魔境“ラナス大森林”にはたくさん幻獣が棲んでいて、みんな、暁光帝の友達なのです。
ヒト族を憎む南ゴブリン王国と凶暴な幻獣の棲むラナス大森林に囲まれた英雄の町アリエノールは騒乱の種が尽きません。
だから、傭兵や冒険者が集い、日々、名誉と財産を求めて戦っているのです。
そんな町にネクロマンサーの乙女と若き冒険者♂が語らいます。
すわっ、ロマンスの予感?
いえ、うち、そ〜ゆ〜のやってませんので(^_^;)
ちゃんと目次の左上に【この作品には 〔ガールズラブ要素〕 が含まれています。】タグも掲げられているんですよ。
あんまり機能していませんけどwwwww
とりあえず、ダブル主人公(仮)のうち、一人目のイレーヌが登場しました。
これから物語を強力に牽引してくれることでしょう。
いえ、もうしばらくは出番がないんですけどね\(^o^)/
…というわけでダブル主人公(仮)のもう1人が登場します。
さて、どんな活躍を見せてくれるのでしょう?
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
“英雄の町”、アリエノールは実力主義の気風が強い。
その領主、ロシュフォール辺境伯もまた人間をその実力のみで評価する。
領主の子供達は成人していて、兄弟姉妹で熾烈な跡目争いをしていると聞く。とりわけ長男が今、不利な状況に陥っているともっぱらの噂だ。
極端な話、跡取りは領主の子供でなくても構わない。それどころか、他の町、他の国の出身であってもよい。同じヒト族でさえあれば跡取りになれる。
出自も、身分も、性別も、容貌も、関係ない。選ばれるのは己の実力を示せた者だけなのである。
世襲制が当たり前の封建社会であってこのような風潮が重んじられることは非常に珍しい。けれども、それは異人種からの脅威、幻獣からの脅威にさらされる英雄の町アリエノールならではの慣習であった。
辺境伯の役目は国境の守りだが、今は主敵である南ゴブリン王国が疫病で参っていて戦争どころではなく、このペレネー領は平和である。平和であるということは小競り合いもないということであり、それは軍隊が暇であることを、翻って軍人が手柄を立てられないことを意味する。
そして、農地の開拓で食料増産に励んだ姪や法を整備して暮らしやすい町作りに貢献した次男が辺境伯の覚えめでたく、彼らを跡取りにと推す声も強い。
つまり、このままアリエノールの町が平和なままだと長男は跡目争いに負けて他の兄弟姉妹の足をなめて暮らすことになってしまうのだ。
ロシュフォール辺境伯は勇猛果敢かつ精錬潔白な人物として知られ、徹底した実力主義者らしい。その風聞通りなら実力を示した者をこそ自分の跡取りに据えるだろう。
戦場での活躍ばかりでなく、農業や立法など町への貢献も評価される。
金食い虫の軍隊は人材と糧食が必須なのだから。
町に人間が集まれば新兵の募集が容易になり、農地から取れる作物が増えれば糧食が保証され、いずれにせよ、軍の兵站が潤う。
戦場の誉れで知られるロシュフォール辺境伯だが、派手な手柄ばかりに目を奪われる愚か者ではない。
そもそも戦場で勝利をもたらすには安定した兵站が不可欠。
いや、むしろ、勇猛さよりも兵士にたっぷり飯を食わせて武器を用意してやることの方が重要なのだ。
そういうわけで暇になってしまった軍隊を率いる長男は領主や家族から冷たい目で見られながら冷や飯を食らっていたのである。
平和な町、アリエノール。
普通に考えれば繁栄をもたらす平和が新たな不和と悲劇の理由になるなど、この時点では誰1人として考えていなかった。
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ゴール王国はペレネー領のほぼ全域に広がり、海岸に面したラナス大森林は広大だ。北と東からアリエノールの町に迫り、取り囲んで市壁に接している。
