暁光帝、街の支配者に謁見する。元勇者ジャクソン、再登場ですぉ☆ 活躍はしないけどねww
依頼の詳細を聞くために瓦礫街リュッダの領主が住まうドラゴン城へ赴いた、我らが暁光帝♪
まぁ、領主の前を素通りというわけには行きませんよね(^_^;)
今回は可愛らしい幼女達が活躍します。
お楽しみに〜
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
人化した超巨大ドラゴンである、童女アスタは豊満な妖精人のナンシーとともに瓦礫街リュッダの中央、領主の住居である“ドラゴン城”の門前にたどり着いた。
堀を巡らした小高い丘の上に立派な城が築かれている。
堀は深く、鎧を着けた兵士が無理に渡ろうとすれば溺れるだろう。城壁には緑の蔦が這い、歴史を感じさせる。丘の上に建っているから、長い階段を上らねばならない。
城門を守る門番らは鎧を着けて、盾を持ち、長柄の槍を掲げている。2人が近づくまでは厳しい顔を見せていたが、エルフと童女を見るとニッコリ笑う。そして、冒険者登録証を検めることもなく。
「ナンシー様、どうぞ」
「ナンシー様のおなりー」
片方が挨拶して、もう片方が両開きの扉を開ける。
よほど信頼されているのだろう。
ナンシーに対する態度はうやうやしい。
「ご苦労さま」
門番に労いの言葉を掛けて場内に入る。
さすが不老のエルフだ。
何百年もの間、この瓦礫街リュッダに関わってきた歴史がナンシーにはある。長年に渡る街への功績が彼女の実績と信頼になっているのだ。
だから、貴族に準じる扱いになる。
そこで、エルフが連れてきた童女も同じ丁重な扱いを受けるわけだ。
扉の先は大きな広間になっていた。
中央には奥まで赤いカーペットが敷かれ、両脇に長机が置いてあり、将校や高位の役人がせわしなく仕事に勤しんでいる。奥には長身で立派な服を着た男がおり、その泰然自若たる様子から察するに領主の相談役かと思われた。
カーペットの先には豪華な椅子が二脚あり、片方は空席だが、もう片方にはこれまた金髪巨乳の若く美しい白人種が座っている。
「ナンシー様、よくぞいらっしゃいました」
相談役の老人は背が高いヒト族だ。厳しく、渋い。若い領主夫婦を補佐する役目なのだろう、保守的で慎重に見える。
「ごきげんよう、相談役」
ナンシーは軽く会釈するだけだ。この振る舞いから、この豊満なエルフの方が彼よりも高い地位にあることがわかる。
そのまま、カーペットを歩く。
そして、豪華な椅子の前にススっと進み出てひざまずき。
「奥方様に於かれましてはご機嫌麗しゅう、このナンシー、恐悦至極に存じ奉ります」
ずいぶん大げさな口上を述べた。
「…」
アスタもナンシーに倣ってひざまずくが挨拶は述べない。
やはり、おっぱいのでかい金髪でないと偉くなれないんだとか、益体もないことを考えている。そんなことを口に出されても困るから、あらかじめ、エルフから黙っているように言いつかっているのだった。
「来てくれて嬉しいわ。さぁ、面を上げて」
瓦礫街リュッダ領主の妻、コンスタンス・ジェラルディーン・ビアズリー伯爵夫人は威厳たっぷりに語る。
その視線はエルフの隣にひざまずく紫髪の童女に釘付けだ。
しかし、自分から尋ねるような真似はしない。
ナンシーから紹介されるのを待つ。
やたら大げさな挨拶もかしこまった礼儀もエルフがやるから意味がある。
年若い領主夫妻の権威付けに協力しているのだ。
何百年もこの瓦礫街リュッダとともあり、長年の街への貢献から敬われているエルフが頭を下げている、それが役立つ。あの有名なエルフが従っているのだからと領主夫妻への支持も増えるわけだ。
この関係は相互に補完的である。
エルフはヒト族の多いこの街で『領主に尊重されているから』と重んじられ、年若くて軽んじられやすい領主は『あの著名なエルフが敬っているのだから』と評価を上げられる。
互いに利益のある関係だから手堅い。
「この娘は、紫陽花の鏡の新メンバーでございます。いずれ、正式に紹介したく存じますが…」
ナンシーはそう言って目配せし。
「本日は博物学者ビョルンにお会いしたく」
話を切り上げようと図る。
豊満なエルフと年若い領主夫妻の関係は深い。
「そうですか。では、さっそくビョルンの研究室へ……」
目配せだけでエルフの意図を察した奥方もさり気なく退室を促す。
