大ピンチ! 人類が絶滅しちゃう!? 暁光帝は漸減するヨーロッパライオンの方が気になるんですが、それは……
何ということでしょう!?
準主役のシャルル・ロシュフォールが死んでしまいました(>_<)
その上、死ぬ間際にとんでもない命令を下してしまったのです。
それは……
「人間を殺せ! 皆殺しだ! 世界中の人間どもを皆殺しにしろぉぉぉっ!」
……と、やたら景気よい命令を下しちゃいましたwwww
人類、大ピンチ!!
どうなる? どうする? 主人公(仮)イレーヌ!?
いや、ダブル主人公(仮)なのでもう1人、ハゲ頭の吸血鬼ハミルトン男爵もいるんですがねwwww
男爵はラナス大森林の深奥で友人のドラゴンや美貌の魔女と数学や天文学の研究に勤しんでいますwwwww
やたら文化的だな\(^o^)/
町で暮らしている人間達よりもよっぽど平和で文化的な生活を享受しているモンスターって………
まぁ、いいのです。
人間の暮らしはダイナミック!
刺激も破滅もてんこ盛り\(^o^)/
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
普段よりも騒がしい通りを色白の女中が歩く。美人だが、背が高く、ふつうのヒト族の成人男性が肩くらいまでしかない。
耳を澄まさなくても聞こえてくる話は広場の騒乱で持ちきりだ。
「軍事パレードに化け物が出たんだ!」
「見上げるようなゾウの巨人が兵隊さん達をやっつけてたわ!」
「そいつぁ、猛獣兵士だ!」
「キノコの化け物がいたよ!」
「キノコは胞子を撒き散らして仲間を増やしていたんだ!」
「アルマン様がやられちまったぞ!」
「シャルル様もだ! ロシュフォール家はもうおしまいだ!」
「領主様の家が滅びちまったらアリエノールはどうなるのかしら?」
人々は広場の状況についてああだこうだと話している。
皆、不安そうで町の未来を案じているらしい。
「然り」
女中は密かに賛同した。聞き及んだ広場の惨状を鑑みるに町の未来には暗雲が立ち込めている。
「軍隊が全滅したらもう冒険者ギルドに頼るしかないよ!」
「兵隊さんでも勝てない猛獣兵士を相手に大丈夫なのかい?」
「うちの冒険者ギルドには超特級の冒険者がいるんだぞ!」
「超特級冒険者は小指1本で大軍を蹴散らしちまうらしい」
「そうね。超特級のヒトがいるんなら何とかなりそうよね」
怪物の大量発生におののく声、町の行く末を案じる声、冒険者ギルドに期待する声、皆、好き勝手にやいのやいの騒いでいる。
「ふむ、あのお方はヒトを辞めちゃったんだけどね……」
噂の超特級の冒険者についてはくわしい女中である。なるほど、活躍してもらえればアリエノールの町が直面する危機にも対処できることだろう。
だが、その超特級冒険者が幻獣討伐の依頼を一切受けず、素材の採集しかしていないことは知られていないようだ。
「期待通りになるといいわね……」
誰に聞かせるでもなくつぶやいた。
そのまま、冒険者ギルドのスイングドアを開けて進んだ。
すぐさま受付嬢が対応してくれた。
冒険者ギルド定番の金髪で白色人種の巨乳美女である。
「いらっしゃいませ、ベルナデット様。本日は依頼達成のご報告でしょうか、それともご依頼でしょうか?」
“エロイーズ”と書かれた名札が突き出した胸乳の上で自己主張している。
「こんにちは、エリー。いいえ。本日はご主人様から言伝を持ってきたのよ」
大柄な女中は愛称で親しげに接しながら用向きを伝えた。
今日は色々と大変そうだ。
冒険者ギルドの中庭は訓練場にもなっていて広い。
そこは蜂の巣をつついたような大騒ぎだった。
「今回の集団暴走はアンデッドモンスターらしいわ」
「聖水がいる! 在庫はあるか?」
「貴重品ね。1瓶、金貨3枚もらうわ」
「いくら何でも高すぎる! 足元を見てんじゃねぇぞ!」
「町の危機なの! 少しは融通してよ!」
「神職はタダ働きしないの。貝貨1枚、負けられないわ」
「気にすんな! 行こうぜ!」
「俺達の剣の冴えを見せてやる!」
屈強な戦士、立派な魔術杖を携えた魔導師、抜け目のなさそうな僧侶、目つきの鋭い斥候など様々な冒険者が準備している。
「いいか、お前ら! 町の危機だ! 特別報奨金を出すからな! 全力で頑張れ!」
「敵は新種のアンデッドモンスターだ! でも、お前らならできる! 兵士とは違う、冒険者の戦い方を見せてやれ!」
「「「うぉぉぉぉー!!」」」
冒険者ギルドのギルドマスターとサブマスターが声を張り上げ、鼓舞すると、冒険者達が一斉に気勢を上げた。
そして、冒険者らしくてんでんばらばらに走っていく。戦士の得物は薙刀や鉾槍が多い。
