表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ_〜暁光帝、降りる〜  作者: Et_Cetera
<<さぁ、冒険の始まりです☆>>
31/197

暁光帝、朝を迎えて日常を楽しむ。朝食はたっぷり、そしてエレガントに♪

上級魔族デルフィーナ、当然のように悪事を企てます。

そりゃ、魔族ですからね。

目的は童女アスタの監視。

仲間を引き連れて瓦礫街リュッダに乗り込んできました。

そして、我らが暁光帝は……


キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/

 瓦礫街(がれきがい)リュッダは北西から南東に向けて大きな運河が通る。流れが穏やかなのでせせらぎがほとんど聞こえない。

 街の流通を(にな)っていて昼間はにぎやかだが、真夜中ともなれば静かなものである。

 商業地区を流れる運河のそばになかなかりっぱな蒸し風呂屋“陽気なトスティヴァン兄弟の風呂”が建っている。看板には太った褐色のおっさん2人の笑顔がデカデカと描かれていて、これが“陽気なトスティヴァン兄弟”らしい。煙突のないレンガ造りの2階建てで、どうやら魔石で駆動する新型ボイラーが(そな)え付けられているようだ。

 この蒸し風呂屋が暗黒教団(ゲロマリス)の秘密基地だと知る者は少ない。

 元来、暗黒教団はこの瓦礫街リュッダで(うと)まれている。光明教団と激しく対立しており、この街は光の信徒が多いからだ。しかも、リュッダ伯爵ジャクソン・ビアズリーが光明教団(ブジュミンド)の熱心な信者なのである。

 単眼巨人(キュクロープス)の襲撃で破壊された市壁の修復さえ終わっていないのに領主ジャクソンは光明教会の修理を優先し、そのせいで復興(ふっこう)の予算が尽きてしまった。

 ジャクソンはそれくらい信仰心が(あつ)く、それくらい愚かなのだ。街の防衛よりも自分の信仰を優先するくらいに。

 敵国の領主が愚かなことは歓迎できる。それでも、闇の信徒が好き勝手やることを見逃してくれるほど愚かではない。とにかく、この街で肩身が狭いのだ。禁教令(きんきょうれい)こそ出されていないものの、暗黒教団のエリートである魔族が大手を振って歩き回るのは更にはばかられる。

 だから、暗黒教会とは別にこの蒸し風呂屋を秘密基地として、あまりおおっぴらにできない仕事の活動拠点としたのだ。

 地下2階の会議室は風魔法で駆動する通風口が地上の新鮮な空気を運んできてくれるので思いの(ほか)、快適だ。

 現在、大勢が着ける長机には7人が着席している。人種は違えど、いずれも男。全員が魔族らしい浅黒い肌で尻尾を垂らしている。

 「うううう、眠いです」

 ビール腹の太った魔族が愚痴をこぼす。肌が黒くて尻尾と角があることを除けば、只のくたびれたおっさんである。

 この男こそ、看板に描かれていたトスティヴァン兄弟の片割れである。ちなみにもう片方は机に突っ伏して寝ぼけている。魔族らしからぬだらけ具合だが、深夜なので魔族だって眠いのだろう。

 「夜の闇は魔族の友である。我慢しろ」

 1人、立つ麗人もまた魔族。浅黒い肌と()じくれた角、りっぱな黒翼は並み居る魔族達の中でも高い地位にあることを示す。

 「同志諸君、我々はアドバンテージを握っている。それは旅人のアスタ、いや、冒険者アスタに注目していることだ。帝国や連合はおろか、おひざもとであるペッリャ王国ですら(あずか)り知らぬ重要事項だ。我々は何としても他国に先んじてアスタの正体を探らねばならない」

 黒翼が部屋いっぱいに広がると男達はおののいた。魔族にしては珍しい超武闘派のデルフィーナは有名なのだ。

 麗しいエルフ女性でありながら、しとやかさとは無縁の戦歴を重ねてきた。名のある強力な幻獣(モンスター)(ほふ)ってきたそれは彼女の能力を如実に示しており、到底、軽んじることはできない。

 「本日、いや、昨日の夕刻を(もっ)夜鷹(よたか)の目作戦は正式に発動した」

 上級魔族デルフィーナは重々しく宣言する。

 「こちらの冒険者ギルドに()いて監視対象“ブタよりも小さいアスタ”が確認されたのだ」

 机の中央に置かれた光の魔石に魔力を送ると。


 ゔぉん!


