さぁ、チンピラの出番だよ! 暁光帝の肝を冷やすことができるかな。
“世界を横から観る”という遊びの真っ最中、我らが主人公♀暁光帝は路地裏にやってきました。
えっ、そんなところに観光資源はない?
観光資源、言うな。
中世ナーロッパにそんな洒落た言葉はございませんwww
日本だとお伊勢参りとかあったようですが、瓦礫街リュッダは西暦1000年くらいのイタリアはバーリ州がモデルですからねwww
まぁ、そういうわけで暁光帝♀たっての希望で路地裏に来た一行です。
何が起きるんでしょうか。
お楽しみください。
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裏通りの奥まった場所は薄暗い雰囲気だ。
いや、初夏の午後、まだ日が高く、陽光はさんさんと降り注いでいるので、光量は十分に明るいのだが。
腹を空かせた野良犬が歩き回り、昼間から酒瓶を抱えた浮浪者が地面に横たわっている。
赤茶けた荷車は古くて汚い。
牽いているロバは普通だが、御者はオドオドして視線を不安そうに走らせている。その装いは薄汚く、辺りをキョロキョロと見つめる視線も卑しい。
汚らしい浮浪児達もあちこちで食べ物を探している。もちろん、盗むか、もらうか、拾うか、奪うか、手に入れる手段は限定されているが。
鼻をつく饐えた臭いはアルコール混じりの吐瀉物か。自然と退廃的で不健康な気分に誘われる。
「ほほぉ…ここが路地裏ね」
興味しんしんと言った様子で麗人アスタは周囲を観察している。
物見遊山の暁光帝御一行様は『裏社会が見たい』という麗人の希望に付き合っているのである。
金髪妖精人のナンシーも幼女クレメンティーナも『裏社会に近づくなんて危険だ』とは一言も注意しなかった。そんなことは一瞬たりとも考えなかった。
裏社会の犯罪者ども全部を合わせたよりも暁光帝の方が危険なのだから。
「大通りは街の大動脈。人々が、荷物が、必要とされる場所に向かう正規の通り道です。そして、ここは大通りを通れないヒトとモノが進む場所なのです」
ナンシーはかんたんに説明する。
「あへんとか、ころちやとか、ようしゅるにおもてのしぇかいがあちゅかえない、ヤバイちろものやにんげんをうりかいちゅるんでつ」
この龍の巫女は年齢の割に世の中の裏事情にもくわしい。
親に捨てられて育った幼女は世の中が綺麗事だけで済まないと承知して色々学んでいるのだ。
なかなか勉強熱心である。
「阿片に殺し屋か…なるほど、人間にとってはアブなさそうだね」
刺激的な言葉に喜ぶアスタは熱心に周囲を観察している。
阿片は芥子の実から取り出される成分だ。鎮痛作用があるのでしばしば薬として使われるが、習慣性があるため、麻薬として嗜好する者もいる。
「阿片は頭をおかしくさせることがありますからね。もっとも高価なのでおかしくなるほど吸える奴はごくわずか。殺し屋はもっとヤバイ連中で……」
ナンシーは口ごもる。
殺し屋は論外なのだ。
「依頼された標的を間違えて他人を襲ったり……」
似顔絵と名前だけで標的を見つけ出せと言われても難しいことはわかるが、できないのならそもそも引き受けるなと思う。
「期日も守らなかったり……」
度胸と腕っぷししか売り物のない住人が数を数えられるわけもなく、当然、期日までの日数など計算できるはずもなく。
「豚の血を着けたナイフを見せて『確かに殺した』とか嘘ついたり……」
やたら悪知恵だけは働くとエルフは顔をしかめる。
あいつらはもう“殺し屋”を名乗るのをやめてペテン師を目指せばいいのにと思う。
「まともに仕事ができないってわかってるから、『下手な鉄砲、数撃ちゃ中たる』と人数を揃えて依頼すれば標的を狙う前に同士討ちを始めたり……」
もうどうしようもないと頭を振る。
似顔絵でしか見たことない標的の区別はつかないが、全員が地元の住人だから殺し屋同士は互いの顔がわかる。それで報酬の独り占めを狙って殺し合いを始めるのだ。
「殺し屋はダメです! 論外です!」
強く否定する。
やはり裏社会の殺し屋は話にならないのだ。
エルフの脳みそは完全に依頼する客の思考に染まっているが、仕方あるまい。殺し屋と付き合うならそれくらいしか機会がないのだ。
