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人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ_〜暁光帝、降りる〜  作者: Et_Cetera
<<街に侵入しよう! 人間に見つからないように!>>
23/197

暁光帝、格下の冒険者に絡まれる!! 〜うちは伝統と格式の恒例イベントを大切にしています〜

キャラがどんどん増えてきます\(^o^)/

ようやく百合♀×♀展開に持っていけそうな美女&美少女が登場します。

お楽しみに☆


キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/

 さて、少し離れたテーブルで夕食を取っている2人組もこの騒ぎを眺めていた。

 「あんなに小さい子供に火酒? 殺す気かしら、まったく!」

 憤懣(ふんまん)やる方ないエルフが声を荒らげる。

 ゆったりしたチュニックを押し上げると言うよりもはちきれんばかりの爆乳が凄い。スカートから伸びる足もたっぷり肉が着いている。金色のミディアムヘアから突き出す長耳だけが妖精人(エルフ)らしさを見せているが、全体に肉がたっぷりでエルフの(はかな)さは微塵(みじん)も感じられない。

 今も怒りながらパクパク料理を食べている。

 「まぁまぁ、若者は馬鹿なことをやるものだしぃ〜」

 エルフの正面で食べている女性も負けじと若く(うるわ)しい。

 妙齢(みょうれい)のヒト族で髪は珍しい水色だ。髪は肩までもないショートで、スタイルは抜群(ばつぐん)だが、エルフ女性ほどの豊満ではない。それでも、やたら艶やかで大きなオレンジ色の瞳と情熱的な赤い唇が印象的だ。

 2人とも魔術杖(メイジスタッフ)を背負っていて、隣がこれだけ騒いでいるのに落ち着いている。

 「いいふぁへん(かげん)ころも(こども)ふぁ()ふぁへ(さけ)ふぉ()ろむろ(のむの)ふぉ()ひゃめふぁふぇる(やめさせる)ふぇひは(べきだ)()ほふぉふぁらい(おもわない)?」

 肉汁のたっぷり掛かった牛肉とパンを頬張(ほおば)っているので発音が怪しい。

 「ナンシーは何百年、この街の子供を見てきたのよぉ?」

 いつものことだからと、対面の女性は食べ物を口に入れたまま喋るエルフを(とが)めない。

 彼女が視線を横へ流すだけでアスタ達の姿がとらえられる。

 大コップ一杯の火酒を飲んで顔も赤らめない童女に驚きながらも。

 「子供はダメで大人はいいなんてルールを増やすとろくなことにならないわぁ」

 規制の強化には反対する。

 火酒を飲んでも顔色ひとつ変えないアスタを眺めて、アルコールに対する耐性は人種によってずいぶん違うようだと思いながら。

 「ジュジュはそう言うけどね、あの歳で火酒なんて飲んでいたら絶対に自堕落(じだらく)飲ん兵衛(のんべえ)になるわ。私はそういうのをさんざん見てきたんだから」

 相棒を“ジュリエット”の愛称で呼びながら、エルフは自分の経験を語る。

 あふれる若さに反してナンシーはヒト族の寿命を(はる)かに越えて生きてきた。不老の人種であるエルフは歳を取らないのだ。

 この2人、今、アスタと話している中堅パーティーよりも若く見えるが、その実、より多くの経験を積んだベテラン冒険者である。

 エルフではない、どう見てもヒト族のジュリエットにしても歳上なのだ。

 「ナンシーの経験を(かろ)んじるつもりはないけどねぇ、あの()は……ぶふぉっ!?」

 話題の童女はまったく酔う様子がないと言いたかったのだが、思わず、吹き出してしまった。

 アスタを見つめている内にあることに気づいてしまったのだ。

 ジュリエットが目を白黒させていると。

 「何よぉ…」

 『汚いわね』とは続けない。いろいろ含むところもあるナンシーも童女の方を向いて観察する。

 「う〜ん、キラッキラ光る髪でコップを持ってるわね。ずいぶん珍しいけど……」

 なるほど、異質な感じがすることはする。

 だが、相棒の水色の髪を見やり。

 「でも、広いエレーウォン大陸だし、あーゆー髪のヒト族がいてもいいと思う。うん、髪の毛を操る魔法なんて聞いたことも見たこともないけどね、ケレン味があって面白いからやる奴がいてもおかしくはないわ」

