暁光帝、海軍基地を観光する。えっ、秘密情報保護法? 中世にンなモンあるわきゃないっしょ〜 令和じゃあるまいし(ゲラゲラゲラw)
超巨大ドラゴン暁光帝は人化♀して『世界を横から観る』という画期的な遊びの真っ最中です。
今日も今日とて瓦礫街リュッダ…もとい、港湾都市リュッダの海軍基地を散歩します。
典型的な海軍国であるリュッダにとって海軍基地はその中枢。
そこへ無許可の民間人が侵入!!
すわっ、大変だ〜!! 者共、出会え!出会え!狼藉者であぁ〜る!!
…とはなりません。
何せ、中世ナーロッパですからww
昭和よりもゆるいっ!!
声の大きい隣人に怒鳴られ、殴られ、罵られ、理不尽な乱暴狼藉を受けても警官から「民事不介入」「お隣同士、話し合って解決してくださいね」で済まされる、あの昭和よりもゆるいナーロッパの出来事ですからww
エライヒト(幹部の身内)がそばにいればすべて問題なしでスルーされちゃうんですよ、奥さん。
…というわけで海軍基地の出来事です。
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
2人は更に軍港区の奥へと移動した。
雲ひとつない青空と陽光にきらめく碧中海の境に船影が浮かぶ。
やかましく啼く海鳥の群れが海面を騒がしている。
桟橋にそびえる大型の四段櫂船を見つめる。
「木で造った船を櫂で漕いで戦争かぁ……」
「これが基本ですからね。沿岸諸国はどこもこのタイプの軍艦を使ってるんですよ」
「ボクなら鉄で造るなぁ…炎の魔法、食らっても燃えないし」
「いや、船は木で造るものですよ。第一、鉄で造った船は水に浮かないでしょう」
「浮くよ」
「鉄は水に沈みますよ」
「んー、鉄の深皿をタライの水に乗せたら浮くでしょ?」
「鉄の皿なんて使いませんよ。うちの食器は銀製です」
造船談義に花を咲かせつつ、2人は桟橋を歩く。
その先には小島が6つあった。見る限り、それらの内、5つに兵舎が建てられていて、初夏の日差しの下、大勢の兵士が働いている。
桟橋から小島に渡る。それぞれが橋でつなげられていて移動は楽そうだ。
ナンシーが手を振ると将校らしき服装の者が手を振り返す。ここでも妖精人は有名らしい。
もっとも兵士らの目はエルフの隣を歩くアスタに向けられている。
夏の陽光を金属光沢で紫色に煌めかせる童女はとても目立つのだ。
逆にアスタの方も兵士らに興味を持っている。
「彼らはリュッダ海軍の兵隊かい?」
紫の髪が童女の周囲を踊って、興奮していることを示す。
水平線の上下が青。初夏の碧中海らしい青空の下に碧の海が広がっていて、小島と本土をつなぐ道は桟橋が一本。もっとも大きい小島に十棟の兵舎が建っていて、演習場もここにある。
まず、目立つのが船べりである。ガレー船の一部だったであろう、左舷や右舷が切り取られて地面から突き立っている。これが的だ。そこに魔導師が乗っていて、攻撃に対処する訓練である。
海上の舟からこの船べりに向かって別の魔導師が炎の精霊魔法を撃っている。当然、燃え上がるわけだが、それを船べりに乗った方の魔導師が水の精霊魔法で消火するわけだ。
木造の船べりでも濡れたら燃えなくなるが、炎が魔法なら水も魔法。時間が経つと木材を濡らした水そのものが魔法らしく消え失せてしまい、また、乾いて燃えるようになる。そもそも、ガレー船の船べりだから大きい。燃えるところはたっぷりあるから、炎を撃つ魔導師にとって狙い放題だ。それでも、彼らは舟に乗っているから足元が不安定でしばしば的を外してしまう。
防御側と攻撃側に分かれての魔法合戦だ。
また、向こうでは木剣で戦う兵士達がいる。それぞれ、盾を構え、1対1で斬り合っている。
別の魔導師達が帆のない舟で風や水の精霊魔法を操っている。水の魔導師が魔法の水流で舟を動かし、風の魔導師が小島に設えられた的に向かって風の精霊魔法を撃っている。
それなりの威力があるようで、魔法の風が命中すると的が揺れる。
氷の魔導師は消火に攻撃に忙しい。どちらもできるから、両方の演習に参加している。
皆、熱心に訓練しており、士気の高さが伺える。
「そうですね。彼らはリュッダ港を守る兵隊です」
ナンシーが兵士らの大きな襟を示す。
兵士達は全員が水兵服を着ている。男女とも同じ格好で、特徴的なセーラーカラーが目立ち、下はズボンを履いている。
「おやっ、するとこれは戦争の練習かい? いいね、いいね♪」
