施療院を訪れます。暁光帝はこういう福利厚生の施設ってはじめてなんですよ。
博物学者のビョルンが抜けて、代わりに龍の巫女クレメンティーナとギュディト百卒長が加わった一行は元気に施療院を目指します。
さて、メンバーが4人、『ドラゴンクエスト』だったらフルメンバーのパーティーになったので、それを記念して一行のステータス表を一部ご紹介。
以下は左から順に「称号」「名前」「職業」「身長」「体重」「身長を基準とした体重の偏差」「(・人・)」となっております。
もちろん、憧れのMKSA単位系☆
作中ではファンタジーの雰囲気を壊しかねないので使えない、憧れのMKSA単位系ですぉ♪
天龍(麗人)|アスタ|初級冒険者|1.63[m]|60[kg]|1.05|豊乳
エルフ|ナンシー|超特級魔導師|1.61[m]|65[kg]|1.18|だらしない爆乳
百卒長|ギュディト|超特級戦士|2.02[m]137[kg]|1.26|巨乳ボール型
龍の巫女|クレメンティーナ|幼女|1.08[m]|15[kg]|0.93|無乳
もちろん、これら以外にも魔力や腕力も設定してありますが、それらは後ほど。
こうしてみるとみんなけっこう個性的ですね。
暁光帝♀の方がナンシーよりも身長は高いけれど体重は軽い。
ナンシーは美人ですが、だらしない爆乳を揺らす、デブの一歩手前なので少し重いのです。
後、逆さ化粧でわざとダサく見せているので町中を歩いていてもあまり目立ちません。
ギュディト百卒長は巨女ですね。2[m]越えるとさすがにデカい。
(・人・)も暁光帝♀より大きいし♪
彼女も偏差が大きく、データだけ観るとナンシーよりもさらにデブに見えますが、全部筋肉です☆
強化&弱化魔法なしでも大の男を素手でぶちのめせちゃいますww
ちなみに美人です。ハゲて…もとい、頭は剃ってますが。
クレメンティーナはまじでちっちゃいですね。そりゃ、5歳ですからwww
後、孤児院で暮らす孤児なので栄養状態もよくありません。
竜の巫女になった以上、栄養状態は改善されそうですが、巫女になったのほんの1時間前ですからねww
まぁ、こういうステータス表って作中では出す機会がありませんのでご容赦を(^_^;)
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
見上げるほどに大きな神殿は全て大理石で建立され、白くきらめいている。なかなか、上質の石を使っているようだ。
周囲の建物よりもひときわ目立つ威容は道行く人々に厳かな印象を強く抱かせる。
壁面を飾る浮き彫りは神話をモチーフにして神々の活躍を描いたもの。とりわけ、1柱の女神を中心に描いていて、この神殿がその女神のために建てられたことがわかる。
「ほほぉ…享楽神オヨシノイドか。彼女の神殿なんだね」
麗人アスタが女神の聖名を口にする。神様のことなのに珍しく嫌悪の響きを含んでいない。それは“あいつ”でなく“彼女”と表現したことからもうかがえる。
「はい。ここはオヨチノイドしゃまのちんでんでち。あたちはうらのこじいんでくらちているでち」
龍の巫女クレメンティーナが解説を加える。幼女に両親はおらず、生まれたときから孤児なのだ。それで享楽教団が運営する孤児院に捨てられ、ずっとそこで育てられてきたのである。
幼女はつい先程、龍の巫女になったばかりなので考え方や感覚にはまだ人間の頃の名残りがあるのだ。
それ故、孤児院の先生達が敬うので、今もそれに倣ってオヨシノイドを敬っている。
「オヨシノイド様はいい神様ですからね」
聞き慣れた聖名に金髪妖精人のナンシーも顔をほころばせる。
宗教にも神様にも感心しないが、女神オヨシノイドについては悪い噂を聞かないから少し心を許している。
『酒に踊り、歌に音楽、うつむかずに人生を思い切り楽しもう』という教義も好ましいものだと思う。教義通り、信者達も親切で、楽しく生きることに努めており、少々おせっかいではあるが、善良である。
瓦礫街リュッダで強い勢力を示す宗教団体は2つ。
一見、善人のように見えて裏では陰謀を巡らせ、人類の結束を呼びかけながら差別を助長する光明教団ブジュミンド。