 貴重な魔法を馬鹿なことに使って損する若者は昔からいる。それこそ何百年もの間、数え切れないくらい見てきた。

 そして学んだことが。

 「『馬鹿はどこにでもいくらでもいる』、の。憶えときなさい」

 これぞ、この世の真実だ。

 だが、対面の女性は青ざめていた。

 「えーっとぉ…髪の毛を動かすのに貴重な魔法を使う馬鹿だっているしぃ、その髪の毛がキラッキラ光る変な奴だって他にいるかもしれないわぁ。だけどねぇ…」

 目を見開いて。

 「あの娘、さっきから一度も(まばた)きしてないわぁ」

 ジュリエットは童女を凝視している。

 その顔には恐怖の色があった。

 「えっ!?」

 これにはさすがのエルフも驚く。

 しばらく童女の目を見つめて。

 「ほんとだ。瞬きしてない…」

 確認した。

 更に気づいたことがある。

 よく喋る()だ。ズラリ並んだ大人を相手に気圧(けお)されることなく自分が語りたい話を組み立てて、立て板に水を流すがごとく言葉を(つら)ねている。

 大人達が口を挟む余地すらない。

 それもそのはず。

 「息継(いきつ)ぎしてない!」

 アスタの口からは言葉が出るばかりで息を吸い込む動作が見られない。

 鼻から空気を吸って口から出しながら喋ることはできるが、それでもどこかで息をするから語りが尽きる。

 この童女についてはそれがないのだ。

 「息継ぎしてないんじゃなくてぇ…呼吸してないのよぉ」

 青ざめたジュリエットが現象を涙声で解説する。

 「たぶん…あらかじめ、大量の空気を吸い込んで圧縮、肺に詰め込んでいるんだわぁ。それを戻しながら呼気として言葉に変えているぅ……」

 腰を浮かしかけて途中でこらえた。

 今、自分達が気づいたことをアスタに気づかれてはならない。

 「えっ、亡者(ゾンビ)でもそんなことやらない。何なの、あの()?」

 ゾンビは死霊使い(ネクロマンサー)に使役される、人気のアンデッドモンスターだ。呼吸は必要ないが喋るためには息を吸い込む必要がある。

 人間がふつうに喋るなら息をすればいい。

 どうしても話を途切れさせたくなければ、鼻で息を吸いながら喋ればいい。

 人間ではきついが、できないわけではないだろう。

 あの娘、アスタがそれをしない理由は何か。

 「呼吸したことがないんだと思うわぁ。肺の使い方も知らないのぉ。だからぁ、あらかじめ吸気を肺に溜め込んでおくなんて発想ができるんだわぁ」

 ジュリエットの方がアスタの考え方を理解できるようだ。

 「ジュジュ、あのアスタって()、人間じゃないのかも。そうだとして何者?」

 「わからないわぁ」

 エルフの問いにジュリエットは答えられない。

 「わからないけどぉ…物凄く嫌な予感がするのぉ」

 断言した。

 声が震える。

 自分が戦慄しているのがわかる。

 火炎の竜(ファイアドレイク)を前にしても震えなかった自分がおののいている。

 その事実がとんでもなくヤバイ状況だということを実感させる。

 それは強い化け物に襲われる恐怖とは違う。

 ()いて言えば、ふつうに歩いていたらいつの間にか千尋(せんじん)の谷に掛かる壊れかけた橋の上にいることに気づいた、そんな恐怖だろうか。

 とにかく、『何をしてもどうにもならない』といった予感がビンビンする。

 「そんな…」

 不安が伝搬(でんぱん)した。食いしん坊のナンシーも食事の手が止まる。

 さて、2人がおののいている間も隣のテーブルで会話が進行している。

 「見事な飲みっぷりですが…私の求めるものは知識と観察です。たとえば…そうですね。鹿鳥(ペリュトン)についてはどう思いますか? 近年、しばしばこの街を襲いに来る幻獣(モンスター)です」