何とも察しのよい奥方である。これもエルフとの付き合いは千金に値すると考えた結果か。
ところが、凶事は思いもよらぬ方向からやって来るものだ。
「エルフさんがきてるのぉー?」
「わぁい、エルフさんだぁー☆」
幼くほがらかな声が響く。奥方と領主の幼い娘達がやってきたのだ。
「おおー、いいね! エルフさんと遊んでもらおー」
瓦礫街リュッダ領主ジャクソン・ビアズリー伯爵その人を連れて。
いや、そもそも、どうして領主の城で領主の椅子が空なのか。
それは領主ジャクソンが恐ろしく無能で、領主として発した『勇敢なら怖くない』などの標語が意味不明で役に立たないばかりか、政治を混乱させる毒なので排斥されたからである。
まさに無能な働き者である。
なので、今は子守りが領主ジャクソンの仕事だ。
奥方からは『港湾都市リュッダの次代を担う娘達を育てる重要な仕事よ』『アナタにしかできないわ』などと言いくるめられたが、子守りは子守りである。
それでもジャクソンは真面目に働いた。
実の父親が乳母に劣るわけには行かぬ。
娘達が退屈しないよう気を配り、適度に運動させつつ、きちんと食べさせる、おやつを食べすぎないよう注意するなどの重要任務を果たして来た。もちろん、お昼寝させる時間もきっかり守っている。その間も筋力トレーニングをしながら、片時も娘達から目を離さない。
そんな時、気を利かせた門番が“エルフのおねぇちゃん”が来たと知らせてくれたのだ。
しかし、それで事実上、領主である奥方様の仕事を邪魔するとは如何ともし難い。
しかし、今は子守りが仕事の元勇者ジャクソン、名ばかり領主“馬鹿のジャクソン”であった。
そして、そんな能天気なジャクソン親子が城の大広間で見たものはエルフのナンシーと、彼女よりも更に目立つ童女アスタである。
立ち上がった童女の周りには金属光沢の紫髪がふわり浮いて雲のように漂っている。子供達を見つめる瞳は虹色に輝き、明らかに上質の純白ワンピースと対照的に靴を履いておらず、裸足。冒険者を名乗りながら武器の1つも帯びていない。
その場から浮かび上がっているかのように見える、それほどの存在感だ。
金髪フワフワ幼女達の喜ぶまいことか。
驚く父親が止める間もあらばこそ、全力で駆け出してアスタの下にたどり着いた。
「わぁ、ピッカピカだぁー」
「むらさきのピッカピカ、きれーだねー」
幼女達に全力タックルをかまされそうになるも。
「ようこそ! ボクはブタよりも小さいアスタだよ☆」
金属光沢のロングヘアを束にして伸ばし、左右にそれぞれ幼女達を捕まえて持ち上げ、空中に浮かせる。
「わぁ♪」
「すごぉい♪」
幼女達は大喜びだ。
何しろ、大人でも持ち上げられないほどの高さまで浮いている。
小柄なアスタとは言え、その髪は床に着くほどに長く、自由自在に動かせるのだ。頭を支点に持ち上げれば身長の2倍の高さまで届くわけであって、それは幼女達の体験したことない高さである。
これには領主夫妻も口をあんぐり開けて呆けるしかない。
「アスタはブタよりもちいさいのぉー?」
「ブタよりもちいさいとなにができるのぉー?」
キャラキャラと笑う幼女達。
「こんな風に踊れるよー」
幼女達を持ち上げたまま紫のロングヘアを左右に広げて回転する。頭を支点に身長の2倍の距離で子供を持ち上げて振り回す、恐るべきバランス感覚、恐るべき怪力である。
「あはははー アスタはすごいねぇー」
「きゃっきゃっ! アスタ、すごいのぉー」
こんなことしてもらったことがない。大喜びの幼女達である。
「そりゃあ、何しろボクは世界で一番強いからねー」
一緒になって笑い、自慢する童女。2人を床に下ろして思いっきり胸を張る。
「そぉなの?」
「そぉです…」
あまりのことに立ち上がった奥方の問いは間抜けで、これに素で返したエルフは礼儀の何も忘れている。
コンスタンスもナンシーも驚きのあまり声もない。
エルフにとって、およそ最悪なのは。
自分は世界一強いとのたまう童女が傍目から見ると戯言をほざく無邪気な子供のように見えて。
事実はまさしくその通りだということである。
この世でもっとも恐るべき存在。
いつの日にか、世界を喰らい滅ぼし尽くすであろう、最強にして最大のドラゴン。
暁光帝。
彼女が人化して今、目の前にいる。それこそがもっとも絶望的な事実なのだ。
「あの娘は…」
「説明は後ほど。とにかく関わらぬが吉でござりますれば」