一見、悪人に見えてやはり悪く、無駄に諍いを煽り、不和を招く暗黒教団ゲロマリス。
『我の他に神はなし』と一神教を掲げる彼らは篤い信仰で知られ、しばしば排他的で過激な行動を見せる。教義を厳格に解釈して他の神々の信徒を傷つけることさえあるのだ。
光明神ブジュッミと暗黒神ゲローマーは本当にろくでもないと思う。
比較すると享楽教団オヨシニューシアは十分、善良だと言える。多神教らしく入団も退団も制限がなく、他の神々を信仰していてもあまり問題にはされない。主な宗教的行事は“祭り”で、それは酒を飲んで踊り唄うことであり、信者は自身の喜びを女神に捧げることを旨とする。
なるほど、『酒に踊り、歌に音楽、うつむかずに人生を思い切り楽しもう』という教義の通りである。
もちろん、教団のそういった姿勢が生真面目な他の宗教から煙たがられてはいる。
しかし、オヨシノイドは退かない。
女神には他の神々にはない、強力な特徴がある。
かつて、太古の昔、超巨大ドラゴン暁光帝によって神殺しの偉業が成し遂げられて以来、全ての神々が恐れおののいて地上を去った。だが、只、1柱、オヨシノイドだけは今でも地上に現し身で顕現しているのだ。
女神オヨシノイドは暁の女帝から許されて、地上を歩むことができる唯一の神なのである。
「アスタさんにはここの裏にあるオヨシノイド施療院を紹介しようと思ったんですよ」
「こじいんもあるでち」
ウキウキしながら説明するナンシーとクレメンティーナ。ここは平和な場所である。幼女は自宅を紹介できて嬉しい、エルフは荒事はもう起きないと安心している。
「ここの施療院は物凄く腕の立つ回復術師がいることもあるんですよ」
ギュディト百卒長も笑顔を見せる。
かつて、重傷を負った部下を担ぎ込んで助けてもらったことがあるのだ。城の回復術師でさえ、匙を投げるほどの重体だったが、完璧に治療して再び剣を握れるようにしてくれた。
黒い肌の巨女は脳みそまで筋肉でできているような軍人だが、受けた恩は忘れない。こうして宣伝することで恩義に報いているのである。
「へぇ、それは楽しみだね」
アスタは無邪気に喜んでいる。
人間の魔法が病や怪我を治す様子を見たいのだ。
「じゃあ、行きましょう」
エルフが金髪をなびかせながら声をかける。
「ふふ……」
噂の回復術師に出会ってアスタは驚くだろうか。
少しだけ口元をほころばせる。
一行は神殿の横に開いた私道から裏に回るのだった。
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神殿は儀式を催して祈りを集める場であり、“持てる者”、すなわち、強者のための場所と言える。これに対して施療院は炊き出しや無料の治療で貧者を集める、“持たざる者”、すなわち弱者のための場所と言える。
リュッダはその“瓦礫街”という蔑称とは裏腹に碧中海の交易の要衝、大きな港湾都市である。その経済規模は大きく、物資も通貨も人員も流通量は膨大だ。王都をも凌駕する経済規模を誇る。しかし、それが故に貧富の格差も大きく、大富豪もいれば、極貧に喘ぐ者もいる。
そして、神々が実在する世界では祈りが重要であり、貧しい人々の祈りも彼らにとっては貴重な信仰となる。
だから、神々の数だけ宗教団体が設立され、信心を求めて盛んに競っている。
貯えも生活の余裕もない貧乏人は教団にとって有用であり、各地で炊き出しや無料の治療が行われている。
祈りの価値に金持ちも貧乏人もない。むしろ、切実で人数が多い分、神々からすると貧しい人々の方がありがたいこともある。
施療院はそういった神々と人間のための場所なのだ。
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オヨシノイド施療院は神殿の裏にある大きな建物だ。隣りに並ぶ孤児院と同じく、享楽教団オヨシニューシアが管理して信者の浄財と寄付によって賄われている。
さすがに大理石ではなく、漆喰で固められた壁はいい具合に汚れていて、窓にガラスは張られていない。
