暁光帝の与り知らぬところでも色々起きているようですね。さて、どうなることやら。あ、責任は持ちませんにょ。関係ないんでww
何と主人公(仮)イレーヌが悪党に陥れられて惨殺されてしまいました(>_<)
でも、ご安心ください。
即効で生き返りましたからwwwww
生き返った乙女は何をするのでしょう。
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
天下の往来で無実の乙女が殺された惨劇から4日が経ったものの、アリエノールの町は平静に包まれていた。
少なくとも下々の間に混乱は見られない。
領主一家は大変だったが、貴族の争いごとは平民に関係ないのだ。
領主のロシュフォール辺境伯が精錬潔白で公明正大な人物だろうと、その長男が無実の乙女を陥れて殺すようなゲスだろうと、いずれにせよ、貴族の問題である。
上に立つ者が責任を負い、日々、権力を維持するために競うのが義務ならば、それに従う下々には競争から無縁ののんびり暮らす権利がある。
それが支配する者と支配される者の常識なのだ。
良くも悪しくもこの常識こそがアリエノールの、ひいてはゴール王国の現実なのである。
逢魔が時、日が沈みかけて夕焼けに染まった町の大通りを古ぼけた長衣の青年が歩いていた。
周囲を警戒しながら懐の短刀を握りしめる。
今、仇は不在だ。
手下の兵士どもも所在なげにふらついているだけで目立った動きは見せていない。
領主の長男、ミシェル・ロシュフォールは罪なき乙女イレーヌを殺害したことについて弁明に必死なのだ。
口八丁手八丁で理不尽な謀殺を正義の執行であると言いくるめるのに大忙し。ルビコン川を渡ってしまった長男はここが分水嶺だと踏ん張っているのだ。
「畜生め!」
悪態をついた青年は他ならぬギヨームだった。
あいつだけは絶対に生かしておけぬ。
その意志は固い。
何としてもミシェル・ロシュフォールに報いを受けさせてイレーヌの無念を晴らすつもりなのだ。
今は辺境伯の城で兵士どもに守られているが、いずれ奴も1人になることもあるだろう。
月の出ない夜はこれからも来るのだ。
今は身を潜めて機会を伺うとしよう。
ギィッ!
ギヨームはスイングドアをきしませながら冒険者ギルドに入った。
イレーヌを襲った惨劇から逃げ出した自分は面が割れていない。それはすでに確認済みだ。
ミシェル・ロシュフォールの仕事はいい加減でイレーヌのことばかりに注力し、親類縁者のことなどろくに調べていなかった。
だから、貴族が相手と言えども付け入る隙は十分にあるというもの。
「畜生!」
青年は恨みと憎しみで口の端を歪めながらギルドマスターの方へ進んだ。
今後のことについて友人らと相談しようと思ったのだが、そこで繰り広げられる光景に酷く驚かされることになったのである。
冒険者ギルドの受付カウンターはずいぶんと騒がしかった。
酒を酌み交わしていた連中、ベテランも若手も目を丸くしてことの推移を見守っている。
「それでねっ、死んで人間やめちゃったのよ! だから、冒険者登録証を更新してほしいの!」
「いや、でも、アンタはこうして生きてるだろ?」
「例外は認められんよ。アンタはどう見ても人間じゃないか」
騒いでいたのは冒険者ギルドのギルドマスターとサブマスターだった。
受付嬢に迫る乙女に対して疑義と反対を口にしている。
そして、その乙女とは。
「そんな! レニー!? 生きてたのか!?」
口をあんぐり開けて腰を抜かすギヨーム。4日前に殺された幼馴染みが元気に喋っている姿を見て声が裏返ってしまっている。
「あぁ、グィル。4日ぶり〜 元気してた? 私、死んじゃったよ〜」
なぜか明るい声で挨拶するイレーヌは4日前と変わらぬ姿だった。
いや、むしろ生前よりも積極的で健康そうにさえ見える。
「し…死んだって言われても…ずいぶんと元気そうに見えるが……」
当惑するギヨームに。
「死んだわ。物凄く死んだ。でも、生き返ったのよ。だって、ほら、死霊術師だし」
当たり前のことを訊くなと言わんばかりの死女だった。
「じゃあ、もう一回説明するわね。4日前、たしかに私は殺されたわ。けど、あらかじめ自分にかけておいた死霊術のおかげで生き返れたのよ、屍導師として☆」
堂々と宣言した。
途端に周囲の冒険者達がざわつき出した。
「おいおい、ホントかよ? 屍導師って奴はなぁ……」
「確か…屍巨人とか、真祖の吸血鬼、骸骨大僧正と並ぶ不死の怪物の最強格だろ?」
「げぇっ! ドラゴンの次にヤバい化け物じゃねぇかー!!」
「本気で襲って来られたらこの町なんかあっという間に全滅させられるぞ!」
口々に騒いで数人のベテラン冒険者が青ざめている。
だが、異論も出た。
「いや、でも、ホントか?」
「屍導師ってのは死霊術師が自分自身に死霊術かけて変化したアンデッドだろ? あんな小娘がなれるわけねぇよ」
発言に疑義を呈する声がが上がる。
しかし、ここは冒険者ギルド。日頃からイレーヌに仕事を依頼して事情をよく知るお得意さんらも少なくない。
「いやいや、待て待て。墓場のイレーヌは腕のいい死霊術師だろ。それが4日前に殺されたわけで……」
「あれ? あの娘の言ってることは辻褄が合うじゃないの。合いすぎるわ……」
「…ってこたぁ、墓場のイレーヌは本当に本物の屍導師に……」
冒険者達が青ざめて見つめてきた。
だから、イレーヌは期待に応えることにした。
「人間は魔法を使うのに呪文を詠唱しなちゃならないし、魔力の媒体として魔術杖が必要。それは魔法の得意な妖精人や茸人も同じ。つまり……」
不敵な笑みを浮かべながら。
「呪文の詠唱も魔術杖もなしで魔法が使えたらそれは人間ではないということ」
右手の人差し指を天井に向けると背後に巨大な瞬間魔法陣が浮き上がらせ。
シュォォォン!