「このまちはおっきいでつからね。えいへいもしょでのちたをうけとるものでち」
幼女にまで知られている街の現実だ。
瓦礫街リュッダは大きな港湾都市。まっとうに働く住民が大半だが、嫌な奴らや悪い奴らも少なくない。
そういった悪党に住民が稼ぎを搾取されてしまうわけだ。それなら衛兵が働いてくれるかと言うとそうでもない。
残念ながら、衛兵には賄賂を受け取る風習があって、悪い奴ほど袖の下を送ることに余念がないのだ。
小悪党は取り締まられるが、大悪党は見逃されるものなのだ。
しかし、悪い奴にでかい面をさせておく根性なしばかりのはずもなく、当然、反発が起きる。
けれども、荒事が専門の悪党どもにまっとうな住民が正面からぶつかるのも危険だ。
当然、対立には二の足を踏む。
そこで冒険者の出番である。
冒険者は一般の人々が苦手とすることの代行請負業者。
悪党を退治すること、もとい、悪党退治を代行することもまた冒険者の仕事なのだ。
ところが、この“仕事”、業務としての分類上は“殺人”である。
住民に迷惑を掛けている悪党、すなわち犯人が幻獣ではなく人間なのだから、どうしてもそうなってしまう。
“討伐”ではなく“殺人”の依頼。
表に出せない、冒険者の裏稼業はこうして生まれる。
けれども、仕方ない。
悪党も表向きはれっきとした住民なのでどうしてもこういうことになってしまうのだ。しかも、そういう悪い奴に限って友人や親戚の面倒見がよく、揃って犯罪結社を営んでいたりする。
そうなれば、最悪、悪党の一味も衛兵の護衛対象になりかねない。
そこでこういった連中の始末を冒険者に依頼することになる。
するのだが、費用を惜しんだ住民達から裏社会の殺し屋へ依頼が行くこともある、と。
これもまた都市の自浄作用の一環なのだろうか。
「人間の集落で特異な問題が発生する。面白いね」
話を聞いて面白がるアスタだったが。
「もしも、これを最終調整者として解決することになったら大変だなぁ……」
うんざりする。
すぐさま、これが善と悪の戦いといった単純な話ではなく、旧住民と新住民の風習や文化の違いが絡んでくると察知したのだ。
自分なら犯人を見つけ出して処分できる。
過去視で関係者の過去を視るから問題の責任について所在を明らかにできるのだ。
でも、やりたくない。
嘘の吐けない幻獣と違う人間だ。数も多いし、他人だけでなく自分までも騙す輩である。間違いなく事件は複雑怪奇に広がって、人間の特徴である世代交代も絡んで何世代にも渡る因縁も関わってくる。散々、過去視を駆使してようやく真相にたどり着けるタイプの事件だ。
真相の究明と事件の解決、めちゃくちゃやりたくない。
だから、できるけどやらない。
「愉快なとこはどこかな?」
貴婦人はさっさと話題を変えることにする。
「ええ、そうですね……」
ナンシーも話題を変えることに賛成する。
アスタならどんな問題も余裕で処理できるに違いない。
だが、真相を究明して、犯人を特定して、被害を補償して、酷い事件の再発を防ぐような仕組みを構築する、そんなありきたりの解決にはならない。
彼女は時間魔法が使えるのだから。
それこそ何でも復元できてしまう。失われた人命、奪われた物品、遠い昔から続く因縁、愛憎渦巻く複雑な人間関係、全てが綺麗サッパリ消えてなくなることだろう。
死人は生き返り、壊された物品は元に戻り、長く続いた対立の構造と因縁は悲劇の歴史ごと修正される。
驚異の時間魔法によって何もかも“なかったこと”にされてしまうのだ。
およそ、人間では思いもよらない手段による、完全な事件の解決…というか、消滅。
暁光帝に任せればあらゆる問題が消滅する。
“解決”ではなく“消滅”、この違いが重要だとエルフは思う。
それは望ましくない。
人間として、為政者として、全てを暁の女帝様に任せるのは違うと思ったのである。
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チンピラエリートのマルティーノは路地裏から大通りに向かう途中だった。
彼には三下としての矜持がある。
弱者を見つけて、居丈高に脅し、カネをせびる、それがチンピラだ。
みっともない?
卑怯者だ?
