暁光帝が説明したげましょう。聖魔法と回復魔法は全くの別物、違うんですよ。
施療院を訪れた一行は炊き出しを観光します。
貧しい人々が不味いオートミールに群がる様子を眺めます。
観光です。
観光旅行です。
うん。
こんなんドラゴンくらいしか面白がりませんね。
いや、ドラゴンの中でも暁光帝♀くらいかな。
でも、我らが主人公、暁光帝♀はやたら面白がっています。
「ドラゴンの感覚、わかんねぇわ」とナンシーが嘆いてました。
さぁ、次は治療行為を観光します。
どんなことが起きるでしょうか。
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
アスタはオヨシノイド施療院の炊き出しに群がる人々を観察し、金髪妖精人のナンシーとギュディト百卒長はそんな麗人を観察している。
目つきの鋭い幼女クレメンティーナは少し離れて周囲を見渡している。主やエルフ達は強すぎて護衛する必要がないものの、面倒な奴が出てくる可能性もなくはない。
庭の大釜で下男や見習い巫女達が粥を炊き、大勢の貧民達が集まっている。
そこへ声がかかる。
「あぁ、アスタさん…魔力が戻ったんですね☆」
上ずった声で歓迎する男装の麗人、ポーリーヌは人化した一角獣だ。初夏の陽光に金髪と緑がかった空色の瞳が輝く。人間に変化した、その姿は若く美しい女性だ。しかし、貫頭衣にズボンという男の出で立ちである。もっとも、体の線が露わになるピッチリした衣装なので、布地の上から豊かな腰つきや胸乳がわかってしまう。
「あらぁ、よくぞいらっしゃいましたのぉ♪」
水色のショートヘア、オレンジ色の瞳を輝かせる豊乳の美女もその正体はまた人外。人化した女精霊のジュリエットも声を昂ぶらせて歓迎する。
2人、いや、2頭はマジックアイテム“妖女サイベルの呼び鈴”で人間に変化した幻獣である。古くからの友人であり、天龍アストライアーの信奉者でもあるから、正体を知っていてアスタのことを全力で支持している。
「何だ、もうお知り合いでしたか。彼女達がこのオヨシノイド施療院の誇る聖女です。死にかけていた部下を救ってくれました。大変、よい腕ですよ」
ギュディト百卒長が太鼓判を押す。
「あぁ、改めて紹介しておきますね。レスボス島のポーリーヌと悪徳のジュリエット、2人は冒険していないときは施療院で奉仕しているんですよ」
珍妙な二つ名を付けて呼んだものの、ナンシーの説明は簡潔だ。
2人は冒険者パーティー“紫陽花の鏡”のメンバーであり、今朝はアスタと一緒に朝食を摂ったばかりだ。普段は冒険者だが、冒険していないときはこうして神殿の仕事を手伝っているのである。
「でも、よかった。さっきまでアスタさんは魔力が全然感じられなかったから何か大変なことになっていたのかと俺は心配してたんですよ」
ポーリーヌは童女の姿をしたアスタが魔気力線を放出していなかったことを酷く気にしていた。
「その姿なら魔法が使えるんですねぇ。素晴らしいですぅ☆ ほっ……」
同じく、ジュリエットも安堵のため息だ。
「やぁ、ポーレットにジュジュ。見物に来たよ♪ あぁ、魔力ね? 冒険者ギルドに登録するんで隠しといたんだよ」
こともなげに語るアスタである。まるで嫌な奴に貸したくないからハンカチーフをしまっておいたとでも言うように。
「あぁ、なるほど。俺だってあそこの受付嬢は強敵だと思いますよ」
「あの受付嬢はねぇ…美人だからアタシも気に入ってるけどぉ、妙に勘が鋭いところがあるからぁ、ちょっと敬遠しちゃうわぁ」
2人はようやく合点がいった。
人間社会に浸りすぎたせいか、もしかすると天龍アストライアーが年老いて魔力が衰えたのではないかとまで案じていたのだ。
世代交代しない幻獣が老化するわけがないのだが、そんな不安が生じるくらい人間の世界に馴染んでいたということでもある。
今朝方、魔力の感じられない天龍を見ていて、とても虚ろに感じられ、不安を掻き立てられた。
けれども、今は魔力の面でも以前と同じく元気そうで一安心だ。
2人の正体は幻獣だから人化していても魔気力線が視える。当然、アスタの身体から放たれる魔気力線も視えるのだ。砕けたガラスのような、その特異な波形は他と比べるべくもない。