アスタは嬉しそうに眺めている。
紫のロングヘアが踊っていて、上機嫌のようだ。
「戦いはいい。話し合いでゴチャゴチャするよりスッキリ解決するもの」
問題が起きたら殴り合いで解決。勝った方が正義、負けた方が悪。話し合いよりも手っ取り早いか。
野蛮だが、いかにもドラゴンらしい解決策だ。
「ええ。暴力は問題を解決する1つの方法ではありますね。いかがですか、我が軍は?」
アスタの言葉を肯定しつつ、ナンシーは自慢気に訪ねる。
陸では単眼巨人と魔物の群れに遅れを取って“瓦礫街リュッダ”などと揶揄されているが、海では覇権を争う3強の1角である。
今、演習場にいる兵士達の動きもいい。
兵士が優秀で新たな戦術も進んで取り入れている。少なからぬ四段櫂船もそろえているし、ヴェズ朝オルジア帝国やポイニクス連合の艦隊とも十分に渡り合えるだろう。
ところが、残念なことに童女の評価は。
「ツマグロオオヨコバイよりは強そうだけど、ツマグロオオヨコバイよりは可愛くないね」
何とも、しょんぼりする感じだった。
アスタが語る虫についてあまりよく知らないが、なぜ、半翅目の昆虫が出てくるのだろうか。ナンシーは理不尽を感じずにはいられない。
「い…いえ、そんな虫と比べられても…ってゆーか、その虫よりも可愛い生き物っているんですか」
とりあえず、反論してみる。反論の方向性に若干の問題がありそうだが。
「ヒヨコなら、あるいは」
童女はさり気なく答える。
「むぅ…それでは勝ち目が薄い」
歯噛みするエルフ。
リュッダ海軍は鍛え上げた戦士の集団であり、女性兵士ですらたくましく、若干、可愛さには欠ける。謎の半翅目には勝てないだろうと考えたところで。
「!」
軍隊なのだから、別に可愛さで勝たなくてもよいと気づく。
「軍隊は強ければいいのです! たとえ可愛くなくとも…そう、可愛くなくとも……」
心中、穏やかならぬナンシーだが、戦場では強そうに見えて、実際に強い方がよいと考え。
「そうですね。アスタさんも彼らと戦ってみませんか? 戦ってこそ、彼らの強さを正当に評価できるでしょう」
実戦形式の演習を勧めてみる。
比較対象がおかしいから、実際に戦ってみて欲しい。それでツマグロオオヨコバイよりもどれくらい強いのか、感じてみて欲しい。謎の半翅目は当然として、少なくとも周辺諸国の軍隊よりは強いはずだ。
しかし、この勧めに対する童女の回答は更に意外。
「ボクは世界一強いからね。戦ったことがないんだよ〜」
やれやれと肩をすくめる。意志で動く紫の髪もその仕草と同じ形に動く。
「ほへ? 戦ったことがないのに…世界…最強?」
ナンシーは唖然とする。
いや、何の冗談だ。
強さとは戦ってこそ証明できるものだろうに。
戦わずに“最強”を名乗ったところで只の強がりでしかない。ましてや、“世界最強”だ。それを名乗るには途方もない数の戦闘をこなして、世界のあらゆる場所、歴史のあらゆる時代で、勝利を示さねばならない。
…と、そこまで考えて、再び思い直す。
暁光帝なのだ。
アスタはあの超巨大ドラゴンが人化した者。その強さは圧倒的であり、他とは比較にすらならない。
たとえば、巨人。
たとえば、ドラゴン。
たとえば、不死鳥。
たとえば、巨大烏賊。
およそ強いとされる、冒険者ギルドで“一番手”にカテゴライズされる強力な幻獣達ですら、暁の女帝と戦った記録はない。大きさも魔気容量も違いすぎて勝負にならないからだ。
そして、“神殺し”の偉業があるけれども。
あの時、暁光帝は魔界に乗り込んで悪魔の軍勢を打ち破り、返す刀で神界に乗り込み、神々と天使の軍団も蹴散らした。その上で、光明神と暗黒神の2柱を誅殺してみせたのだ。もっとも、それすらほとんど戦いにならず、一方的だったと聞く。
世界史レベルで戦闘証明済み。
暁光帝だけは例外なのだ。
戦ったことがないから世界最強。
もちろん、そんな無茶苦茶な話が通じる相手は彼女だけだが、逆に言えば、彼女に限定するとそんな無茶苦茶な命題が成立してしまうのだ。
しかし、そうだとすると先ほどの話と矛盾するのではないか。
「えっ、でも、それじゃ、さっきの…話し合いよりも戦いの方がスッキリするからいいというお話は……」
問題はとりあえず暴力で解決する、いかにもドラゴンらしい方法だとナンシーは思ったものだが。
