暁光帝が裏社会観光ではしゃいでいる間に何か大変なことになっているようです(^_^;)
住民の虫歯について詳細なデータをもらった暁光帝♀は大喜び☆
あまりに嬉しかったので全力で報いました。
やたら気前がいいので基本、恩も恨みも倍返しです\(^o^)/
そこで美少女への性転換もヴェレ・フェミニファイじゃ飽き足らず、とっておきのヴェレ・アンドロギュノスにしたげましたwwww
曰く、「両方あるからお得感も2倍、2ばーい♪」だそうで(^o^)
これは楽しみですね。
そういうわけで。
これにて本章<<ついに登場! チンピラが挑む、最大最強の敵!>>は完結です。
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
それなら実践あるのみだ。
普通は初心者に魔法を使わせるために十分な訓練が必要だが、アスタの書き置きによれば状況は特殊だ。ここにいる紫の愛し子はすでに魔法の技術を導入されているらしい。
龍の巫女として主の言葉を疑う気はない。
「じゃあ、魔法を使ってみましょう。女司祭、よろしくて?」
そう言ってペネロペは庭の隅に転がった一抱えもある岩を指差す。
「ええ。よくってよ」
享楽神オヨシノイドの化身である女司祭が許可を出す。
内心、『よく“オヨシノイド”と呼ばなかったものだ』と感心している。
「アニョロ、溶かして」
爆乳乙女の命令はシンプルだ。
それで通じた。
やはり、アニョロは頭がいい。
「了解っす」
同じくシンプルに応え、少女は額の角に魔力を込める。
これを見て人々が驚く。
「おいおい、アニョロが魔法を使うってよ」
「まさか、あのおっさん…もとい、あの娘は呪文の1つも知らないんだぜ」
「一番かんたんな洗浄の魔法さえ使えなかったからいつも薄汚れていたんだよ」
周囲の民衆は口々に騒ぐ。
魔法には属性があり、相性が悪ければその魔法は使えない。そもそも才能がなければ無理なので生活魔法の洗浄さえ使えないようでは話にならないのだ。
けれども、アニョロは惑わない。
信心深い方ではないが、紫の聖女は信じる。
いや、彼女の実力を思い知っている。
彼女は絶対者。
彼女ができると言ったならできるのだ。
岩に向けて鋭い視線を投げかけると。
「ลูမီးกလုံးไฟ」
呪文を唱えた。それも長く複雑な呪文を圧縮した凝縮呪文だ。
当たり前のように唱えてはいるが、こんな文言は知らない。
いや、つい先ほどまで知らなかった。
だが、今は知っている。
どうして知っているのかさっぱりわからないが、心の奥底に刻み込まれている。その知識を引き出して舌に乗せるだけで“力ある言葉”が発せられた。
白く透き通って額からまっすぐ伸びる一本角は彼女とおそろい。その事実が不安を払い、心を支えてくれる。
魔力を込められた角が媒体となって魔気力線を放出し、少女の背後に浮遊魔法陣を描く。
ブォン!
何もかもわかる。どうすればいいのか、何をしたらどうなるのか。何で知っているのかわからないが、全てが紫の聖女の奇蹟だと理解している。
だから、不安はない。
背後に浮く魔法陣が起動して、魔力を魔法に変える魔幹が目の前に設定され、魔力場が現実を歪めてゆく。
「火炎魔球!」
宣言すると。
グフォォーッ!!
輝く紅蓮の炎が現れて球体となり、火球は目にも止まらぬ速さで突進する。
ボフォッ!