それ故、姿形の変化には惑わされず、別れたときは童女だったアスタが麗人に変身していても混乱することなく、平然と受け入れているのだ。
そして、変身することで伸びた身長については語るに及ばず、立派な胸乳を褒めそやすことを忘れない。
「あぁ、なんて立派なオッパイなんでしょう☆ その大きさ、その形、美しさの頂点です」
「アスタさん、素晴らしいオッパイですぅ♪ ボールのように大きくてぇ、それが弾む様子にみんな目が釘付けですよぉ」
口を揃えて、麗人と化したアスタの豊乳を称賛する。
それにしても、果たしてこれは“称賛”と言えるのだろうか。
『周りの大勢が貴女の胸乳に注目してる』などと言われたら普通の若い婦人がどう思うのか。不安や不快を感じることも多いだろうに。
けれども、2人とも幻獣だからわからない。
そして、言われた方も人間ではない。
「どうだい、立派なオッパイだろう? 間違いなく天下一だね」
胸乳を褒められたことが素直に嬉しい。
自慢しながらも、アスタは旧い朋友に出会えて大いに喜んだ。
「ええ、最高です。俺はそこまで立派なのを見たことがないです」
ポーリーヌは絶賛で返す。
嘘の吐けない幻獣だからこれも本心だ。世に氾濫する巨乳や爆乳はアスタの豊乳よりも立派だが評価の対象は大きさだけではない。形や弾力、そして、誰の胸についているのかも重要なのだ。
ユニコーンの感覚からすれば偉大な天龍の乳と言うだけでも非常に高い評価となる。
「ところでぇ、そちらのお子様に乙女の竜巫女化をぉ?」
胸乳の話を横に置き、幼女クレメンティーナを見つめながらジュリエットは気になることを口にする。
気配が違う。眼力が違う。魔気力線の視えるニュムペーには目つきの鋭い幼女が只者ではないとすぐにわかったのだ。
「うむ。彼女はクレメンティーナ。見上げた志の持ち主だよ」
アスタは幼女を示して称賛し。
「自分よりも強い敵を前に堂々と正義を唱えた傑物だよ。ボクにはとても真似ができない」
感心して、うんうんとうなずく。
「は、はぁ……」
ポーリーヌは眼を丸くしたが、余計なことは言わない。
『貴女よりも強い奴なんて存在しないんだから』とか、『そりゃ、真似できないでしょうよ』とか、ついつい真理が口を衝いて出そうになってしまうけれども。
麗人が上機嫌なので黙っておく。
すると、幼女が近づいてきて。
「クレメンティーナでつ。よろちく」
両の手のひらを前に突き出し、両腕を左右に広げてから、くるり1回転。スッと片足を引いて腰を落とす。ただし、両腕を組んでふんぞり返っている。
主に教わった宮廷風お辞儀、アストライアー式カーテシーだ。
「まぁっ! これはこれは…アタシは悪徳のジュリエットですぅ。アスタさんの友達よぉ。ジュジュって呼んでねぇ」
ジュリエットが自己紹介しながら唸る。
魔気力線の視えるニュムペーだから幼女の人間離れした魔気容量が推測できるのだ。
加えて、視線の動かし方や表情の厳しさからかなりの手練と判断する。
「最大級の精霊魔法を2発も放ってもまだ余裕のある魔気容量だと!? いや、でも、アスタさんの龍の巫女ならそれくらいあっても……」
ポーリーヌも驚いたり、当惑したり。
それでも。
「あっ、うん、俺はレスボス島のポーリーヌだぜ。ポーレットと呼んでくれ」
気を取り直して挨拶を返す。
2人ともクレメンティーナと同じように手のひらを広げて前に突き出す動きを見せたが、お辞儀はしない。
荒事が専門の冒険者なので礼儀作法がなってないのだ。
「あたちのことはクレミーとよんでくだしゃい」
龍の巫女も自分のことを気軽に呼んでくれと伝える。
目の据わった幼女だが、わずかに口元がほころんでいる。
アスタが褒めてくれたからだ。
自分は幼い女の子だけれども強い。最大級の精霊魔法だって連発できるし、強化&弱化魔法を使えば荒くれ者だって叩きのめせる。
だが、麗人は年齢や性別、能力ではなく『志が凄い』と自身そのものを評価してくれた。
やはり、主は凡百の人間とは違うのだとつくづく思う。
いや、そもそも初めから人間ではないが。
そして、クレメンティーナ自身も人間を辞めてしまっている。
けれども鋭い観察眼は人間以上に人間の心の機微を見抜き、2人を見る下男や見習い巫女達の視線に気づいている。
「にとうと…ふたりともしぇりょういんでかつやくちてるんでつね。しょれもしょうとうなだいかつやくを」
