表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ_〜暁光帝、降りる〜  作者: Et_Cetera
<<歴史です。産めよ、増やせよ、地に満てよ!? ゾンビ地獄じゃぁぁ!!>>
182/197

追い詰められた幻獣達は最後の決断を下します。一方、その頃、暁光帝はワカメとミズカビの遊走子をどう分類するべきか悩んでいました。

長かった復讐譚もようやく終わり、ギヨームはイレーヌの無念(笑)と自分の恨みを晴らしました。

めでたし、めでたし\(^o^)/

そして、物語の視点はアリエノールの町の外へ。

幻獣達が困っています。

はてさてどうなってしまうのでしょう?

お楽しみください。


キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/

 ヒト族のゴール王国はペレネー領の領都アリエノールが滅びた頃、ラナス大森林も大変なことになっていた。

 人間のいなくなったアリエノールに用はないと獣化(ゾアン)屍従者(ゾンビ)が本格的に町からあふれ出したのである。

 森に入り込んだ獣化(ゾアン)屍従者(ゾンビ)は死肉を求めて奔走(ほんそう)し、生きた動物を殺して死肉に変え、それを元に増殖を始めた。

 森の動物性生物量(バイオマス)が物凄い速度で失われつつあった。

 同時に負の生命力とξ-ⅳ(グザイフォー)という特殊な魔気も増えていった。




 今日も素敵な曇天(どんてん)木漏(こも)()も差さない森をハゲ頭の吸血鬼(ヴァンパイア)ハミルトン男爵が歩いている。

 「こんにちは」

 「うゔぁぁぁ……」

 「あ〜…う〜……」

 挨拶を返してくれない、何とも寡黙(かもく)な隣人らとすれ違った。

 服装を見る限り、戦士と僧侶、おそらく冒険者だった男達だ。もっとも皮膚は変色し、肉は腐ってハエがたかっている。典型的な不死の(アンデッド)怪物(モンスター)だろう。呪われた土地などの特殊な環境下に()いて死体が(よみがえ)ることがある、そんな怪物、“生ける(リビング)死骸(デッド)”に違いない。

 「あ、そうですね。天気が悪いと色々はかどりますよね。うん、うん」

 生前は人間だったおかげか、嘘は()けなくても曖昧(あいまい)相槌(あいづち)を打つくらいはできる。

 無視はよくないし、コミュニケーションは大切なのだ。

 しかし、残念ながら。

 「え゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……」

 「おぇっ! おぇっ! おぇろろろろろろっ!!」

 元・戦士からはまともな言葉は勝ってこないばかりか、元・僧侶は盛大に嘔吐し始めてしまった。

 「…」

 男爵は呆然として立ちすくむばかりだ。

 同じ不死の(アンデッド)怪物(モンスター)吸血鬼(ヴァンパイア)だから生ける(リビング)死骸(デッド)にかじられたり、殴られたりといった危険はない。

 ないのだが、他の迷惑はこうむっているとつくづく思う。

 後、全国アンデッド地位向上連盟は根拠のない差別と偏見に会員(アンデッド)(さいな)まれていると主張するが、ここまで不潔で傍若無人(ぼうじゃくぶじん)に振る舞っていれば無理もないと思えてしまう。

 頭を抱えていたら別の不死の(アンデッド)怪物(モンスター)がやってきてくれた。

 「おや、これはこれは! 新たな同胞ですな☆ もちろん我々は歓迎しますとも♪」

 全国アンデッド地位向上連盟のペレネー支部長の墓鬼(ワイト)だ。心なしか、疲労感が漂っている。

 死人は疲れないのでおそらく精神的なものだろうが。

 「あぁー…うぅー……」

 「おぺろびぇばぁ? あふぇふぇふぇふぇ!」

 まともに返答しない生ける(リビング)死骸(デッド)達は()(かい)なうめき声を上げたり、狂人の高笑いを返してきた。

 「ええ、おっしゃる通りですね。そういうこともありましょうとも」

 腐って干からびた肉体が黄色く発光する墓鬼(ワイト)は人間から見たらおぞましく恐ろしい怪物だろうが、同胞(はらから)吸血鬼(ヴァンパイア)からは気の毒な人物にしか見えない。

 「最近、コノらなす大森林デ急激ニ不死ノ(あんでっど)怪物(もんすたー)ガ増エテイルノデス。オソラク、負ノ生命力ナドノ特殊ナ魔力場(マリキバ)ガ偏在シテイルノデハナイデショウカ」

