任せて安心、暁光帝♪ どんな侵略者も消し飛ばします☆ 跡形も残りませんけどね(^_^;)
何ということでしょう!?
健気な童女が一生懸命に頑張って海水浴場の平和を取り戻したというのに!!
恩知らずのメガネが過去の悪事を暴いてしまいました(>_<)
せっかく海辺が平和になったというのに…
博物学者は益体もないことにこだわっています。
でも、ご安心ください。
童女には頼もしい味方がいるのです。
巨乳で黒い肌が光る麗人が……
さぁ、どうなることやら。
お楽しみください。
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浜辺で瓦礫街リュッダの為政者2人が真っ青になっている。
そこへ駆けつけてくる大勢の足音が響く。
ザッザッザッ!
足止めに向かった百人隊が戻ってきたのだ。
「先ほどの轟音はなんですか!? 異形妖族の大軍はどこへ行ったんですか!?」
驚いて叫ぶギュディト百卒長である。残しておいた斥候が事の次第を知らせたのだ。
「アスタが怒鳴ったのよ。それがさっきの雷鳴みたいな轟音の正体だわ」
「一声、吼えただけで侵略者どもが震え上がり…1頭残らず、逃げ出してしまいました。海の底へ……」
2人は思いっきり沈んだ声で説明する。
「おおっ! それはよかった…ん? 危機が去ったのに、何でお二人はそんなに落ち込んでるんで?」
百卒長は訝しむ。
「あぁ…それはね……」
妖精人が説明しようとしたら。
「うむ。相変わらず、親切な連中だよ。ちょっと怒鳴っただけで退散してくれた。やはり、抗弁して来ない連中は扱いやすい」
これまた上機嫌のアスタが戻ってきた。
二目と見られぬ恐ろしい鬼面はどこへやら。金属光沢に輝く紫色のロングヘアーをたなびかせ、見目麗しくも可愛らしい童女の姿に戻っている。
「だから、最終調整者の出番はないね」
どキッパリ断言する。
乙種2類は魔女化け物連盟に加盟しておらず、言葉による意志の疎通が不可能。フォモール族はこれに該当するから、自分も最終調整者として働かなくてよい。
仲間でもないし、交渉もできないのだから暴力を振るっても構わない。
何とも親切な連中だ。
だから、遠慮なく引っ掻いて咬みついてやった。
その上、大勢で海水浴場に押し寄せてきたからちょっときつめに怒鳴りつけてやったのだ。
そうしたら這う這うの体で逃げていった。
だいたい、ボクの遊び場へ無遠慮に大勢で押しかけてきやがって。
一体全体、何をするつもりだったのか。
もしや、人間採集の大会を開くつもりだったとか。
それで物凄く珍しい人間を見つけた奴を優勝にするとか。
このボクを差し置いて昆虫採集を…もとい、人間採集大会を催すなど断じて許せん。
まぁ、何でもいい。
フォモール族など529頭来ようが、12157頭来ようが、羽虫と変わらぬ。
否、可愛くない分、ツマグロオオヨコバイにも劣る。
もっとも、無様な悲鳴を上げて逃げていったので、こちらも少しだけ溜飲が下がった。
ざまぁ見ろ。
愉快、痛快。
「あーっはっはっはっ☆」
腰に手を当てて大笑い。物事がスッキリ終わって童女はとても上機嫌だ。
「おおっ、それは大活躍でしたね☆」
黒い肌の美女も禿頭を帝国式兜で隠して上機嫌だ。
もう完全に頭を切り替えている。
アスタと手柄を競うよりも協力した方が街のためになると。
だから、童女がどれだけ規格外の化け物であっても気にしない。むしろ、頼もしいと考える。
脳みそまで筋肉でできているギュディト百卒長は考えがシンプルだ。
強い敵は脅威である。
強い味方は頼もしい。
手加減無しであれだけぶん殴ったのに反撃してこないアスタは敵ではない。
敵ではないから味方である。
故に味方のアスタが強いことは喜ばしい。
何ら矛盾することのない思考なのだ。
だから、一切の悪意なしで語りかける。
「あれほどの大軍を一喝するだけで追い払うとは大変な偉業ですね」
負け戦が決まっていた戦闘が回避できたのですこぶる上機嫌だ。
「おおっ、さすがはアスタさんだ」
「あんなに小さいのに偉いんだなぁ……」
「とても立派だね」
「凄い、凄い」
「オレ達の仲間だ」
「瓦礫街の平和は頼んだぞ」
軍団兵達も口々に称賛する。
皆、百卒長の態度を見て安堵している。先ほどの戦況で百人隊の全滅もほぼ決まっていたので皆、生きた心地もせず、助かったことを喜び合っているのだ。
当然、助けてくれた童女にも全幅の信頼を寄せて感謝している。
「うむ。うむ。全く以てその通り。街の平和はボクが守ってみせよう。はーっはっはっはっ☆」