「そぉなんだ…」
「そぉなんです」
奥方は青ざめたエルフに何も言えない。
同時に目配せして侍従や相談役、将校を留まらせる。視線だけで部下に使役できる、自分も成長したものだと思う。
しかし、目の前の童女には何もできないのではないか。
そんな無力感に襲われてもいる。
見よ。
国を救った英雄である夫が腰を抜かしてアスタを指差し、熱に浮かされたように何事かをつぶやいているではないか。
耳を澄ますと聞こえてくる。
「虹色の瞳…虹色の瞳だ……」
言われて、童女を注視するとその瞳は銀河を散らしたような虹色であることがわかる。
この世のものとさえ思われぬ、麗しい童女。
不思議なことに、それがとてつもなく恐ろしい存在に思えてくる。
夫の恐怖が移ったか。
奥方は床に着いて立っている自分の足がブルブル震えていることに気づいた。
勇者と讃えられた夫がおびえている、その事実が自分を震えさせているのか。
「ブタよりもちいさいアスタはほかになにができるのぉー?」
「ブタよりもちいさいともっとすごいこともできるのぉー?」
幼女達がキャッキャッ騒ぐ。
「うむ!」
虹色の瞳が輝く。
この期待に応えねばならぬ。
人間の子供を笑わせて称賛される。これぞ『世界を横から観る』遊びの醍醐味ではないか。
アスタは考える。
すぐに思いついた。
自分が感動したことを何も知らない幼女達に見せてやればいい。
更なる感動を生むこと間違いなし。
決断すると行動は早い。
裸足が床を蹴り、童女は壁に跳んだ。そして、飾られているロングソードをつかんで壁を蹴り、一足飛びに戻る。
この時点ですでに人間業ではないが。
「すごいのぉー」
「すごいのぉー」
軽業と思ったのか、金髪フワフワ幼女は大喜びだ。
「さぁ、ご覧あれ! 抜けば玉散る氷の刃!」
アスタは元気よく呼ばわり。
スラリ
鞘から剣を抜いた。
幼女達の前に鋭い刃が光る。
「!」
「!!」
領主の娘達が得体の知れぬ者に刃を向けられている。兵士達の間に緊張が走る。
だが。
「……」
何もするなと奥方が視線を送って押し留める。
肝が冷えても、彼我の距離があまりに開きすぎていてもはやどうにもならない。
童女が善良な人間であることを祈るばかりだ。
「淑女、そして淑女の皆様、種も仕掛けもございません」
アスタが口上を述べると。
「わぁ☆」
「すごいー♪」
幼女達は眼を見開く。
陽光を受けて髪が金属光沢で輝き、ロングソードを紫に染める。
童女は剣を垂直に構えたまま、紫の髪をフワッと浮き上がらせる。こんどは束にしない。バラバラに散らして左右に広げ。
シュワァッ!!
一気に走らせる。
糸よりも細い髪の毛がアスタの怪力を得て超高速のまま、何万本という数で剣を左右から襲ったのだ。
シュラララララン!!
剣は微動だにしない。
だが、確実に髪の毛が刀身を通っていた。
その結果。
シャララ! シャラララン!!
剣の刀身は無数の金属片となって果てた。キラキラ光る薄片が童女の握る柄を残してゆっくりと舞いながら落ちる。
父親が日頃の訓練で振っている、馴染み深いロングソードが一瞬でバラバラの金属片になって飛び散ったのだ。
それは手品か。
いや、本当に種も仕掛けもない。
細い女の髪が鋼よりも強靭になって、何万本となく舞い、信じがたい膂力で鋼鉄の剣を断ち割ったのだ。
一瞬で。
それは武器の破壊などという生易しいものではなく。
まな板の上で野菜を千切りにするような、徹底した解体であった。
「……」
「……」
幼女達は言葉もない。
よちよちと近づいて床に散った剣の欠片を拾う。それは紙よりも薄い六角形だった。
「わぁ☆」
「すっごいのぉー!」
透けそうなくらいに薄い金属片を日にかざして確かめる。
ここまで薄膜になってしまえば幼女の指でもちぎれて安全だ。
「お粗末様」
ここでアスタは両腕を広げる。手のひらを見せて、その場でくるり回転し、片膝を曲げてもう片方を下げる。紫のロングヘアーはワンピースの裾をつかんで持ち上げる。
ただし、腕組みして上半身は思いっきりふんぞり返る。
アスタ本人が考えた、アスタしかやらない、宮廷風お辞儀、アストライアー式カーテシーだ。
「……」
「……」
これを見て幼女達は再び絶句する。
母親や乳母が教えてくれたお辞儀とはまったく違う。なんて面白いのだろう。
2人は見つめる。
そして。