人々が門を出るとすぐに森だが、そこを避けて伸びる街道は海岸線に沿って隣の町にまでかろうじて通じている状態だ。森を闊歩する幻獣が脅威となって徒歩による移動は安全と言い難い。護衛として冒険者を雇った、物々しい隊商が交易の主力である。
数多の幻獣の棲まうラナス大森林は人間の開拓を拒み、農村はおろか、盗賊団の棲家さえも存在しない。
かつて、ゴール王国は強力な開拓団を以て森を拓こうと試みたものだ。しかし、大勢の武装した兵士と農民の集団が森を刺激したことは悲惨な結果を招いてしまった。
三叉樹やくびりシダ、魔人茸や毒人茸、それに人食いオオカミなどの凶悪な幻獣が大挙して押し寄せ、『餌が来た!』と言わんばかりの勢いで襲いかかってきたのだ。
鍛錬を積み、装備を整えていたとは言え、対人戦闘に特化した兵士達では幻獣の相手にならず、大勢が食われてしまった。
わずかに生き残った者らもファンガスの咒毒胞子に蝕まれてしまい、逃げ延びた先で更に多くの悲劇を引き起こした。彼らは生きながらキノコ人間に変えられて他人を襲い出したのだ。そして、襲われた者もまた新たなキノコ人間にされて新たな犠牲者を増やすという地獄絵図が繰り広げられてしまった。
国の威信を賭けた計画は開拓団という餌で人食いの怪物どもを集めてしまっただけでなく、ファンガス胞子の集団感染で前線の町を壊滅させるという前代未聞の大惨事を引き起こしてしまったのだ。
ことほど左様にラナス大森林は人類の侵入を拒んでいたのである。
ゴール王国は被害の大きさに震え上がり、事件の以後、大森林の開拓を諦めた。
兵士も農民も無力であることが証明されて冒険者だけが大森林に関わるようになった。彼ら、命知らず達は身体を鍛え、経験を積み、強くなって森の奥を目指したのである。
貴重な素材や名誉を求めて冒険者は進む。
強敵と戦い、時にこれを倒し、時に自分が倒れた。
冒険から栄光と悲劇とロマンが生まれ、それを吟遊詩人が高らかに歌い上げ、多くの英雄が生まれた。
それでもラナス大森林は魔境であり、その最奥にたどり着いた者は1人もいない。
人々は様々な噂を口にする。
曰く、『恐ろしい亡国の怪物、翁面獅子がいるのだ』とか。
曰く、『世界中の財宝を集めた蠍鷲蛇が鎮座しているのだ』とか。
曰く、『天まで届く巨大な世界樹がそびえ立っているのだ』とか。
曰く、『神に等しい力を持つ不死鳥が君臨しているのだ』とか。
とにかく様々な噂が流れとんだ。
そのどれもがロマンあふれる話だ。
噂される怪物どもは皆、財宝を貯えていることになっていたし。
もしも、本当に世界樹が生えていたらその葉は万病に効く。それは妖精人の大国“妖精郷”でしか採れない、かの地の特産品であり、ゴール王国では王侯貴族ですら目の色を変える至宝なのだ。
いずれにせよ、手に入れれば貴族に取り立てられることすら望める代物だろう。
人々は夢を見る。
だから、名誉と栄光を求めて冒険者は今日も森に挑むのだ。
ラナス大森林の最奥を目指して。
そこに潜むは何者か。
ドラゴン、フェニックス、ムシュフシュがいて……
もしかすると天にも届くユグドラシルがそびえているのかもしれない。
それが何であるかは不明だ。
けれどもこれだけは言える。
たとえ、命の危険を冒しても挑む価値がある、と。
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不死鳥でも翁面獅子でもない。
大森林の奥深く、木々が深く生い茂り、妖しいキノコが繁茂するその場所にいたのはドラゴンだった。
もっとも、正確には冒険者ギルドが分類するところの“古龍”ではなく、“若竜”だ。
