから。

 奴隷を兵士に仕立て上げたければ、自由と権利と十分な報酬を与えねばならない。少なくとも裏切って敵に回るよりは味方でいた方がいいと思わせるくらいの待遇を用意する必要がある。

 そして、資金不足にあえぐリュッダ海軍に紫陽花の鏡メンバーを雇うほどの余裕はないのだ。

 だから、すわ鎌倉というときに傭兵としてリュッダ海軍を支援してもらうためにもジョルダーノ司令官は大婆様(ナンシー)に、紫陽花の鏡リーダーに頭が上がらないのである。

 そして、大婆様が敬語を使う、目の前の童女が只の子供であるわけがない。間違いなく他の5人のメンバーに劣らぬ、恐るべき能力の持ち主に違いない。

 「それで、最近はどうなのかしら?」

 おののくカイゼル髭の心情を(おもんぱか)ってか、エルフが話題を提供してくれた。

 いや、一介の民間人が海軍の司令部に軍事情勢を尋ねるというのも凄い話だが、海軍司令官の身内では仕方ない…

 …のだろうか。

 「ハッ、ご説明申し上げます。昨日からポイニクス連合もオルジア帝国もおとなしいものです。豚人(オーク)どもの海賊船もすっかり見かけなくなりました」

 少なくとも頭頂部の禿げた副官は気にしないらしい。それどころか、一介の民間人に敬礼して軍事情勢の解説を始めている。

 「それはもちろん、火山島に(たい)らげる者が確認されたからです」

 水平線に浮かぶ、紫の台形に視線を向けて嘆く。碧中海の陽光に照らされてハゲ頭が光る。

 暁光帝が一晩で整形した火山島は幾何学的に完璧な円錐台(えんすいだい)になっており、ここからでは派手な紫色の等脚台形にしか見えない。

 「まぁ、平らげる者では仕方ありませんね……」

 「むぅ、平らげる者が現れた以上、列強の勢力もおとなしくするしかありませんからなぁ……」

 ナンシーもジョルダーノ司令官もため息を吐く。

 「一晩で火山島の形を変えるとは…さすが、(なら)す者だね」

 「ああ、凸凹だった山頂(いただき)を見事な一直線に均した。さすが均す者だ」

 「均す者の前では山も谷もない。すべて均等に均される」

 「均す者、(こえ)ぇ」

 「均す者、(すげ)ぇ」

 「油断すると俺達も均されるぞ」

 「油断しなくても均されるけどな」

 「(ちげ)ぇねぇ。何しろ、均す者なんだからな」

 火山島に現れた脅威について兵士達も副官も口々にのたまい、うなずいて、この場にいる全員が賛意を示した。

 ただし、1人を除いて。

 「“平らげる者”って何?」

 答えはわかっているけれど説明を求める、断固として求めると決意を示す童女である。

 「暁光帝」

 エルフはわかっているであろう答えをシンプルに返す。

 なので、アスタも。

 「何でそんな異名(いみょう)が付いたの?」

 シンプルに聞き返す。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

何やら不穏な話題が出てきました。

これで暁光帝が激怒するとリュッダ海軍基地が、いや、世界の危機です\(^o^)/

まぁ、暁光帝、ラスボスですしねww

部下も手下も四天王もいませんが、単独で、一頭でペッリャ半島を消し去ることが出来ます。

ナンシーの胃痛が心配ですww


さて、次回はこのきな臭い話題の続きです。

どうして妙な呼び名が付けられたのでしょう?

お楽しみに〜

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