指先が輝き、空中に氷の破片を生み出していく。みるみるうちに氷が冬瓜ほどの透き通った楕円球の蕾を成し。
フワァッ!
氷の花弁が開いて大輪の花を咲かせた。
すると、強烈な冷気が溢れ出て周囲を凍てつかせて行く。
「うわぁっ!? そいつは? そいつぁー!?」
「とんでもねぇっ!!」
「特級吹雪大輪? 氷の精霊魔法! それもめちゃくちゃヤベえ奴じゃねぇか!」
「みんな、凍え死んじまう!」
「こんな狭いところでをそいつをぶっ放したら全員があの世行きだぞ!」
魔法を知っている連中の間に戦慄が走り、あちこちから恐怖の悲鳴が上がった。
乙女の指先に生じた魔法は特級の精霊魔法だったのだ。それは氷の蕾を花開かせて凍てつく花弁を撒き散らし、周囲を無差別に破壊できる。
「うひぃっ!」
「くわばら、くわばら!」
髭面のむくつけき戦士があわててテーブルの下に潜り込んだ。
同じく白いヒゲの老魔導師が魔術杖を掲げて大げさな動作で防御結界魔法を発現させようとする。
だが、よほどあわてていたのか、それは風の属性で氷の精霊魔法を防げるものではない。
「はい、おっしゃる通り、今、ご紹介いただきました。“墓場のイレーヌ”あらため、“屍導師イレーヌ”でございます」
挨拶した後、死女は華麗に宮廷風お辞儀を決めてみせた。
同時に右手を動かしてすこぶる剣呑な氷の大輪を閉じ、蕾に戻した。そのまま手のひらに吸い込んで打ち消す。
「ほっ!」
「ようやく消してくれたか……」
「全く生きた心地がしねぇぜ」
「だけどよ、呪文も魔術杖もなしであんな強力な精霊魔法をパッと使えちまうってこたぁ……」
「格付けランクで一番手の梅、あんなにきれいな女なのにアンデッドモンスターなのかよ……」
一度は安堵した冒険者達だがイレーヌの正体に思いが至り、恐怖に駆られてしまった。
「それじゃぁ、もっとはっきりさせる?」
そこでイレーヌはスッとギルド備え付けの黒い石板に手を置く。
魔力の測定装置だ。
「うっ、測定レンジが最大だと?」
とっさに気づいたサブマスターが操作した。
しかし、その目盛りがいつまで経っても停止しない。
「げぇっ、測定器の測定限界以上だっ!!」
あまりのことにサブマスターはのけぞった。
ここは英雄の町アリエノールの冒険者ギルドだ。ヒト族だけでなく妖精人族や茸人族も来る。彼らのような魔法の得意な人種のため、特別に大きい魔気容量だって測れるよう用意された装置だった。
それこそ超種族天翼人の魔力だって測れるのだ。
その目盛りが止まらない。
それは装置の測定限界を超えた魔力の持ち主であることを示す。
つまり、人間用の装置では測れないのだから、イレーヌは人間ではないことになる。
正真正銘、本物の不死の怪物の最強種、屍導師で間違いない。
「死んでますます腕達者、熟練の技が貴方の求める屍従者を提供いたします。墓場のイレーヌ、今後ともご贔屓に♪」
自信満々、死女は胸を張った。
今さっき、“屍導師”と名乗ったのにもう“墓場の”に戻ってしまっている。
事業主の存在のあり方が変わっても屋号は変えたくない、商人の鑑のようなイレーヌだった。
「屍導師なんて化け物は最上級の冒険者パーティーだって対応できないぞ。どうしたらいいんだ……」
ギルドマスターは呆然としていた。
死んだ冒険者が再びギルドを訪れて冒険者登録証の更新を願い出たのだ。
それも死体のままで。
およそ前例のない事件である。
「いや、冒険者が死んだら登録は抹消されるものだろう。例外は認められない」
サブマスターは全力で足掻いた。
役人から転職してきただけあって、サブマスターは例外の案件を嫌う。仕事が増える上に今後の作業も煩雑になるからだ。
けれども、イレーヌは黙らない。
「私なら最高の屍従者を提供できるわ。安くて強くて頑丈な奴よ。冒険者なら誰だって欲しがるような、素晴らしい品質を保証できる」
ニヤリ笑って。