城塞や砦と比肩するほどに巨大な古龍よりはずいぶん小さい、それでも普通の家くらいはある。
冒険者にとっては幸いなことに若竜は人間が戦える存在だ。古龍にまで至ってしまうと戦いを挑んでみたところでもはや勝負にもならない。冒険者パーティーが城塞に挑んだところで軍隊に蹴散らされるように古龍に立ち向かっても尾の一撃で消し飛ばされてしまう。
その点、若竜なら冒険者の魔法や剣で傷つけられなくもない。
それでも空が飛べて魔法の効果を弱める竜鱗をまとい、ドラゴンブレスを吐く怪物だ。そんな奴を相手に冒険者パーティーが勝てる可能性は非常に小さい。
彼はガルグイユ。
ヘビのように長い首を持ち、1対の翼で空を飛ぶ、家ほどもある大きな水竜だ。
ドラゴンブレスの水流は洪水を引き起こすほどの水量で村の1つや2つたやすく呑み込んでしまう。陸の人間は泳げないから助かる者のあろうはずもなく、ことごとく溺れ死んでしまうだろう。
ことほど左様に恐ろしい災害を引き起こしかねない怪物なのである。
もっとも、ガルグイユは森から出たことがなく、こうして奥地に引きこもっているので人間に関わったことがない。何しろ、人間に姿を見られたことさえないのだ。
それなのに人間達は『ラナス大森林の最奥には恐ろしい怪物がいる』とまことしやかに噂しているらしい。
何とも理不尽なことだ。
水竜は天を仰いでひとりごちる。
「この空模様なら男爵が遊びに来そうだな……」
流暢な人語だ。ドラゴンの声帯は人間のそれと構造が違うが、このガルグイユは器用なのだ。友人に合わせて言葉や文字を変えることもたやすい。
ここは広場。
大森林にしては珍しく木々のまばらな草原で大きな淡水湖のほとりだ。水竜らしく、普段はこの湖の中に棲んでいる。
そんなガルグイユに声をかける者がいた。
「あー…平面の極座標系に於いて極から下ろした垂線の足が定点(p,a)であるような直線は動点(r,θ)を用いてr・cos(θ−a)=pの極方程式で表せると思います」
それは昼なお暗い、鬱蒼とした森の中から響いてきた。怪しい呪文のような言葉だった。
まるで幽霊である。
けれども、竜種が幽霊を恐れるわけがない。
「ふむ……」
考え込んで鉤爪を地面に走らせる。そこは草の生えていない、剥き出しの平らな地面であり、ガルグイユの巨体でも十分に文字を記すことができた。
さらさらと器用に前足を動かして言われた数式を元に図や表を描いてゆく。
「なるほど。君の言う数式は確かに直線の極座標表示で正しいようだ。それにしても……」
気がかりが残ってしまい、ドラゴンは口ごもる。
すると、森の奥から返事が返ってきた。
「ええ、検算したいものです。羊皮紙と鵞ペンが欲しいものですねぇ……」
謎の声も悔しそうだ。
「今日は曇りだよ、ハミルトン男爵。少しくらい出てきてもいいんじゃないか。俺の推論を検めてくれ」
ガルグイユはヘビのような長い首をもたげ、声の主を促した。
それを聞いておずおずと暗い森からハゲ頭が現れた。
ヒト族の男としては小柄だ。古ぼけてはいるが洒落た服を着て、黒いマントを羽織っている。
「おかげさまで老いに悩まなくて済むようになりましたが、太陽が敵になるとは…世の中は思うようにならないものですね」
喋る口からは鋭い牙が覗く。
人間ではない。夜な夜な人間の生き血を吸う不死の怪物、吸血鬼だ。
だが、マントや牙よりも首からぶら下げた黒い石板の方が目立つかもしれない。
「ふぅむ、いい曇り具合ですね。陽光が弱くてほとんど苦しくありません」
ハゲ頭の吸血鬼、ハミルトン男爵は木漏れ日も差さない下生えから出ると額の上に手をかざして曇り空を眺め、嬉しそうだ。
「一応、私も検算はしてみたんですけどね。どうにも余白が少なくなってきついんですよ」
