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人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ_〜暁光帝、降りる〜  作者: Et_Cetera
<<あの子はだぁれ? ドラゴンが街に入るには準備が必要です>>
15/197

勇者は魔物を倒して英雄に。そして、姫君と結婚して幸せに…

火山島に棲み着いた、我らがスーパードラゴン暁光帝。

ようやく副題の『暁光帝、降りる』が実現しました。

しかし、これにいろんな方面から苦情が来ます。さて、どうなることでしょう…

 エレーウォン大陸の東、最高峰リゼルザインドの神界にて。

 突如、託宣所にけたたましい警報が響き渡る。




神A:「緊急事態、発生! 緊急事態、発生! 至急、連絡を()う!」

神B:「あー、あー、こちら、リゼルザインド託宣所のタニーテミャイバクト。いったい、何が起きた?」

神A:「おお、タニーテミャイバクト! 地王か! ありがたい! 俺はワイルド島のイヤヴィアーだ!」

地王:「何だ、山神(やまがみ)、お前か。碧中海(へきちゅうかい)の火山島だな?」

山神:「そうだ。ワイルド島の山神だ!」

地王:「何が起きた? 緊急事態とは何だ?」

山神:「暁光帝(ぎょうこうてい)だ! 暁光帝がやって来たっ!!」

地王:「何だと!? まさか、降りたのかっ!?」

山神:「降りそうだ! ああ…島に近づいてきている! どんどん! どんどんっ!!」

地王:「落ち着け! 角は光っているか?」

山神:「ああ…島の真上に来たぁ! 光ってる! 角が光ってるぞっ!!」

地王:「光ってる? まずいな。山神、何かできるか?」

山神:「できるわけないだろうっ!? 俺に死ねって言いたいのかっ!?」

地王:「いや、無理はするな」

山神:「駄目だ、もう駄目だ…角が…彼女の角が6本とも輝いてるっ!!」

地王:「何だと!?」

山神:「口を開けた! 彼女が口を開けたぞっ!!」

地王:「落ち着け、山神! お前だって永遠不滅の神々の一柱なんだぞ!」

山神:「あは…あははは…暁光帝の前で“神”に何の意味がある!? ああああ…光が! 彼女の口に光が集まっているっ!!」

地王:「そ、それは……」

山神:「破滅の極光(カタストロフバーン)!? 破滅の極光(カタストロフバーン)だ! もう駄目だぁぁぁっ!!」

地王:「落ち着け、山神! いいから、早く逃げろ! 何でもいいから逃げるんだ!」

山神:「ああ、お(しま)いだ…お終いだ……」

地王:「馬鹿っ! 何やってる!? 逃げろ! 早く逃げるんだっ!!」

山神:「地王、さようなら、さようなら、地王……」

地王:「やまがみぃぃぃぃぃっ!」

山神:「……………」

地王:「何ということだ……」




 それ以降、地王タニーテミャイバクトがいくら呼びかけても山神イヤヴィアーからの返事はなかった。

 『暁光帝、降りる』の一報はまたたく間に神々の間を走り抜け、神界に激震が走る。

 すぐさま主神によりリゼルザインド四天王が集められた。

 軍王、地王、海王、空王は善後策を検討したが、神界にできることはほとんどない。

 皆、表情が暗く、落ち込んでいた。

 神殺しの怪物(アストライアー)によって再び神が殺されたという、悪夢のような事実が告げられたのだから。








 2つの大陸に挟まれる内海、碧中海のペッリャ半島は南国らしい暖かくて雨の多い、とても豊かな土地である。

 険しい山脈が大陸と半島を区切る。山は万年雪に覆われ、沿岸諸国を流れる川の水源となっている。

 ペッリャ半島の南西、海を(のぞ)港湾都市(こうわんとし)リュッダは残念なことに雨が少なく、目立つ川もない。その代わり、雨水が石灰岩質の台地に()み込み、地下水となって()いてくる。とりわけ海岸線は湧出量(ゆうしゅつりょう)が多く、おかげで街の周辺は農業に適している。

