人間の都市に新たな争乱の気配!? でも、まぁ、暁光帝はオオミズアオの観察で忙しいんですけどね(^_^;)
天下の往来でうら若き乙女イレーヌが惨殺されて幾星霜……あ、我らが主人公(仮)のイレーヌさんはアンデッドモンスター化してさっさと蘇っちゃいましたよww
恋心も復讐心も根本からポッキリ折られた親友ギヨーム(恋慕してるけど恋人になれない哀れな友達ポジションの男)も何とか立ち直って、妻を娶って、結婚して、子供を儲けて、子供が成長してかつてのギヨームくらいの年齢になりました。
悲劇の割にこいつもけっこう生活が充実してるなwwwww
恋心も復讐心も枯れちゃいましたが、イレーヌとの友情は不滅です。
今日も愛息と一緒にイレーヌん家に入り浸っていたらまたしても不穏な気配が漂ってきました……
英雄の町アリエノールが平和になってしまったのです\(^o^)/
平和になるとろくなことが起きない町だってろくな町ぢゃありませんね(^_^;)
さて、どうなることやら……
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
日差しが弱くなり、西の空が真っ赤に染まっていた。
通りはまばらで人々は浮かない顔をしている。
冒険者や商人はいつも通りだったが、仕事にあぶれた傭兵は先行きがわからず、皆、夕日に染められるがままにトボトボ歩いていた。
冒険者の親子と護衛の幽鬼もまた真っ赤に染められた町を歩いていた。
「やはり活気がないな。この好機、アルフィーならゴブリンどもを攻めるか?」
ギヨームは思いつめた表情で尋ねた。
「いえ、ありえませんね。私はもう死んでいるので罹りませんが、またしても新型の虎列刺でしょう。侵攻に成功しても兵士が感染したら目も当てられない。そもそも敵はゴブリンではなく流行病そのものと考えるべきでしょう」
幽鬼のアルフレッドはきっぱりと否定を示しながら首を振った。
太陽光線に弱い不死の怪物だが、日光に対する耐性を付けてもらっている。さすがは稀代の死霊術師と褒め称えられるイレーヌの技術だ。
「そっかぁ…感染しないって言われてるけど万が一ってこともあるからなぁ…うかつに攻め込んで病気をもらっちまったら凱旋帰国じゃなくて無言の帰宅になっちまう」
若輩ながらガスパルは先を見据えた見識がある。こんな若者でも状況を理解して逸る気持ちを抑えるのだ。
立派な為政者が判断を誤るはずがない。
そのはずがないのだが。
「あのときと全く同じだ…畜生め! 胸が騒ぎやがる!」
珍しく父親が声を荒らげていた。
かつて、ヒト族は国民が逃げ出して空になった北ゴブリン王国の領土を卑劣な手段で奪い取った。
ずばり、“空き巣”である。
このような非道をまかり通させて良いものか。
否。
断じて否。
卑劣なヒト族を討ち果たして今は亡き同胞の無念を晴らし、以て天下に正義を示すべし。
そんな大義を掲げる南ゴブリン王国だったのだが、現在、北伐による捲土重来の宿願は遠い。
またしても新型虎列刺の蔓延で国民がバタバタ倒れる苦境に陥ってしまったのだ。
しかもこの疫病はゴブリン族だけが罹り、ヒト族には害がないというとてつもなく理不尽な病だったのである。
おかげでアリエノールの町はすっかり平和になっていた。
もっとも、それは必ずしも良いこととは限らない。
またしてもアリエノール領主、ロシュフォール家の跡取り問題が起きてしまったのだ。
実力主義を尊ぶとは言え、通常ならば総合的な能力ではなく、候補者達の軍事的な指導力を見る。やはりロシュフォール家は武門の名家であり、その職務は国境の防衛なのだから。
しかし、疫病禍で国境が強制的に閉鎖されてしまった。
平和、それは繁栄をもたらす、ありがたいものであるはずだ。けれども、傭兵にとっては食い扶持が失せることであり、将軍にとっては手柄を立てられなくなることを意味する。
カネも名誉も夢見ない、志の低い人物ならば平和を享受できるのだろうが、そんな奴はそもそも英雄の町アリエノールに来るわけがない。
辺境伯の子供達も親戚も皆、野心的で立身出世を目指していた。
そして、状況は何が何でも後継者の決定を求めていたのだ。
