避難民救出作戦! 襲い来るゾンビの群れから人々を守れ! ちなみに暁光帝はセクロピアの幹で暮らすアステカアリの戦いを見守っています♪
ゾアンゾンビの群れに追い詰められる人々に希望の光が差しました。
我らが主人公(仮)墓場のイレーヌが強力なロイヤルプレミアムゾンビの女中さん達を送り込んでくれたのです。
それまで正体を隠していた冒険者ギルドの受付嬢エロイーズも実はイレーヌ配下のゾンビでした。
女丈夫は群がるゾアンゾンビをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、三面六臂の大活躍を魅せます。
頼もしい女中さん達の救援で冒険者たちも俄然やる気が出てきました。
果たして住民達はこのピンチを乗り切れるのでしょうか。
お楽しみください。
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港に続く通りを大勢の住民達が歩いていた。
周囲は獣化屍従者だらけだが、襲ってくる気配はない。
住民達は恐怖に顔を引きつらせていた。とりわけ、子供が酷く、親に手を引かれながら必死で歯を食いしばり、泣き声をこらえていた。
「アンタらがいれば本当に襲ってこないんだな……」
ギルドマスターは恐る恐る幽霊女中サロメに語りかけた。
「わたくしや王室御用達屍従者が魔力場で囲えばこのくらいの集団は隠せますよ」
先頭を行く幽霊女中は何でもないことのように説明した。
実際、冒険ではない。
同じ不死の怪物である女中達は獣化屍従者に襲われないし、気を張れば魔気力線で100人を越える住民を隠しおおせる。
もっとも、それだけでは少しだけ物足りないが。
「クヮァー!」
空から鷲化屍従者が襲ってきた。
「りゃぁっ!」
ベルナデットが冷氷の礫で撃ち落とす。
呪文を唱えないから発動が早い氷の精霊魔法だ。命中精度も威力も申し分なく、ワシ兵士は凍らされて墜落、地面に激突するとともに凍った翼が砕けて飛べなくなった。
「まぁ、地上を歩いている奴らの目はごまかせるけどね。空から見られると感づかれちゃうのは仕方ないわ」
エロイーズが肩をすくめた。
魔力場で撹乱して人間の気配を隠している。しかし、あくまでも地上の敵の視界に入らないようにすることが精一杯であり、空中からだと丸わかりなのだ。
「うわぁぁぁっ!! もう嫌だ! 怖いよぉー!」
恐怖に駆られた子供が飛び出してしまった。
オオカミやライオン、猛獣の頭を持つ屈強な怪物は大人の予想以上に恐ろしい。感受性の豊かな子供が恐怖に我を忘れるのも無理なかった。
「大変だ! あんな子供、襲われたらひとたまりもないぞ!」
「何で親は手をつないでいないんだ!?」
「あの坊やは親を亡くしてるから見てくれる大人がいなかったのよ!」
人々が口々に騒ぐ。
「じゃあ、アタシが助けに行くよ!」
「俺もだ! あの子の親は親友だったんだ!」
「やめろ! 奴らの数を見るんだ! 女中さん達の輪を抜けたらそこから奴らが押し寄せてくる!」
「みんな、殺されちまうぞ!」
「じゃあ、あの子を見殺しにしろってのかよ!?」
男気あふれる冒険者が剣の柄に手をかけたものの、周囲が押し止めた。
無理もない。
亡者女中達が張っている魔気信号の撹乱障壁は周りの獣化屍従者どもの視界を遮る程度の高さしかないのだ。
冒険者達が強引に障壁を抜けたらその穴からこちらが丸見えになって怪物どもが殺到してくるだろう。
「エリー! ベルン! 行って! 穴はわたくしが埋めます!」
「「承知!」」
サロメに命じられ、エロイーズとベルナデットが集団から離れて子供を追った。
2人の抜けた穴は幽霊女中が1人で埋めた。さすがはイレーヌ直属の側仕えだけあって余裕である。
飛び出した2人だが獣化屍従者は反応しない。同じ不死の怪物だから完全に無視されている。
だが、子供は別だ。
たちまち、素早いネズミ兵士達に囲まれてしまった。
「キキィー!」
「キィー!」
怪物どもが子供に迫る。
「うひゃぁぁぁっ!」
素早い子供だったが、ネズミの変化した兵士には及ばない。
鋭い牙が剥き出しの首筋を狙っている。
絶体絶命である。
これから見るに耐えない光景が繰り広げられるのだろうか。
「南無三!」
思わず、サブマスターは目を閉じてしまった。
だが、王室御用達屍従者は更に高性能である。
「つぁぁっ!」
気合一閃、ベルナデットがネズミ兵士どもを足を凍らせた。
ヒト族の成人男性が肩までしかないほどの大柄な体格の女丈夫だ。その怪力は凄まじい。しかも拳に鋼鉄製ナックルダスターを着けている。
そのまま速度を緩めずに駆け寄り。
ガッ! バキィッ!