 ペッリャ王国に属する港湾都市リュッダは半島は碧中海の貿易を(にな)う。

 海外、国内の交易も盛んで、街は平和で栄えている。王都と(くら)べられるほどに。

 しかし、よいことばかりでもない。ある時、とんでもない災難に見舞われたのだ。

 一頭の単眼巨人(キュクロープス)(ひき)いられた魔物の群れが襲ってきたのである。

 度重(たびかさ)なる襲撃を受け、ついに市壁の南西部分を打ち砕かれてしまった。

 領主も負傷し、街を守る兵士達にも犠牲がでた。

 そして、市壁の穴から魔物に侵入されて街は大いに荒れた。

 領主はこの時の傷が元で引退してしまう。しかも、国王が派遣した新領主が魔物に襲われる事件が相次いだ。

 その結果、リュッダの街は為政者のいない街になってしまった。

 だが、人間も負けたままでは終わらない。

 光明(こうみょう)ブジュミンド教会から聖女と冒険者が派遣され、魔物に戦いを(いど)んだのである。

 少なからぬ犠牲が出たものの、聖女の導きにより、ひとりの勇者が恐るべきキュクロープスを退(しりぞ)けてリュッダの街を解放した。

 勇者の名はジャクソン。孤児院の出で、姓のない、只のジャクソンだった。

 この功績が認められて叙爵(じょしゃく)され、ビアズリー姓を(たまわ)り、街の領主として取り立てられた。

 勇者から英雄に。

 孤児から貴族に成り上がった果報者(かほうもの)である。

 予算が足りなくて、市壁は砕かれたままで“瓦礫街(がれきがい)”などという汚名がついてしまったが。

 それでも英雄リュッダ伯、“ジャクソン・ビアズリー”の物語はハッピーエンドで終わったのだ。








 瓦礫街リュッダの中央、第一市壁に囲まれる地域は有力者や大商人などの富裕層が暮らす高級街だ。

 石造りのしっかりした屋敷が立ち並ぶ中、ひときわ目立つ城塞(じょうさい)がある。正確には(とりで)を兼ねた領主屋敷で“ドラゴン(キャッスル)”と呼ばれている。

 かつて、外敵からこのペッリャ王国を守った、偉大な竜騎士がリュッダの領主だった頃の名残(なごり)である。

 城壁に囲まれた質実剛健の建物で、大きく頑丈だ。壁を伝う緑の(つた)も歴史を感じさせる。

 「パパー、あさだよー!」

 「パパ、おきて!」

 「あなた、起きなさい!」

 元気な声が呼び覚ます。

 まどろみは深いが、朝日がまぶしい。

 マホガニー製の天蓋付きベッドから身体を起こす。

 彼は今日も幸せに目覚めたのだった。

 “瓦礫街”と揶揄(やゆ)される港湾都市リュッダの領主、ジャクソン・ビアズリー伯爵である。

 寝室は広く、天井は高い。貴族、それも領主の屋敷だから当然だ。(ぜい)()らした絨毯(じゅうたん)と調度品が豊かさを示す。

 平凡な顔付きだが、その肉体はたくましく、優れた剣技を修めている。背は高くなく、長身の妻よりもわずかに劣る。

 かつて、魔物の群れに包囲されたリュッダの街を解放して、領主に取り立てられた。

 本物の英雄である

 若いながらも地位と名誉と資産に恵まれていて、こっそり近づく愛人志願の女性も少なくない。だが、身持ちが固く、秘密の誘いもすべて断っている。

 『英雄、色を好む』の格言は当てはまらない。

 なぜなら、彼は幸せだからだ。

 「おはよう、パパの可愛い天使達♪ そして、ママ、愛してるよ!」

 ジャクソンは妻と娘達にキスして抱きしめる。

 娘は4歳と3歳で、可愛い盛りだ。

 母親に似てふんわりやわらかな金髪と鮮やかな青い瞳。赤毛のざんばら髪とハシバミ色(ちゃいろ)の目という自分とはずいぶん違う。

 ジャクソン要素が皆無だが、何ら、問題ない。

 可愛いからだ。

 ものすごく可愛いからだ。

 目に入れても痛くない。

 たとえ、妻が裏切っていて、この子達の父親が自分でなかったとしても愛する自信がある。

 それくらい愛してる。

 「ハイハイ、娘成分はたっぷり摂取(せっしゅ)したでしょう。これから大事な話があるので貴女(あなた)達は乳母(ねぇや)のところへいってらっしゃい」

 妻が無慈悲な命令を下すと。

 「パパ、またねー」

 「パパ、おしごとがんばってねー」

 ジャクソンの天使達はさっさと行ってしまった。

 「ああ、パパも頑張るよー」