 鈍い起動音とともに記録された映像が再生される。

 金属光沢に輝く髪が世界を紫に(いろど)る。冒険者ギルドにやって来た童女アスタの美貌がいかんなく映し出されている。

 「むぅ!」

 ビール腹のデブ魔族の隣に座っていた男が唸る。浅黒い肌と尻尾だけではなく2本の角も生えている。デルフィーナには及ばないものの、彼もまた上位の魔族だった。

 「何という美しさだ!」

 アスタの美しさを称賛しない。吐き捨てるように言っただけだ。

 彼は醜女(しこめ)醜男(ぶおとこ)が好きだ。彼らが努力して成功を収めるところを眺めるのが好きだ。そして、美女や美男が苦しんで破滅する姿を観るのはもっと好きだ。

 彼の名はイグナシオ。

 誰よりも美少女を憎む男である。

 捻じくれた角と悪魔の尻尾、浅黒い肌と尖った耳、そして大きな鷲鼻(わしばな)が恐ろしげだ。落ち(くぼ)んだ目と薄い唇が冷酷な印象を与え、こけた(ほお)、病的に荒れた肌という、お世辞にも美男とは言いがたい容姿である。

 「このアスタという少女は驚くほど愛らしく美しい。そこにいるだけで人々が幸せな気分になれるほどだ」

 憎々しげに語る。

 「わたくしよりも可愛らしく、わたくしよりも麗しい、その姿で、その声で、人々を(まど)わし! わたくしよりも愛されるだろう! わたくしよりも尊重されるだろう! わたくしよりも幸せになるだろう!!」

 自分と比較して考える。

 その結論は。

 「まったくもってけしからん! 絶対に許せん!!」

 美少女、死すべし。慈悲はない。

 このイグナシオ、あまり幸福でない子供時代を過ごして今に至る。

 闇妖精人(ダークエルフ)らしく、美男美女の家系に生まれたものの、誰に似たのか、あまり容姿が優れない。顔の造作が個性的すぎて、それがコンプレックスになった。長じるに従って人格は陰気さを増し、自分を家族と比べて『醜い』とはっきり言うようになってしまった。

 他人が自分に下した評価は努力で(くつがえ)せるが、自分が自分に下した評価はどうあがいても覆せない。

 この時点でイグナシオは名実ともに醜男になってしまったのだ。

 しかし、彼には希望があった。

 ダークエルフには珍しく回復魔法の才能があったのである。それは傷を(いや)し、(やまい)を治し、毒を消す魔法だ。

 だから、彼はそれにすべてを賭けた。青春も、友情も、恋愛も、家族も、学歴も、何もかもすべてを賭けたのだ。

 狭き門を叩き、勉学に励み、魔力を鍛えて幾星霜(いくせいそう)。長年の努力が実を結び、ついに回復魔法について超特級の資格を得る時が来た。

 秘中の秘とされた究極の回復魔法が得られるその日、希望と絶望が混ぜ合わされたその日。

 夢にまで見た秘術は“回春”だった。“回春”、要は若返りである。主に寿命が尽きかけた老人の夢を(かな)える魔法で、それ自体は大変な価値のある魔法なのだが。

 イグナシオはダークエルフであり、ダークエルフは不老である。

 成人してしまえばもう歳を取らないので回春は不要。

 必死で高い山に登り、登ってみたら登頂は必要なかったことがわかった、そんな感じだった。

 しかも、更に悲惨なことに。

 恐るべき真実を告げられたのだ。回復魔法と聖魔法の究極を極めた聖女、その人に。

 『ブサイクは病気ではない』、と。

 『病気ではないから治せない』、と。

 イグナシオは呆然(ぼうぜん)とした。

 しかし、言われてみればそのとおりだ。妊娠の悪阻(つわり)も月経の生理痛も病気ではないから回復魔法では治せない。それと同じだ。違うのはこれら厄介な症状が回復魔法以外の手段で軽減できて、ブサイクには打つ手がなくてどうしようもないということだった。