「そうだね。問題が起きたら、両者の言い分を事細かに聞いて正当性を判断する。話し合いは難しくて、解決に結びつかない場合も多いね。そういうときは損益の等配分を吟味して…う〜ん、やっぱり面倒だわぁー 力ずくで解決したいわぁー」
意外や、意外。
もう飽き飽きしたと語るアスタである。
どうやら、問題を暴力で解決するというのは叶わぬ夢らしい。
実際は話し合いで解決させられているようだ。
「な…なるほど……」
エルフも理解した。
童女アスタは世界一強い暁光帝だ。しかも、強いから戦ったことがないという。女精霊や一角獣によれば性格はこの上なく穏やからしい。そして、落ち着いた強者は周りから頼られるものものである。
おそらく、何かトラブルが起きると幻獣達は暁の女帝様を呼ぶのだろう。そして、彼女に相談して解決を図るのだ。
「意外と文化的ですね」
思わず、口を衝いて出た感想である。
何やかや言って幻獣だ。問題が起きれば殴り合いで解決すると思っていたが、なるほど、強力な裁定者がいればそれに頼る方が得だ。互いに怪我もせず、納得して問題を解決できる。
そして、アスタは理想的な調停者になれるだろう。公平で、合理的で、理性的だ。
何しろ、戦えないのだから。
戦えないのだから、後は話し合いしかない。
それこそ、乱暴な巨人だろうが、凶暴なドラゴンだろうが、暁の女帝様を前にすればおとなしく話し合いに応じるだろう。
しかも、音に聞こえし孤高の八龍が1頭である。孤高なので、よほどのことがなければ誰にも肩入れはするまい。
安心して相談できる。
いやいや、どうして、“世界最強”も大変だ。
もしかすると、世界最強になると戦わなくなるので物凄く平和になるのかもしれない。
ドラゴンについて戦ってばかりいるような、どこか阿修羅のイメージを持っていたが、認識を改めた。
「それなら、ますますよい機会ではありませんか。一度、我が国の軍隊と戦ってみてくださいよ」
こうなると俄然、興味が湧いてくる。
人化した暁光帝はどれくらい強いのか。
ギュディト百卒長との“戦い”は一方的でアスタが耐えることで勝利したものの、単純に耐えきってみせただけだ。だから、アスタご本人が実際に戦う姿も見てみたい。
「そうだね。今のボクはブタよりも小さいし、人間とも戦えるかもしれないけれど……」
嬉しそうな童女だが、その表情に懸念の色が混じる。
『世界を横から観る』という、この遊びは楽しい。とても楽しい。
もしかすると、人間と戦えるかもしれない。
今まで出来なかったことが出来るかもしれない。
しかし、そう上手く行くだろうか。
“戦い”はあるていど強さの近い者同士でなければ成り立たない。ネズミがライオンに挑んでも勝負にならないのだ。
暁の女帝は途方もなく強くて誰とも戦いにならない。けれども、人化したアスタなら人間と勝負になるのか。
「兵隊さん達が尖った棒でつっつき合ってるよね? あれが戦いの練習?」
童女が尋ねてくる。
「え…ええ、まぁ……」
ここに来てエルフも童女の懸念が見えてきた。
仕方なく説明する。
「えーっと…人間は尖った棒で心臓を刺されると死にます。硬い物で頭を殴られても死にます。炎で燃やされても死にますし、水に漬けられても溺れて死にます。また、毒を飲まされると死にまして、病気に罹っても死にますね。それから…手首を切って血を流しすぎても死にます。後……」
思いつく限りの死因を並べようとしたものの。
「もう何しても死ぬじゃん。人間、弱点だらけじゃん。駄目じゃん、ツマグロオオヨコバイよりも駄目じゃん!」
童女に怒られてしまう。
「……」
いや、これらの災難に見舞われたらその半翅目だって死ぬだろうに。
だけど、童女の苛立ちもわかるので、不満を抱えつつも黙るエルフだ。
「やはり、か弱い肉体と少ない魔力を嘆きながら地上を這いずり回る定命の者…逆に何をしていれば死なないん?」
童女から問われて。
「うーん……」
“定命の者”、それは“死すべき定めの人の子”という意味である。酷い言われようだが、おおむね、人間なんてそんなものだ。あながち、まちがいではない。文句を言わずに、童女の問いについて考えて。
「散歩したり、ご飯を食べたり、寝たり、挨拶して、お喋りして、お茶を飲んでいれば…その…死にませんが……」
これまた思いつく限り答えてみる。
「じゃ、それだけやってればいいじゃん」
アスタの感想はこれだ。
うん。
散歩して、ご飯を食べて、寝て、挨拶して、お喋りして、お茶を飲んでいれば人間は死なない。