指定の岩に衝突すると渦巻いて燃え上がり、またたく間にドロドロの溶岩に変えて垂れ流し、平らに均す。
あっという間に岩のあったところは赤熱する溶岩の平面に変わっていた。
「あー、お前ら、冷えたように見えても近づくなよ。やけどすっからなー」
あっけにとられている仲間達に告げる。
「「「……」」」
しばらく反応がなかったが。
「ファイアボール!?」
「ファイアボールよ!」
「ファイアボールだ!」
「海軍の精鋭部隊にしか使えない魔法よ」
「それも5人がかりで長い呪文を唱えなきゃいけない奴だぜ! どうして1人で使えちゃうんだ?」
「アタシも見たことある! 観兵式のお披露目で今のと同じファイアボールが岩を溶かしていたけどね、ずっと時間がかかっていたし、魔導師が大勢で呪文を揃えていたわ」
「生活魔法も使えなかったアニョロがこんな凄い魔法を……」
「虫歯を数えてただけの冴えないおっさんが大魔導師になっちゃった!」
あまりのことに貧民窟の人々が口々に騒ぐ。
貧民達にとって魔法は憧れの的だ。
強い魔法が使えれば冒険者になれるし、軍に入隊して高給取りにもなれる。もちろん、魔法が使えなくても努力すれば冒険者や兵士になれるが、もらえる報酬が違うのだ。
規格外の魔法が使えるアニョロは冒険者パーティーからも軍隊からも引く手あまたになるだろう。もしかすると超特級の冒険者パーティー“紫陽花の鏡”からも声がかかるかもしれない。
人々は羨望の眼差しで元・醜男の現・少女を見つめるのだった。
跡形もなくドロドロに溶けて、赤熱の平らな地面になった岩を見て爆乳乙女ペネロペは驚いている。
「誰にも教わらず、何の訓練もなしでファイアボールを放ちますか……」
ファイアボールは修得難度の高い上級の精霊魔法だ。
それをアニョロは変化してすぐに放ってみせた。
素晴らしい能力だ。
けれども。
「さすがは紫の大聖女様。アスタさんの叡智はわたくしごときが推し量れるものではありません」
称賛する対象はアニョロではなくアスタである。
それも仕方ない。
ヒト族の魔導師であれば幼い頃から研鑽を積み、平均を越え、一流と呼ばれるようになって初めて会得する上級魔法だ。多くの魔導師がそこで打ち止めになり、その先に進むことができずに終わるのに。
呪文の1つも憶えていなかった、魔法のド素人だったアニョロが何の苦労もせずにそれを使えたのは誰のおかげか。
アスタが呪文や魔術式をアニョロに言葉で教えたのでなく、竜魔法で導入したことは明らかだ。
享楽神オヨシノイドも舌を巻く。
「ふぅむ…いきなり、最初の魔法で凝縮呪文に浮遊魔法陣かぁ…硬い岩が標的だから威力と範囲を強く狭くと調整した…と。えぇ、上々の出来栄えね」
アニョロの実力は本物だ。
見物人達が言うようにヒト族の魔導師では魔気容量が足りなくて、個人でファイアボールを撃てる者はめったにいない。たいてい、3〜4人がかりで時間もかかる。だいたい、行進曲を最初から最後まで聞くくらいの時間をかけてまだ魔術式の構築が終わらないくらいか。
ところが、少女は魔法陣の展開も素速いし、呪文による調整も完璧だった。本来は馬車ほどにも拡がって多人数の部隊を攻撃する火球を縮め、より多くの魔力を注ぎ込んでいた。
これをとっさにできる魔導師は少ない。アニョロの実力は軍のベテラン特級魔導師に匹敵する。
「その上、あの言語で唱えさせるなんて! それで思った以上に威力が上がっていたのね!」
女神は露骨に顔をしかめる。
少女が唱えた呪文『ลูမီးกလုံးไฟ』は天翼人語だったのだ。
特殊な呪文で魔法を発現させることで火球の熱量を増やした。それで硬い岩が融解して赤熱する溶岩に変わったのである。
もはやアニョロの肉体と精神を変えてしまったアスタの竜魔法が凄すぎて呆れるしかない。
もともと、魔法を制御する“呪文”というものはハルピュイア語で記述されていたのだ。しかし、あまりに難解すぎて他の人種に使えず、古エルフ語を用いて簡略化された経緯がある。それで獣人やヒト、もちろん、エルフも含めて普通の魔導師が使う呪文は古エルフ語で記述されているのである。
