そういや、何かしたんだっけ? 何だったかなぁ…色々ありすぎて暁光帝は憶えてませんにょ(汗)
我らが主人公♀、暁光帝は裏社会観光を満喫しています。
ア、ハイ。
そういうわけで実は本章<<ついに登場! チンピラが挑む、最大最強の敵!>>、すでにもう完結しているのです。
章のラスボス、チンピラエリートのマルティーノもぶちのめしちゃいましたからね。
ギュディト百卒長がwww
だって、マルティーノって本物の勇者だったんでwww
にこにこ顔面パンチが効かない強敵でしたね(^_^;)
まぁ、そういうわけで章が終わったんで残りのエピソードもなくなってしまい「またしばらくは著者が執筆に励みますので次をお楽しみに」って文章が連なるはずだったんですが。
何やら忘れ物がありました。
今回も暁光帝♀は活躍しまくりでいろいろやりましたからね。
はてさて、何かやり残したことはあったんでしょうか。
そういうわけでここから章の最終話までの3つのエピソード、暁光帝♀が出てきませんww
暁の女帝様ご本人は本編そっちのけで遊んでます。
代わりに享楽の女神オヨシノイド、天龍の代理人ペネロペ、それにもう1人が活躍します☆
もう1人?
さぁ、一体、誰なんでしょう?
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
少し時間は遡る。
アニョロは貧民窟で暮らす中年の醜男だった。
生まれつき頭がよかったことが幸いしてほぼ独学で読み書き計算ができるようになった。
家が子沢山ではなかったのでしっかり食べることができた。おかげで立派に成長して大男になった。
もっとも、生活はあまり楽ではなかった。
まだ幼い三つ子の姉妹を残して両親が夭逝したため、自分1人で面倒を見てやらねばならなかった。ろくな稼ぎがなかったので食べるだけで精一杯だったのだ。
努力した分、自分は報われるべきだという想いが会計の仕事にこだわらせたことも否めない。
市民権を持たない自由民だったため、偏見を持たれ、せっかくの計算能力も活かせず、安い賃金でこき使われていた。能力が優秀でも正規の会計士の補助に留め置かれていたのである。
やはり自由民は信用に欠ける。
『腹がくちくなるまで食べたければ一家まとめて奴隷になるか?』とも誘われた。しかし、自主独立の気風が強い家庭に育ったので、奴隷になってまで生活を楽にしたいとは思わなかった。
食べることで精一杯だったが、会計の仕事よりも力仕事が多かったせいでたくましく育った。肉体的にはけっこう恵まれていたのだ。
だが、魔法の才は一切なく、最低限の生活魔法も使えなかったのでどうしても身なりが汚くなる。
妹達にしっかり着せることを優先していたから自分は汚い古着を着ていた。貧しくて刃物が買えなかったので伸び放題の髭モジャになり、不潔な頭皮が髪を逃してしまい、だいぶ薄毛になってしまった。
立派なヒゲ&ハゲ&マッチョのおっさんの出来上がりである。
不潔な醜男が若い女性にモテるわけもなく、しばしば三姉妹にからかわれながら心配もされていた。
もう一生、嫁が来てもらえないのではないかと。
それで人生を悲観しながら日々を送っていたのだが、ある日、とんでもない噂を聞いた。
『今、オヨシノイド施療院にとんでもない美女のとんでもない聖女が現れてとんでもない奇蹟を連発している』、と。
“とんでもない”という言葉が繰り返される表現が気になったインテリ醜男だったが、暇だったし、妹達から『臭い』と言われたし、嫁もいないので“とんでもない美女”を拝みに行くことにした。
娯楽に飢えた貧民窟の住民達の間では“美人”というだけで崇拝の対象になるのだ。
出かけた先で見たものは噂をぶっ飛ばす信じがたい光景だった。
そして、アニョロ自身もそれまでの人生がひっくり返るほどの体験をすることになったのである。