庭では一抱えもある大きな鍋が火に掛けられ、哀れな民衆を迎えている。
こうして大通りから奥まったところにひっそりと佇んでいる理由は利用者にある。外見でそれとわかる、明らかに貧しく汚い人々なのだ。垢だらけの、くたびれた古着を着て、疲れた目とこけた頬が目立つ。彼らは自由民の中でもとりわけ困窮していて、日々の糧をこうした炊き出しに頼っている者も少なくない。
日の当たる大通りを歩き、神殿に寄進する余裕のある豊かな人々はこういう貧民を見て眉をひそめることだろう。
それで浄財が減ってしまう可能性を除くため、施療院は神殿の裏、奥まった場所に建てられているのである。
貧民達は粗末な木皿と木さじを持っていて、それぞれが麦粥をよそってもらい、その場で食べている。
よほど腹が減っていたのだろう。味付けは塩とチーズのみだが、食べ物をもらった人々は皆、顔をほころばせ、一心に熱い麦粥を貪っている。
人種も雑多だ。
利き腕のない小人族、舌が痺れたままの妖精人族、躄る巨人族、杖をつく獣人族、そして、うつむいたまま顔を上げられない童人族。半分以上がヒト族で、皆、薄汚れて髪もボサボサ、垢だらけの服を引きずりながら惨めな顔で集まってくる。
彼らを迎えるのは神殿の見習い巫女や下男達だ。
見習い巫女は祭服を、下男は作務衣と服装が統一されていて、全員が同じ頭巾をかぶっている。
仕事に慣れてはいるようだが、顔にはわずかな嫌悪の色が伺える。また、若い見習いほど麦粥をよそう手にためらいがある。
やはり、貧しく不潔な人々と接することにまだ抵抗があるのだろう。
「ふぅん…実に面白いね☆」
麗人アスタは興味津々といった表情で不幸な人々を観察している。
「いや、その…面白くはないと思いますが。あそこにいる人々は食うにも困っていて、日々の暮らしでさえ危ういんです。彼らは本当に不幸なんですよ」
強者の言葉とわかっていてもギュディト百卒長はあえて異を唱える。
「……」
「あぁ……」
「ふぅ…」
「ん…」
好奇心丸出しで自分達を見つめる麗人を見ても貧民達はほとんど反応しない。貧しすぎて、空腹すぎて、『実に面白い』などと言われても無関心なのだ。
しかし。
「そうかね? 彼らはとても幸せそうに見えるよ」
麗人は貧しい人々をニコニコ顔で見つめる。
「こうして人間が人間同士で助け合っている。しかも人種を越えてね。相利共生の好例じゃないか。実に好ましいと言えるよ」
こうして語っている本人の方がよほど幸せそうだが、素直な感想であることは間違いない。
アスタの正体は幻獣。
それも全ての龍の頂点に立つ、超巨大ドラゴン暁光帝が人化した麗人なのだ。
幻獣は嘘を吐かない。
幻獣は嘘が吐けない。
口にすることに偽りはないのだ。
「んむ? ソウリキョウセイ? コウレイ? う、う〜ん…“幸せそう”…ですか……」
百卒長は当惑している。
「!?」
それと対照的に妖精人のナンシーは目を見開いている。
気がついたのだ。
麗人の言葉の意味を。
「つまり、にんげんがにんげんどうちでなかよくたちゅけあっていきているってことでつね」
龍の巫女、幼女のクレメンティーナが何とも言い難いと眉をひそめながら言葉を紡ぐ。たどたどしい言葉だが、意味は伝わる。
「えっ、いや、それは…その…当たり前じゃないかと……」
ギュディト百卒長は目を白黒させながら、『これはふつうのことだ』と説明する。
「ほほぉ…“ふつうのこと”か。いや、面白い。実に面白い。つまり、この現象が……」
紫の髪を金属光沢に輝かせ、周囲を縦横無尽に舞わせながら。
「相利共生が広く人間社会で観察されるということになるよ」
嬉しそうに断言する。
人間が社会性に富む生き物であることは理解しているつもりだった。それでも程度というものがあるだろうし、現象が偏在しているとも考えていた。
それが人間の社会全体にあまねく見られるとは意外。
「仲間同士で助け合う現象はシャチやチンパンジーの群れでも観察されるからね。チンパンジーと同じ霊長類のヒト族でも見られて当然なのだろうけれど…こうして実際に観察できると感動もひとしおだよ」
パチパチパチ!