ついつい“2頭とも”と言いそうになってしまったが、途中で言い直して褒める。
見習い巫女達の視線には強い憧憬と羨望があり、下男達の視線には普通の神職には向けない敬意があったのだ。
これが意味するところはひとつ。
2人ともオヨシノイド神殿で活躍する聖女なのだ。
「ほほぉ…なるほど、ポーレットにジュジュ、キミらが噂の回復術師か。さもありなん」
2人を愛称で呼びながら、こちらも声を上ずらせているアスタである。
ユニコーンとニュムペー、共に聖魔法が得意な幻獣だ。出会った人間を害することはなく、怪我や病気を治してくれる、ありがたい“聖獣”とも言うべき存在である。人化して人間の街に潜り込んでも人助けに勤しむのも当然と言える。
けれども、仲間の活躍を喜ぶばかりではない。何やら、少々、気になることが目についてしまったのだ。
「むむ?」
麗人は目の前の美女達に注目する。
2人とも別れたときの装いだが、個性的な頭巾をかぶっている。それは見習い巫女や神殿の下男がかぶっているものと同じだった。
「ところで、その被り物は何かな?」
アスタは2人の頭巾について尋ねる。
「あぁ、これですか。こいつはこの神殿に関わる者であることを示す印みたいなものなんですよ。享楽教団オヨシニューシアの下に俺らが働いているってことの証…ですかねぇ」
ポーリーヌは出で立ちに合わせて男の口調で語る。
「これを被っていればぁ、アタシらの行いが神殿に関わることだってことを示すわけでぇ…まぁ、『享楽教団はこれくらい役に立ってますよ』ってゆーことをぉ、世間に向けて示しているのですぅ」
ジュリエットの方が説明は簡潔だ。
享楽教団の宣伝である、と。
ならば、2人は大いに活躍しているのだろう。
「ふぅむ」
アスタは大きくうなずく。
ここに集まったのはみすぼらしいヒト族が大半で、小人族や巨人族も下をうつむく者ばかり。か弱い肉体と少ない魔力を嘆きながら地上を這いずり回る定命の者達だ。
まともな魔法も使えないはず。
きっと酷く困っているのだろう。
そんな人々を2人が助けているに違いない。
「へぇ……」
素直に感心する麗人である。
「この頭巾をかぶってぇ、病人やけが人を診るんですよぉ」
「俺ら、聖魔法が得意ですからね。気の毒な連中を治療して大活躍です☆」
敬愛する天龍が見ているので2人とも上機嫌だ。
「へぇ、立派だね」
麗人はうなずく
どうやら聖魔法を駆使して人々を助けているらしい。
一角獣も女精霊も聖属性の幻獣だから、魔法による治療はお手の物だ。人間と違って魔力も無限に回復するから、魔力切れを心配することなく活躍できるだろう。
「ジュリエット様とポーリーヌ様は凄い魔導師なんですよ」
「何しろ、貴重な聖魔法の使い手ですからね。私達じゃどうしようもない病や怪我も治せちゃうんです」
「こんなに凄いのに魔法の腕を鼻にかけず、私達のことも励ましてくれるんです」
見習い巫女の少女達が口を揃えて褒めそやす。
「ほほぉ…ジュジュにポーレット、キミ達の活動は興味深いね」
素直に感心する麗人だ。
もっともユニコーンやニュムペーが若い女性に親切なのはそういう習性だから当然だと思ったものだが。
それでも研究対象にここまで接近して観察できる2人が素直に羨ましい。その行動は博物学者として是非とも見倣いたいものだ。
「それでは俺らがお見せしましょう☆ おぅっ! そこのお前ら!」
「治療を始めますよぉ♪」
2人が呼びかけると貧民達がわらわらと寄ってくる。
「はい、集まって、集まって」
ジュリエットの呼びかけで人々はおとなしく並ぶ。
「聖女様だ!」
「ああ、ジュリエット様、ポーリーヌ様……」
「聖女様のおかげで元気になりました」
口々に騒ぐ貧民達から賞賛の言葉が飛び交う。
「じゃあ、行きますよぉ」
「おぅ! やるぜぇ!」
2人の背後にそれぞれ魔気で描かれた大きな浮遊魔法陣が現れて。
「ビビデ♪ バビデ♪ ブー♪」
「プリプリのキリリンコ、カッカッカ!」
二人は怪し気な文言を唱える。
「うむ、凝縮呪文ではない。意味不明だね…呪文っぽいけれど、只の掛け声だよ。何のために唱えているんだろ?」
アスタが首を捻っている。
呪文は無意味な言葉でしかなかったが、魔力場が構成されて魔法が発動する。
シュォォォン!