 自分の知らないハルピュイア文字が書けると聞いてアスタを子供扱いするつもりがなくなった博物学者ビョルンである。きちんと敬語を使い大人として扱う。

 「ペリュトンとは話が通じないなー あれは人間、とりわけヒト族への強烈な恨みと憎しみで動いているからねー 連中、属性が風だから、戦うんなら矢を()かけるよりも氷の精霊魔法を撃ち込む方がいいよ」

 幸いなことにアスタはくだんの怪物をよく知っている。能力も、性格も、弱点も。

 だから、的確なアドバイスを返した上におまけの注意事項も付けてやれる。

 「その時、気をつけることは攻撃部隊にヒト族を入れないこと。エルフやドワーフみたいなヒトと見間違われやすい人種も除いた方がいい。リザードマンやミュルミドーン、マーフォークなら群れを攻撃しても集団で反撃されることはないよ。攻撃された個体だけが攻撃した人間に反撃するだけだからね」

 童女は自信満々、胸を張って答えた。

 「……」

 アスタの回答に博物学者は唖然としてしまい、一瞬、言葉に詰まる。

 「な、なるほど…ずいぶんとくわしい。いや、それなら合点(がてん)がいく。やたらヒト族、ドワーフ族、ホビット族の被害が大きいと思っていたが…なるほど、ヒト族とそれに似た人種が襲われていたのか」