 ブサイクは治らない。

 ハゲやデブと同じ。

 病気じゃないから治せない。

 魔法技術の発達には目を見張るものがあったが、感染症や負傷など明らかな病気にしか手が出せていないのだ。

 そして、絶望に(さいな)まれるイグナシオに暗黒教団(ゲロマリス)が近づいたのだった。

 そして、今、彼はここにいて童女アスタに憎悪の目を向けている。

 それはある意味、運命の出会いであったのかもしれない。

 「許すまじ、美少女!!」

 怒鳴る。

 美少年もむかつくが、美少女は更に腹立たしい。美貌が評価されるのは美少年よりも美少女の方だからだ。

 「う、うん…あー、同志イグナシオ、それくらいで。まぁ、それで…あー…具体的な夜鷹の目作戦だが……」

 迫力に気圧(けお)されたデルフィーナが会議の方向を修正しようとするも。

 「同志デルフィーナ、お任せください! わたくしに妙案があります!!」

 これまた、イグナシオが強引に迫る。

 「昨日、頂いたこの妖女サイベルの呼び鈴で!」

 魔法のハンドベルを掲げて鳴らすと。


 チリリーン! しゅわわわーん!


 陰気な中年男の姿は可愛らしい北欧系白人種(コーカソイド)の金髪童女(ロリータ)に変わっていた。本人の着ていた大きな長衣(ローブ)にちょこんと入ってしまって可愛らしい。

 「どうでしょうか? この姿で、わたくしが友達を装ってアスタに近づきます!!」

 拳を振り上げ、熱弁する。

 「一分(いちぶ)の隙もない、完璧な計画であります!!」

 フーフーと息を荒げるイグナシオだが。

 「却下で」

 上司(デルフィーナ)から一言の下に否定された。

 「ば…」

 馬鹿なと抗議する前に。

 「美少女はケツを掻かない。美少女はガニ股で歩かない。美少女は仁王立(におうだ)ちで鼻息荒く演説しない」

 デルフィーナがダメ出しする。

 「姿形は完璧だが、動き(モーション)がなってない。それで美少女とは片腹痛いわ」

 眉をひそめる。

 昨日、着任して早々、部下らに魔界の秘密兵器“妖女サイベルの呼び鈴”を支給してやった。好きな姿に変身できるという優れ物だ。この街で魔族のまま行動するのは目立ちすぎるから当然の装備である。

 魔法のハンドベルを渡されたイグナシオは目を輝かせて一日中、自室にこもっていた。仕事熱心なことだと感心するデルフィーナだったが、実はたっぷり時間をかけて理想の美少女を容姿作成(キャラメイク)していたらしい。

 いや、確かに変身後のイグナシオはよくできている。容姿だけなら。

 道行く人々が思わず振り返るほどの美少女だろう。実際、デルフィーナも感心したものだ。

 だが、動き(モーション)が駄目だ。中年のおっさんそのままだ。美少女がガニ股で歩き、おっさん言葉で喋っていたら目立ってしまう。

 標的の童女アスタに近づくなど論外だ。

 そもそもお前は美少女が嫌いなんだろう、と。

 どうして嫌いな美少女に変身してそんな嬉しそうなんだ、と。

 本当はもう陰気な中年のおっさんをやっているのが嫌で、美少女になって誰からも愛される幸せな生活を送りたいんだろう、と。

 いろいろ問い詰めたかったが、止めておいた。

 今後の作戦行動における士気を落としたくはないからだ。

 生まれつきの美女で、努力して何を成し遂げても『美女だからえこひいきされているんだ』とそしられ続けたデルフィーナである。イグナシオのコンプレックスも理解はできる。共感はできないが。

