戦え、ゴーストメイド! 強敵を倒して人々を守るのだ! あー、暁光帝はアリノスダマの平和を守ってますよww それなりに忙しいんですww
謹賀新年☆
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします♪
さて、我らが主人公(仮)イレーヌの命令で配下のロイヤルプレミアムゾンビが救援に来てくれました。
頼もしい亡者女中さん達のおかげで冒険者とその家族達は何とか無事に避難を開始したのです♪
このまま無事、海上に逃げられるでしょうか。
お楽しみください。
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避難民の集団はようやく港に近づいてきた。
「もうすぐだ! もう少しこの通りを進めば埠頭にたどり着くぞ!」
ギルドマスターは希望を込めて前方を見つめていた。
ここを抜ければ海と空の境、水平線が見えると皆、喜んでいる。
周りは獣化屍従者だらけだが、亡者女中らの撹乱障壁を抜けて人間を見つけることはできず、ただ、うろついているだけだった。
問題はなく、あっさり港へ着きそうだ。
しかし、不気味な地響きが大地を震わせたのである。
ズシン! ズシン!
「こ、これは!?」
「まさか!?」
ギルドマスターとサブマスターがあわてた。
視界を遮る建物の背後から巨大な影がゆっくりと現れる。
それは3階建ての宿屋よりも遥かに大きな巨人。
「パオォーン!」
長大な鼻と牙を持つ怪物、大牙象化屍従者だった。
「まずいぞ! 背が高すぎる!」
「あれじゃ、こっちの様子が丸見えよ!」
冒険者達が口々に騒いだ。
ゾウ兵士の頭があまりにも高い位置にあるので視界が広がり、亡者女中の撹乱障壁越しに人間達が見えてしまう。
「えぇっ、ここまで来てバレちまうのか?」
ギルドマスターが絶望の表情を浮かべる。
「いや、でも…アンタら、亡者女中さん達が頑張ればあいつだって倒せるんだろ? ロイヤルでプレミアムなゾンビは猛獣兵士よりも強いって聞いてるぞ」
何やかや言ってサブマスターは亡者女中を信頼している。
しかし、ベルナデットの表情は硬い。
「勝てるけど陣形が崩れるから他の獣化屍従者にこっちが人間の集団だと気づかれちゃうかも……」
ひときわ戦闘能力の高いベルナデットでも大牙象化屍従者を無力化させるのは骨が折れる。相手の攻撃を躱しながら足を砕いてやらねばならない。
エロイーズと2人だけでは厳しく他の亡者女中の手を借りることになるから、魔気信号の撹乱もおぼつかなくなってしまうだろう。
「えっ、そりゃ、まずいんじゃないか? 女子供もいるんだぞ! 他の猛獣兵士どもに見つかったらかばいきれない!」
サブマスターが青ざめた。
集団には冒険者だけでなく、その家族もいる。戦えない母親や老人、子供もいるのだ。
獣化屍従者どもに襲われたらひとたまりもないだろう。
「畜生! こうなったらもう破れかぶれだ!」
「やめとけ!」
「死ぬのはアンタだけじゃないのよ!」
血気に逸った冒険者が剣を抜こうとして周囲から止められた。
「畜生、きついな……」
思わず、ベルナデットは女中らしからぬ悪態をついてしまった。
状況は先ほどよりもさらにまずい。
恐怖に駆られて飛び出した子供一人を助けておしまいではなく、大勢の怪物どもの目から住民達を隠しつつ、大牙象化屍従者を倒さねばならない。
仲間の亡者女中と数人がかりでやれば確実に巨像を仕留められるが、住民達にも被害が出るだろう。そうなると何人を犠牲にするかという話になってしまう。
亡者女中は強いが、ここにいる人間達を1人も傷つけずに守り通すのは至難の業だ。
「このままでは犠牲が出るぞ!」
「どうするんだ!?」
ギルドマスターとサブマスターはあわてるばかりで対処できそうにない。
「私の魔気容量が120gdrでエリーが58gdrだろう? ヤツの肉体の比熱を0.8程度と仮定すれば2人がかりで冷氷の礫を撃ち続けても……」
「大牙象化屍従者に魔法を抵抗されなくても足の芯まで凍らせるにはどうしたって時間がかかるわ」
ベルナデットが試算してみるがエロイーズは不安げだ。
およそ人間の170倍とも言われるゾウ兵士の巨躯を凍てつかせるには手間がかかりすぎ、その間、敵が動かないでいてくれる保証はない。
亡者女中達でも打つ手がなさそうだ。
皆が手をこまねいていると怨霊が口を開く。
「では、わたくしが」
一言だけ言ってサロメが足を踏み出す。いや、幽霊女中は宙に浮いているので足を動かしてはいないが。