 教わったことを頭の中で再構成する。

 「この情報が事実ならペリュトン対策が大いに前進するな。こちらの被害を減らして効率よく反撃できる…」

 はたと気づいた。

 この童女の重要性について。

 およそ自分達が想像もしなかったような、思いつかなかった、そんな話をしている。

 事実なのか。

 純真そうな、可愛らしい、幼い少女だ。

 どう見ても嘘を()いているようには思えない。

 この情報は使える。

 真実であれば、値千金(あたいせんきん)だ。

 思わず、勢い込んで尋ねてしまう。

 「他にも知ってることがあるかい、いや、ありますか?」

 言葉遣いを直して。

 「たとえば、豚人(オーク)とか?」

 真剣に尋ねる。

 近年、オーク族の盗賊団がはびこっている。月の出ない夜には南西の貧民窟(ひんみんくつ)が襲われることが増えた。また、オークが街道を(うかが)う気配もある。

 領主の奥方(おくがた)様からも対策をせっつかれている重要事項だ。

 「オークならさっきも北西の街道で見かけたなぁ。11人いる!…じゃなくて、11人いたよ。剣とか槍とか持ってて、草むらに潜んでこっちを伺っていたっけ」

 アスタはこともなげに言う。

 ヒト族よりも身体が大きく力も強いオークだが、天龍アストライアーから見ても童女アスタから見ても脅威とは映らない。武装していても、集団であっても、だ。

 だが、瓦礫街リュッダから見れば十分に脅威である。

 「11頭もいたのかっ!?」

 「えええっ!? 11頭も?」

 「3、4頭ならともかく…小隊規模だと!?」

 「ギャギャッ! 11頭デハ勝チ目ガナイ!」

 「ギジャリ、ジャリ、ギジャリィィッ!」

 「かなり高ランクの冒険者パーティーを複数そろえないと厳しい数ね」

 たちまち、場が騒然となる。

 オークの1頭が中級冒険者の1人に相当するとすれば、それが11頭で戦力は桁違いだ。該当する中級のモンスター11頭を相手にするのとはわけが違う。

 幻獣(モンスター)は互いに協力せず、基本的に只の力押しで戦うだけだ。しかし、訓練されたオークの集団は巧妙な作戦を建てて、攻撃に際しては有機的な連携を見せる。

 待ち伏せも奇襲もするし、戦闘になれば真っ先に守りの弱い魔導師を狙ってくる。

 冒険者パーティーにとっては厳しい相手だ。

 「おい、おメェはオークに出会って11頭と数えられるくらい冷静だったんだろぉ? なら、どうしてすぐに知らせねぇんだ?」

 まだ明るいのにだいぶきこしめした冒険者ハンスが赤ら顔で面罵(めんば)する。つばきが飛ぶほどの勢いだ。

 だが、童女はまったく動じない。自分の倍以上ある男から罵られても平然としている。

 それどころか。

 「“11頭”じゃないよ。オークは人間でしょ。“11人”だよ」

 逆に赤ら顔の間違いを指摘してみせる。

 オーク族はヒト族よりも身体が大きく頑丈で力も強い。とりわけ、瓦礫街の周辺ではオーク盗賊団が跋扈(ばっこ)して被害も出ている。住民のオークに対する感情も非常に悪い。

 だが、オークは幻獣(モンスター)ではない。恋もすれば子供も産み育てる、歳も取るし、同族同士で協力して町や村、国も作る。要するにオークも人間ということだ。

 単純に文化や価値観が異なるだけの、只の、“異なる人種”ということになる。

 もっとも、そんな些細な差異こそが戦争の原因にもなるわけだが。

 とりあえず、そういうわけでオークを“頭”と数えるのは間違いだ。“人”と数えるのが正しい。

 正しいのだが、赤ら顔の冒険者ハンスはみるみるうちに表情が険しくなってゆく。

 俺様はオークの危険を知らせることを(おこた)る子供を叱りつけていたのだ。そういう自分勝手は許されないという意味を込めてきつく叱ったのだ。

 それが言葉尻をとらえて逆に言い返された。

 子供のくせに。

 子供のくせにいい大人の俺様を叱る。

 何と言う理不尽か。

 「ガキのくせに生意気(なまいき)言いやがって! (しつ)けてやるっ!!」

 ごつい拳を振り上げる。


 バキィッ!


 無手とは言え、鍛え上げた拳が童女の頭をしたたかに殴りつける。

 「?」

 上から下へ殴りつけた打撃が童女の頭を震わせたが、それだけだった。力の方向が正確だったせいか、体幹も揺るがず。

 ひるむどころか、痛がる様子も見られない。

 「はい。それでは言い換えてみましょう。オークが『11人いる!』です。はい!」

 アスタが(うなが)す。嬉しそうに。

 「こ…この……」

 赤ら顔の冒険者は怒りに震える。

 大人が叱りつけてやったのに、この子供は反省するどころか、逆に笑ったのだ。この俺様を。

 この、大人である、この俺様を。

 面子(めんつ)を潰された。

 許せない。

 絶対にだ。

 酔った脳が判断を下す。

 そして、ふだんから行っていることを半ば自動的に実行する。

 「∮CF(r)・dr!!」

 呪文を唱え。

 「えっ、ハンス!? ダメっ!!」

 リーダーのキャロルが止める間もあらばこそ。

 「死ねっ!」

 魔法強化されたパンチを突き出す。

 強化された筋肉が生み出す凄まじい怪力、それに耐えられるよう魔法で強化された骨格、この2つが生み出した魔物殺しの拳が童女に襲いかかった。


 ドガァッ!!


 凶暴な拳が小さな童女の顔面に撃ち込まれる。

 「あかちばらちー!」

 アスタは悲鳴を上げて殴り飛ばされた。

 小さな体が吹っ飛ぶ。文字通り、飛ぶ。


 バッカァーン!!


 飛んでいった童女の身体が背後のテーブルにぶち当たり、粉々に砕いた。

 荒っぽい冒険者が(つど)う酒場に置いてあるテーブルだ。それが砕けるほどの打撃力は全力で走る4頭立ての馬車に衝突された時と同じくらいだろうか。

 「おっぺけぺー!」

 意味不明の叫び声を上げながら童女の身体はテーブルと椅子の残骸に埋まっていった。

 「きゃー!」

 「えええええええっ!?」

 テーブルに座っていたジュリエットとナンシーも飛び退()いた。

 あまりの事態に2人とも真っ青である。

 「どうだっ!」

 ふぅふぅ息を切らしながら赤ら顔の男は仁王立(においだ)ちだ。

 「『どうだ』じゃねぇーっ!!」


 ボガッ!