「ママー、あれ、やりたいー」
「ママー、あたちもやりたいのぉー」
奥方の下に駆け寄ってアスタを指さして口々にねだる。
「あ…」
口を開きかけた奥方のそばに。
「アレは駄目です。アレはいけません」
筋骨隆々たる、浅黒い肌の女戦士が寄り添っていた。
童女は領主の家族を危険に晒したのだ。当然、身柄を拘束されて投獄ということになる…はずだ。
しかし。
「城中を兵士をかき集めても切り刻まれてひき肉にされる。鎧も盾も無意味です。瞬きする間もなく殺られることでしょう」
自分達の無力を認めて百卒長はささやく。
「敵対しないことが最善かと」
利き腕が剣の柄から遠い。いや、手が震えて握れない。情けないことに足も同じだ。
もっとも大した問題ではない。となりで救国の英雄が腰を抜かして震えているのだから。
これは強烈なメッセージだ。
目の前の童女アスタは街の軍事力を超えた存在である、それを暗に認めているのだ。
この事態に対して街の意志はどうなるのか。
領主ジャクソンは腰を抜かしていて発言も行動もできず、論外。
しかし、奥方である伯爵夫人コンスタンスが事実を踏まえて判断を下す。
「あー…アスタとやら、見事な腕前であった。後ほど褒美を取らせたく思うが、今は博物学者ビョルンに会いたいのであろう。百卒長、案内を」
年若い奥方、巨乳を揺らす麗しき貴婦人は平静を装って百卒長に命じる。
「……」
気力の限界だ。発言を終わらせると、崩れるように椅子に腰を下ろす。
頭を上げるのももどかしい。
「ママー!」
「マーマー!」
ねだる娘達には。
「冒険者のエルフさん達は忙しいから、パパと遊んでおいで」
そう言いつけて、夫に託し。
「パパがもっと凄ーい必殺技を見せてくれるって」
娘達の関心を夫に向ける。
「えっ、ブタよりもちいさいアスタよりもすごいのぉー?」
「さすが、パパだー! ブタよりもちいさいアスタよりもすごいなんて!」
幼女達は喜んで腰を抜かしている父親に飛びつく。
アスタはどうやら一発で名前を憶えてもらえたようだ。ありがたいことである。
「えっ? えっ? あぁうぅぅ…いや、その、あー……」
しどろもどろになる父親ジャクソンであるが、まず、お前は抜かした腰を戻して立ち上がれ。
「ナンシー……」
奥方は青ざめたエルフに何か言いかける。
「お手間を掛けました。今すぐアスタを連れてビョルンに会ってきます」
ナンシーは視線と表情だけで『もう何もかも駄目でどうしようもないから貴女は威厳を保つことだけ考えろ』と示して百卒長のところへ向かう。
アスタを連れて。
童女は嬉しそうについて行く。
子供達に芸が受けたことが殊の外、嬉しかったらしい。
金属光沢に輝く紫のロングヘアーをたなびかせて歩く。
上機嫌が過ぎて気づかない。
自分の歩く先から人々が潮が引くように下っていくことに。
ついに街を支配する権力の前に現れた暁光帝!!…なんですが、まぁ、幼女と遊んで終わりましたね。
もうちょっとアクションシーンを増やしたいんですが、うちの暁光帝、あまりに強すぎてバトルシーンが描けませんww
それから小生、実は悪役が描けない。
よそ様の作品を読んでいると悪党が実に憎らしく不愉快に描かれていますが、小生、あの描写が苦手です。
本作の悪役は上級魔族デルフィーナと前回、出てきた中級魔族イグナシオですが…
ええ、あんまり悪そうに見えませんよね(>_<)
なんともはや。
まぁ、暁光帝が拳を振るって悪党をなぎ倒す…な〜んて展開もいずれやってみたいものです。
ところで、再登場した元勇者ジャクソン、もとい、英雄ジャクソンですが、見事に無職やってます。
いや、自分の娘達の子守りだから無職ではないかなw
職業“育児”です。
でも、美人のお嫁さんがしっかり働いてくれていて、自分は可愛らしい子供達の世話をするだけの生活って実は勝ち組じゃありませんか?
誰からも尊敬されない?
軽んじられている?
いやいや、些細なことです\(^o^)/
自分の家族に愛されて、信頼されている。これ以上の幸せはない…のかな(^_^;)
まぁ、元勇者ジャクソンの物語にパート2はありません。本人の言う通りw 死ぬほど苦労した奴は報われるべきだと思いますので☆
さて、次はアクション展開です。
悪党は出てきませんがwww
個人的にアクションあっての冒険譚だと思いますのでやっぱり嬉しい。
ご期待下さい!




