猛獣兵士はどこから来たの? 暁光帝だってアイツラの出自が気になるのかもしれません(^_^;)
ペレネー領の領主候補の選別イベントが始まりました\(^o^)/
もちろん、魔力測定装置で一番、魔力値の大きい奴が優勝です☆
もちろん、主人公(仮)のイレーヌは魔力測定装置をぶっ壊して優勝するのです☆
嘘です。
それは大賢者を決める大会ですねww
今回はペレネー領主というエライ人を決めるので魔力測定では決められません(^_^;)
なので平和的な軍事パレードで決めます♪
エライ人になる候補者だから当然、人望もあるはず。
人望とはすなわち連れ歩く手下の人数で決まる!!!
決まるのかな?
愚兄は自分の財力と情報力で挑み、賢弟は人脈と誠意で挑みます。
ン十年前にイレーヌを謀殺したバカ親父は公平で平等な審査方法だと思いこんでいます。
はてさてどうなることやら……
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
町外れの墓場に隣接する屋敷、その地下室にはとんでもない大きさの水晶玉が設えられていた。何しろ、巨大な真球が天井まで届かんばかりにそびえているのだ。
ちなみに天井はあまり高くない。掃除しやすくするためである。
水晶の真球は町の広間や通りを映していて、今現在の軍事パレードの様子が手に取るようにわかる。
しかも大迫力だ。
猛獣兵士の叫びが再生されて狭い地下室に轟くと2人の美女は思わず耳をふさいだ。
「少し音量、下げませんか?」
「そ、そうね…妖女サイベルに用意してもらって遠くから運んできた水晶玉だけど、破格の大きさだけあって音も破格だわ」
幽霊女中サロメに咎められて屍導師イレーヌは指の動きだけで水晶玉を操作し、音量を適切な大きさにまで下げた。
「数が足りないところを巧くごまかしましたね〜」
呆れたように語るサロメ。
実際、納期に間に合わせるにはどうしても屍従者の原材料となる死体が足りなかった。
もはや、自分が“原材料”を作り出すしかないと覚悟したほどだ。
しかし、幸いなことにそのような悲劇を引き起こす事態からは免れ得た。
不良在庫になっていたゴブリンの死体を鼠化屍従者に仕立て上げることに成功したからだ。オオカミのような猛獣兵士の後に続いていた、ネズミのような兵士のことである。
「ヒトの死体だけだと200体あまりで残りは腕やら足やら部品ばかり。獣化屍従者の技術がなければあれだけの数を間に合わせるのは不可能だった…我ながら頑張ったものだわ」
本当に大変だったと死女がため息を吐いた。
ヒトや獣人、エルフやドワーフなど、墓場に埋葬されていた死体と倉庫に山積みにしておいたゴブリンの死体、それらに加えて通常の屍従者製作で余って出た人体の廃棄物が役立ってくれた。
「ね、捨てなくてよかったでしょう?」
微笑みながら言う。
美貌の屍導師は研究と生産を除けば億劫がることが多い。実際、面倒臭がって廃棄物を処分せずに氷室に転がしておいたので今回、利用できたのである。
「災い転じて福となす。本当にお疲れ様でした」
サロメは素直に主をねぎらった。
実際、顧客からの要求は無茶苦茶だったのだ。
『見栄えのいい強力な屍従者を少なくとも300体は用意してほしい』、シャルル・ロシュフォールの要求はとんでもなかった。
隣の墓場で弔われた無縁仏だけではとても足りない。
そこで“獣化屍従者”という構想が役立ったのである。
「人間の死体と他の生物の死体を死肉として切り分け、邪魔法で合成して異形の屍従者に仕立て上げる、過去に類例のない新規軸を採用なさったのですわ。さすがはご主人様、天才です。でも……」
主を持ち上げた後。
「ショウジョウバエとヒトを合成した出来損ないが飛び立てずに床をブンブンうなりながらのたくっていた時は死にたくなりましたよ。いえ、もう死んでますけど……」
疲れた表情で遠くを見つめた。
本当にきつい作業だった。
一週間、飲まず食わず、寝ずの徹夜仕事だったのである。幽霊と屍導師でなければ倒れていただろう。
「ふふん。私、稀代の天才ですから」
イレーヌは大いに胸を張った。驚異の爆乳がぶるんぶるん揺れる。