「サロメさん……」
「お一人で…ですか?」
「1人で十分」
思わず息を呑む亡者女中達を尻目に幽霊女中はスゥーッと浮いていく。
「だ、大丈夫なのか? 名の知れたツワモノってわけじゃないぞ」
「サロメは薬草の採取くらいしかやってないだろ?」
「イレーヌの側仕えだと言ってもなぁ……」
ギルドマスター達は不安げだ。
幽霊女中サロメも冒険者登録しているが、やはり幻獣討伐の実績はない。幽霊は他の幻獣に襲われないので戦う機会がないのである。
その戦闘能力は未知数だが、今は幽霊女中に頼るしかない。
「「「……」」」
人々は息を呑んでサロメを見つめていた。
周囲を取り囲む猛獣兵士どもは宙を行く幽霊に関心を示さない。
凶暴な怪物どもの間を臆することなく進み、幽霊女中はゾウ兵士の前に立った。
やはり、ゾウの巨人も目の前の美女に目を向けない。ただ、3階建ての宿屋よりも高い背丈から見下ろして亡者女中達の撹乱障壁に隠された人々を探そうと目を凝らしている。
「……」
サロメは右手を挙げると手のひらを開いてゾウ兵士に向け。
「ハッ!」
一瞬で浮き上がらせた瞬間魔法陣に魔力を込めて気合一閃、精霊魔法を発現させた。
やはり呪文を唱えない。
それでも手のひらと怪物の足首に生じた魔力場が現実の時空間を歪めて強烈な電荷を帯びさせる。たちまち、彼我の間に高い電位差が発生、次の瞬間、大気絶縁が破壊された。
バリバリバリ! ドンガラピッシャァーン!
電気抵抗が失せた大気の通り道を膨大な電子雪崩が走る。
凄まじいイオン臭が鼻をつき、轟音が耳をつんざく。
それは本物の雷だった。
水平に走る稲妻は光速に近い速さで飛び、ゾウ兵士の左足を貫いた。
熱電流が死肉を焼き、更に集まる。
だが、自由電子は一箇所に溜まっていられない。
桁違いの静電気的クーロン力が反発し、肉と皮の内側から静電気爆発を引き起こす。
ドッシャーン!
巨象の足が内側から弾けた。
「ププァォォォーン!?」
怪物は悲鳴を上げて倒れた。表面的な傷こそ見当たらないものの、左足が破壊されて力が入らない。
本来ならば物凄い苦痛を感じるのだろうが、ゾウ兵士は屍従者だ。
痛みを感じない。
痛みは感じないが、左足が使い物にならなくなったこととその被害を引き起こした者が目の前の麗人であることは理解した。
サロメは恐れることも驚くこともなくスッと右手を下げてただジッとゾウ兵士を見つめる。
周囲の獣化屍従者は何が起きたのかわかっているのだが反応しない。仲間がやられたというのに反撃どころか、警戒さえもしないのだ。
それは彼らが屍従者だからだった。
主から下された命令は『世界中の人間を皆殺しにしろ』であって幽霊は対象外なのである。
そして、電撃で打ちのめされた当のゾウ兵士はと言うと。
「逃げ出してる?」
口を開けて呆然とするギルドマスターが見つめていた。
「何で?」
同じく呆然としたサブマスターが疑問を口にした。
2人が見た光景は信じがたい。
人間の兵士など小指で一捻りにしそうなゾウ兵士が両手で躄って通りを離れようとしているのだ。
「獣化屍従者もゾンビだからね。身の危険を感じてゾンビ工学の第3原則『第1と第2原則に反しない限り、屍従者は自分の身を守らなければならない』に従って逃亡を選択したのよ」
ベルナデットが解説してくれた。
「雷の精霊魔法…あんな強力なのを撃てるとは思わなかったわ。さすがは怨霊、冒険者ギルドの幻獣格付けランク3番手の梅だわ……」
エロイーズも驚いている。
「サロメさんってそんなに凄かったのか……」
「透き通ってるだけの美人かと思ってたわ」
「“怨霊”って幽霊系じゃ上から2番目でしょ? 強いわけだわ」
「呪文も唱えないし、魔術杖も持ってないのに希少な雷の精霊魔法を放てるなんて!」
「さすがは上位の幻獣だな!」
冒険者達も口々に褒め称えた。
これで港へ行けると家族達も喜んでいる。
凶暴なゾウ兵士はみっともなく躄りながら臨港道路を逃げているし、他の猛獣兵士はこちらに気づいていない。
「仲間がやられたってのに…こいつら、軍隊じゃないのか?」
ギルドマスターはますます呆れた。
サロメが脅威だとわかったのなら集団で反撃し、敵を倒すべきだろうに獣化屍従者どもは全く反応しなかった。
まるで全く知らない誰かが全く知らない誰かに攻撃されたかのようだ。
「獣化屍従者に仲間意識なんてないわ。ただ、命じられたことを忠実に実行するだけの普及型屍従者だもの」
ベルナデットはこともなげに言った。
王室御用達屍従者たる自分達と一緒にしてくれるなと言外ににじませながら。