推論の成果を示した黒い石版は横長の長方形でかなり大きく、本人の肩幅ほどもある。
これは筆記石版と言い、白いチョークとともに研究者にとっての必需品である。それこそ博物学者だろうと哲学者だろうと一人前の学者であれば持っていて当然、持っていなければ半端者と見なされかねないほど普及している。
普及しているのだが。
「ハッハッハッ! まだそんなものを使っているのか? せっかく新説を思いついても筆記石版じゃ、いずれ消さなくちゃいけなくなるだろうに」
ガルグイユは盛大に嗤った。
「……」
ハゲ頭の吸血鬼は何も言えない。
竜の言う通りなのだ。
大きめとは言え、筆記石版は1枚しかない。チョークで文字や図を描いてもいっぱいになったら消さないと次が描けなくなる。つまり、重要な研究の成果を残せないのだ。
全く以て水竜の発言通りである。
羊皮紙さえあれば研究成果を記録できるのだが、深い森の中では入手が難しい。
「せめてパピルスでもあれば……」
自然と不満が口を衝いて出てしまった。
パピルスは葦のような草を刻んで重ねたシート状の物で絵や文字を描くことに適している。表にしか描けないが、そこそこ安い。
羊皮紙は獣の皮を伸ばして広げた、同様のシート状の物でやはり絵や文字を描くことに適している。表も裏と同じく両面に描けるが、けっこうな値段である。
けれども、いずれにせよ、ここでは手に入れづらい。
そもそも、幻獣は通貨を持っていないし、ラナス大森林には貨幣経済そのものがない。嗜好も需要も多様すぎる幻獣の間では物々交換すら成り立たない場合も多いのだ。
その上、パピルスも羊皮紙も魔法で作れず、手に負えない。作れるのは魔女や微妖精など、一部の器用な者達だけだ。
「ハーッハッハッハッ、“パピルス”とか!」
水竜はことさらに嗤った。
「先日、“紙”って奴を見たぜ。真っ白で表も裏も使える便利な代物だ。手に入れやすくて人間達の間で凄ぇ広まってるって話だぞ」
自慢気に語る。
いや、人間から見せてもらったわけではない。
友人と同じくこうして大森林の奥に引きこもっているのだ。幸か、不幸か、人間と関わったことなど一度もない。噂好きの植物系モンスター、妖人花から見せてもらったけだ。
それでもこの内向的な友人が口下手でそんな噂も集められないから少しだけ優越感に浸れる。
こう見えてガルグイユは話し上手で聞き上手の陽気なドラゴンなのだ。
「“紙”ですかぁ…いや、生前に聞いたことがあるんですよ。東のヒト族諸侯の国々から伝わる安くてきれいな代物のようですね。表と同じように裏も使えて書いた字が映えるんだとか」
ハゲ頭の吸血鬼は懐かしげに語る。
死んで吸血鬼になる前、すなわち、生前は金に困らない生活を送っていた。もっとも、裕福だったわけではない。“男爵”という貴族であり、少ないながら領地からの税収があって生活が質素だったからだ。それは夜空を眺めて星を観測したり、野山で草や虫を観察するだけならカネもかからない。
研究成果はパピルスに遺してきたが、高尚すぎて遺族にも友人達にも全く顧みられなかった。
「心残りかい?」
「いや、今の方が生活は充実していますよ。キミらもいますしね」
友人に尋ねられて吸血鬼は生前を思い出しながら答えた。
町の暮らしはせわしなかった。貧乏人は生活に追われ、金持ちはさらに稼ごうと必死だった。嵐や地震で家が壊れることもあったし、病や怪我にも悩まされた。一歩、町の外に出れば幻獣の脅威に震え上がることもしばしばだった。
「か弱い魔力を嘆きながら地べたを這いずり、日々の糧を求めてけなげに生きる人間は神々から“定命の者”と呼ばれるんだとか。全く以てその通りです。みんな、せわしなさすぎたんですよ」
自然とため息を吐いてしまう。
博物学や天文学の話に町の住人達が耳を傾けてくれることはついぞなかった。