拳打で敵の足を粉砕する。
「キィッ!?」
「キキィー!」
同じ不死の怪物に攻撃されてネズミ兵士どもは当惑した。
だが、地に立つための足がないのだ。もう歩けない。
「任せて!」
エロイーズは子供に駆け寄ってすでに発動させていた浮遊魔法陣に魔力を通す。そして、自分ごと発現した魔法障壁で押し包んだ。
「キー?」
「キキー?」
子供を襲おうと迫っていたネズミ兵士どもは目に見えない壁にぶつかって吹っ飛んだ。
しかし、目には見えなくても幻獣は魔気力線が見える。突如、そこに現れた障壁に当惑することなく離れていった。
それはあからさまな敵対行動を取ったベルナデットに対しても同様だった。
ベルナデットは拳を下げて魔法陣を閉じたのだ。
それだけで敵意が失せたと判断したネズミ兵士どもは興味を失い、離れていく。
「何で……」
エロイーズの腕の中で子供が驚いていた。
「防御結界魔法は人間に固有の魔気信号パターンを隠せるわ。これで奴らは君の姿を見失ったのよ」
亡者女中はかんたんに解説してやる。
獣化屍従者は人間が憎いから襲いかかってくるわけではない。
主であるシャルル・ロシュフォールの命令が『人間どもを皆殺しにしろ』だったからそれに従っているだけである。
それ故、見失った子供に執着するようなことはない。
標的に指定された人間を見失った時点で戦闘行為がキャンセルされたのだ。
「そして、ゾンビは過去を問わない。今、脅威でなくなったベルンに興味を失ったのよ」
怪物どもの行動は全て刺激に対する反応という“刺激反応説”で説明付けられる。
ベルナデットへの反撃はゾンビ工学の第3原則『第1と第2原則に反しない限り、屍従者は自分の身を守らなければならない』に則った反応に過ぎない。警戒対象が戦う姿勢をやめれば脅威とは見なされなくなり、獣化屍従者どもは皆、ベルナデットへの関心を失ったのだ。
「アイツラ、みんな馬鹿なんだ……」
子供はようやく自分に襲いかかってきた怪物の正体に気づいたようである。
「そうよ。馬鹿におびえるのはもっと馬鹿でしょう? みんなのとこに戻りましょ。女中さん達が守ってくれるわ」
エロイーズは魔法障壁を張ったまま、子供と一緒に集団に戻った。
ベルナデットも同じく。
獣化屍従者どもに襲われないから気楽なものだ。
「獣化屍従者は海上に出られません。それは空を飛ぶ鷲化屍従者であっても、です。だから、港で船に乗れたら助かることでしょう」
サロメはこともなげに語った。
自信満々と言うよりも当たり前のことを当たり前に語っている感じだ。
「ありがとう、サロメさん。さすがは屍導師の女中さんだ」
ギルドマスターは大いに感激している。
それはそうだろう。
人間を殺すことしか頭にない、凶暴な獣化屍従者どもに周囲を囲まれているのだ。
そんな脅威からイレーヌの女中達が完璧に守ってくれている。
若干の穴のようなものもなくはない。
悪意の視線から隠してくれているが、空からの視線は隠しきれていないから先ほどのように鷲化屍従者が襲いかかってくるのだ。
人間は真上からの攻撃に対応しづらい。熟練の冒険者すらも手こずる相手だ。
けれども、それさえ亡者女中はたやすく処理してくれるのだからありがたい。
ギルドマスターが感激するのも当然である。
だが、納得しない者もいる。
「それにしてもくわしいですな。まるで、敵の能力を初めから知っているかのような。もしや、イレーヌさんは……」
サブマスターは頭の切れる男だ。それでギルドマスターを補佐してきたのだが、今回も色々気づいたらしい。
少し意地の悪い口調で幽霊女中に話しかけた。
しかし、サロメは全く動じない。
「何やら気づかれたようですが、無駄ですよ。マスターには関係ありません。約束は絶対なのですから」
暗に『余計なことに気づいても意味はないぞ』とほのめかした。
約束は絶対に違えない。
それは獣化屍従者の製作者が誰であっても、だ。
そして、『屍導師イレーヌは自衛以外の目的で市壁の内部で戦闘行為を行ってはならない』、これはサブマスター自身が光明教団と決めて押し付けてきたルールだ。
このルールに縛られている以上、イレーヌ自身が自分の商品と戦うことはできない。
「いや、しかし! 製造者には造り出した商品に対する責任があるでしょう!」
「いいえ、ありませんよ。売った物は買い手の自由。その代わり、売り手には何の責任もないはず」
必死ですがりつくサブマスターをサロメはにべもなく拒んだ。
「もしも、強盗が市民を傷つけたら、強盗に剣を売った鍛冶屋の責任を追求するのですか? 違うでしょう?」
整然と論理を駆使して要求をはねつけた。
「うぐぅ……」
サブマスターは長身の幽霊女中の迫力にうめいて黙るしかない。
人間社会は複雑で理不尽な要求を突き付けられることもしばしばある。
しかし、そんなものを飲むか、飲まないか、それは個人の判断によるのだ。
