住民を救え! アリエノールの命運はイレーヌの双肩にかかっている!…まぁ、それはそれとして暁光帝はセンジュナマコを探しているんですけどね。
あふれかえるゾアンゾンビの襲来に英雄の街アリエノールはてんてこ舞い。
大変なことになってしまいました。
事態を収集すべくようやく重い腰を上げた領主ミシェル・ロシュフォール辺境伯はかつて自分が謀殺した乙女がアンデッドモンスターとして蘇ったリッチー“墓場のイレーヌ”の屋敷を訪れます。
そして、真摯に謝罪して街の救済を頼んだのですが!
「中止命令とか、そもそも技術的に無理」「もう殺されたから領民じゃないので町を助ける義務とかない」「ゾアンゾンビの侵略はおまいの息子の遺言だろう」などなど反論されて領主はこてんぱんにやられてしまいましたwww
えっ、ただの言葉だろうって?
いいんですよ、イレーヌからすれば十分に溜飲が下がったんですし(^_^;)
次はアリエノールにはびこるゾアンゾンビにどう対抗するのか、です。
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
軍事パレードから一夜が明けてアリエノールの町は大変な騒ぎになっていた。
バリケードを突破した獣化屍従者が広場からあふれ出してあちらこちらで人間を襲っていたのだ。
人間、そう、人間である。
人種は問わない。
ヒト、獣人、妖精人、闇妖精人、小人、童人、巨人、蜥蜴人、半魚人、豚人、犬人の別なく、獣化屍従者は襲いかかった。
荒事が苦手な商人や職人はまともに抵抗できずにやられてしまうか、逃げ出すか、そのどちらかだった。
ヒト型種と非ヒト型種の違いも関係ない。
もしも、町にいたら蟻甲人にさえ襲いかかっていたことだろう。
唯一の対抗手段は火だったが、自分の町に火を放つことはさすがにはばかられ、人々は悲鳴を上げて逃げ惑うばかりだった。
冒険者や傭兵、そして、兵士は懸命に戦ったが、いかんせん、数の差で押し負けてしまう。
何しろ、獣化屍従者は自己調整できる動く死体なのだ。多少、傷つけられても勝手に自分を修復してしまう。
なかなか数が減らない。
しかも、やられた人間が獣化屍従者に変化してしまう。
数が減るどころか、増えてしまっているのだ。
通りはあふれかえる怪物で埋め尽くされ、必死の努力も虚しく人々は徐々に押されつつあった。
昼頃、冒険者ギルドは大勢の避難民であふれていた。緊急事態ということで冒険者とその家族達が逃げ込んできたのだ。
通りを埋め尽くした獣化屍従者が建物の正面に陣取っていて逃げられそうもない。
裏通りもすでに怪物がうろついている。今までの経緯から考えて家族連れで逃げるのは非常に難しい。
「たぁー!」
「ていっ!」
「うぉぉぉっ!」
「⊿Q=mC⊿T…火炎の礫!」
建物の正面で冒険者達が戦っている。
やはり、薙刀や鉾槍などの長柄武器が目立つ。前衛を務める戦士達はこれらの得物で爪や牙が届かない距離から怪物の足を狙う。
とどめは炎の精霊魔法だ。動けなくなった怪物を燃やして蘇れないよう始末している。
もっとも、冒険者は人間だから疲労と魔力切れで苦しんでもいる。
そんな中、1人の乙女が獅子奮迅の大活躍を見せていた。
他の者らと違い、長柄武器ではなく短刀の二刀流で戦っている。そのせいで怪物に咬みつかれ、引っ掻かれるのだが、全く気にする様子がない。
「エリー、また咬まれたぞ!」
「ギルドの受付嬢だからだいじょうぶ!」
ベテランの戦士から注意されるも女丈夫は全く疲れも見せずに短刀を振るい、今もネズミ兵士の足を斬り飛ばした。
「キキィー!」
化け物は悲鳴を上げて倒れ、立ち上がってこない。
さしもの怪物も斬り落とされた足はすぐに生えてこないようで、なすすべなく地面に這いつくばっている。
「いやいや、言うに事欠いて“ギルドの受付嬢”とは……」
「冒険者ギルドの受付嬢ってあんなに強くないと務まらないものなのかね?」
疲労困憊でうずくまった冒険者達が当惑している。
実際、エロイーズの装いはボロボロで見えている肌も切り裂かれたり、咬みつかれたりで酷い状態だ。
それなのに苦痛の表情1つ見せずに戦い続けている。
「キィーッ!」
「くっ!」
受付嬢は右腕を鼠化屍従者に咬みつかれた。
「キキィ……」
怪物は離さない。
動きを止めてこのまま他の猛獣兵士に咬み殺させるつもりだ。
しかし、受付嬢はあわてず騒がず。
「無駄!」
右腕を咬みつかせたまま。
「グヮァー!」
襲いかかってきた狼化屍従者にその腕を向ける。そして、新たな敵の牙に咬みついているネズミ兵士の身体を差し出した。
ガブリ! ゴキィッ!