誰も自分の研究に興味を持ってくれず、その成果も生かせなかった。
だから、失意のうちに倒れ、墓碑銘には『役立たず、ここに眠る』と刻むよう言い残して他界したのだった。
墓土を掘って蘇ってみたら本当にそう刻まれていたのには驚いたが。
「不幸な人生だったんですかねぇ……」
あの頃の境遇を思い出してため息を吐いた。
それに比べて今はどうだ。
死んで人間を辞め、吸血鬼になったら人食いウズムシも人食いオオカミも襲ってこなくなった。今では三叉樹の群れの中を手ぶらで歩いても平気だ。
食べることに苦労しない水竜や魔女は暮らしに余裕があり、難解な話も飽きずに聞いてくれるし、興味も持ってくれていた。
今の方が生前よりもずっと楽しい。
「人間は大変なんだなぁ……」
ガルグイユは見たこともない町の暮らしを想像して戸惑っていた。
刺激の強すぎる生活は問題ありそうだ。
刺激がなさすぎる生活も問題なのだが。
「そんなにせわしないって何を追い求めているのやら」
たまに水晶玉を借りて話す、遠い友人を思い出した。
「そりゃあ、独居ドラゴンならあれやこれや貯め込んでばかりなんてこともあるだろうけどさ、俺には友達がいるからなぁ」
水竜の言う“独居ドラゴン”とは長いこと孤独に過ごしているドラゴンのことだ。
竜種は1頭で暮らしていても余り困ることがあまりない。また、恐ろしげな外見に違わず、強大な力を持っているから恐れられて他の者が寄ってこないことが多いのだ。その上、不老だから、孤独な生活がやたら長く続くこともある。
そんな“独居ドラゴン”は暇を持て余して宝石やら金銀やら光り物を集める習性を持ってしまう。ねぐらにそんな財宝を溜め込んでいることも珍しくない。
それを冒険者に狙われ盗まれてしまうこともあるから“ドラゴンの財宝”は人間の間でも有名なのだ。
ちなみに冒険者に退治されたドラゴンはいないが、財宝を盗まれたドラゴンは少なくない。独居ドラゴンもドラゴンだから人間相手には無敵だが、一人暮らしなので隙を突かれて盗難に遭うこともあるのだ。
だが、この水竜のように友達のいる竜種は光り物を集めない。他者と交流することで退屈を紛らわせられるし、博物学や詩歌など他のことに興味を抱くようになるからだ。
実際、ガルグイユはハミルトン男爵のもたらした最新の学問に飛びつき、今では昼夜を問わず、研究や考察に勤しんでいる。
「私も以前はドラゴンが野蛮で凶暴な幻獣だと思っていましたよ」
ハゲ頭の吸血鬼は意外と言った顔つきだ。
「う〜ん、昔のことならいざ知らず、今はなぁ…俺も暴れていたことがあったんだけどさ、みんな、弱っちいんですぐに飽きちまったんだよ」
水竜は嘆いた。
それは竜種とまともに戦える幻獣などめったにいない。ガルグイユが暴れたところで皆、逃げ惑うばかりで相手をしてくれる奴はいなかったのである。
「なるほど、それで私の学問に興味を持ってくれたんですか。意外とドラゴンの生活は文化的なんですねぇ」
ハゲ頭を撫でて男爵は感心することしきり。
もともと、竜種は知能が高い。好奇心も旺盛だし、体系にまとめられた知識を学ぶことにも意欲的だ。そして、知り得た知識を応用することも楽しいに違いない。
今、ガルグイユは数学と博物学と天文学にハマっている。
「いずれは楽器なんかで音楽を奏でるようになるのかも……」
小声でつぶやいたが、巨大な水竜が扱える楽器が思いつかないので首をひねった。打楽器は破いてしまうだろうし、弦楽器は弦を切ってしまうだろうし、管楽器は破裂させてしまうだろう。でかくて力が強いのも考えものだと思い悩んだ。
「そうか、他にも楽しいものをたくさん知っているのだな…まぁ、いい。それこそ“いずれ”教えてもらうぞ」
水竜は友人を急かさない。