 強烈なパンチが飛んできて赤ら顔をぶん殴った。

 リーダのキャロルだった。アスタと同じくらいの童女なのに成人男性をふっ飛ばすほどの威力。ハンスと同じく肉体を魔法で強化したのだ。

 「ぐぶふぇえっ!」

 ふっとんだ赤ら顔は壁にぶち当たってバウンドして倒れた。

 「ぐぐぅ…だけどよぉ、あいつ…あのガキ、許せねぇじゃねぇかよぉぉ…」

 泣きベソをかきながら立ち上がる。

 「あんた、わかってんの!? 人殺しよ! あんた、子供を殴り殺しちゃったのよっ!!」

 キャロルは本気で怒っていた。

 瓦礫街でも他の街でも酒場の喧嘩で怪我することはよくある。それで死んでしまう奴も少なくない。

 それはいい。

 いや、よくないが、仕方ないのだ。

 酔っ払った冒険者同士、互いの不始末が起こした事件は自業自得(じごうじとく)と納得ずくだから犯罪にはならない。

 だが、この場合は違う。

 冒険者でない、博物学者ビョルンが見ていた。

 受付嬢スーザンも見てみた。

 2人は殺人事件の証人になるだろう。確実に。

 童女の死体という証拠があって、いたいけな少女をハンスが殴り殺したと語る証人がいて、酔っ払ったハンスという犯人がいる。

 この状況はまずいなんてもんじゃない。

 いくら治安が悪くて犯罪に甘い瓦礫街でも“証拠”、“証人”、“犯人”、これら3つがそろっている状況で見逃してもらえるはずがないのだ。

 「栄光の荒鷲団から人殺しが出てしまうなんて!」

 嘆いた。

 冒険者が荒いのは当然だ。無宿者(むしゅくもの)でも無頼漢(ぶらいかん)でも冒険者なら許される。それは体を張って住民に(あだ)なすモンスターと戦うからだ。自分の命を危険に晒しても、大切な肉体が傷つけられても住民を守るから、多少の荒事は目をつぶってもらえるのだ。

 だからこそ、殺人は駄目なのだ。

 冒険者が住民を殺してしまうことは“故意の味方殺し”になってしまう。

 明らかな裏切り行為であって、弁解の余地がない。

 「グギャギャ! 人殺シダ! 人殺シダ! マズイ!」

 「おいおい、何してくれてんだよ!」

 「ギギッ! ギギギギィッ! ガリガリガリ!」

 「荒鷲団カラ殺人犯ヲ出シテシマウナンテ…今マデノ業績ガパァデスヨ!」

 絶望で仲間達が騒ぎ。

 「貴重な情報源を…何ということだ…」

 博物学者ビョルンは目を見開いて悲劇を見つめ。

 「アイェェッ! 死ぬっ! 死んじまうっ!! やべぇぇぇっ!! お前っ、何してんだよっ!!」

 赤毛の冒険者ボルゲンは正気を失い、泣き叫んでいた。どうしようもない悲劇に押し潰されかけている。

 「キャアーッ!! 人殺しぃぃぃっ!!!」

 遅れて受付嬢が悲鳴を上げる。

 今、ギルドメンバーになったばかりの、身寄りのない、可愛らしい少女が殴り殺されたのだ。

 何の落ち度もないのに。

 しかも殴り殺したのは冒険者ギルドの中堅メンバーだ。

 間違いなく悲劇である。

 間違いなく不祥事である。

 「お…俺は何てことしちまったんだ……」

 冒険者のハンス、あらため、犯罪者のハンスは酔った赤ら顔をすっかり青ざめさせて床に突っ伏し。

 「うわぁぁぁぁぁっ!!」

 号泣した。

 自分を破滅させたことに嘆き、仲間にぬぐいがたい汚名を着せてしまったことを恥じて。

 「………」

 あまりに衝撃的な事件に誰もが驚きと絶望に苛まれ、言葉を発することができない。

 だが。


 がたたたっ!