現在の為政者、ミシェル・ロシュフォール辺境伯の政治的求心力が急速に衰えてきていたのである。
近年、老いによるものか、領主にしばしば判断ミスが見られ、砦の失陥や裁きのやり直しなどがあった。
これは大変よろしくない。
早急に後継者を決めて引退なさるがよろしかろうとのたまう言が家来衆や有力者から上がってきたのである。
けれども現当主、ミシェル・ロシュフォールはかつての跡取り騒動を後悔していた。
天下の往来で悲劇を引き起こし、乙女を惨殺したことを若気の至りが過ぎたと反省するくらいには悩んでいたのだ。
墓場のイレーヌが屍導師イレーヌに変化し、到底、敵わない不死の怪物が現れてしまい、恐れおののいたとも言える。
そこでこの平和な時代にふさわしく。
平和的な方法で後継者を決めるべく。
ある決断を下したのだった。
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その夜、アリエノールの中央にそびえる城塞で珍しく華美なパーティーが開かれていた。
そこには現当主の子供だけでなく、大勢の親戚縁者が含まれる。当主の叔父や叔母、従兄弟に再従兄弟、何なら再従姉妹の配偶者まで揃っていたのである。
実力主義の町アリエノールの領主なのだ。出自や身分にこだわらず、能力のある者だけが後継者に選ばれると明言していた。
そこでパーティーもたけなわになったその時、ミシェル・ロシュフォール辺境伯は舞台に上がり、並みいる参加者に向かって宣言したのである。
「来週、大通りで跡取り候補による観兵式を行う」、と。
この発言は非常な驚きを以て迎えられた。
時期的に辺境伯が“観兵式”、すなわち軍事パレードの様子を見て後継者を決める気でいることは明らかだ。
それも致し方ない。
現在、敵である南ゴブリン王国が疫病禍に見舞われて戦は起きない。それ故、純然たる軍事的功績を競うことが不可能なのだ。
ならば、それに準じる競争を提供するしかないだろう。
そうしなければろくなことにならない。
実際、先代の領主はその辺を明らかにせず、漠然と『優れた者を後継者にする』と告げただけだったので競争の箍が外れてしまった。その結果、天下の往来で無実の乙女が惨殺されるという悲劇が生じ、町は屍導師という脅威を迎え入れる羽目に陥ってしまったのだ。
あのような事件は二度と起こしてはならない。これはパーティーの参加者全員の共通認識であった。
もちろん、そこには屍導師が恐ろしいという共通認識もまたあるのだが。
「うぉぉぉっ! 凄ぇ☆」
「条件、緩めたなー」
「それならアタシにも目があるわ」
「やれる、やれるぞ!」
「軍隊の指揮能力を見るのではなく部隊の規模や存在感をアッピールすりゃいいんだろ? 余裕じゃねーか」
「わたくしの美貌で集められるだけ集めてやりますのことよ」
「フフフ…ついに私の時代が来たのだ!」
参加者達は皆、チャンス到来と意気軒昂だ。
実力主義の町で為政者の後継者を公平に選ぶ。
血統にも出自にも身分にもこだわらず、ただ、本人の資質と努力を測ることのみによって。
ただし、疫病禍の影響を鑑み、実戦に於ける軍事的貢献度は加味しない。
これなら無用の悲劇も生み出さないだろうし、後継者の選出方法としては最も理想的なのではないだろうか。
平民も貴族も神職も納得する最高の方法だ。
人々は清廉潔白で先進的な町を誇り、悦に入るのであった。
けれども。
誰しもが気分を高揚させ、歓喜の声を上げていたから。
パーティー会場で沸き立つ人々は1人の青年が苦虫を噛み潰したような表情で唇を噛み締めていることに気づかなかったのである。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
ろくでもない町を治める、ろくでなし領主ミシェル・ロシュフォールがろくでもないアイデアを出してろくでもないイベントを始めました。
破滅フラグ立ちまくりですねwwwww
さて、そういうわけで次回は『さぁ、大変! 仇の子が訪ねてきたぞ! まぁ、そんなことより暁光帝はルリボシカミキリを探すんですけど。』です。
請う、ご期待!