人間の文化は面白いし、この吸血鬼はたくさんのことを教えてくれるだろう。今、教えてもらえないのは環境が整っていないだけのことだとわかっている。
歳を経た竜種らしくガルグイユは聡明で理解力に富み、善意にも悪意にも敏感だ。おかげで森の新たな住人となった男爵とも上手く付き合えている。
「とりあえず、新しい筆記石板が要るな」
「削り出さなくちゃいけませんから適当な石を見つけるのが先なんですよね」
2頭は研究を進める上で問題となる事柄についてああでもないこうでもないと相談を続けた。
怒鳴るどころか、声を荒げることもしない。互いに提案と情報を出し合い、問題を解決するための方法を話し合う。
人間達からは凶暴な怪物と決めつけられているドラゴンと吸血鬼だったが、意外と文化的に暮らしているのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
はい。2人目の主人公(仮)はハゲ頭のおっさんでした\(^o^)/
うちはこんなんばっかりですね。
まぁ、美少女成分はイレーヌがいますし、旅の仲間にアルラウネもついてきてくれていますしね。
ハゲ頭のおっさんじゃロマンスの欠片もありませんがwww
でも、吸血鬼です。
アンデッドモンスター好きの小生がとりわけ好きな怪物、吸血鬼なのです。
二十世紀が生んだ最も有名な架空のキャラクターは名探偵シャーロック・ホームズと吸血鬼ドラキュラ伯爵ですね。
原作は両方とも熟読しました。
ブラム・ストーカー著『吸血鬼ドラキュラ』は中学生の時分にさんざん呼んでずいぶん衝撃を受けましたね。
映画版のベラ・ルゴシともクリストファー・リーともえらく違う。
ベラ・ルゴシ版ドラキュラは耽美だし。
クリストファー・リー版は打って変わってスタイリッシュでかっこいいし。
ちなみに黒人俳優が演じた『吸血鬼ブラキュラ』なんてのもありましたぉ。
で。
原作小説のドラキュラ伯爵はもっとワイルドで欲望まみれのかなり嫌な奴として描かれていましたが、トルコ人の侵略からトランシルヴァニアを守ったことを自慢するシーンがあったり、モデルとなった英雄ヴラド・ツェペシュの色彩が色濃かったのです。
でも、ドラキュラ伯爵って実は二番煎じなんですよね(^_^;)
レ・ファニュの『吸血鬼カーミラ』の方が先に執筆されていますから、伯爵はカーミラ・カルンシュタイン伯爵令嬢の後輩ということになりますぉ☆
ちなみにこのカーミラ様は女性同性愛文学のさきがけということになっていまして、要するに百合!
…ということで小生も飛びついたんですが、めっちゃ雰囲気だけの友情百合でした。
さすがに名作と言うだけあってなかなか印象的な作品ではありましたがね。
で、こちら、『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』番外編に登場してくれた“ハゲ頭の吸血鬼”ことハミルトン男爵にもモデルがいます。
お気づきの諸姉諸兄も多そうですが、過去エピソードからも一目瞭然?
うちの作品ってやたらパロディが多いんですよね〜
まぁ、また大神官が妙なパロディやってるわくらいに流していただければ幸いです。
こちらは吸血鬼ですが、吸血シーンもありませんし、十字架もにんにくも嫌がりません。
せいぜい、強い太陽光線を嫌うくらいですね。
そもそも、『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』の世界に十字架ありませんしwwww
そういうわけであんまり弱点はありませんが、吸血鬼です。
今後の活躍をお楽しみに♪
さて、そういうわけで次回は『暁光帝の友達は多様性に富んでいて、それこそ草木から鳥獣までとてもたくさんいるのです♪』です。
請う、ご期待!