ハルピュイア語は原初の呪文を記述した竜語“ドラゴンシンボル”と一対一対応しているので他の人種には馴染みづらく、超種族ハルピュイアにしか扱えない。
その分、同じ魔気の消費量でも威力が高くなるという優れた利点がある。
「あー…うん、あの呪文で起動すると上級の精霊魔法で1.5倍以上か……」
今回、アニョロの脳に導入された呪文がハルピュイア語なのはアスタが竜種だからだろう。
その竜種を含め、幻獣は魔法を使うのに呪文を唱えない。必要ないからだ。
“呪文”というものは人間にも魔法が使えるよう始原の魔導師アストライアーが編み出してくれた仕組みである。遠い昔のことであり、当時から竜種と交流のあるハルピュイア族に向けて用意された、最初の呪文は当然のように彼女達の母国語であった。
だから、今回、魔法が使えるようにアニョロを変えてあげた際、アスタは手っ取り早く馴染み深い言語を採用したのだろう。
単なる性転換の魔法のはずが何をしてくれているのやら。
しかも、これでまだアニョロはずぶのド素人なのだ。これからどこまで成長するのか、全く以て末恐ろしい少女である。
「ふぅ……」
ついついため息を漏らしてしまう。
これほどまでに高い魔法技術を一瞬で人間の脳に刻み込んだアスタの竜魔法“真なる半陰陽化”が信じがたい。
もちろん、翼を羽ばたかせて飛べるようにしたり、尻尾を自由自在に動かせるようにしたり、そういった能力を与える方が魔法技術を覚え込ませるより難しいだろう。
それにしても、だ。
「凄いわー」
天を仰ぐ。
アニョロの魔法が驚異的で素晴らしいことは間違いない。
そして、同時にそれは脅威でもある。
「はい。今のアニョロは人間の殺し方を1万通り教わって殺すための武器も与えられた子供…まぁ、元が元ですから“素人”ってところでしょうか」
恐るべき爆乳が揺れるさまは内心の動揺を表しているのか。龍の巫女ペネロペは困惑している。
中身が中年のおっさんなのだけれども、現在のアニョロは少女だ。少なくとも人殺しとも幻獣退治とも縁のない、素人の住民であることに変わりはない。
非常に貴重な人材であり、紫の聖女アスタの愛し子である。
少女がどれだけ強かろうと人間を殺してショックを受けたり、幻獣に対応できずに死なれては困る。
自分が面倒を見てやらねばなるまい。
「はぁ……」
仕方ないかとため息を吐きつつ。
「紫の聖女様に見込まれたのですから、貴女の身は天龍の代理人たるわたくしが預かります。家族ともどもここへ引っ越してらっしゃい」
命じる。
施療院の主である享楽神オヨシノイドの許可も得ずに。
しかし、それでも。
「あぁ、それはいいわね。そうしなさいな」
施療院の主はあっさり認めるばかりか、提案に賛意を示し、勧めてくる。
「そいつぁ、ありがたいっす。ぜひともお願いするっす」
そして、アニョロは二つ返事で受け入れる。
自由民なので日々の仕事は職場に行って働いて日給をもらうだけなのだ。契約書も作らないし、普通の自由民はそもそも文字が読めない。全て口約束、その場の契約で働く。
だから、気楽なものである。
そんな感じで自由だから自由民だとも言える。
現金収入が限られていて不安定だから税金を課されることもないし、徴兵の義務もない。意欲があれば努力して出世できるし、なければヒト奴隷になってもいい。どちらにせよ、暮らしてはいける。
瓦礫街リュッダはこういう街だ。
為政者としてもそれでいいのである。
できれば、住民には市民になって税金を納めてもらいたい。
だが、それが望めないのであればとにかく生きて暮らしていてくれればそれでいい。自殺されたり、暮らしていけなくて野垂れ死なれるよりはよほどマシなのだ。
人口が国力に等しい、
これぞ、エレーウォン大陸の常識である。
享楽神オヨシノイド、天龍の代理人ペネロペ、紫の愛し子アニョロ、三人の乙女達はここに合意を得た。
1柱と1頭は便宜上でしかない“乙女”であるけれども。
残る1人もつい先ほどまでブサイクなおっさんだったけれども。