 黒い肌が魅力的な半裸の美女、呪吸血鬼(オバイフォ)が疲れた表情で現在の状況を説明してくれた。

 差別と偏見の撤廃を掲げる連盟だから、新たな同胞(はらから)()(ごの)みするわけにはいかない。

 けれども、知能の低いと言うか、まともな思考力すらない生ける(リビング)死骸(デッド)ばかり()いてきて対応が追いつかないのだ。

 「そうですか……」

 獣化(ゾアン)屍従者(ゾンビ)の扱いさえも(いま)だに何も決まっていないと嘆いていたから大変なのだろう。

 うなずく男爵だったが、心中は複雑だ。

 連盟にも色々な意見があるらしい。

 同胞だと歓迎する声も無きにしもあらず。けれども、『屍従者(ゾンビ)は人間の奴隷だろう』、『自由意思を持たない者は不死の(アンデッド)怪物(モンスター)ではない』などの意見も根強いと聞いている。

 両者の意見がよくわかるから男爵は何も言えない。

 「いやはやなんとも」

 苦労する仲間を横目に男爵は新たな複素数の概念に考えを集中させた。

 逃避だとわかってはいるが、数学なんてもともとそんなものだとも思いながら。




****************************




 ラナス大森林の奥、淡水湖のほとりでは上位の幻獣達が集まって難しい顔をしていた。

 本日も曇天(どんてん)

 いや、別に森の空がいつも曇っているわけではない。吸血鬼(ヴァンパイア)冥精霊(ランパス)などの日光が苦手な仲間に配慮して会合の日時を決めた結果である。

 話し合いのテーマは当然、森の現状について。

 「わたくしはもう我慢なりません。今、引っ越しを検討中です」

 最初に口を開いた者は清浄を好む馬だ。

 もちろん、“馬”と言っても自然界の生物ではない。人語を解するきれい好きの幻獣だ。

 今、口を開いた天翼馬(ペーガソス)を始め、八脚馬(スレイプニル)水妖馬(ケルピー)一角獣(ユニコーン)二角獣(バイコーン)とそうそうたる面々である。

 「あー…うん、そのー…現状については我々も早急に何とかしなければいけないと考えてはいるのですが、いかんせん、諸般の事情で……」

 腐った肉体にボロをまとわせ、黄色く発光する墓鬼(ワイト)がしかめ(つら)で弁明した。

 「貴方(あなた)はそう言うが、現に何ともなっていないじゃありませんか!?」

 女好きの馬が話す。性根(しょうね)は腐っているが、(ひたい)から立派な角を()やした真っ白な馬、一角獣(ユニコーン)だ。丁寧な言葉遣(ことばづか)いにも関わらず、口調は荒い。

 「困るんですよ。普通に走っていてもぶつかりそうになる。生ける(リビング)死骸(デッド)なんぞに衝突したらどうなることやら」

 地上最速を(うた)八脚馬(スレイプニル)も不満たらたらだ。精悍(せいかん)面構(つらがま)えながらこれまた二枚目(イケメン)である。

 幻獣の馬達はいずれ劣らぬ美貌を誇る。それは人間からもモテるだろう。

 「横を通るだけで臭いわ」

 「話すと病気が伝染(うつ)っちゃいそう」

 「いるだけで不快ね」

 水精霊(ナーイアス)樹精霊(ドリュアス)ら、女精霊(ニュムペー)達からの評価も散々だ。

 「森の動物達が減っているわ。それにつれて不死の(アンデッド)怪物(モンスター)が増えている。これら2つの現象に関連があるのではないかと疑うのは当然でしょう」

 花白(かはく)仙女(せんにょ)の報告も暗い内容だった。

 「「「クゥ〜ン……」」」

 仙女の足元にたむろしている人食いオオカミ達も悲しげにうなった。日頃、食うか食われるかの殺伐(さつばつ)とした勝負の世界に生きているだけに気弱になったときの落差が(ひど)くて哀れを誘う鳴き声だ。