褒め言葉と受け取ろう。
強敵と渡り合えるだけの力がない、困難に打ち勝つ根性もない、問題を解決する知恵もない、魔法が使えていたらそもそもチンピラなんてやってない。
それでも面子とプライドだけは大切だ。
この世界、なめられたら終わりなのだ。
弱者になめられないよう面子を保つ。
また、なけなしのプライドだって折られたら生きていけない。わずかな自尊心があるから朝、起きてお天道様の下を歩き出すことができるのだ。
もちろん、強者には媚びへつらい、わずかなカネを恵んでもらうことも仕事の内である。
けれども、これはやりすぎると面子やプライドが削られて失せる。
それで落ち込んで立ち上がれなくなったら野垂れ死にまっしぐらだ。
それは本末転倒である。
『一寸の虫にも五分の魂』と言うではないか。
瓦礫街リュッダの最下層を蠢くチンピラに身をやつしてもわずかな面子とプライドは残しておかなくてはならない。
これが彼の矜持である。
以て他のチンピラに手本を示し、範となるのだ。
チンピラ長老の教えを胸に彼は今日も街を往く。
そんな彼の目に信じがたい光景が映った。
紫の輝きだ。
「なん…だと!?」
絶句して立ち止まる。
何度も見たからすっかり見慣れたものになっているが、普通ではない。
それは金属光沢に輝く紫色のロングヘアー。
背丈よりも長いから地面に着いて当然なのだが、なぜか、不思議な力で身体の周囲を舞うように浮いている。
海の青に星々を散らしたような虹色の瞳がた周囲に視線を飛ばしている。
「ブタよりも小さいアスタじゃないか。どうしてここにいる? しかも姿が変わっている……」
珍妙な形容付きで彼女の名をつぶやく。
昨日の夕方、ふらりと街に現れた新星だ。
そのやたら目立つ容姿のせいで話題沸騰、酒場でチンピラどもの関心を独り占めにしたものである。
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少し前の話である。
三下どもが集まる安酒場はいつも以上の喧騒に包まれていた。
皆、貧乏なので安酒を呷っている。
主に水で薄めた大麦酒なのでろくに酔えないが、量をこなせばいい気分になれなくもない。
そして、品性下劣なチンピラどもは集るのも、おごるのも大好きなので稼ぎの大半がここで安酒に変わってしまうのだ。
今は皆、童女アスタについて凄い凄いと騒いでいる。
「おい、おい、あの髪はないだろうよ。紫色の赤銅みたいに輝くんだぜ」
「凄ぇな、キレイだな」
「星を散らしたみたいな、あの虹色の瞳を見たかよ?」
「エラい金持ちだよ。港で豚人の兄ちゃんにたくさんの金貨をやってたぜ」
「金貨かぁ…景気がいいなぁ……」
「金貨なんてめったに見かけるもんじゃぁないぜ」
「じゃあ、そのオークの兄ちゃんから金貨をせびりとりゃいいんじゃないか?」
「バカ言え、相手はオークだぞ。それも若くて頑丈な。勝てるわきゃあんめぇ」
「臆病者が! オレ様だったら一発でノシてみせらぁっ!」
「何だとぉっ!? やるかぁっ!?」
やいの、やいのとうるさい限りだ。
でも、やらない。
チンピラはとにかく弱いので喧嘩しないのである。卑怯者だから勇敢に戦うなどありえないし、絶対に勝てるとわかっている女や子供にしか暴力を振るえない。
そこで威勢のいいことを言って武器を振りかざすが、振り下ろすことはなく、止めてもらうことを期待するだけ。
「まぁ、まぁ、アブナイ真似はよせよ」
「そうだ。みんなが迷惑する」
「仕方ねぇなぁ」
「今回は許してやるぜ」
今、まさに戦おうとしていた2人はブツブツ言いながら引き下がった。
このように得物をしまってふてくされながら退くのだ。
いや、ふてくされるふりをするのだ。
本当は止めてくれたチンピラ仲間に内心で感謝している。
この手の“喧嘩”は当事者も見物人も諸々を承知した上で行われる小芝居であり、始めた2人も互いに怪我をせずに済んだことを喜んでいるのだ。
もしも、かざした武器を振り下ろさざるを得ない状況になったらどうするのか。
中てないよう、互いに明後日の方向に向かって走り、目をつむって武器を振り回すのだ。
このように喧嘩をするふりをして意気を示し、他人には面子を、自分にはプライドを、それぞれあるように見せかける。
それで他人も自分も騙し、騙されるのだ。
なんともはや、情けない連中である。
「なんともヤバイ連中だなぁ…剣呑、剣呑」
マルティーノは大きな声で皆に聞こえるように言い、大げさに肩を震わせた。