 力なく手を振る。声に張りもない。

 でも、『パパは寂しいよ』とは言わない。目の前の妻が怒るし、娘達からも敬われたいから。

 それでも走り去る娘達を見て、自分はつくづく弱くなったものだと思い知る。

 筋力は衰えていないし、今でも強敵に斬りつけた剣技は健在だ。

 でも、心が折れた。

 かつては仲間の犠牲にすら動じないほどの勇者だったのだが、今は娘達から離れるだけで泣きたくなってくる。

 愛妻と結婚して、子供を(もう)け、家庭を得た“勇者”ジャクソンはもう勇者ではなくなっていた。

 今は敵が攻めてきたところで優秀な兵士も大勢いるので自分が戦わなくてもよくなった。兵士長も優秀なので、ジャクソン・ビアズリー伯爵が先頭に立つこともない。

 ジャクソンが勇者である必要はもうなくなっていた。

 今でも軽い訓練こそしてはいるが、せいぜい体力維持のためでしかなく、新たな技はもう覚えていない。

 何より、命が惜しくなった。

 愛娘(まなむすめ)達と、愛妻と、別れたくない。

 いつまでも一緒に過ごしていたい。

 だから、死にたくない。危険なことはもうやりたくない。

 だから、勇気が失せた。

 勇気を失ったジャクソンはもう勇者ではない。

 いや、もともと“勇気”なんてなかったのかもしれない。

 孤児として生まれ、物心着いた頃から孤児院で暮らし、誰からも愛されなかった。

 そして、たまたま体力に優れていたから“勇者”に抜擢(ばってき)された。

 だから、神父や聖女から『お前は勇者だ』『勇者は特別な存在だ』『どんな魔物も勇者には(かな)わない』と鼓舞されていい気なった。

 なっていただけだった。

 けっきょく、自分は勇敢だったわけではない。

 死ぬのが怖くなかっただけだ。

 勇気があるのと死を恐れないことは似てるようで違う。

 『勇敢に戦って死ねば天国へ行ける』と教えられて信じた。だから、さっさと死んで天国へ行きたかった。

 奮戦したのはせめて努力くらいは見せないと神に評価してもらえない、天国に行けないと思ったからに過ぎない。

 見せるために戦っていた。

 自分はこんなに頑張っているのだと見せるために。

 だから、馬鹿でかいキュクロープスと出会ってもひるまなかったし、全力で剣を振るえた。

 キュクロープスが自分を殺してくれるならそれでもよかったから。

 でも、運良く自分が勝ち、キュクロープスは逃げた。

 おかげで素晴らしい出会いに恵まれ、愛する家族を得られた。

 とたんに死にたくなくなったきた。生きていたくなってきた。

 天国なんてくそくらえ、だ。

 いや、天国はここにあったのだ。

 どうして神のために死ねよう。

 ジャクソンはもう勇者ではない。

 天使のように愛らしい娘達が笑っている。美しい妻がいてくれる。孤児院にいた頃、どれだけ望んでも得られなかった、あたたかい家庭だ。

 何物にも代えがたい。

 だから、彼は幸せだ。

 娘達の残り香(のこりが)を感慨深く嗅いでいると。

 「あー、あなたにも一応、告げておこうと思って」

 愛妻が呆れを詰め込んだ視線を送ってくる。

 そのような目で見られるのも仕方ない。

 もうジャクソンは事実上の引退者。家庭に入った男だ。たまに少し訓練して、美味いものを食べ、残りの時間は家族と楽しく過ごすことに当てたい。

 『功成(こうな)名遂(なと)げて身退(みしりぞ)くは天の道なり』と言うではないか。

 軍事でも政治でも成功者がいつまでも口を挟むものではない、それこそ老害なのだ。

 いや、ジャクソンはまだ20歳の若造なのだが。

 いやいや、若くても成功者なのだから引退していいのだ。

 「えーっと、あー…うん。あなたの、その大切な家庭が壊れかねない重大事件が起きたので、一応、(しら)せておこうかな、と」

 心を読んだ愛妻が不穏(ふおん)な話を語りだす。

 コンスタンス・ジェラルディーン・ビアズリー、生粋(きっすい)の貴族で前領主の親戚である。愛娘と同じ、ふわふわの金髪。男のあこがれを詰め込んだような、ドレスの生地をこれでもかと持ち上げる巨乳が(あで)やかな美女である。わずかだが夫よりも背が高い長身で、見た目にも迫力があり、若いながらも領主の妻としての貫禄(かんろく)は十分だ。