「さっき、兵士長は喜んで受け取ってくれたわ。これが受け取り鉦よ」
証拠の書類を示すとそこにはしっかり兵士長の署名が明示されていた。
「そんな…前例ができてしまったなんて……」
サブマスターは呆然としている。役人出身の彼にとってはこの上ない衝撃だったのだ。
この新たなる事態を目にして冒険者達は口々に騒ぎ出した。
「いやいや、墓場のイレーヌは…もとい、屍導師のイレーヌは兵士長に認められたのか?」
「あらあら、書類を見る限り、納期も数も品質もしっかり守ってるみたいじゃないの」
「良心的な商売じゃないか。他の死霊術師なんて約束の日までに納めてくれないし、品質だって酷いモンだ」
「う〜ん…実際、カビて腐ったゾンビがウジを這わせているような出来のもあったからな。スゲぇ臭くて…あんなのを押し付けられたときは参ったぜ」
「やっぱりイレーヌんとこのゾンビが一番信用できるわよ」
「リッチーになって腕が上がったのか。けっこうなことだぜ」
「腕がよくて信用できる商人がさらに腕を上げて信用を稼いだってことか」
「なんだ、そんならいいことづくめじゃねぇか。騒ぐことなんかなかったぜ」
腰を抜かしていた戦士も魔術杖を掲げていた老魔導師もそれぞれ武器をしまって安堵のため息を吐いた。
突然のアンデッドモンスター登場におびえていた冒険者達は乱れたテーブルと椅子を戻して。
「じゃあ、カネが貯まったらまた頼むわ」
「仲間が死んだら材料の分、安くしてくれよー」
「よろしくね、イレーヌ」
再び、酒を酌み交わし始めた。
「はい。触れて清潔、命じて確実、暮らして安心、あなたのそばにいつでも屍従者を☆ ご依頼、お待ちしてまーす♪」
お得意様はいつだって大歓迎である。イレーヌは笑って手を振った。
冒険者達は今まで通り付き合ってくれるようだ。
この辺りの鷹揚さは良きにつけ悪しきにつけ、日頃、幻獣と接している冒険者の町らしいと言えよう。
けれどもギルドマスターは納得していなかった。
「だが、町に幻獣を入れることは法律で禁じられているんだぞ! 今まで通り、アンタを冒険者ギルドに出入りさせるわけにはいかない!」
法律を盾に猛然と抗議してきた。
しかし、そんなことでイレーヌはへこたれない。
「問題ありませんよ。なぜなら私は町の外からやってきたのではなく、町の往来で殺されてこの町で生まれたんです。法律に照らしても責められる謂れは一切ありません」
ドきっぱり応えてみせた。
「うむむむ……」
何も言い返せず、ギルドマスターはうなるばかりだ。
「ギルドマスター、もうダメですよ。法律的に問題にならず、仕事を任されたという前例も作られてしまっている。しかも、兵士長の受け取り鉦まである。もうお手上げです、ハァ……」
サブマスターがため息を吐いた。
新たな前例を作りたくないが、ここまで外堀を埋められてしまっては抵抗できない。
甘んじて新たなルールを制定してメンバーと職員に周知徹底させなければならなくなったのだ。
「そうか……」
事務作業が嫌いなギルドマスターも諦め、がっくり肩を落として新たな仕事に取り掛かるのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
描いていて途中で気づきました。
「あれ? これ、人気の追放モノのテンプレートに沿ってない?」、と。
あ、ざまぁ展開も始まりますよ。
ってゆーか、初期プロットからしてこ〜ゆ〜お話だから人気の追放モノなのかもしれません。
“追放”された後で主人公(仮)が超パワーアップするし。
無敵無双のチートキャラになっちゃたし。
その後の活躍でめっちゃ出世するし。
うん。
ばっちり人気の追放モノだわwwwww
すいません。違いますね(^_^;)
そ〜ゆ〜風に読めなくもないってレベルですわwww
さて、そういうわけで次回は『そして、モンスターと人間が共存する町が爆誕! 暁光帝もビックリですぉ☆』です。
請う、ご期待!