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紫の聖女が立ち去った後もオヨシノイド施療院の喧騒は続く。
「腕が、腕が動くようになった! あぁ…素晴らしい!」
「死ぬと思ってた! もう明日の太陽は拝めないと諦めていたんだ!」
「歩ける! 歩けるぞ! もう1人でどこへでも行けるんだ!」
「もう胸も腰も痛まない。理想郷が来る……」
「あの女性、ホント凄いわ…病も怪我もあっという間に治しちゃうんだもの!」
「天龍の代理人様は気前がいいなぁ…これだけの奇蹟に一銭も要求しないんだから」
「ペネロペ様を見ると神々のケチっぷりがよくわかるな」
「他の施療院じゃ、カネを払わないと虫歯も治してもらえないのよねぇ」
「でも、紫の聖女様も代理人様もオッパイを差し出さないといけないんだぜ。俺、玉と竿しかないんだ」
「まだ言うか、下品な奴め! さっさと死ねぃ!」
耳が痛くなりそうな騒ぎだが、衛兵達がやってきて懸命に人々を鎮めている。
目を見開くような奇蹟が次々に披露され、人々は幸せを噛み締めている。
暁光帝が創り出した、新たなる龍の巫女は凄まじい。
途方もない魔力も素晴らしいが、まるで巨大化したドングリが2つ胸に付いているような、とんでもない胸乳が布地を突き上げている。
謎の言葉“爆乳ロケット型”で崇められる乳房だ。
乳当てが引き裂けてしまったものの、驚異の胸乳は形が崩れず、絶大な存在感を示している。
「はい、お終い。くれぐれも後から文句をつけないよーに」
天龍の代理人ペネロペは崇拝する聖女を同じ決まり文句で締める。
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
「おねえちゃん、ありがとう」
瀕死の重病人だった子供は元気に起き上がり、母親と一緒に礼を述べる。もっとも、病による衰弱は治っていないし、母親に教わらなくても自分が病気で臥せっていたことを憶えている。
驚異的ではあるが、アスタの時間魔法とは違う、普通の聖魔法による治療であることは明らかだ。
それでも結果はほぼ同じ。
無知蒙昧な大衆には違いがわからぬ。
だから、オヨシノイド施療院を訪れた貧民窟の人々は拝んで祈る。
紫の大聖女アスタを崇めたように。
真摯で潤沢な祈りは全て享楽神オヨシノイドへ向かい、女神を大いに満足させている。
もちろん、対価はもらう。
偉大な魔法を無料で提供してはいけないのだ。
「こんな年増女で申しわけないのですが……」
娘の母親がおずおずと差し出すも。
「乳に貴賤なし」
一切、ためらうことなく、大切なものを扱うようにペネロペは相手の胸乳に触れる。
「あ…あぁん……」
優しく揉みしだかれ、母親は嬌声を抑えられない。
「ふむ…乳房価値が8.96ptrnで魔力に換算すると933gdrと…そこそこの値ですね」
大きな声で告げて。
「とてもよかった♪」
抱きしめて耳元に囁く。
「あ…ふ……」
母親は頬を染めて下がる。
「ママ、いろっぽい☆」
娘が喜んだ。
さすがは爆乳乙女ペネロペ、竜種のアスタよりも愛の手管に長けている。
艶やかな♀×♀の様子を見て胸中がうずいてしまった貧民達だったが、具体的な数値を聞いて大いに盛り上がる。
「おぉっ! 933ゲーデルかぁ、なかなか凄ぇ!」
「最大級には及ばないものの、特上級の魔法を使ってお釣りが来る!」
「そんなに凄いの? 素晴らしい☆ これでまた多くの人々が救われるわ♪」
「乳房経済だ! 乳房経済が確立されてしまったんだ!」
「おカネじゃないのね。もう立派なオッパイだけが人々を救うんだわ……」
「お前ら、ボサッとしてねぇで立派な胸の女を探してこい! そいつが俺達の家族を救うんだぞ!」
計算ができる人々が騒ぎ、その興奮が周囲に伝搬してゆく。