 机の残骸と吹っ飛んだ椅子の山を崩し、かき分けながら。

 「(おのれ)()かざる者を友とするなかれ。(あやま)ちては(すなわ)(あらた)むるに(はばか)るなかれ」

 何やら難しいことわざをのたまいながら童女アスタが出てきた。

 無傷である。

 テーブルを粉々に破壊し、椅子を吹き飛ばすほどの打撃力を打ち込まれても、アスタはどこも骨折していない。それどころか、白くなめらかな肌には傷ひとつ付いていなかった。

 童女はスタスタと赤ら顔だったハンス、今は青ざめたハンスに近づき。

 「(あやま)ちを(あらた)めざる、(これ)(あやま)ちと()う。“11(にん)”を“11(とう)”と間違えるの恥ずかしいことだけれども! 今から憶えればよろしい!」

 胸を張り、どうどうと言い放つ。

 そして、もう一度。

 「はい。それでは言い換えてみましょう。オークが『11人いる!』です。はい!」

 またしてもアスタが促す。

 またしても嬉しそうに。

 「ウウウウゥゥ…」

 ハンスは涙を流しながら。

 「 オークが11人いる!」

 そう言って、童女の足下で泣き崩れた。

 「「「……」」」

 物音ひとつしない。

 周囲は言葉を失い、絶句していた。

 「これでまた世界から馬鹿がひとり減った。素晴らしい☆」

 両手を広げてアスタは慶事(けいじ)を歓迎する意思を表す。

 「お…おぉぅっ! 素晴らしい。そうだな。素晴らしいことだ。馬鹿がひとり減ったんだからな」

 赤毛のボルゲンが拍手しながら賞賛する。

 胸をなでおろして息を吐いた。

 『素晴らしい』『本当に素晴らしい』と繰り返すが、理由は『馬鹿がひとり減ったから』ではなさそうだ。

 これを合図に人々の緊張も解けて。

 「よかった! 生きててくれたわ!」

 「凄ぇ、無傷だ」

 「ナンテ頑丈ナノカシラ…」

 「ソンナ…ヒト族ノ子供ガコレホド丈夫ダトハ思ワナカッタゾ」

 「グギギギーッ! ギィーッ! ギィーギィーッ!!」

 冒険者パーティー荒鷲団の面々も喜びを口にする。

 「貴重な情報源が失われずにすんだ…これぞまさしく僥倖(ぎょうこう)でありますね」

 「文字が読めて書ける上にあんなに丈夫なんて…」

 悲劇が回避されたことに博物学者と受付嬢も喜んでいる。

『11人いる!』は名作☆

さて、「ようやく百合♀×♀展開に持っていけそうな美女&美少女が登場します」と言ったな。

ありゃ、嘘だ。

いいえ、すみません。ギリギリ嘘じゃありません。

「百合♀×♀展開に持っていけそう」なだけでそういう展開が始まるとは言っていないので(^_^;)

厄介なことに暁光帝、恋愛能力そのものがないんですよ。だから、もうしばらくかかりま…すね。おそらく。

まぁ、どっかで何とかねじ込みましょう。

さて、今回、登場したナンシーとジュリエットもなかなか趣深い女性達です。

ナンシーの方は例によって例のごとく、英語の教科書『ニューホライズン』から、Mike_Smith君の妹“Nancy_Smith”ちゃんです。

小生の初恋の女性です。

おかげさまで英語の授業のたびにワクワクしながら教科書を開いていました。

英語の勉強もはかどる、はかどる。

しかし、ある日、大変な悲劇が2人を襲います。

何と!

小生が“Nancy_Smith”ちゃんの鼻が上を向いていた、ブタっ鼻だったことに気づいてしまったのです。

何たる悲劇(>_<)

いや、小生があの頃から二次元コンプレックスだったことの証左でしかありませんがww

まぁ、小生に残っていた最後のロリ魂だったのでしょう。

あの後、小生が入れあげたロリっ子って…えーっと、『新竹取物語_1000年女王』映画版の“女王ラーレラ”…くらいかな。

かっこよかった〜

まぁ、いいのです。

ヲタクの初恋なんてこのなものです。

『我が手より生み出せし乙女、生身の女に劣るものなし』

誰が言ったのかって?