「はぁ…なるほど。事態は思っていた以上に進行しているようですね」
女中は少し感心した。
“猛獣兵士”こと獣化屍従者は死人だから殺せない。動けなくするくらいしかできないのだからそうすべきだろう。それなら、離れた位置から足を斬りつける長柄武器が有効なはず。
「まぁ、中ればの話ですがね」
冒険者達の努力については懐疑的だ。
「ギルドマスターにサブマスター、こんにちは。町外れの墓場から来ました」
背筋をピンと伸ばし、冷静ながらも不吉な挨拶をする。
『墓場から来た』とはどういうことなのだろうか。
しかし、2人のギルド幹部は驚かない。
「ベルナデットか。今、大変なんだが」
「おぉっ、ベルナデット! もしかしてお前さんのご主人様に依頼できないか! 大変なんだ!」
ギルドマスターは面倒くさそうな顔をし、サブマスターは希望が見えたと喜んで、2人は対照的な反応を見せた。
女中のベルナデットは屍導師イレーヌに仕えている。
墓場の隣の屋敷から来たので、この挨拶は不吉でも何でもないのだ。
「広場の騒ぎについては聞き及んでおります。わたくしほどではありませんが、手強い不死の怪物ですね」
ベルナデットは涼しい顔で状況を評価する。屍導師の配下らしく、当然のように屍従者である。
もっとも、並の屍従者とは格が違う。
流暢に人語を話し、他人ときちんと受け答えできていることからもそれが伺える。
「むぅ…そうか。あんたなら猛獣兵士にも勝てるのか。だったら……」
言いかけたギルドマスターを押し留め。
「わたくしは王室御用達屍従者です。“猛獣兵士”のごとき安物と一緒にされたくありませんわ。もっとも、ご主人様のご命令がない以上、戦えませんけど」
苦笑いを見せた。
「畜生! やっぱりイレーヌ次第か!」
「イレーヌが依頼を受けてさえくれればすぐにでも解決できるんだがな」
2人は文句を言いながらすがるような目で亡者女中を見つめた。
栗色のセミロングヘアーを肩へ流す、人形のように美しい乙女だ。肌の血色もいいし、唇も艶やか。到底、死んでいるとは思えない。そして、見上げるほどの高身長。並の男など片手で張り飛ばしてしまうだろう。
けれども、これこそがロイヤルプレミアムゾンビなのだ。
アンデッドモンスターの思考を司る器官“死の花”を内蔵し、主に命令されなくても独自の行動が可能な、独立したゾンビである。
その上、体内にある魔石から魔力を引き出して強力な精霊魔法を連発できるという、普通の量産型ゾンビとは比較にならない代物だ。
「ご主人様からの言伝です」
ベルナデットは冷静に口を開く。
「『広場の騒ぎについては承知している。冒険者がどれだけ優秀でどれだけ知恵を絞ろうとも数で押し負けるからすぐさま撤退すべし。住民の避難を優先することを推奨す』とのことです」
動揺することなくはっきり言い切った。
この通告に2人は目を白黒させてしまう。
「いや、この町の冒険者ってかき集めれば凄い人数になるぞ。おおよそ5千人くらいかな…数だけなら領主様の兵隊よりも多い。みんなで力を合わせれば……」
「“猛獣兵士”は倒されれば倒された分だけ増えます。5千人が1万人でも勝ち目はありませんよ」
亡者女中はギルドマスターの状況分析を冷たく否定した。
“猛獣兵士”の出自について説明はしない。『主が造った新型ゾンビだ』などと言ったところで何もできないことに変わりはないのだ。
「そ…そんな……」
心的衝撃が大きい。目を見開き、ギルドマスターは青ざめた。
亡者女中も主の屍導師も幻獣だ。人間に友好的だという点で非常に稀ではあるが、幻獣なのだ。
正真正銘の正直者である。つまり、その言葉に嘘いつわりはない。
ベルナデットとその主が『どんなに頑張っても冒険者は負ける』と言った以上、そうなる可能性が非常に高いのだ。
「そんな…このままじゃ、アリエノールが滅んでしまう……」
絶望に苛まれ、ギルドマスターは膝を屈し、床に手をつけてしまった。
「じゃあ、イレーヌとアンタらアンデッドモンスターが冒険者の代わりに戦ってくれないか」
サブマスターはまたしても期待の目で亡者女中を見つめた。
「それは市壁内への幻獣の派兵実績を作ることになるから禁止されていますよ。皆さんの決めた決まりじゃありませんか」
ベルナデットは呆れたように要請を拒んだ。
「あぁぁぁぁぁっ!!」
これを聞いてサブマスターは頭を抱えるしかない。
『町中で屍導師が商売するなんて危うい』とか、光の神の教会から苦情が来て10数年前にそんな決まりを作ってイレーヌに飲んでもらったのだ。
『屍導師イレーヌは自衛以外の目的で市壁の内部で戦闘行為を行ってはならない』、と。