麗しの死女は天才だが、少し頭のネジがぶっ飛んでいるのだ。いや、人間ならば疲労困憊して倒れるほどの作業量だった。
追い詰められて意識が少し飛んでいたのである。
「あの迫力を見てよ。遠くダヴァノハウ暗黒大陸まで連絡してゾウの死体を運んでもらったかいがあったわ」
巨大な大牙象化屍従者が咆哮する迫力の映像を眺めて悦に入っていた。
「でもね、獣化屍従者は見かけだけじゃないのよ。製法以外にも斬新な売りがあるんだから」
ますます反り返る死女。爆乳の方が天井を向いてしまいそうな勢いだ。
「最後までこだわっていた、あの茸化屍従者ですか?」
何か特別な能力を仕込んだのだろうと当たりをつけ、サロメは呆れたように話した。
たくましいオオカミの猛獣兵、狼化屍従者に紛れて一体だけ、頭がキノコの奴がいたのだ。それこそが茸化屍従者。納品の直前まで調整に調整を重ねた、珠玉の逸品である。
「確かにあれは特別製だけどね。ご贈答用の高級屍従者ほども手間はかかってないの。他の奴ら全部にも少し劣るけど似たような特殊能力は与えてあるわ」
製品には何の問題もないと言わんばかりにうそぶいた。
イレーヌは死霊術師であると同時に商人である。製造した商品には責任を持つ。
もちろん、顧客に降ろした製品には十全の安全対策を施してあるから心配ない。
もしも、万が一、製品によって顧客が傷つけられるようなことがあったら、それは屍従者でなくただの生ける死骸ということになってしまう。
死霊術師の手で生み出された屍従者は主人に忠実であり、命令に逆らうことはありえない。超自然現象の気まぐれで勝手に生まれた野良の生ける死骸とはそこが決定的に違うのだ。
「でも、軍で試験運用もしてもらえなかった新製品ですよ。思いがけない動作をするかも……」
幽霊女中は運用実績がないことを案じた。
「心配ない。心配ない。初期設定するところまでしっかり私がついていたんだから」
死女はこれまた自信満々だった。
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物語の時間は少し遡る。
獣化屍従者の納期は軍事パレードの前日だった。
不死の怪物らしく、月夜の晩に墓場で受け渡したかったが、あいにく大柄なタイプが多くて目立ちすぎる。
仕方ないので大牙象化屍従者も立って歩ける、天井が高く面積が広い第二地下格納庫を受け渡しの場所に決めたのだった。
目の前には二足歩行の猛獣達がズラリ並んでいる。
「全て、ご注文の仕様を満たしております。見た目のインパクトと性能、そして、驚くべき生産性を併せ持つ、自慢の新製品ですわ」
言葉通り、自信満々で胸を張る屍導師イレーヌだった。
「おぉっ! 何と……」
“素晴らしい”以外の褒め言葉が思い浮かばず、シャルルは自分の語彙力を恥じ入るほかない。
「うむ!」
力強くうなずいた。
依頼した相手、屍導師イレーヌの手腕は予想以上に素晴らしかった。
兄、アルマンはヒト兵士ばかり集めている。これなら間違いなく軍事パレードでこちらの部隊を印象付けられることだろう。
無能な兄に勝てるのだ。
「大変満足しました。ありがとう。今後ともよろしくお願いします」
「どういたしまして。こちらこそ今後ともご贔屓に」
シャルルとイレーヌは握手して無事に取り引きを完了させた。
「それでは獣化屍従者達の主人をシャルル様として登録しました。以後は魔気信号の固有パターンを認識して貴方の命令だけに従います」
死女は屍従者の所有権と管理権限を委譲して。
「初期設定を行いましょう。例の文言を」
決まり文句を言うように促した。
「うむ。それでは……」
シャルルは深く息を吸い込んだ。
これから無敵の部隊を指揮するのだ。これまでにない、圧倒的な武力を持ち、死を恐れない、最強の兵士達を。
「第1原則、『屍従者は主に危害を加えてはならない』。第2原則、『第1原則に反しない限り、屍従者は主の命令に従わなければならない』。第3原則、『第1と第2原則に反しない限り、屍従者は自分の身を守らなければならない』、これらの原則を何よりも優先せよ。以上、僕、シャルル・ロシュフォールが命ずる」
指揮棒を掲げて厳かに宣言した。