それも首である。
「ヂュー!!」
喉笛を咬み裂かれてさしもの獣化屍従者も悲鳴を上げた。呼吸こそしないが、頚椎を砕かれて頭が胴体にかろうじてつながっている状態だ。
「ていっ!」
その隙を見逃すエロイーズではない。逆手に持った短刀を素早く薙いでネズミ兵士の首を切断した。
ドウッ!
頭と泣き別れになったネズミ兵士の胴体が投げ出される。
すかさず、体を反転させて勢いをそのままに、仕掛けてきたオオカミ兵士に向かって跳んだ。
ズバァッ!
両方の短刀で左右の足首を斬り飛ばした。
すっくと立つ。
さすがに咬みついていたネズミの頭が力を失い、右腕から落ちた。
「次よ」
残った怪物どもに向かい、手招きしてみせる。
さすがの女丈夫、これだけの活躍を見せても息切れ一つしない。
朝からぶっ続けで戦っているのはもはやエロイーズだけだ。
「よく息が続くものだ…ありがたい!」
「今ので手首が折れただろうに……」
「いくら何でも無茶がすぎるわ! そろそろ血が足りなくなるはずよ!」
称賛する声と心配する声が交錯していた。
そんなとき、突如、遠くから声が聞こえてきた。
「王室御用達屍従者エロイーズ、ご主人様から制限解除の許可が出たわ! 思う存分にやりなさい!」
それは通りの向こうから叫んだ幽霊女中だった。
「サロメだと?」
「イレーヌんとこの?」
「“ゾンビ・エロイーズ”って…うちの受付嬢は死人だったのか!?」
驚いた冒険者達が口々に騒いだ。
そんな連中を尻目に受付嬢は短刀を捨てると。
「承知!」
応えて、バッと両手を左右に広げる。
「えっ、無手で?」
「得物を手放してどうする!?」
驚く冒険者達を尻目にエロイーズは突き出した両手に魔力を込めると背後の空中に浮遊魔法陣が現れた。
「凍れ!」
氷の精霊魔法“冷氷の礫”を発現させる。
ドシュゥッ!
氷の弾丸が左右から迫るオオカミ兵士達の足を凍りつかせた。そして、そのまま足首を砕いた。
「キャイン!」
「キャンキャン!」
いくら屍従者でも足を失っては歩けない。怪物どもは情けない叫びを上げながら倒れ伏した。
「何と!? 呪文なしで魔法を発動させたぞ!」
「ギルドの受付嬢が人間じゃなかったとは……」
女丈夫の活躍に冒険者達は目を白黒させた。
呪文を詠唱せずに魔法を使える人間はいない。ヒトに限らず、妖精人や茸人のような魔法を得意とする人種でも不可能なのだ。
それができるのは人外の者のみ。
女精霊や人魚は魔法を使うために呪文を唱えない。
吸血鬼も同様だ。
同じ不死の怪物である屍従者も呪文なしで魔法を使えるのだろう。
「そういや、俺がガキの頃から美人だったからもうかれこれ20年くらい美人やってるなぁ」
「そりゃ、ゾンビは歳を取らないから…って、気づけよ、お前!」
容姿の衰えない美女に驚く冒険者達だが、それだけの年月を美しいままでいることに気づかないほど鈍感なのだろうか。
いや、鈍感だから気づかなかったのだろうが。
それだけ屍従者エロイーズが受付嬢として冒険者ギルドに溶け込んでいた証左とも言える。
「ハァッ!!」
制限を解除したエロイーズは強力な魔法を放ちまくって押し寄せる獣化屍従者を次々に倒してゆく。
これだけ魔法を行使しても魔力切れを起こす気配がない。
「つくづく人間じゃないんだなぁ……」
「さすがは幻獣ね」
「魔力の回復速度が人間とは段違いなんだろうよ」
「凄いぞ! がんばれ!」
「アンタは最高だ!」
感心しながら冒険者達は受付嬢エロイーズを口々に称賛した。
幻獣は人間の敵だと思われがちなのだが、普段からそれに対処する、当の冒険者からすると必ずしもそうではない。人間に対して中立の樹木人や処女に限定されるが友好的な一角獣などもいるのだ。