ご丁寧に契約書まで交わしてしまった。
「で、でも…集団暴走は非常事態だから……」
サブマスターは食い下がった。
けれども。
「約束は絶対です」
亡者女中はにべもなく拒んだ。
人間に使役されるゾンビもまた幻獣である。ましてや、ベルナデットのマスターは屍導師イレーヌだ。
幻獣は嘘を吐かない。
幻獣は嘘が吐けない。
だから、交わした約束は絶対に守る。
例外は唯一、約束を守ることが現実に不可能な状況が起きたときだけだ。
しかし、今はそうではない。
ルール通りにイレーヌから見放されると町が滅びてしまうだけなのだ。
それは町にとっての不都合であって死女には関係ない。
いや、商品の買い手を失うのだから多少は不都合があるかもしれないが、そのような状況に陥っても死女は甘んじて受け入れるはず。
イレーヌは約束通り何もしないのだろう。
幽霊女中の言う通り、幻獣にとって約束は絶対なのだ。
一度交わしたら違えることはしない。
「うぅぅぅ……」
サブマスターはうなった。
しかし、光の神の教会からやいのやいのうるさく言われて新たに決まりを作り、屍導師と契約書まで交わしたのは他ならぬサブマスター自身である。
どうすることもできない。
だが、どこかに抜け道があるのではないか。必死で思考を巡らせてみた。
「いや、まだ1つだけ手がある! 前の契約を破棄するんだ! そうだ、再契約をお願いしたい!」
良いことを思いついた。
不都合な約束なら交わし直せばいい。思ったよりもかんたんなことだ。
ところが。
「契約の変更には応じられません。前回の契約には光明教団の幹部3人も関わっていたじゃありませんか。その方々を呼んで賛同を得なければなりませんよ。時間がないでしょう」
亡者女中は肩をすくめてやれやれと言わんばかり。
「あ……」
サブマスターは絶句した。
確かにあのとき、口うるさい宗教幹部が3人も関わって署名している。
前の契約を破棄するには署名した全員の同意が必要だ。ギルドマスターとイレーヌ本人はともかく、光明教団の幹部3人が3人とも臆病者だ。あいつらは同意するしない以前に逃げ出してしまって、もう町にはいない可能性が高い。
前の契約を破棄できなければ死女は再契約してくれない。
八方塞がりだ。
「では」
一礼して亡者女中はきびすを返した。
言伝は伝えた。
それを判断材料に何をどうするのか、判断は冒険者ギルドの仕事であってベルナデットが口を出すべきことではないと考えている。
『みんなで仲良く暮らす』、それはことほど左様に難しいのか。
いや、実際、難しいのだろう。
亡者女中は絶望する2人にかけてやれる言葉が見つからず、黙って冒険者ギルドを後にするのだった。
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冒険者達がたどり着いたとき、広場は悲鳴と血しぶきにあふれていた。
「斬れ! 斬るんだ! 急げ!」
「ダメよ! 槍が心臓を突いてもこいつら死なないわ!」
「げぇっ!? もうこんなところに!?」
「トラが速すぎる!」
「火炎の礫…ダメだわ! 味方が邪魔で撃てない!」
「お前ら、チョロチョロすんな! 射線からどけ!」
「ンなこと言ってもコイツラが速すぎるんだ!」
兵士達は懸命に戦っていた。
ヒトばかりではない。巨人や小人もいる。
しかし、前衛を担う戦士達の防具は見栄えばかり立派で、頑丈さに欠け、装飾過多のせいで巧く動けていない。
わずかながら妖精人や闇妖精人の魔導師がいて魔法も飛び交っている。
おかげで一部では敵を押し返すことに成功していた。
しかし、部隊と部隊がぶつかり合う前線では混戦になり、敵味方が入り乱れるようになってしまう。そうなると敵が素早くて魔法による援護はやりづらい。
また、獣化屍従者は野獣らしく素早く戦場を縦横無尽に駆け巡り、味方の魔導師が精霊魔法の照準を合わせづらい。巧いこと合わせられたとしても味方が射線上にいたり、撃つのがためらわれる状況だ。
「兵隊さん達が苦戦してんぞ」
「そりゃ、幻獣が相手だからな!」
「アタシ達はいつも通りやるよ! 先ず、斥候が引き寄せて!」
「おぅっ!」
童人が味方を襲おうとする獣化屍従者の部隊に近づく。
そして、投石機の礫を投げつけて注意を引くと素早くこちらに逃げ戻ってきた。
それを誘われたオオカミの猛獣兵士どもはうなりながら集団で駆けてくる。
だが、それは囮だ。
「うぉぉぉっ! こっちだ、化け物!」
突進してくる敵を大盾を構えた戦士達が大声で引きつける。
「「「ワォォォン!」」」
オオカミ兵士どもも負けじと吠えて迫る。
ズッドォーン!!