急激に価値観が変わりつつあった。
カネがなければ何もできない、カネさえあれば何でもできると言った拝金主義の風潮が揺らいでいるのだ。
しばらくして小さな変化が起きた。
龍の巫女の鋭敏な魔気感知に触れた者がいるのだ。
「さて、これから大事な話があるので皆、待っていなさい」
何者かの気配に気づき、爆乳乙女が厳かに命じると。
「ハハァー!」
「ありがたや! ありがたや!」
「代理人様のおっしゃる通りに」
人々は平伏しておとなしく事態の推移を見つめる。
そして、民衆が従順な様子を確認すると。
「来ましたか、聖女の愛し子よ」
ペネロペは振り返り、やってきた人物を見つめる。
「へぃ…あっしはアニョロって言いやす」
少女は話す。
「さっき、あっちで紫の大聖女様から奇蹟をもらいやした」
品のない言葉遣いは変わっていないものの、少女の声は可愛らしく、元の姿は見る影もない。
つい先ほど、ペネロペが見たときはずいぶんと頭髪の薄い、禿げかけた、筋骨隆々のブサイクな大男だった。わずかに残っていた髪から察するにその色は暗褐色だったらしい。典型的なハゲ&ヒゲ&マッチョの醜男だった。
ところが、今では見目麗しい乙女に性転換している。
本人の言った通り、アスタから奇蹟を授けられた。女体化の魔法をかけられて目の覚めるような美少女に変化させられたのである。
「先ず、己を確かめるべきでしょう」
爆乳乙女は紫の手鏡を渡す。
「うぉっ!? これが…あっし……」
少女は鏡に映る自分を見て驚愕している。
「やったぁ! ハゲてない!」
藤色の髪に触れて歓喜の声を上げる。背中の中ほどまで伸びるストレートのロングヘアーだ。落ち着いた感じで美しい。
「いえ、髪よりも他に目を向けるべきかと…って、えぇ!?」
「花盛りの14歳ってことだけど、いろいろサービスがあるわね…14歳!?」
爆乳乙女ペネロペと女神オヨシノイドの両方から驚かれてしまう。
1頭と1柱は目を丸くしている。
それほど驚くべきことがあるのか。
「むむ? 何やら胸が重いような…うぉっ!? 凄ぇ!」
胸元を覗いたアニョロもまた目を丸くする。
巨大なボールが2つ、胸にくっついていて、貫頭衣の布地を突き破らんばかりに押し上げている。
「デカい!」
「説明不要!」
1柱と1頭は絶句している。
さすがに自ら大きくしたペネロペには及ばないものの、少女アニョロの胸乳は破格だ。
弾むボールは少女の頭よりも大きく、服では隠しきれない。早急に乳当てが必要だ。
「うぅ…これもサービスのうちなんっすね」
アニョロはめまいに襲われる。およそ14歳の少女の胸に付いていていいサイズではない。
「夢にまで見たオッパイが自分の胸に付いているとは……」
運命の恋人に出会えず、長い年月の間、独身を貫いてきた元・醜男の現・美少女は歓喜に打ち震える。
デカすぎる胸乳も藤色のロングヘアーも紫の大聖女アスタ様のご意向であることに疑いはない。何しろ、聖女様は率先して乳房経済を拓いたのだから。
花盛りの“14歳”という年齢もそうだ。
幼い三姉妹を育ててきた時間が無意味であるとは思わないが、全くモテず、結婚できないことには強い不満があった。このまま、家族も持てず、老いさらばえて朽ちててゆくだけの人生かとも絶望していた。
せめて、妹達だけでも幸せにと夢見ていたが、自身のことは諦めきっていたのだ。
そんな絶望と諦観が根底からひっくり返っていた。
若返っている。
それも花盛りの乙女に。
失った青春をもう一度、やり直せるのだ。
何と気前のいい聖女様だろう。
「サービスがいっぱいじゃぁ!」
感動して叫んだ。
もう幸せで胸いっぱいである。
だが、しかし。
「あー…感激しているところ、悪いんだけどさ、サービスは若返りだけじゃないわよー」
女神が難しい顔をしている。
「へ?」
言われてアニョロがよく見ようと動かしたら。
がっ!