ましてや、今の今までギルドの受付嬢として親しまれてきた乙女なのだから、正体がゾンビだとしても厭う理由にはならないのである。
通りの怪物どもがあらかた行動不能にさせられると幽霊女中がやってきた。
「黴びない、臭わない、腐らない♪ アナタの暮らしに素敵なゾンビを♪ 安全で平和な生活は裏切らないゾンビが支えちゃう♪ 幸せを見つめる職人、墓場のイレーヌが提供します♪」
コマーシャルソングを歌いながらクルリ回転して宮廷風お辞儀を決めた。
「皆さん、ご安心ください。ご主人様が安全と安心を提供いたします」
にっこり笑ってみせた。
その後ろにはたくさんの亡者女中らがズラリと並ぶ。
「「「墓場のイレーヌを今後ともご贔屓に」」」
怪物に囲まれたこの状況でも不安の影すら見せず、一斉にお辞儀をしてみせたのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
冒険者ギルドを守る女丈夫エロイーズの登場です(^o^)
金髪巨乳の冒険者ギルド受付嬢がとんでもなく強いのはもう定番ですからね。
そういうわけで、はい、ステータスオープン!!
種族:王室御用達ゾンビ
名前:エロイーズ
職業:アンデッドメイド
身長(m):1.58
体重(kg):54
偏差:1.04
(・人・)形状:巨乳ボール型
魔力最大値(gdr):58
魔力回復量(gdr/s):28
回復時間(s):2.07
腕力:2.7
速度[比]:4.35
速度[m/s]:30.45
"速度(km/時)":109.62
魔法属性:氷、闇、防御結界、邪
<<王室御用達ゾンビ:エロイーズ Éloïse>>
愛称はエリー。身長1.58mの体重54kgで金髪巨乳の美女である。
墓場のイレーヌから命じられて冒険者ギルドに勤める受付嬢で、ベルナデット同様、独自の思考が可能。法人格としてのアリエノール冒険者ギルドに雇われているが主人はイレーヌである。冒険者ギルドが存続する限り、忠実に職務をこなす受付嬢だ。普段はギルドの受付嬢なのでいかつい冒険者相手に立ち回りを演じることも。
氷と闇の精霊魔法と邪魔法、及び防御結界魔法を得意とする、万能型で仲間の修復と遠戦、遅延戦闘に活躍する。
金髪で巨乳の美女でギルドの受付嬢を長く勤めている。
身長は普通よりちょい低めで体重はベルナデットのちょうど半分。腕力もかなり劣りますが、スピードはほぼ互角。
それでも成人男性の2.7倍の腕力がありますから、冒険者ギルドの受付嬢としては十分ですね(^o^)
魔法の属性はベルナデットと比べて強化&弱化魔法がない代わりに防御結界魔法と邪魔法が使えます。
邪魔法は呪いなども使えますが、アンデッドモンスターの修復、つまり、実質的に体力回復魔法が使えちゃいます。
つまり、作中で傷を負うシーンがありますが、自力で直せちゃうわけです。
まぁ、“治す”んじゃなくて“直す”のはご愛嬌。
また、敵の攻撃から味方を守る防御結界魔法も使えるのでゾンビメイドとしては有能な万能型ですね。
愛用の得物はダガー二刀流で素早く動いて隙を見てはヒット&アウェイ戦法をこなす…と、膨大な魔気容量を頼りに敵集団に強襲を仕掛けるベルナデットとは対照的なのです。
それでも押し寄せるゾアンゾンビを相手に三面六臂の大活躍☆
ことごとく叩きのめして地面に這わせました。
頼もしい冒険者ギルドの受付嬢です♪
さて、そういうわけで次回は『避難民救出作戦! 襲い来るゾンビの群れから人々を守れ! ちなみに暁光帝はセクロピアの幹で暮らすアステカアリの戦いを見守っています♪』です。
請う、ご期待!