「妹達も喜ぶっす」
元・醜男の現在・美少女は大いに喜んでいる。貧民窟のあばら家で狭い畑を耕すよりもずっと腹いっぱい食べられるだろう。
天龍の代理人が雇い主なら金払いもいいだろうし、雨が漏れないしっかりした屋根の下で妹達も安心して眠れることだろう。
もしかすると麦わらを敷いたのではなく、柔らかい布のベッドを用意してくれるかもしれない。
いや、それはいくらなんでも贅沢すぎる。
いずれにせよ、ペネロペの提案のどこに不満があるというのか。
アニョロが来なくなって職場は困るかもしれないが、『毎日、そこで働きます』なんて契約書もないし、約束もしていない。自由民だからと安い賃金でさんざんこき使ってくれたのだから恩もない。
『会計の補助なんて要らない』とも言っていたし、正規の会計士がいるのだからせいぜい頑張ってもらえばいいだろう。
「で、具体的に何をやらせるのかしら?」
「彼…もとい、彼女には荒事を任せようと思います。素手の格闘戦が強そうですし、憶えがいいのですぐに剣も魔法も使いこなすことでしょう」
女神の質問に爆乳乙女が答える。
自分は聖女であり、切った張ったの荒事には関わる気がない。
そこでアニョロの出番である。
暁光帝の寵愛を受けてとんでもない強さを身に着けているから、何の訓練もしていない今の状態でも並の冒険者より強そうだ。
都合がいいから荒事は全部任せようという腹積もりである。
「フフ……」
自然と笑みが溢れる。
自分の傍なら人間を殺してしまうことも幻獣に襲われることもないからだ。
なぜなら、万が一、アニョロが人間を殺してしまったとしても、自分なら魔法で生き返らせられるから結果として死なない。
また、同じく万が一、町中で幻獣が襲ってきたとしても自分なら彼らと対話できるので争いにはならない。
よしんば、万が一の万が一、億が一に話の通じない乙種2類の幻獣が襲ってきたのなら話はさらにかんたんになる。龍の巫女の自分がぶちのめしてしまえばいいのだ。
「むぅ……」
そこまで考えて少しだけ顔をしかめる。
人々から野蛮で獰猛なドラゴンと誤解されている暁光帝、大切な主の汚名を雪ぎたい。それを考えれば暴力を振るって幻獣を退けるなど言語道断だが、背に腹は変えられぬ。アニョロを失うわけにはいかないのだ。
やはり、今や自分も竜種の一員、心が暴力的になってしまったのだろうか。いつの間にやら、暴力を忌避しなくなってしまっている。
単純に聖女の美しいイメージを損ねたくないから荒事に関わりたくないだけ。
もしも、突然、何者かに殴りかかられたら脊髄反射でぶちのめしてしまいそうで怖い。
用心せねば。
考え込んでいると、女神は新たな提案を話してくる。
「それなら冒険者学校に通わせるといいわね」
「なるほど、それはよろしゅうございますわ」
オヨシノイドの提案に一も二もなく賛成するペネロペ。せっかく読み書き計算ができるのだから、それも含めて対応力を身に着けてもらおうと考える。
「費用と食事代を受け持つから妹達と一緒に冒険者学校に通いなさい。もちろん、勉強した分の賃金も払います」
これまたシンプルに命じる。
「了解っす」
そして、これまた一も二もなく引き受けたアニョロである。
勉強して賃金がもらえるなんてありがたい。しかも、食費までもらえるとか、更にありがたい。
妹達も読み書き計算ができるようになれば将来は安泰だろう。
「わたくしが思うに貴女は格闘も魔法も技術を学ぶ必要はないでしょう。でも、強いだけでは困ります。攻め時と引き際、そもそも戦うべきか、言葉で話し合うべきか、その辺の見極めに慣れてもらわなくては」
龍の巫女は現実の荒事に対応できるよう求める。
「なるほど、承知したっす」
少女の方も納得する。
今の自分は物凄く強い。強いが、力の使い方を知らない。いくら自力救済が世の習いと言っても、何でもかんでもぶん殴ってお終いにするわけにはいかないことを中身がおっさんの少女は理解しているのだ。
「それで……」
ついっと女神が話題を変える。