たおやかな手を優雅に打ち鳴らし、上機嫌で称賛する。
その拍手は自分にか、それとも目の前の人々にか。
「そうですね……」
両方だろう。アスタの様子を見て金髪エルフは頭の中で思い描く。
ヒト族の社会にまんまと潜入し、直に人々の生活を観察できた、その事実を暁光帝は評価しているのだろう。超巨大ドラゴンらしい、独特の感覚だ。
彼女から見れば貧しい人々は不幸ではない。
同じ人間の仲間から生活を支援してもらって、腹がくちくなるまで食べさせてもらえている、その様子はまさしく相利共生だ。自己責任と自助努力を唱える者はいるだろうし、果ては弱肉強食を持ち出して批判する愚か者も存在する、それが人間社会である。見捨てられる可能性も十分にあったのにこうして食べ物にありつけているのだから、貧しい人々は幸せなのだ。
これが哀れな貧民達を観察する彼女の感覚なのだろう。
「見方を変えれば…確かにそういうことも言えるかもしれませんね」
しみじみ語る。
考えてみれば、ドラゴン達は困っても互いに助け合ったりしないのだ。
いや、そもそも、彼らが困ることなどあるのだろうか。おそらく、能力が高すぎて何でも自力で解決してしまうのだろう。たとえ、困っても他の竜に力を借りるなど思いもよらず、よしんば困っている他の竜を見つけても助けてやろうとは考えない。
それ故、ドラゴン達は社会性に乏しく孤高である。
とりわけ孤高の八龍はその傾向が強い。皆、縄張りの中に引きこもって何やら活動しているようだが、縄張りの外と交流する様子はほとんど見られない。人間はおろか、仲間のドラゴンともめったに関わることがないらしいのだ。
暁の女帝に至っては年がら年中、朝から晩まで、日がな一日、雲上を亜音速で飛び続け、誰とも語り合うことなく過ごしている。
“寂しい”、“人恋しい”などという感情とはそもそも無縁であり、それこそ何ヶ月も何年も誰とも話すことなく孤独に空を飛び続ける超巨大ドラゴン、それが暁光帝である。
およそ人間には理解できない、人間から酷くかけ離れた感覚を持つ。
決して人間とは価値観を共有しない超存在なのだ。
そのアスタが今、炊き出しに群がる貧民達を観察している。
日々の糧にも事欠く貧しい人々はこうして今も施療院の炊き出しに群がっている。
その様子は惨めそのもので“落ちぶれ”を絵に描いたようなものだが。
それは仲間の人間から食事を与えられ、助けてもらっているということでもある。
それもドワーフにヒト、パタゴンといった異なる人種の間で。
ドラゴンから見れば、れっきとした相利共生であり、幸せそうに見えてもおかしくない。
けれども。
「竜種の感覚、わかんないわぁ……」
ナンシーは小声でつぶやくしかない。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
今回の新章<<施療院って何? そっかぁ…魔法が使えるのってエライんだー>>はタイトル通り、施療院を観光します。
“施療院”ってのはあれですね、中世ヨーロッパの病院みたいなモンです。
現代日本の病院と違って無料です。
嘘です。
患者の懐具合によって応相談、素寒貧だったら無料になります。
金持ちだと浄財とか寄付金を求められます。
でも、金持ちは施療院に来ないので結局ほとんど無料です。
えっ、現代日本の病院よりも待遇がいいって?
いえいえ、中世ヨーロッパの施療院はキリスト教会の紐付きですし、治療も大したことはしてくれません。患者に薬酒を飲ませておとなしく寝かせとくくらいでしょうか。
寝床も清潔とは言い難いし、あんまりいいところじゃありません。
そりゃ、無料ですからね。
後、炊き出しもやります。
つまり、タダ飯とタダ酒を出すところです(^_^;)
でも、食器は提供されません。
施しを受ける側が自前で用意しないと。
提供させる食事もチーズ&塩味の麦粥、つまりオートミールですwwww
ゲロマズいんですよ、これ。
オートミールって栄養はあるんですが、食感が酷い。
すりつぶしたダンボール食ってるみたいなんです。
オヨシノイド施療院ではこれを羊乳で煮込んでます。
ちょっと臭いww
うん、駄目じゃんwww
欧米の小説を読むとしばしば子供達が「これからは良い子になるよ」と言い、この後に「耳の後ろも洗うよ』『オートミールも食べるよ」と続きます。
それで「よほど不味いんだろうな」思ってたんですが……
ある日、売っていたので買ってきました。
一箱ww
うん、めっちゃ後悔しましたww
小生も食ってみたんですが…ええ。刻んだダンボールを齧ってるみたいな食感と味でした。
牛乳をかけようが、砂糖を盛ろうが、温めようが、刻んだダンボールでした。
日本のお米の美味しさを再確認\(^o^)/
そりゃ、カッレ君もツバメ号とアマゾン号の乗組員もエルマーとりゅうも敬遠するってもんですwww
でも、栄養価は高くバランスもいいらしいので我らがオヨシノイド施療院では炊き出しの定番ですね。
不味い?
嫌なら食うな☆
小生は一箱分のオートミールを食い切るのにえらい苦労しました。
さて、そういうわけで次回は『暁光帝が説明したげましょう。聖魔法と回復魔法は全くの別物、違うんですよ。』です。
請う、ご期待!