これらの原則を守らせれば反乱される虞がなくなる。将来の武勲が約束されたようなものだ。
「「「「ハイ、ゴ主人様!」」」」
獣化屍従者達は間髪入れずに応えた。
これで初期設定は終了だ。
今、無敵の部隊がシャルルのものになったのである。
感慨にふけっていると背後から死女に尋ねられた。
「ところで、繰り返しになりますが確認を。明日の観兵式で実戦に投入されるなんてことは……」
よほど不安らしい。イレーヌは形の良い睫毛を震わせていた。
「ハーッハッハッハッ!! いやいや、冒険者ギルドのモンスター格付けランクで一番手の梅に分類される屍導師が何を恐れているのですか?」
あまりにもおかしくて自然と大笑いしてしまう。
このランクの幻獣は冒険者の討伐対象から外れてしまうほどに強い。それこそ多獣海魔や渦潮魔女に比肩しうるほどの、生ける災害だ。
実際、かつて異国の冒険者ギルドが屍導師の退治を試みたものの、失敗。事態を憂慮した王が差し向けた軍も壊滅し、ついには国家そのものが滅びたことが歴史書に記されている。
本来、屍導師の発生はその存在が確認された時点で遷都の可能性すらも検討すべき重大な事案なのだ。
だから、もしも、人語を解する敵対的でない屍導師がいたら値千金だ。ましてや、その怪物が友好的で有用な商行為まで営んでくれるなどまさしく奇蹟の幸運である。
そのありがたみを理解しないから父や兄は愚か者なのだと思ったし、自分は理解しているからこそイレーヌに頭を下げて取り引きを乞い願った。
そして、目の前の猛獣軍団はその結果なのである。
「ご安心ください。観兵式などしょせんはただの軍事パレードですよ。万が一にも戦いになんてなりません。血の一滴も流れないことをこの僕が保証いたしましょう」
どんな乙女でも恋に落ちてしまいそうな、さわやかな笑みを浮かべながらシャルルは両手を広げてのたまった。
「そうですか。よかった。獣化屍従者は新製品なので不安が残る。実戦に投入する場合はもう少し手間をかけたいのです」
どんなにいい男でも気持ちが揺らぐことのないイレーヌだったが、ここまで好意を表されると悪い気はしない。にっこり笑って心配を打ち消した。
「「ハーッハッハッハッ!!」
2人で笑いながら商売の成功を称え合った。
これで取引は万事つつがなく完了した。
明日の軍事パレードは平和に、盛況に、楽しく終わることだろう。
シャルルは笑顔になり、誰もが幸せになれる、最高の式典になるのだ。
「それでは…商品の品質には万全を期しておりますが、万が一、商品に不具合が生じていた場合、またはご注文と異なる場合はお届け後7日以内にご連絡ください」
死女は大きな取引の最後に告げる定型文を口にして手を振った。
「明日をお楽しみに」
青年も手を振り、去ってゆく。
その後ろに強力な猛獣軍団を引き連れて。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
今回はシャルルの裏事情とイレーヌの仕事っぷりを紹介しましたぉ☆
シャルル・ロシュフォール、追放モノの追放する側にはあるまじき人格者ですwww
イケメンで敬虔な光明神教徒で人望があって部下から慕われていて、才能があるにも関わらず努力家で自分の能力を高めることにやむことのない、まぁ、完璧人間ですね。
能力だけでなく人格識見も立派\(^o^)/
でも、実は妹に負けます(^_^;)
まだ登場してないけどメチャクチャ優秀な妹がいて兄アルマンも弟シャルルも妹の方を死んだ魚のような目で見ています(^_^;)
何しろ、ほとんど努力もせずに兄2人がようやくできるようになることをささってやってしまう、でも、出しゃばらない、兄を立てる、ある意味、完璧な妹ですwww
でも、今回の出世競争には参加していませんwww
理由:責任を負いたくないから\(^o^)/
能力は高いけれど地位や名誉を欲しがらない、若いのに達観している妹ですねwww
こんな妹がいるから兄弟は歪んでしまったのかもしれません(^_^;)
そして、主人公(仮)イレーヌさんの商売♪
こちら、商売人としても製造業者としてもなかなか立派です。
顧客の無理を聞いて頑張る!