「そういうものなんですね……」
唖然としつつ、サブマスターはつぶやいた。
とりあえず、脅威は取り除かれたのだ。
人々は亡者女中達に守られて安全に臨港道路を通り、港の船着き場へ到着したのだった。
こうして冒険者達とその家族は適当な商船を接収し、沖に出る目途が立つのであった。
「後ほど食料と水を運びます」
サロメは人々を送り出した。
「アンタが頑張ってくれれば町を捨てなくても済むんだ! 頼む! アンタならルール違反にならないだろ!?」
最後までサブマスターにすがられたが。
「先ほどはやむを得ず戦いましたが、わたくしは同胞に対して手を上げたいとは思いません」
スッパリ断った。
これに対してサブマスターは納得せず。
「そんなに素気ない態度を取るのならこっちにも考えがある! 町を滅ぼした猛獣兵士どもがアンタの主の作ったゾアンゾンビだと言いふらすぞ!」
額に青筋を立てて激高してみせた。
けれども、幽霊女中は一歩も退かぬ。
「あらあら、わたくし達に代わって商品の宣伝をしてくださるのかしら?」
にっこり微笑んで。
「黴びない、臭わない、腐らない♪ アナタの暮らしに素敵なゾンビを♪ 安全で平和な生活は裏切らないゾンビが支えちゃう♪ 幸せを見つめる職人、墓場のイレーヌが提供します♪」
そのまま笑顔でコマーシャルソングを歌ってみせた。
さすがは幽霊、図太い。
「畜生! こんなに話の通じない奴らだとは思わなかった!」
サブマスターは拳を握りしめて悪態をつくしかなかった。
すると後ろから肩を叩かれる。
「君、助けてもらっておいて不満を言うものではないぞ」
ギルドマスターだった。
背後に多くの冒険者達もいてサブマスターに厳しい目を向けている。
「……」
サブマスターは押し黙った。
言いたいことはわかる。
助けてもらった恩義がある以上、こちらは口をつぐむべきだ。
“義理”という奴である。
だが、交渉の論理で負けても感情がついてこないのだ。
町を滅ぼそうとしているゾアンゾンビの所有者であり、全ての人間を殺すよう命じたのは確かにシャルル・ロシュフォールだ。しかし、製造者は他でもない、墓場のイレーヌではないか。
ならば、責任もイレーヌが取るべきだとの気持ち、感情がある。
しかし、側仕えのサロメでさえも説得できず、逆に反論されてしまった。
こんなことでは主のイレーヌを説得するなど夢のまた夢。
そもそも感情に訴えたところで幻獣と交渉できるわけがない。
彼らは人間とは全く異なる価値観で動く者達だ。
情は通じず、理あるのみ。
もはや諦めざるを得ない。
「わかり…ました……」
どれだけ人間に友好的であっても屍導師は自分達を助けてはくれない。
いや、こちらの都合で動いてはくれない。
人間なら常識の、義理も人情も通じないのだ。
そのことを理解したサブマスターはがっくり肩を落としてうなだれたのだった。
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まだ、日は昇ったばかり。
十分に時間があるだろう。
サロメは水平線を背に宣言する。
「これよりわたくし達は残された住民達の避難を支援します」
大勢の亡者女中達が気楽に聞いている。
「「「はーい☆」」」
返事も元気。
全員が墓場のイレーヌ謹製の王室御用達屍従者だ。戦力としても不死の怪物としても優秀で獣化屍従者と戦闘になる虞はまったくない。
個性的なので一列に並んで歩くようなことはないが、サロメを先頭に怪物どもがあふれる通りを堂々と歩いていく。
哀れな住民も亡者女中に見つけられさえすれば救出されることだろう。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
こちらの予約投稿の予定日は2024年01月01日、すなわち元旦。
そういうわけで元旦のご挨拶を前書きに記させていただいた次第でございます。
今年もよろしゅうに〜〜
ようやく幽霊女中サロメの活躍を描けました。
この辺りの展開は入院中に心臓リハビリテーションで循環器疾患病棟を散歩しているときに思いつきましたぉwww
当初は魔王竜サタンが暁光帝に挑む話だったんで人間タイプのキャラクターは1人も出てこなかったんですが……暁光帝が魔王竜をあっという間にやっつけてしまうんで全編30行くらいで終わっちゃうんですよねwwww
「あ、これ、ダメだ」と気づき、あ〜でもないこ〜でもないやって現在のプロットに落ち着きました(^_^;)
サロメ、強いのです。
はい、ステータスオープン!!