チンピラエリートだから場の空気を盛り上げるのも仕事の内なのだ。
そのために『この安酒場はヤバイ連中がたむろする危険極まりない場所である』ということを演出するのである。
「おぅっ! ここは瓦礫街リュッダで一番ヤバイからな」
「いつ誰が殺されてもおかしくねぇ……」
「真っ赤な血を見ない夜がねぇんだからな」
男達はチンピラエリート・マルティーノの言葉に合わせて口々につぶやく。
ちなみにこの安酒場で誰かが殺されたことはない。
ついでに言えば流血沙汰もめったにない。
血が流れるとしたら目をつむって得物を振り回すバカに驚いて転んだ奴が膝を擦り剥くくらいである。
後は与太話に興奮した好き者が鼻血を出すくらいか。
痛くて寒い場所なのだ。
精神的に。
だから、冒険者も盗賊も衛兵もここには近づかない。
実は悪巧みをするにも絶好の場所で秘密を聞かれる心配がほとんどないのだが、凄い悪党であればあるほどここの雰囲気に耐えきれない。
精神がヤラれるのだ。
チンピラしかやって来れない、精神汚染の可能性すらある、恐ろしい場所であり、ある意味、瓦礫街リュッダで一番の魔窟と言えよう。
そんな場所でチンピラエリートは語る。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花…あの少女は凄ぇな」
マルティーノは言葉を連ねた。
「なるほど、そいつぁ、凄ぇ」
「凄ぇな」
「きっと凄ぇカネを持ってるんだぜ」
「そりゃぁ、凄ぇ」
「ブタよりも小さいアスタをやったら凄ぇことになるんだな」
チンピラどもは大いに感心して口々に益体もないことを叫んだ。
どいつもこいつも語彙が貧しい。
おかげでチンピラエリートが少し難しいことを言うだけで一目置かれるようになるのだ。
マルティーノは名家サヴェッリの嫡男だった。今は廃嫡されてチンピラに落ちぶれたが、それなりに教養があり、言葉の端々にそれが伺えた。
もちろん、意図的に高尚っぽい言葉を混ぜているのだが、本人はさり気なく教養がにじみ出ている風を装っていた。
名家出身のチンピラは珍しく、これだけでもそれなりに敬意を得られるのだ。
「よし! 俺は今度、ブタよりも小さいアスタをやるぞ!」
「いや、アスタをやるのは俺だ!」
「たくさんの金貨をせびりとってやるぜ!」
チンピラどもは野望を夢見ていた。
思い描く光景は皆同じ。
図体のでかい大人の自分達が迫ると童女が泣き叫んで金貨を差し出すのだ。
いい大人が子供相手に恐喝など、何ともみっともない夢だ。
犯罪者も色々だが、盗賊でも二の足を踏むような真似だ。沽券に関わる。みじめすぎてチンピラくらいしかできない所業だろう。
けれども、逆に言えばチンピラならできる。
ヒト奴隷にもなれなかったクズどもは未来の収入を夢見て卑しい顔を晒すのだった。
しかし、時間が経ってもチンピラは誰も童女に絡もうとはしなかった。
威勢のいいことをホザいて自分に都合のよい夢に浸っていたチンピラだが、しばらくして本物のアスタを見て思い切りひるんだのだった。
「キラッキラッ輝く紫色の髪か…動いてるな、生き物みたいに」
「何か、デカくなってるぞ」
「午前中は子供だったのに今は巨乳だ」
「いや、別人じゃないのか? 母娘とか、姉妹とか……」
「馬鹿野郎! あんな美女がいたらもっと前から話題になってただろうよ!」
「それもそうか。ほんとに化けたんだな」
ほんのわずかの間にすっかり大人の女性に変身したアスタを見てチンピラどもは酷く驚いていた。
一瞬で背丈が伸びたとは言え、容姿の奇抜さを除けばアスタは標準的なヒト女性に見える。チンピラ達、ヒト男性に比べればずいぶん小さい。
体格でまさるチンピラが本気で脅せばかんたんにひるませることができるだろう。何なら抜身の刃物を見せてもいい。震え上がってこちらの要求を飲むことだろう。
だが、チンピラ達の足は動かなかった。
一緒にいる巨女、ギュディト百卒長が怖かったこともある。他の妖精人女性や幼女だって違和感を覚えた。
何より、アスタ本人が普通じゃない。
見てる前で子供達に金貨を何枚も与えたのだ。
いや、非常識にもほどがある。
子供の小遣いとして破格どころか、大人の給金としてもありえない。
名の知れた冒険者をけっこう長い間、雇う費用とか、そのくらいの相場だろう。
実際、金貨を受け取った子供達は脱兎のごとく駆け出して人混みに紛れていた。
子供ですら金貨を持つことの危険性をわきまえているものだ。
そんな常識があるのか、ないのか。
わからないが、1つだけ明らかなことがある。