小生ですwwww

いや、これくらいの気概がなくてオタクなんてやってられますか。

で、もう1人のジュリエットですが。

同じく、中学生の頃に読み漁ったマルキ・ド・サド侯爵の作品から名著(?)『ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え』から。

今回、この『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ_〜暁光帝、降りる〜』のメイン♀キャラは小生の愛読書から引っ張り出そうかな、と思いまして。

ちなみに、この『悪徳の栄え』、エロ本だと思いこんで図書館で借りてきてさんざん読み漁ったんですが…まったくエロくありませんでした。

キリスト教の価値観、ヴィクトリア朝の厳しい倫理観、貴族の高慢ちきな形式主義をひたすら批判する内容でして、エロ描写の100倍くらいその手の批判にあふれていました。

どちらかと言うと思想書に近い…のかな。

まぁ、サド侯爵はバスチーユ監獄に叩き込まれて自由のない状態でひたすらこの手の本を書き続けていたんですから、ある意味、我々の精神的なご先祖様かもしれません(^_^;)

ご本人は少なくとも官能小説のつもりで描いていたようですし。

でも『閨房哲学』とかひどかったんですよ。

冒頭に淫虐非道の4人のいやらしい人物が登場して、「これから始まる淫蕩の宴!数多の美女美男が命を失うほどの放蕩が繰り広げられた!」なんて煽り文句から始まって、さんざんこの4人がどれだけ淫らでいやらしいか、微に入り細を穿って描写して。

思いっきり読者の期待を高めつつ…

さぁ、ヴィクトリア朝の厳格な道徳とキリスト教社会の倫理を打ちのめすような、どんな淫蕩が繰り広げられるのかと期待させて…期待させておいて……

いきなり、「おしまい」の文字が浮かび上がりました\(^o^)/

何だ、これ?

おおいっ、サド侯爵! 出て来い、この野郎!!!

ぶっちゃけ、自分、日本人なんでヴィクトリア朝の厳格な道徳理念もキリスト教社会の倫理も知りませんwww

そんなモンを延々批判されても…

ええ、なので、小生にとってサド侯爵は「フランス革命の裏でバスチーユ監獄に幽閉されて厳正な社会批判を行った、サディズム&マゾヒズム文学の開祖」ではなく、「『閨房哲学』というエロ本未満の官能小説を未完で投げ出しやがった根性なし」です。

ちなみに、当時は一緒にジークムント・フロイトの『精神分析』を一緒に愛読していましたが、こっちの方が百倍面白かったのです。

そういうわけで、このジュリエットさん、いろいろ秘密を抱えつつ、めちゃくちゃエロい女性です。

伊達に“悪徳のジュリエット”なんて名乗っていません。

ちなみにナンシー☓ジュリエットでもジュリエット☓ナンシーでもなく。

2人は友人同士ですが、百合♀×♀関係にはありません。

もちろん、2人とも女性同性愛者(レズビアン)です。だから、作中でジュリエットが食事中に吹き出してもナンシーは『汚いわね』と言わなかったわけで。

そりゃ、美女の食べかすなら…

……

………

やっぱり嫌ですね(^_^;)

いや、問題はそこではなく。

どれだけ百合♀×♀展開に持っていけるか、そこでジュリエットさんをどれだけ活躍させてあげられるか、なんですけどね〜

物語全体のプロットはすでに完成しています。

ところが、異世界冒険ファンタジーとして描いちゃったんで、恋愛要素が皆無\(^o^)/

一応、ヒロインも出しちゃったし、♀主人公“暁光帝”のキャラクターも固まってるんで、何とか百合♀×♀展開ねじ込みたいな…、と。

ご期待下さい!

しっかし、目次の注意書き『この作品には 〔ガールズラブ要素〕 が含まれています』が痛いなぁ…

この注意書き、意味ないやんwww 全然意味ないやんwwww

いや、何とかしますよ。

必ずや、エロい百合♀×♀ストーリーに☆

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