種族:怨霊
名前:サロメ
職業:アンデッドメイド
身長(m): 1.82
体重(kg): 86
偏差: 1.08
(・人・)形状: 爆乳ロケット型
魔力最大値(gdr): 8800
魔力回復量(gdr/s): 4300
回復時間(s): 2.05
腕力: 4.8
速度[比]: 4.86
速度[m/s]: 33.99
"速度(km/時)": 122.37
魔法属性:氷、雷、闇、防御結界、夢幻、邪
<<怨霊サロメ:Salomé>>
一人称:わたくし
身長1.82m,体重86kgの爆乳ロケット型の怨霊である。
銀髪にオレンジ色の瞳、以前はボロボロの経帷子を着ていたが、イレーヌに仕えてからはメイド服を着るようになった。
とある廃屋を棲家にして幽霊屋敷を営んでいた。
かつて、強い恨みを抱いて死んだ乙女が化けて出た。怨敵を恨み、呪い、祟って殺した。
殺した後も成仏せず、自宅を幽霊屋敷に仕立て上げて暮らしていたのであるが。
ある日、幽霊屋敷を訪ねた死霊術師イレーヌに「貴女の未練を晴らしてあげる」と誘われて従者となった。
イレーヌの屋敷で助手をしている。
幽霊らしく、移動はイオノクラフトの原理で大気をイオン化させて飛ぶ。その際、「ひゅ〜どろどろどろ〜」と異音が発生する。複数の人魂を舞わせていて、強力な魔法を使う。
A級のアンデッドモンスターである怨霊だから、魔気容量も多い。
全身が半物質で構成されているので壁やドアをすり抜けるし、そのままの状態では物をつかむこともできない。物質に干渉するためには自己を構成する半物質を調整しなければならず、普段は光学物性のみに対応している。また、光学物性を解除すると目が見えなくなるので、透明になる場合でも最低限、眼球の部分は解除できない。そのおかげで幽霊でありながら、常人にも姿が見える。
氷、雷、闇の精霊魔法と防御結界魔法、夢幻魔法、邪魔法が使える。
夢幻魔法による幻は自己表現としても有用で、邪魔法によってアンデッドモンスターを回復できる。
イレーヌについて強い想いを抱いていて、アンデッド化した後は触れられるようになって未練を晴らした。
…というわけで怪力を振るい、強力な魔法を連発できます。何より魔気容量の8800ゲーデルはでかい。エロイーズの100倍以上ありますね(^_^;)
でも、どんなに強くても他の幻獣とは戦えません。
同じ幻獣ですからね。
こんな状況だからバトルったわけで(^_^;)
当然、たとえ相手が人食いオオカミであろうとも殺すような真似はできませんにょ。
人間に友好的な幽霊ではありますが、人間の味方ではないのでwww
ギヨームが人食いオオカミに襲われていたら話し合いで解決しますぉwww
どうしたって怨霊サロメは幻獣ですから(^_^;)
さて、そういうわけで次回は『お城に迫る危機! 領主は決断できるのか!? あ、暁光帝は襲い来るグンタイアリにおののいています。博物学者は観察対象に干渉できないんですよ。』です。
請う、ご期待!