「性転換したおっさん達…もとい、真なる女体化を受けた美少女達はみんな強い魔力を持つの?」
どうも単なる性転換ではないようだと当たりをつけて尋ねる。
旧友が創り出した謎の竜魔法ヴェレ・フェミニファイはこれまで美少女ばかりを生み出している。これもおかしい。元がおっさんだし、醜女が生まれて当然なのに。
「ええ。アスタさんは後から文句をつけられるのが嫌いですからね。あらかじめ、夢幻魔法の以心伝心で相手の希望、自分が本当に憧れる女性のイメージ、“内なる女性”を観測した結果を反映させているんです」
女体化の実態について細かい部分を爆乳乙女が解説する。
「だから、必ず本人が思い描いた通りの美少女になるし、魔法を操る能力も高くなります。だって、それが彼らの願望ですからね」
シンプルな説明だ。
いい歳して結婚できなかった醜男達が長年、心の中で思い描き、育ててきた理想の美女のイメージ、“ど真ん中”こと“内なる女性”だ。それを夢幻魔法テレパシーで読み取り、ヴェレ・フェミニファイの女体化モデルとして参照する。
「なるほど、その方法なら美少女しか生まれないわけだわ」
オヨシノイドは大いに納得する。
女体化を望む男達は生活魔法が使えなくて不潔だから若い女性から嫌われていた。魔法に強いコンプレックスを持ち、優れた魔導師に憧れている。それが“内なる女性”にも反映され、これまた竜魔法ヴェレ・フェミニファイに参照される。
「アニョロほどではありませんが、初期の魔気容量が妖精人並みで必ず2つ以上の魔法適性を得るようになります。研鑽を積めばヒトとしては破格の魔導師になることでしょう」
とんでもなく強力だが、魔法の能力そのものはあくまでも“ヒト”という人種の範疇に収まる。魔気容量がエルフ並みであっても魔法の適正自体は限定されるわけだ。
「う〜ん…かなり強力ね。それなら数を揃えれば……」
フォモール族の侵攻にも十分対応できるとオヨシノイドは目論んだ。
瓦礫街リュッダはおっさん達にとって故郷であり、友人や親戚も多い。
郷土愛に燃える魔法少女の軍団が編成できれば女神の助力がなくても街の防衛が叶うことだろう。
それなら神々の法律に抵触することもない。
女神としても願ったり叶ったりである。
「けっこう。大変けっこう」
享楽神は諸手を上げて歓迎する。
しばらくして1柱と1頭はくだんの1人がいないことに気づいた。
民衆は女司祭と天龍の代理人を囲んでおとなしく待っている。
症状や悩みが軽い者らは向こうで人化して聖女に化けた一角獣と女精霊に診てもらっている。
総じて人々は落ち着いている。
「あぁ、トイレに行ったんだわ〜」
女司祭に化けたオヨシノイドが視線を巡らせ、トイレでかがむアニョロの姿を見つける。
さすが女神の神眼、トイレの壁くらいは透かして見ることができる。この透視能力だけ見ればアスタの虹色の瞳よりも凄い。
「話に夢中で気づきませんでしたわ」
どうやら1柱と1頭で難しい話をしていたから自分の生理現象を処理しに行ったらしい。龍の巫女ペネロペはわずかに眉をひそめる。
大したことではないが、アニョロを預かった身として自分の不注意を恥じたのだ。
「でも、まぁ、ああ見えていい歳の大人ですからね。トイレに行くくらいなら……」
『何のこともない』と続けそうになったが、それは突然の悲鳴に中断される。
「ん? んん? あんぎゃぁぁーっ!? 何じゃあ、こりゃぁっ!?」
怪物の咆哮のような絶叫が上がった。
アニョロの入ったトイレから。
「え!? 何? 何ですか!?」
少女の身に何か起きたのか。さすがの龍の巫女もあわてる。
とっさに思考を巡らせる。
「竜魔法が上手く機能しなかった? 今になって不都合が生じた? いや、まさか!? アスタさんの魔法に限って失敗などありえないわ!」
色々考えたが魔法そのものに支障が起きたとは考えにくい。何しろ魔法を掛けたのが“紫の聖女”ことアスタ本人、始原の魔導師アストライアーなのだ。
失敗などあろうはずがない。
あるはずがないのに何か不安が残る。
「ふん!」
ブォン!!