 「とりあえず、お前ら、今の姿からかけ離れた人物に変身するのは禁止な」

 きちんと言い渡す。

 「ううううう……」

 イグナシオは長机に突っ伏して顔を上げる元気もない。その表情からは絶望の2文字が読み取れる。

 他の部下らが呆然としているのはイグナシオの様子にショックを受けたからだろうか。

 それとも、“理想の自分”に変身することを禁じられたからだろうか。

 「あー…夜鷹の目としては童女アスタの監視を第一優先事項として進めていく作戦であることを……」

 何となく、後者の感が強いものの、無視する。

 作戦の成功が最優先なのだから。








 東の空が明るくなってきた。

 窓から朝日が入ってくる。

 ベッドに横たわる童女の身体が照らされて体温が上がる。


 パチクリ


 アスタは目を開いた。

 「……」

 自分はネムったのか。

 自分はネムれたのか。

 だいぶ意識を混濁(こんだく)させておいたはず。

 それがネムるということで。

 ネムれたのであれば喜ばしいことだ。

 夜、人間はネムって夢を見るという。

 面白い話だが。

 自分はまだ夢というものを見たことがない。

 海魔女(セイレーン)人魚(マーメイド)が語る夜の夢は華やかで楽しそうだ。

 こうして人間になったのだから、いずれ、自分も夢を見ることができるようになるのだろう。

 楽しみなことだ。

 童女は身体を起こしてベッドから出る。

 布団(ふとん)は掛けていない。

 昨夜、退室したポーリーヌも不要と判断したのだろう。掛けてはもらえなかった。

 まったく問題ない。

 天龍アストライアーとして雲上を飛んでいた頃、眠ることも布団を掛けてもらうこともなかったのだから。

 ドアの向こう、廊下(ろうか)からバタバタと足音が聞こえてくる。

 「アスタさん、朝食の時間でございます」

 「アスタさん、朝ですよぉ」

 一角獣(ユニコーン)のポーリーヌと女精霊(ニュムペー)のジュリエットに呼ばれて廊下に出る。

 「おはよう」

 童女アスタは挨拶した。

 「おはようございます」

 「おはようですよぉ」

 人化した2頭は人間の姿なので2人と言うべきだろう。

 「むぅ…服を着てる。おっぱいが見えない」

 不満げな童女に。

 「はい! 今すぐ俺が脱ぎますっ!!」

 「全裸ならお任せぇ〜」

 2人は競って脱ぎ始める。

 だが、ボタンが多くて手間取っていると。


 スパン! スパパーン!