 「この子達も三叉樹(トリフィド)達もはもう一週間、ずっと大豆ハンバーグしか食べていません」

 植物の生育に()けた森精霊(アルセイス)が心配そうに語った。


 わさわさ〜 わさわさわさ〜〜


 こちらは三叉に分かれた根で歩く肉食植物、三叉樹(トリフィド)の群れに囲まれている。

 「ムームー!」

 「モケケケケ!」

 「ケッヒョ、ケッヒョ!」

 何を言っているかはわからないものの、魔人茸(マイコニド)毒人茸(ファンガス)ら歩くキノコ達も不満げだ。

 「う〜む、現在、人食い系の幻獣(モンスター)花白かはく仙女(せんにょ)森精霊(アルセイス)らが養っているのか…危ういな」

 水竜ガルグイユも将来に暗い影を落とす現状を案じた。

 「昨日、一日がかりで測定してみたわ。負の生命力やξ-ⅳ(グザイフォー)と言った特殊な魔気の環境が(いちじる)しく悪化しているわ」

 魔女(ウィッチ)はパピルスを示した。

 そこには森の各地で(はか)った魔気の状況と不死の(アンデッド)怪物(モンスター)の発生率が記録されていた。

 「これらのデータは花白(かはく)仙女(せんにょ)の推測を裏付けている。獣化(ゾアン)屍従者(ゾンビ)の増殖が特殊な魔力場(まりきば)を強めていることは明らかよ」

 はっきりとした口調で言い切った。

 「むぅ……」

 ハゲ頭の吸血鬼(ヴァンパイア)、ハミルトン男爵も異論は()(はさ)まない。相関係数を明示されなくても獣化(ゾアン)屍従者(ゾンビ)の活動が森の動物達が減らしていることは明らかだ。

 「このままではラナス大森林が滅びてしまいますね」

 絶望的な状況に口調も沈む。

 「それだけじゃすまんよ」

 樹木人(トレント)も重い口を開く。

 「獣化(ゾアン)屍従者(ゾンビ)の増殖には制限(リミッター)がかかっていないんじゃ。つまり、無限に増殖できる…いや、増殖するじゃろう。彼らを突き動かす命令が命令だけにそれが意味するところは1つ……」

 避けがたい未来の到来におののいている。

 獣化(ゾアン)屍従者(ゾンビ)は『人間どもを皆殺しにしろ』と命じられている。

 命令を遂行するために増殖する、増殖するために殺す、殺して増殖する、その()(かえ)しに制限(リミッター)がかかっていないのだ。

 全ての動物が死肉に変えられてしまうことだろう。

 人類絶滅だけでは終わらない。

 夢惑星エランの自然環境が激変してしまう。

 「世界の終わりじゃ」

 老木は短く簡潔に結論づけた。

 自然環境の激変がもたらす影響は人食い系の幻獣(モンスター)だけにとどまらない。

 大気中に宿る精霊の霊気も変質するから低位の幻獣も参ってしまう。最悪、食事も呼吸も必要としない上位の幻獣しか生きられない世界になってしまうだろう。

 「もはやこれまで。最後の手段を()るしかないようだ」

 ガルグイユは覚悟を決めた。

 獣化(ゾアン)屍従者(ゾンビ)は水竜ブレスでも殺せなかった。

 森で最強の自分でも倒せない奴らを処理する方法はないものか。

 「そうじゃな。お(ぬし)がダメなのじゃから他に手はないかもしれん」

 「最後の手段か…他に方法がないんじゃ仕方ないわね」

 「世界の終わりを止めるためよ。やむを得ないわ」

 「もう救えるのは……」

 樹木人(トレント)花白(かはく)仙女(せんにょ)魔女(ウィッチ)も口々に賛同していた。

 「最後の手段?」

 意味がわからず、吸血鬼(ヴァンパイア)は当惑した。

 もう世界の終わりは避けられないと思っていたが、何か手段があるのだろうか。

 すでに死んでいる獣化(ゾアン)屍従者(ゾンビ)を殺すことはできない。

 彼らは無限に増殖する。

 その口に命の息がある者を全て食い尽くして。

 死者の軍団が侵攻し、世界を滅ぼす。

 そんな未来しか()えないのに。

 ところが、水竜ガルグイユは語る。

 悲壮な面持(おもも)ちで。

 「彼女と話そう」

 たった一言、告げるのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます♪


ラナス大森林の幻獣達がとても困っています。

このままでは人類絶滅なのです\(^o^)/

あ、人類が滅亡してもドラゴンや魔女は困りませんねwww

吸血鬼や人食いオオカミは困りますがwww

でも、世界中の動物が絶滅したら好気呼吸が減って惑星規模の酸素循環と炭素循環が乱れちゃいます(>_<)

やっぱり世界の終わりですねwwww

そこで幻獣達は最後の決断を下しました。

さぁ、どうなることでしょう?

人類の絶滅は避けられるのか?

世界の危機は本当に来てしまうのか?

事ここに至って神々は何をしようとするのか?

そもそも「2以上の任意の整数は一意的に素因数分解されることが証明されなければならない」って話はどうなったのか?


さて、そういうわけで次回は『悪霊が人類の行く末を案じています。この世の終わりかな? もっとも、暁光帝はゴジアオイ先生が焼き尽くした花畑を見て唖然としているんですが。』です。

請う、ご期待!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