勢いよく突っ込んできた怪物どもは大盾に衝突した!
それでも。
「「「むぅん!」」」
戦士達は全身の力を込めて持ちこたえた。あらかじめ自分に強化魔法をかけて肉体を頑丈にしていたのだ。
「「「キャン!?」」」
オオカミ兵士どもは大盾に弾かれて吹っ飛んだ。
だが、ダメージはない。
もう一度、怪物どもが無策で突っ込んできてくれるという保証もない。
けれども、これでいいとリーダーはニヤリと笑った。この状況そのものが狙い通りなのだ。
「今よ、撃って!」
「「「火炎の礫!」」」
魔導師達が一斉に炎の精霊魔法を放った。
味方の大盾に衝突して転がされたオオカミ兵士どもが躱せるわけがない。
前衛の戦士達は敵を転がすとともに伏せて射線から外れている。
「キャンキャン!」
「ギャオン!」
「クィィィン!」
オオカミ兵士どもは悲鳴を上げて燃やされた。精霊魔法の炎は転げまわろうと水をかけようと消えないのだ。
怪物どもは消えない炎によって焼き尽くされ、骨と灰になっていった。
いくらゾンビと言えどもこうなってしまえば復活できない。
「行ける! 行けるぞ!」
「これで猛獣兵士どもをやっつけられるわ!」
冒険者達は大いに喜んだ。
魔法の炎で焼いて火葬に付す、敵対的なアンデッドモンスターへの対応としては教科書通りと言えるくらい基本に忠実だ。
やはり、餅は餅屋なのだろう。幻獣の討伐は冒険者の方が対人戦に特化した兵士よりも巧い。
冒険者達は少人数のパーティーを組み、それぞれが猛獣兵士の小集団をおびき出して罠にかけ、炎の精霊魔法や油の罠で焼き尽くしていった。
しかし、何もかも順調というわけにはいかない。
苦戦する兵士達を尻目に猛獣兵士を巧みに狩っていた冒険者達だったが、そんな状況も徐々に変化していった。
「くわぁぁぁっ!」
倒された冒険者の1人が立ち上がったのだ。その顔はワシに、その腕は翼に変化していた。
「うわぁっ!?」
「こいつはいけねぇ!」
「くわばら、くわばら!」
空から襲ってくる鷲化屍従者には手練の冒険者と言えども対応できない。
また、犀化屍従者や大牙象化屍従者にはそもそも歯が立たない。
徐々に飛行する怪物や巨大な怪物の割合が増えてきている。
今は数の有利があるものの、果たして人類はどこまでやれるのだろうか。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
今回はロシュフォール家の物語、彼らの内情でした。
愚兄アルマンを追い詰めた妹弟、天才令嬢ルイーズと賢弟シャルルです。
シャルルはアルマンを苛立たせ続けるくらいに賢く、ルイーズはアルマンを絶望させるくらい天才でした。
いや、そのまま絶望してりゃよかったんですが、ルイーズは怠け者で出世欲もありませんでした。
もし、ルイーズが後継者争いに本格的に参入していたら兄弟はあっさり退いていたはずなんですが。
それくらい優秀なのです。
でも、優秀な奴は努力しない?
ルイーズは地位にも名誉にも関心がなく、しつこく請われたら仕方ないとしぶしぶ働くくらいの怠け者でした\(^o^)/
天才はサボり、凡夫は努力する、それで世の中はバランスが捕れているのかもしれません(^_^;)
そんなこんなで兄弟は歪んでしまい、バカ親父ミシェルは家庭も領地も見えていませんでした。
しかし、事ここに至ってはミシェルも目を背け続けることはできませんでした。
自らが出陣してことに当たろうとしたのです。
どうなることやら(^_^;)
さて、そういうわけで次回は『「増える♪増えるゾンビ♪ 回る♪回るゾンビ♪ 走る♪走るゾンビ♪ 歌う♪歌うゾンビ♪ 輝く光♪(光) 強い力♪(力) みんな、みんなゾンビ♪ ゾンビのマァク♪」歌ってみると気分のいい暁光帝です☆』です。
請う、ご期待!