周囲に若葉色の清浄な光が降り注ぎ、人々を照らし。
「おぉぉっ!」
「キャー!」
一斉に歓喜の声が上がる。
それは劇的な効果をもたらしていた。聖なる魔法が疲れた人々を癒やし、病気や怪我、体調の不良を綺麗サッパリ消し去っていたのだ。
「あぁ…何日も続いていた腹痛が消えたよ!」
「凄い! 歯が痛くなくなった!」
「さすが、ジュリエットさんとポーリーヌさんだ。あっという間に治ったよ」
「頭痛がまるで嘘のように消えたわ☆」
「曲がっていた腕が! 動く! 動くぞ!」
感極まって泣き出す者も見受けられる。
腫れていた頬を何度も撫でる女性は虫歯が治っていて歯に空いていた大穴も消え失せたことを舌の先で確認している。
骨折した箇所が悪い形で固まっていた腕を戻してもらった巨人が感涙にむせんでいる。これで以前のように働けると大喜びだ。まともに働けるようになったのだからもう施療院には来ないだろうが。
汚れていたボロが清められて服が臭わなくなったことに感激する子供達が拍手して2人を称賛している。
「ふふふ、まぁ、俺らにとっては簡単なことだぜ」
「そうよぉ。さぁ、散ってぇ。次の人達を寄越してねぇ」
さすがは一角獣と女精霊、実は人間でない2人は今しがた消費した魔力をすぐさま回復させている。まったく疲れた様子を見せない。
今、元気になった人々は比較的、軽い症状に悩んでいた。次は更に重い症状の人々を迎え入れるのだ。
「ジュリエット様、哀れな老人をお慈悲を……」
「ポーリーヌ様、神の御業をお示しください」
体の具合が悪いのだろう、足を引きずる者、躄る者、1人では歩けないので肩を貸してもらう者など大勢の患者がやってくる。
「ふぅむ…慕われているねぇ」
アスタが感心している。
「やはりあの口上は呪文の真似事をでしたか。人間は魔法を使うのに呪文を唱えなくちゃいけませんからね。なるべくそれっぽいことをして目立たないようにしているんでしょう」
今や、2人が人間でないことを知ったナンシーが呪文めいた謎の言葉について解説する。
「ふぅん…“目立たないように”、ね。何か、意味があるのかな?」
またしても麗人は首を傾げている。
「えーっと、それは…平和な市民生活のためにも目立たない方がよいかと」
エルフは少し解説する。
瓦礫街リュッダは比較的平和な港湾都市であるが、妬みや嫉み、感情の昂ぶるままに絡んでくる三下はいるのだ。余計なトラブルを避けるためにも無駄に目立つような真似は慎むべきである。
「ほほぉ…そんなことで衆目から逃れることができるんだね。さすが、人間。奇っ怪な真似をするものだよ」
これまた大いに感心するアスタである。
「あ…えぇ…まぁ、その…そうですね」
当惑しつつもナンシーは麗人の反応をそういうものだと受け入れる。
不可能などないかに思われる超巨大ドラゴン暁光帝にもできないことはあるのだ。あまりに大きすぎて何をしても注目を浴びてしまう。他人の関心から逃れて行動すること自体ができないのである。
だから、エルフの“目立たないように行動する”という言葉の意味が実感できないのだろう。
「うむぅ……」
つくづく人間とは価値観を共有しないと思い知る。
いや、そもそも竜種、それも暁の女帝様とわかりあえると夢想すること自体がおこがましいのか。
ここは何となくわかりあえたような雰囲気を醸し出してお茶を濁すことが互いの精神衛生のためになると結論づける。
「うむうむ…人化しても上手に魔法が使えているようだね。治ったみんなは快適そうだよ。“妖女サイベルの呼び鈴”の出来は素晴らしい☆」