それこそ脅してきたり、すかしてきたり、理屈をこねてきたり、時には情に訴えてきたり、相手は様々な手段を執るが、“責任”や“義務”は安易に受け入れていいものではない。
人間社会で暮らす幻獣としてサロメはそんな要求を跳ね返す精神性もしっかり備えているのである。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
祝☆ 初戦闘シーン♪
ようやくアリエノール住民達に希望の光が見えてきました。
頼もしいゾンビメイドさん達のおかげで会場へ脱出できそうですね(^o^)
小生が“女中”または“メイド”の単語を初めて見たのは『名探偵シャーロック・ホームズの冒険』または『怪盗紳士アルセーヌ・ルパン』でした。
おそらく『ホームズ』の方が先。
“お手伝いさん”の訳語が使わていたこともあったような(^_^;)
作中に出てくる“メイド”は2通りで一方は若いメイドで若いから失敗してルパンにしてやられたり、犯人に騙される役です。もう一方は経験を積んだおばさん、もしくはお婆さんでだいたいふてぶてしくて殺しても死なないような人物です(^_^;)
そして、日本の漫画にも登場するようになったのは……おそらく、『うる星やつら』の面堂家に勤める女中さん達ですね。
あのときはすでに“メイド”という単語が用いられていましたっけ。
面堂終太郎が「面堂家のメイドだ」と明言していましたからね。
もちろん、映画『メアリーポピンズ』などでも紹介されていましたから、それ以前は“女中”と“メイド”の訳語が混在していたように思います。
裕福な友人の家を訪れたら「メイドさんがお茶を入れてくれる」と言われてワクワクしたのを憶えています。
実際、けっこうなおばちゃんで「なるほど、これがベテランのメイドか」と感心したものです。
だから、小生の中で「メイド=お金持ちの家のお手伝いさん」というイメージが強烈に根付いていまして。
秋葉原に“メイド喫茶”なるものができた時、目を白黒させました(^_^;)
その後の漫画やアニメには“戦うメイドさん”ってパターンが増えてこれまた「なるほど!」と思いましたっけ。
でも、どうにもこうにもハイカラな単語というイメージが強くて、こちら『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』では“女中”という単語にふりがなの“メイド”を付ける表記に統一しました。
まぁ、要は“お手伝いさん”ですしね(^_^;)
そういうわけで今回は“戦うメイドさん”こと、ベルナデットとエロイーズが大活躍☆
強襲型ロイヤルプレミアムゾンビのベルナデットは鋼鉄製ナックルダスターを得物に戦います。
用語で悩むのはこちらも常でして“ナックルダスター”よりも“メリケンサック”の方が通りが良いかな…とも(^_^;)
時代的には“セスタス”と表現する方がよかったかも?
素早く動いて敵陣の薄いところを強引にこじ開ける戦い方を好みます。
もう1人のエロイーズは純粋な戦闘能力ではベルナデットには及びませんが、その分、器用で様々な戦況に対応できます。
防御結界魔法で仲間を守ったり、邪魔法でゾンビの修復が行えるので重宝されていますね。
ちなみにゾアンゾンビは最弱のラットゾンビでも腕力がヒト成人男性の2割増しくらいですので人間相手にはかなり強いんですよ。
そして、オオカミやライオンはぞれよりもずっと強い。
…とは言え、ロイヤルプレミアムゾンビはエロイーズですら腕力がヒト成人男性の2.7倍ですから圧倒的です♪
それでも同じイレーヌ製品なので必要以上に傷つけることは避けていますし、彼女達が主体になって戦ってくれることはありません(^_^;)
ところで、本日、2023年12月25日、この後書きをしたためていたら疲れたので久々に昔のゲームでもとPlayStation3を起動させて『ドラゴンズドグマ・ダークアリズン』をプレイしました。
小生の記憶の中ではさんざん『ドラゴンズドグマ』無印をプレイしてさらに購入したソフトウェアだったので適当に遊んで積みゲーにしていたんですが、久々にプレイしてみたら主人公レベル85www
そう言えばクリアするのがもったいなくて延々1人のキャラを育てまくっていたんでしたっけ。
攻略情報を全く見ないでプレイしていたのでやたら無駄の多いキャラに育ってましたが…まぁ、これはこれで。
でも、なんか毒気を抜かれてしまったので普通にPlayStation5のゲームやりましょ(^_^;)
やはり小生の作品はゲームや小説やアニメの影響を受けまくっていますね。
来年の3月に出るという『ドラゴンズドグマ2』が楽しみでなりません♪
さて、そういうわけで次回は『戦え、ゴーストメイド! 強敵を倒して人々を守るのだ! あー、暁光帝はアリノスダマの平和を守ってますよww それなりに忙しいんですww』です。
請う、ご期待!