 「廊下で裸になるなー!」

 「ふぎゃっ!?」

 「むぎゅうー?」

 背後からエルフのナンシーが引っ張ったいて止める。

 「ん? 裸は駄目なのか?」

 童女は驚く。

 裸が駄目では胸乳(むなぢ)が見えないではないか。重大な問題である。

 「はい。文明人の大人は裸を恥ずかしがります」

 アスタの問いに答えてやるナンシー。

 きちんと“文明人の大人”に限定しておいた。

 野蛮人、もしくは子供ならどこで裸になっても困らない。

 この街のマナーというものだ。

 「恥ずかしがる…」

 童女アスタは驚いている。

 どうやらマナーらしい。

 ならば、従わざるを得ない。

 窮屈なことだ。しかし、マナー違反は友達が3分の1減る。あきらめざるを得ない。

 「さぁ、朝食にしましょう」

 食堂(ダイニング)へ案内される。

 アスタの部屋の半分ほどの広さだ。もっとも、住人の個室が大きすぎるので6人パーティーなら十二分の広さだろう。右手のドアは台所(キッチン)へ通じる。

 中央に置かれた円形テーブルには白いテーブルクロスが掛けられて清潔感がある。10脚の椅子があるものの、食事の用意は4人分だ。今、ここにいる人数分しかない。

 中央の花瓶に生けられた紫陽花(あじさい)が部屋に色を添えるが、これも造花だ。やはりエルフの生活習慣を(おもんぱか)ってのことだろうか。

 料理はゆで卵と焼き立てのパン、そして冷えた牛乳(ミルク)だった。

 「ふむ。氷の魔石で冷やしているんだね」

 「ご明察。うちには氷室(ひむろ)がありますので」

 冒険者パーティー“紫陽花の鏡”は一流らしい。その共同住宅は見かけだけでなく、設備もなかなか立派なようだ。

 氷の魔石で内部を冷やす魔法の装置“氷室”がある。それは扱う者の技量の高さ、または財力を意味する。

 「立派なものだねぇ……」

 椅子に腰掛けず、立ったままだ。そもそも“座る”という習慣そのものがない。

 エルフの生活環境を称賛してアスタはゆで卵を(かじ)る。


 ジャリジャリ


 昨日、言われたように一気に飲み込むことはしない。半分だけ齧って口の中で噛み砕く。卵の殻と卵白と卵黄が混じり、不思議な食感が面白い。

 「アスタさん、塩を掛けるともっと美味(おい)しくなりますよぉ」

 ジュリエットが岩塩の瓶を渡してくれた。

 「うむ。ありがとう」

 礼を言って、半透明のピンク色した粒を取る。

 「高度好塩菌(ハロバクテリウム)の桃色が鮮やかだね」

 指で強くつまみ、塩粒を砕いて、ゆで卵の残りにかける。

 「?」

 ナンシーは絶句していた。アスタの言ってることも意味不明なら、指の力だけで塩粒を砕く技もわからない。スプーンを用意してやったのに手づかみで殻も取らずにゆで卵を噛み砕いていることに至っては頭が痛くなる。

 知識もある、知能も高い、でも、やっていることは野蛮人の所業だ。

 「美味(おい)しいね♪」

 舌の上で卵黄と卵白と塩と卵の殻を転がすと面白い味になった。

 素晴らしい。

 「よろしゅうございましたわ……」

 つぶやくエルフ。食べているパンの味がしないほどショッキングだ。

 アスタなら冶葛(やかつ)亜砒酸(あひさん)、果ては猛毒カンタレラでもバリバリ噛み砕くだろう。そして、食べても食中毒を起こさないに違いない。

 自分はゆで卵の殻をスプーンの背で叩いて割って、殻を()き、瓶のグラインダーで砕いた岩塩をかける。半熟卵をスプーンですくって食べる。

 文明人らしく、淑女らしく食べる。

 美味しい。

 焼き立てパンを手にとって割ると湯気が沸き立つ。

 これもまた紫陽花の鏡がどれだけ豊かなのか、示すものだ。

 「焼き立てのパンには塩豚(しおぶた)ですよ」

 ポーリーヌがカットしたパンに塩豚とレタスを(はさ)んでやる。生の豚肉を塩漬けしただけのもので塩抜きしていないからかなり塩辛いが、レタスと熱い焼き立てパンがしっかり受け止めてくれている。

 「美味しいなぁ…こういうものもあるのか」

 金属光沢の髪が宙を舞い、朝日を反射して食堂を紫に彩る。喜びの表現だろう。

 童女は何を食べても上機嫌だ。

 「お口に合ってよかったわ」

 料理の味もあるが、丸呑(まるの)みせずに食べることが面白いのだろう。皿ごと噛み砕かないだけマシだとナンシーは思う。

 ワインを朝食に出さなかったのはエルフの指示だ。この童女アスタ、実際のところ、子供ではない。それどころか、最年長の自分よりも歳上である。

 それでも朝から子供に酒を飲ませるのは感心しないというわけだ。

 実際のところ、この街では子供も大人と同じくらい飲んでいるのだが。

 魔法石の氷室などどこの家にもあるわけではなく、ふつう、ミルクは長期保存できない飲み物なのだから。

 「いいね、いいね、冷たいね」

 アスタはミルクを飲んで、口の周りを白い輪っかで彩っている。

 これは実に子供らしい。

 エルフは少し機嫌が良くなった。

中世ヨーロッパっぽい世界を舞台にしているわけですが、まぁ、あの頃って今とも日本とも違います(^_^;)