それはそうなのだが。
「人間は死んだらいろいろと面倒くさいって聞いているよ」
童女は顔をしかめている。
いや、死んでしまうと“面倒”では済まないのだが。
「ええ、まぁ、おっしゃるとおりですぅ……」
ナンシーはアスタの言葉を肯定するしかない。
『それならば、なぜ、国家は戦争をするのか?』
続くであろう、童女の問いに答えを用意できない。
強いて答えれば、『暁光帝がいないから』だ。
幻獣らと違って、人間と人間の間には絶対の調停者がいない。
よしんばいたとしても。
幻獣らと違って、人間は人間に嘘を吐く、約束を破る。
人間同士、お互いに話し合って決めた誓約を守らない。
だから、戦争になる。
戦争になってしまう。
止められない。
不信があるから。
『あいつらは嘘を吐いたのかもしれない』、と。
『あいつらは約束を破るかもしれない』、と。
だから、再び、剣を取って斬りかかる。
相手の後ろから。
どんなに綺麗事を並べてみたところで、負けて死んだらお終いだ。
敗者は何も語れず、勝者が歴史を作る。
油断して後ろから襲われて死んだ? 油断した奴が悪いんだ。俺は悪くない。俺は正義だ。勝った俺が正義なんだ。
対して、幻獣は嘘を吐かない。嘘が吐けない。当然、約束も守る。
暁光帝もいるし。
問題は話し合いで解決する。
「あー……」
エルフは人間と幻獣のどちらが野蛮なのか、わからなくなってきた。
それでも少しだけ言いたい。
『嘘が吐けて約束を破れるから人間は凄いんだ』、と。
言っても仕方ないから言わないが。
碧中海の桟橋に四段櫂船が浮かぶ。
見上げるほどの大きな船体とたくましい兵士の集団。
港湾都市リュッダが誇る、制御された暴力装置、戦争の道具だ。
「ふぅん……」
童女アスタはナンシーの言葉を聞いただけで何も語らない。
続くはずの、その問いが童女の口から出ることはなかった。
かつて、人間の大戦争を叩き潰した暁光帝は。
自分が成し遂げた、そんな大事件すら知らないのだ。
ならば、さて、正義はどこにあるのだろう?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
はい、今回も散々な目に遭ったナンシーです。
暁光帝にやり込められるばかりで(>_<)
相変わらず、百合♀×♀展開は無し(ToT)
豊満な美貌のエルフと真っ白ワンピースの美少女、この組み合わせならハイパー百合ん百合んタイム、間違いなし!!
…のはずだったんですけどねぇ。
さて、話は変わりますが、小生、読者を信用しません。
友人らから「どうしておまいは作中でぜんぶ説明してしまうんだ?」「どうして疑問の余地を、読者が想像する余地を残さない?」と言われますが。
う〜〜ん、もともと猜疑心が強いもので。
誰かを信じるという行為そのものが愚かしく思えて仕方がない。
だから、漢字にもフリガナ振りまくるわけでwww
けれども、今回、表現上の都合でどうしても描ききれなかったことがあります(^_^;)
いや、ほら、お話には流れとか調子とかありますんで…ゴメンナサイ。
それは何かと言うと作中の…
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それでも少しだけ言いたい。
『嘘が吐けて約束を破れるから人間は凄いんだ』、と。
言っても仕方ないから言わないが。
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…これです(汗)
ナンシーが言い返したかったけれど、暁光帝の都合を考えてあきらめたシーンですが。
こちら、小説家になろうサイトの訪問者さんならナンシーの胸中が当然わかると、小生が思ったので描写しませんでした。
わかりますよね?
どうして、ナンシーは『嘘が吐けて約束を破れるから人間は凄いんだ』と思ったのでしょうか?
わかりますよね?
答えは……
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正解は「国語の先生になりきって読者に問題を出す作者キメェ!死ね!」です。
ええ。まったく我ながら…o| ̄|_
あ、全開のあとがきで「さて、次回はこの話の続きで“ビーチ”をめぐります」言いましたが、後回しになりました。
バトルシーンをねじ込みたくなったのでww
お楽しみに〜