少女の身体を案じて右手に魔力を込める。
人間を辞めて龍の巫女になったペネロペは魔法を使うのに魔術杖を必要としない。自分の肉体の一部を魔力の媒体として用いることができ、呪文の詠唱も魔法陣も要らないのだ。
「とりあえず、完全なる回復を……」
とっさに強力な回復魔法の準備をする。最大級すら超える、幻獣専用の魔法を。
だが、腕を掴まれ、制止される。
「ダメ! 今はダメ!」
腕を掴んだ女神が非常に困った顔をしている。
「えっ!?」
何が起きたかわからず、ペネロペは当惑するばかりだ。
とりあえず、プレナ・レクペラティオの魔法は要らないようなので魔力を体内に戻す。
「あの娘はね、見ちゃったのよ。ほら、ズボンを下げたでしょ。だから自分の……」
神眼で壁を透視して観察していたオヨシノイドは何が起きたかわかるのだ。
「あ! そういうことでしたか。それは確かに……」
目を丸くした爆乳乙女はトイレの方を見つめて何も言えなくなっている。
アニョロが受けた竜魔法は“真なる女体化”ではなく“真なる半陰陽化”。
その意味が少女に伝えられることはなかった。
32年間、純粋であり続けたというか、純潔を守り続けてきた醜男にも尊重されるべきものがある。
口には出さなかったものの、1柱と1頭は目で語り合い、互いに了承していたのだ。
真なる半陰陽化がもたらした“モノ”を少女がどう使うのか、はたまた、使わないのか。
それは享楽神や龍の巫女が与り知るところではないのだから。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
アニョロは見事に肉弾バトル系の魔法少女に変化させられてしまいました。
もうヒトをやめちゃったんでめちゃくちゃ強い。
何の訓練もしていないけれど魔法も格闘技もバリバリいけちゃいます。
まぁ、人間の範疇で、ですけどね。
ヒトはやめましたが人間はやめてません(^_^;)
魔気容量はエルフを遥かに越えて膨大だし、魔法適正はハルピュイア並みにめちゃくちゃ広いんですが。
幻獣専用の魔法は使えませんし、一度、魔力切れを起こすと安全な場所でしばらく休まないと魔力が回復しません。
なので、能力は完全に人間を辞めているドラコシビュラのクレメンティーナやペネロペには劣ります。
この2頭は幻獣専用の魔法も使えますし、魔力も一瞬で回復するので魔法も使い放題なので凶悪です。
それに対してアニョロは本人の性格もあって活躍は控えめ? 中身が中身なのでどうしても慎重なんですね〜
けれども、瓦礫街リュッダの治安維持は自力救済なので\(^o^)/
どうしてもバトル展開になってしまうことでしょう。
とりあえず、アニョロは今までの職を辞めて、オヨシノイド施療院で天龍の代理人ペネロペの下に就きました。
妹達もいっしょです(^o^)
ここなら食べ物にも困りませんし、雨漏りもしない、安全で快適に暮らせますからね。
仕事は冒険者学校で勉強することwww
アニョロにとって勉強は経験値稼ぎみたいなものですからあんまり苦痛に感じません。
幼い妹達もいっしょです。
まぁ、この三姉妹は読み書き計算ですけどね。
アニョロ自身も戦闘技術そのものについて学ぶことはあんまりありません。
魔法も格闘技も暁光帝♀が脳に直接インストールしてくれてますからwww
でも、剣術がすっぽり抜けていますし。
また、引き際と攻め時もわからないのでその辺は学ばないといけません。
現実の荒事に対応しようとするとそのへんが厄介なんですよね〜
できれば、荒事に発展させず、穏便にすませて欲しいところ。
そのためには脅しや嘘も要るでしょう。
只、暴力に訴えられたから殴り返しただけじゃ、困るのです(^_^;)
その辺を含めてペネロペの言う「荒事への対応を任せたい」発言ですね。
ちなみに暁光帝♀はこれができませんwww
ドラゴンなのでwww
暴力は常に0か、1か。
平和的に対話で処理するか、ぶちのめして地べたに這いつくばらせるか、2つに1つなのです。
中間がありません。
にこにこ笑って話し合いながら、相手が脅しを掛けてきたり、直接の暴力に訴えてきた瞬間、いきなりぶちのめします☆
それこそ反撃の方を先にやるくらい朝飯前ですwww
「相手が殴りかかってくる気配を感じたからぶちのめしたんだよ」「うん、やられそうだったんで先にやり返したんだよ」くらいは言います。
それも瞬時に笑いながらやりますね。
まさしくにこにこ顔面パンチです☆
もちろん、嘘も吐きません。
相手が嘘を吐いて騙そうとしたら?