手鏡が何かにぶつかったのだ。
「ん? うぉぉっ!? 何じゃぁ、こりゃぁっ!?」
叫ぶ。
手鏡がぶつかったもの、それは少女の額から生えてまっすぐ伸びる角だった。
「角だけではありません。尻尾と翼も生えてますよ」
爆乳乙女からも注意を促される。
「どっひゃぁぁー!!」
元・醜男の現在・美少女は腰を抜かさんばかりに驚く。
「まぁ、驚いてばかりいても…アスタから書き置きを預かっているので読んでみましょ」
享楽神オヨシノイドは旧友の書いた取扱説明書を読む。
「ふむふむ、アスタによると…そこのおっさん、もとい、女の子から凄い資料をもらったからお礼に特別なサービス付きの真なる半陰陽化をかけといた…そうよ」
とんでもない爆弾発言が飛び出す。
「真なる女体化ではなくて真なる半陰陽化……」
尊敬する紫の大聖女アスタがかけた魔法の種類にペネロペは当惑しつつも。
「凄い資料とは一体?」
先ずは謎めいた情報について尋ねる。
「あぁ、これっす。こいつを見せたら紫の大聖女様は『大論文が書ける!』とたいそうお喜びになられましてね」
アニョロは一冊の古びた帳面を取り出す。
それは生活を切り詰めて購入した、たった1つの贅沢品、薄茶色の紙をまとめたノートだった。鵞ペンは拾った鵞鳥の羽から作り、インクは染料にもなる草の汁を絞ったものだ。
最初の頃に描かれた文字は悪筆で、慣れない手で苦労したことが推察される。
無学な貧乏人が独学で読み書きを憶え、計算の修行をしたのだろう。
そこに記された数字の意味もまた独特。
「これは…虫歯の本数!? 個人の名前と住所と年齢が併記されていますね!」
ペネロペは意外な情報に面食らう。
こんなものの何が貴重だというのか。
尊敬するアスタの正気を疑いたくはないが、何を血迷ったのかとの印象が拭いきれない。
「ん〜、それは住民自身が測定して住民自身が記録したナマの情報なのよ。例えば、もしもクワガタムシの生態をクワガタムシ自身が調べて記述したら、その記録は極めて貴重よね? そういうことなの」
女神が解説してくれる。
「ほほぉ……」
これには爆乳乙女も感心せざるを得ない。
古びた帳面に記された数字と文字は観察対象の人間自身が自分で調査した結果だった。
なるほど、そう考えれば情報の重要度が理解できるというものだ。
瓦礫街リュッダの住人はヒトも獣人もアスタの研究対象なのだから、この貴重な情報を元に大論文が描ける……
……のだろう。
それは博物学者としてとても貴重な発見をしたことになる……
……のかもしれない。
いや、あれだけアスタが喜んでいたわけだし、“サービス”と称してずいぶんとアレンジを加えた魔法をかけてくれたのだから、相当にご執心であることは間違いない。
その証拠がアニョロの体に刻み込まれているのだ。
翼と角と尻尾として。
「あー、その翼で羽ばたけば空が飛べるわ。空中で姿勢を制御する能力も魂に刻んでおいたから大丈夫だって。それから尻尾も貴女の意志で自由に動かせるそうよ」
取扱説明書を見ながら女神が解説してくれる。
そして。
「それからね、貴女、もうヒトじゃないから」
ついでのように爆弾発言を付け加える。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
暁光帝♀はすっかり忘れていますが、実は9話前の第136話『一度、口に出してしまったことは取り消せません。でもね、暁光帝なら……』でよけいなおっさんをまた1人、美少女に変化させていたんですね。
あの時、見せてもらった資料のインパクトが凄すぎて暁光帝♀はすっかり昂奮してしまい、とっさの礼もそこそこに見入ってしまいました。
だって、人間の街の虫歯の発生状況の詳細データですよ。
これが統計学的な処理ができるほどに豊富なのです。
それこそ階級の幅を色々取ってあ〜でもないこ〜でもないやって標準偏差や相関係数を求めることができます。
ヒストグラムを描けばガウス分布と比較して違うの違わないのと議論ができますし。
スバリ、博物学に数学モデルを持ち込めちゃうんですね。
そりゃ、昂奮しまくるに決っています☆
普段は生き物のスケッチや習性を文章で表現した論文ばかりの中にいきなり数学モデルを持ち込む!
数値化された生物のデータがもたらすインパクトはとんでもなく強烈で!
間違いなく学会に一大センセーションを巻き起こすことでしょう。
もう夢が広がりんぐ☆
そういうわけで次の話にも暁光帝♀は出てきません。元気に裏社会観光していますのでwww
元・醜男の現・美少女アニョロが活躍(?)します。
さて、そういうわけで次回は『愉快なおっさんがいたので暁光帝は願いを叶えてあげました。優しいドラゴンはエラいのです。』です。
請う、ご期待!