 「ほへ?」

 元勇者は口をポカンと空けた。マヌケ(づら)は勇者の面影(おもかげ)すら無い。

 “勇者”(あらた)め“英雄”ジャクソンだが、妻から十分に尊敬されているわけではない。

 キュクロープスを退(しりぞ)けて英雄となったジャクソンはその功績でこの街の領主にされたものの、もとより、剣を振り回すことしか能のない若造だ。軍事も政治も経済もわからない。

 そのまま領主として政治に(たずさ)わっていたら無能であることが露見して、いずれ排除されていたことだろう。蟄居(ちっきょ)させられるか、暗殺されるか、どちらも大して変わらないが。

 しかし。

 たまたま運良く、妻に出会って結婚した。

 たまたま運良く、妻が前の領主の親戚であった。

 その縁もあってか、たまたま運良く、妻が政治に明るかった。

 これらの幸運が彼の運命を変えてくれた。おかげでジャクソン・ビアズリー伯爵は今も一応、“領主”でいられている。

 つまり、瓦礫街の領主は事実上、ジャクソンの妻が担っているのだ。

 だから、ジャクソン本人は名目(めいもく)上の、“名ばかり領主”。妻が政治の実権を握り、ジャクソンがそれに権威づけする。そんな婦唱夫随(ふしょうふずい)の家庭なのである。

 ふつうなら、事実上の失職に心病(こころや)むかもしれない。

 だが、しかし、死ぬほど活躍した結果として得た、美しい妻と可愛らしい娘達に囲まれて彼はとても幸せだ。

 このジャクソン、全力で無職(ニート)生活を受け入れていた。

 神のために戦った。

 国のために戦った。

 民のために戦った。

 戦って、戦って、大勢が犠牲になった。

 先達(せんだつ)らは先に()き、仲間は傷つき倒れて。

 幸運にも自分がキュクロープスを退けて街を解放した。

 それだけだが、運もまた実力のうちである。

 文句は言わせない。

 『そして、勇者ジャクソンはお姫様と結婚して末永く幸せに暮らしましたとさ』

 『めでたし、めでたし』

 これでお終いである。

 断じて続編(パート2)はない。

 誰にも文句は言わせない。

 文句を言いたかったら自分の代わりにやってから言え。

 そもそも文句を差し挟めるのは先立っていった戦友(なかま)達だけである。

 もっとも、全員、墓の中だから何も言えまい。

 (たお)れていった彼らの分まで全力で幸せ(ニート)になる。

 決意を新たにした元勇者だった。

生まれて初めてプレイしたコンピューターRPGは『ドラゴンクエストⅢ』でした。

「しゃへるうまのエド」に言われた通り探しても「さいごのかぎ」が見つからず、けっきょくレベルを上げてアパカムの魔法で鍵を開けたのは私です(ToT)

さて、とてもおもしろかったのですが少々気になることが。

「戦士」「僧侶」「魔法使い」「商人」「遊び人」「賢者」、わかりますよ。

いや、「遊び人」って…とも思いましたが、遠山の金さんは遊び人の金さんですし、ありっちゃ、ありでしょう。はい、遊び人という“職業”です。

でも、「勇者」って何ですか?

そんな職業はありませんにょ。

「勇者」ってのは「勇敢な者」でしかありません。職業じゃないんです。

それしか意味がありませんから、槍一本でライオンに立ち向かうマサイ族の若者も、頼りにならないマザコン夫を尻目に横暴を重ねる姑に立ち向かう若妻も、与党でありながら内閣不信任案に賛成して総理に立ち向かう政治家も、ぜんぶ勇者です。

職業じゃないんです。

意志と行動なんです。

でも、『ドラゴンクエストⅢ』では“勇者”という職業でした。

勇者専用の武器、勇者専用の魔法がある、“ザ・主人公”でした。

ん〜〜〜

変。

それなら勇者じゃなくてせめて“英雄”だろうと。

でも、勇者が強敵と戦って人々を救うから英雄が生まれるわけで。

勇者は英雄の卵ですね。

じゃ、駄目じゃんwww 英雄も勇者も職業じゃないじゃんwwwww

このシリーズの世界観を考える上で、この“勇者”をどうするかなと悩みまして。

まず、存在はさせることにしました。

次にキャラクターを決めました。

後は能力と性格を決めて出来上がりですwww

初期設定だと…

無謀な若者:ジャクソン:勇者:1.74m:75kg

…となっていますwwww

14歳で教会のドアを叩き、15歳で冒険者学校を卒業して、神の祝福を受けて勇者になりました。

彼がどう活躍するのか、お楽しみに〜

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