その場で交渉決裂!…というか、情け容赦なしでぶちのめします☆
ドラゴンですからwww
こんなドラゴンだから人間との仲立ちを担うドラコシビュラが要るんですね〜
今回、ペネロペにはアニョロという有能な人材も配下に就いてくれたのでかなりやりやすいことでしょう。
あと、魔法の呪文について作中で十分に表現する余地がなかったんですが。
始原の魔導師アストライアーが人間にも魔法が使えるように起動を含めて魔法の制御を担う“呪文”を開発しました。
人間というか、ずばり、ハルピュイア族のためにwww
なので、“原初の呪文”は竜語”ドラゴンシンボル”で記述されていました。
その後、これと一対一対応する言語体系であるハルピュイア語に翻訳されたものが“最初の呪文”ということになります。
この魔法の下賜という偉業をハルピュイア族は大変ありがたがり、同時にドラゴンの文化を学び、そして、尊重しました。
それで今でも竜語“ドラゴンシンボル”に近いハルピュイア語の呪文を使っているのです。
ちなみに、竜語をそのまんま一対一対応で翻訳したので本来、人間の言葉には翻訳できない単語や言い回しが大量に含まれています。
魔法の制御コードや宣言コード、命令コードだけでなく、「翼を羽ばたく」とか、「鉤爪で叩き切る」とか、「全部の牙で噛み砕く」とか、「ドラゴンブレスで焼き尽くす」とか、「尻尾で粉微塵に打ち砕く」とか、用言もだいぶヤバイのがそのままハルピュイア語になっていますwww
でも、そのおかげで魔力を魔法に変換する力率が非常に高く、お得です♪
古エルフ語に翻訳された現代の呪文はその辺が曖昧なので魔力を魔法に変える過程で“漏れ”が生じ、損失になっちゃうんですね〜
だから、上級の精霊魔法で威力が1.5倍以上も違うなんて現象が起きてしまうのです(^_^;)
ちなみに特級や超特級の精霊魔法ではさらに差が広がってしまいます(>_<)
で、本作、最後のオチですが(^_^;)
小生、もともとが半陰陽エロティシズムが主戦場なのでwwww
百合♀×♀作品も大好きで半陰陽作品も同じくらい好き。
けれども、百合♀×♀作品と違って半陰陽作品ってエロティシズムの中でしか輝けないんですよね〜
他のジャンルだとかろうじてギャグ作品くらいでしか活かせない。
そういうわけで、今回、ギャグになりました\(^o^)/
小生が初めて百合♀×♀作品に出会ったのは少女コミック掲載『しあわせ半分こ』(高橋千鶴1979年)でしたか。コミックス版は1980年あたりでしたが、雑誌掲載はたしかそれくらいの時期。
それでほぼ同時期に半陰陽作品に出会ってるんですよね〜
プリンセスに掲載されたギリシア神話をテーマにした作品で神々の伝令ヘルメースと美の女神アフロディーテーの息子ヘルマフロディートスが泉の女精霊サルマキスに恋慕されてしまい、強引に合体させられて“ヘルマキス”ってゆー両性具有者になってしまう物語でした。
やっぱり、性的な表現については少女漫画の方が少年漫画よりもアグレッシブですね〜
直截的な表現ではないものの、“そういうの”は描かれていましたから、えらく刺激的で面白いと感じましたっけ。
母方の従姉妹の蔵書だったんですけどね。
ちなみに従姉妹は『ベルサイユのばら』にハマってました。
強い女性が好みなので小生も読みましたが……あんまり重いのは苦手。
でも、他に読むものがなくて『ベルサイユのばら』は何度か読み返した作品ではあります。
もちろん、“ヘルマフロディートス”の漫画はその十倍くらい読み返していましたけどねwww
アニョロと三姉妹はこのままオヨシノイド施療院に住み込みで働くことになります。
冒険者学校に通って学ぶのが仕事ですが、アニョロ自身は荒事に対応したり、聖魔法による奇蹟も担います。
ヒト族からしたら目が飛び出るくらいの強烈な魔気容量がありますし、聖魔法の適性もしっかり備えていますからね。
ペネロペのように連発こそできませんが、十分、補助は務まります。
今後も活躍してくれることでしょう。
もっとも、ご期待に答えられず申し分けありませんが、半陰陽の要素を活かせる物語展開は難しゅうございます。
何しろ、エロティシズムか、ギャグにしか、使えない要素なので……
さて、そういうわけでこの章<<ついに登場! チンピラが挑む、最大最強の敵!>>はこれにて完結です。
またしばらくは著者が執筆に励みますので次をお楽しみに〜〜
次の章は<<えっ、下級貴族が平民をいじめる? 貴族が治める地方都市に他の貴族なんて住んでるわけないっしょwww>>(予定)です。
請う、ご期待!