アスタという女はとてつもなく異常だ。
チンピラどもの足は地面に縫い付けられたかのように動かなかったのである。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
まずは殺し屋が嫌いなエルフのナンシーです\(^o^)/
当時の、中世ヨーロッパの殺し屋はひどかったらしい。
いや、どうしてもひどくなるでしょ。
だって、写真なんてなかったし、殺し屋の識字率はお察しだし。
つまり、殺人代行請負業者が殺人の代行を請け負えないわけですww
字が読めなくて、似顔絵見ただけじゃ標的の判別ができないからwwww
ついでにいうとコピー機もありませんから手書きの似顔絵は1枚だけです☆
えっ、似顔絵を一回見て憶えるの?www 無理じゃね?wwww
つまり、当時、「アイツは一流の殺し屋だぜ」って言われてたのは字が読めて似顔絵だけで標的を判別できる人物だったのです☆
後、みんな、計算できませんから「殺しの成功率〇〇%!」なんて謳い文句も通じませんでしたwwww
個人的にはこういう状況そのものが楽しいんですけどね(^_^;)
そして、チンピラエリートのマルティーノが再登場ww
長かった〜
この新章のメイン悪役なんですが、まぁ、強そうにも賢そうにも見えませんよね。
大丈夫、ご安心ください。
彼はきっと立派にヴィランを務めてくれるはずです☆
人気のネット小説ファンタジーでしばしば登場し、主人公に絡んではやられる“チンピラ”という雑魚ですが、拙著『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』では少し違います。
一般的なナーロッパ世界だと“冒険者のなり損ない”とか、“落ちぶれた冒険者”って設定が多いように思うんですが……
う〜〜〜ん、それだとかなりやばいレベルの矛盾が生じてしまうんですよね。
例えば、現代の令和日本辛い世界ファンタジーのナーロッパに転生した主人公が「目立ちたくない」と無難に過ごすべくコソコソしていると冒険者ギルドに入った途端、チンピラに絡まれる。
これだけだとそんなに違和感はありませんよね?
でも。
チンピラはどうやって“冒険者志望の青年”と“冒険者に仕事を依頼しに来た町の住民”を区別しているんでしょうか?
えっ、そんなの、一目見ればわかるだろうって?
ろくに武装もしていない初心者は町の住民と区別が付きませんよ(^_^;)
そして、冒険者ギルドの掲示板には初心者向けの薬草採集や街の清掃やペット探しなんかもあるんですよね〜〜〜
そういう地味な仕事を地味な住民が冒険者に依頼するわけでそういう人々が訪れるたびにチンピラから絡まれていたら冒険者ギルドの仕事が成り立たなくなってしまいます。
つまり、冒険者ギルドの建物内では暴力沙汰を絶対に許しちゃいけないんです。
「探偵にとって最も重要な能力は推理力でも記憶力でもなく、依頼人を見つけ出す能力だ」(by『迷宮物件FILE538』)なのです。
依頼人の安全は何が何でも保証しないといけないんです。
そうでないと依頼人が来なくなっちゃいますから(>_<)
それならチンピラのような不法行為を厭わない連中を冒険者ギルドに入れさせるわけには絶対にいかないってことになります。
冒険者にとってはカネを落としてくれる住民は生命線であって。
それこそ小さな子供、か弱い女性や老人だって安心して冒険者ギルドにやってきてもらえる環境を整えておかなくちゃいけないんです。
更に“奴隷制”というものを考えると更に厄介な状況が生まれます。
貨幣経済が未発達な中世ヨーロッパでは労働の対価が必ずしも通貨ではなかったわけで、『生きていくのが大変なら奴隷になる』って選択肢も十分にありえました。
要は「人生をご主人様に任せて何でも言うこと聞くから飯食わせろ」って話です。
現代の価値観では測れない、過酷な中世ヨーロッパを生き抜くため、です。
そういうわけで、自殺者や野垂れ死にを防ぐための社会のセイフティとして奴隷制が機能していたって面が確実にあった。
その辺、中世日本と中世ヨーロッパはだいぶ違っていたようですね。
中世日本で農村に適応できなかった落語者は村を出て冒険者や山賊になった…わけではなく、芸人になったようです。
芝居や踊りで農村を麗して変わりに食べ物をもらう、それが能や猿楽とかになっていったらしい。
奴隷にならなくても芸を磨けば生きていけた中世日本は良い場所…だったんでしょうかね?