エルフの心の葛藤を尻目に麗人は2人に救われた人々を観察している。
「え…えぇ……」
『思いっきり“人化”って言葉を口に出しちゃってるよ、この女帝様』と少々うろたえつつ、ナンシーはアスタの話に相槌を打つ。正体を隠した幻獣が人間を治療して喜ばれている姿を観て興奮しているのだろう。
もうすっかり上機嫌だ。
こうなれば自分の正体を隠すなんて配慮はあまりしてくれそうにない。
けれども、ナンシー自身がアスタの正体に気づいていない体を装っているので、面と向かって注意するわけにもいかない。何とも頭の痛い状況である。
「聖魔法は痛みもなく、すぐに効果が現れますからね。私の回復魔法じゃ、人々の希望を十分には叶えられないんです」
苦笑いを浮かべつつ、愚痴を漏らす。
無知蒙昧な大衆は魔法の深奥を知らず、安易に聖魔法を回復魔法より上位の魔法だと考えるのだ。
「聖魔法はエントロピーの操作が特徴だからね。感染症や内臓疾患への対処とか、回復魔法には回復魔法のよさがあるんだけどね」
麗人は眉をひそめる。
「えんとろぴー? えっ、えーっと…ええ、まぁ、その、回復魔法で病気を治せばまた罹ることはなくなりますしね」
しどろもどろに返事するエルフ。“えんとろぴー”なる単語の意味がわからない。竜種の間だけで通じる魔法理論の専門用語なのだろうか。
それでもアスタが回復魔法と聖魔法の違いを熟知しているようで安心した。
いや、暁の女帝様ご本人の曰く“始原の魔導師アストライアー”なのだから、世界で最初に魔法を創り出した超越者であれば知っていて当然だろう。
回復魔法による治療は時間がかかり、苦痛を軽減することも難しい上に虫歯や骨折の治療には癒し手の高い技量が求められる。逆に聖魔法であれば初心者でも虫歯が治せる上に骨折も下級や中級の癒し手で事足りる。
その代わり、聖魔法の癒し手は只でさえ少ない回復魔法のそれよりも更に少ない。
「例えば関節リウマチのような免疫の病気には回復魔法の方がよく効くよ。他にも例えば……」
わずかに首を傾げたアスタが記憶を探り。
「そう! 以前、ボクが創った回復魔法“出産の助け”は大いに好評だったと聞くね」
思い出したことを告げる。
明確かつ単純に。
だが、それは聞く者によっては大変な衝撃を受けかねない、まさしく爆弾発言だったのである。
「なぁっ!? いえ、あぁ…なるほど……それは…凄い…です…ね……」
突然の爆弾発言に強烈な心的衝撃を受けてナンシーの声が裏返ってしまった。
しかし、ためらいは一瞬。
すぐさま声の調子を戻してアスタの業績を褒める。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
聖女に医師免許は要りません!
中世ナーロッパでよかった☆
あ、中世ヨーロッパでも大丈夫です。
『盲は見え、足萎えは歩き、死人が立ち上がる』ってゆーキリストの奇蹟も!
無免許でしたからね〜〜〜
そりゃ、ナザレの大工が医師免許持ってるわけ無いじゃんwwww
でも、神の奇蹟の方が現代医療より凄い気がするのはなぜでしょうね。
いや、神の奇蹟ですからwww
一角獣のポーリーヌと女精霊のジュリエットは聖魔法が使えるので結構な奇蹟を見せてくれることでしょう。
さて、そういうわけで次回は『ちょっと前に暁光帝は回復魔法を改良してあげたんだけど人間達の評判はどうかな?』です。
請う、ご期待!