でも、そういう顧客の無理を聞くという体裁で自分の構想を実現させちゃう辺り、けっこうちゃっかりしていますwww
今回はアイザック・アシモフのロボット工学3原則が大活躍。
『銀河帝国の興亡』も面白かったんですが、やはり『われはロボット』や『鋼鉄都市』といったロボットモノが面白かったんですよね〜
ロボット“R・ダニール・オリヴォー”の名前は強烈に叩き込まれました(^o^)
イニシャルの“R”は“Robot”の“R”ってのがね〜〜
今にして思うと人間そっくりなんだから“ロボット”ではなく“アンドロイド”だと思いますが(^_^;)
そういや、『アンドロイド』ってタイトルの小説もありました♪
これまた面白くてはるか未来の世界で目覚めたアメリカ男性が美しいアンドロイド女性と生活しながら未来社会の矛盾に気づき、革命を起こすって物語です。
ラストシーン、主人公を愛した美女アンドロイドが「全てのロボットは破壊されなければならない」と自分の頭に拳銃弾をぶち込んで自殺するシーンが印象的でした……
シリアス作品もいいものですね。
いや、そう思うんならお前が描けよって話ですが(^_^;)
ロボット工学3原則は欧米SF作品の一大テーマでアシモフの『われはロボット』以降の作品にはほぼデフォルトで設定されている感じですかね。
で。
ロボット工学3原則って要するに奴隷の反乱防止策なんですよね〜〜
この辺、日本人には理解されづらいのか、国産アニメや国産漫画だと逆にロボット工学3原則が適用されることそのものが珍しい。
この辺りも文化的にも歴史的にも“奴隷”に馴染みが薄い日本らしいですね(^_^;)
まぁ、そんなこんなで拙著『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』にも“ロボット工学3原則”ならぬ“ゾンビ工学3原則”を導入させていただきました\(^o^)/
おそらく、これがないとゾンビが販売できません(^_^;)
そりゃ、いつ寝首を掻いてくるかわからないような部下なんて誰だって手元には置きたがらないでしょう。
安全装置のない銃みたいな物ですからwwww
いわゆる“ゾンビ”はジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』シリーズ以前と以降でだいぶ違います。
以前の“ゾンビ”はブードゥー教の伝説、つまり原典に近くてあくまでも「無報酬で働かされる死人、もしくは死人のような奴隷」、すなわち“ゾンビ”でして。
以降の“ゾンビ”はハリウッド映画やゲームに定番の「集団で人間を襲って齧る怪物で腐っていたり傷ついたりしてる動く死体」、すなわち“リビングデッド”ですね。
で、今回の敵はゾンビです。
リビングデッドは「「「未来を目指すペレネーのアン連!!」」叫んでるだけの賑やかしですね(^_^;)
さて、そういうわけで次回は『何か、広場が大変のようですね。でも、暁光帝だってサムライアリの襲撃に大あわてなのですぉ☆』です。
請う、ご期待!