まぁ、そんなわけで小生の違和感を解消するため拙著『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』では「チンピラは冒険者のなり損ない」ではなく。
「チンピラは奴隷のなり損ない」と設定しました。
これには他にも理由があるんですが(^_^;)
問題の根幹は“冒険者ギルド”なんですよ。
当たり前ですが、中世ヨーロッパを舞台とする伝統的なヒロイックファンタジーに“冒険者ギルド”はありません。
朝から美人の受付嬢が待っていてくれて、掲示板には依頼書が貼ってある、冒険者は冒険者登録証を持っていて身分を証明でき、依頼は冒険者ギルドが管理するので横取りなどの混乱は起きない、依頼達成は冒険者ギルドが責任を持って管理する。
何ですか、このいたれりつくせりの制度とシステムは?www
これ、思いっきり、コンピューターロールプレイングゲームの世界観ですよね〜〜
それも『ウィザードリィ』や『ウルティマ』よりもずっと後の、よりプレイしやすくなってゲームがゲームとしてこなれた頃のタイプです。
伝統的なヒロイックファンタジーの主人公達が、英雄コナンやゾンガーやファファード&グレイマウザーが訪れて仕事を請け負う場所は“冒険者ギルド”ではなく、“腕っぷしが自慢の命知らずが集まる酒場”ですww
そりゃ、喧嘩もチンピラが絡んでくるのも日常茶飯事ですわwww
そもそも字が読めない連中ばかりなので掲示板に依頼書を貼っておいたところで誰も読んでくれません。
危なすぎて受付嬢どころか、町の住民を近寄りません。
仕事のバッティング?
そもそも契約書も作っていないのでモンスター討伐だろうが、財宝探しだろうが早いものがちですわwww
もちろん、冒険に出かけた先で財宝の奪い合いなんてそれこそ作品の醍醐味ですわww
冒険者同士が話し合って『依頼の横取りはいけないよね』なんて譲り合うわけがない。
基本、「殺してでも奪い取る」ですわ\(^o^)/
この変化、“腕っぷしが自慢の命知らずが集まる酒場”から“冒険者ギルド”へ変わったことは物語の世界観にけっこう大きな影響を及ぼしました。
物語の起点が変わってしまいましたからね。
とりわけ、大きな影響を受けたのが“チンピラ”かもしれません。
“腕っぷしが自慢の命知らずが集まる酒場”にならいて当たり前、いない方がおかしい存在でしたが。
“冒険者ギルド”にいちゃダメです(^_^;)
物語の世界観と矛盾してしまう(>_<)
荒っぽい冒険者がたむろし、弱いものイジメをする素行不良のチンピラがうじゃうじゃいるような冒険者ギルドには町の住民がやってこないんですよ。
肝心の依頼人がこないわけですから冒険者は食いっぱぐれです(>_<)
SSS級冒険者だって依頼が来なければおまんまの食い上げですから野垂れ死に一直線ですね〜〜
その辺、「細かいことを言うなよ」ってのは描き手の甘えです。
でも、チンピラは出したい。
名脇役でやられ役の雑魚専門チンピラは物語の重要なファクターです。
そこで何とか矛盾なく登場できるようにあーでもない、こーでもない、やってみた結果がこの新章『ついに登場! チンピラが挑む、最強最大の敵!』なんですね〜
さて、そういうわけで次回は『暁光帝に挑む、チンピラエリート! 世界の命運はキミの肩にかかっているぞ!!』です。
請う、ご期待!