子供の頃、『ふたご物語』ってゆー、おそらくフランスの作品を読んで驚きました。

乳母が言います。「ふたごは互いの区別がつくように育てなけりゃいけない」「朝食で片方にワインを出したらもう片方には水を。翌日は逆にする」「そうしないとふたごはそれぞれが自分を持てなくなっちまう」と。

ええ、これの何がびっくりって5〜6歳の子供がワイン飲んでんですよ\(^o^)/

さすが、フランス☆ いろいろ違ぇwwww

で、今回の朝食シーンにもワインを飲むところを入れようかな、思ったんですが…暁光帝、ワインごときじゃ酔わないんですよね。当たり前ですが。

歴史ある国産モンスターのヤマタノオロチは酒をかっ喰らって酔っ払い、寝ていたところをヤマトタケルノミコトに斬りつけられて退治され、尻尾から草薙の剣を取り出されましたが。

うちの暁光帝は酔いませんww

う〜〜〜ん、エタノールがアセトアルデヒドになって…って過程で暁光帝が酩酊状態になるってのがどうにも思いつかないんですよ。

そもそも、月へ飛んで月面に宮殿を建てたり、噴火する火山の火口に飛び込んで溶岩風呂に浸かるようなドラゴンが毒やら酒やらでどうにかなりますかいなww

ちなみに小生自身は年間アルコール摂取量が数立方センチメートルの下戸です(^_^;)

映画とか、CMとか、映像でやたら美味しそうに飲んでいるのを見てたまに飲んでみるんですが、まぁ、エタノールですよね〜

苦いし、舌は痺れるし、ありゃ、駄目だわぁ〜

007がドンペリニヨン飲んでるところとか、美味しそうだな〜とは思うんですが。

大人になったけれどドンペリニヨン飲んだことありませんwww

めちゃくちゃ高そう(^_^;)

そういや、初代007ジェームズ・ボンドことショーン・コネリーが亡くなっちゃいました(ToT)

また、惜しい人を……

ご冥福をお祈りします。

どれが好きかと問われたら『ゴールドフィンガー』と『ロシアより愛を込めて』と『サンダーボール作戦』ですかね。

最新作の『スペクター』は爆笑しましたw 往年の『007』そのまんまのストーリーでしたからww

うん、ダニエル・クレイグも悪くない。

けど、『女王陛下の007』ジョージ・レーゼンビーも捨てがたいんですよ。あの映画、ラストシーンが物凄くよくて。元祖、猫を抱くラスボス、エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドの見せ場も多かったし。

小生は♂主人公の作品をほとんど見ませんが、007ジェームズ・ボンドとドラキュラ伯爵とシャーロック・ホームズだけは別ですね。

アルセーヌ・ルパンも大好きなんですが、日本でアニメ化されて『ルパン三世』になったときはひっくり返りましたよ。

怪盗紳士アルセーヌ・ルパンが似ても似つかないサル顔の兄ちゃんになっててワルサーP38を…

いや、「あし〜もとに〜からみつく〜♪ あかいーなみを〜けーええってぇ♪ マシンがさけぶ〜♪」は名曲だと思いますけどね(^o^)

ちなみに第一話で峰不二子ちゃんのエッチなシーンがあったので見るの止めちゃいました\(^o^)/

結局、まともに見たのは第二期シリーズからかな…面白かったけど、モーリス・ルブラン原作の怪盗紳士アルセーヌ・ルパンの面影はまったくありませんねww

さて、次回、暁光帝は再び、冒険者ギルドを訪れます。

冒険者の仕事は冒険することですが。

冒険者にとってもっとも重要な能力は剣を振るう能力でも、魔法を使う能力でも、罠を外す能力でもありません。

依頼人を見つける能力です☆(『迷宮物件_FILE538』より)

さぁ、暁光帝は自分に合った依頼を見つけることができるのでしょうか。

乞う、ご期待☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