称賛されてアスタはさらに機嫌をよくし、黄色いビキニの平らな胸を思いっきり反らして高笑い。
まさしく世界中から称賛されて当然といった態度だ。
「それにしてもフォモール族があんなにたくさん…物凄い数だったでしょう」
「物凄い数? 物凄くも…凄くもない…かな。う〜ん、1頭だけ多かったよ。1025頭はいけないね」
「はひ? 1頭だけ…多い?」
声が裏返ってしまう。
フォモール族はたしかに大軍だった。あれほどの数を集めたということは間違いなく本格的な侵攻だったのだろう。
脳みそまで筋肉でできているけれども百卒長は戦術的な問題について無い知恵を絞って考える義務があるのだ。
けれども、アスタの答えはシンプルだった。
『1頭だけ多かった』、と。
これは一体どういう意味なのだろうか。
いくら考えてもわからない。
「む…むぅ。1頭だけですか? 1025より1少ない、1024頭なら望ましい、と?」
「うん。1024は2の冪、2の10乗だからね」
「うむぅ…それは一体、どういうものなのでしょうか?」
「2掛ける、2掛ける、2掛ける…と2を10回掛ける乗算で得られるのが1024だね。シンプルに美しい」
「はぁっ!? そ、そういうものだったんですか! 1多い1025では駄目なんですか!?」
「論外だね。1025は5掛ける5掛ける41に等しい。素因数分解して41を約数に持つとか…よりによって41だよ! すぐ隣の43も素数だし! 双子素数じゃないか! 孤独じゃない! 美しくない!」
「アイエェェ!? 掛ケ算!? 掛ケ算、ナンデ!? ソインスウブンカイ? ヤクスウ? フタゴソスウ? 美シクナイ?」
「そうだよ。あ、素数ってのは1と自分自身でしか割り切れない2以上の整数のことだね。ちなみに23は他の素数と離れていて孤独だから気持ちいいよ☆」
「オォゥッ!! ソ、ソウなんデスか。ソレはまた大変デスね……」
アスタは推しの数について話せて上機嫌。
対するギュディト百卒長の脳みそは謎の単語の奔流にパンクしかけている。ちなみに1から100まで数を数えられるのが自慢で、繰り上がりがなければ足し算もできることがある。
「23の平方の529とか、立方の12157がお勧めだよ」
「は…はぁ……」
童女は推しの数とその仲間達を更に勧める。
百卒長は1万2千という概数に置き換えて目を白黒させている。1万2千頭のフォモール族が攻めてきたら瓦礫街リュッダどころか、この都市を擁するペッリャ王国そのものが崩壊すると思う。
この百卒長の考えを読んだかのように。
「もしもフォモール族がもう少し礼儀をわきまえて12157頭で来ていたらボクも少しは手加減してやったんだけどねー 非常識な奴らだよ、全くー」
侵略者の数について解説してくれたアスタである。しかし、相手の無礼についてプンプン怒っているから、別に考えを読んだわけでもなさそうだ。
「あ…あぁ…つまりは“数”ってことだったんですか? なんて…なんてことだ……」
酷いショックでビョルンは言葉を続けられず、絶句している。
先ほどの分析でアスタのことはだいぶ理解していたつもりだった。
けれども、1つだけわからないことが『1025頭は多すぎる』という謎の言葉だったのだ。
単純に考えて『敵の規模が多すぎる』という話だと思い、それで手に負えないと判断したアスタが人化を解くのではないかと案じていたわけだ。
しかし、蓋を開けてみればどうしたことだ。
1000頭を越えるフォモール族の大軍をたった一声、叫んだだけで蹴散らしてしまった。
文字通り、一吹きで。
まるでテーブルの果物にたかる羽虫を吹き飛ばすかのごとくたやすく。
これで『あぁ、敵の規模は問題ではなかったのだ』と思い知らされたが。
まさか、敵の“数”そのものが問題だったとは。
それも数の大小ではなく素因数分解した結果が気に入らなかったとは。
これまた思いもよらぬ。
「わかるか、そんなん!」
隣でナンシーが小声で憤慨している。
「はぁ…暁光帝の意図を推し量ること自体がそもそも人間には不可能なのですよ」
ため息を吐きつつ、ビョルンが世界中の博物学者を代弁して答えてくれる。
今、どれだけ多くの博物学者が幻獣について研究しているのか。とりわけ、暁の女帝は国家の存亡に関わる重大事である。しかし、その行動はあまりに気まぐれすぎてさっぱり見当がつかず、“忍び寄る天災”などと呼称されるに至る。
「なるほど、あ〜あ…アスタの思考は読めないということなのね…やはり、我々、人間とは根本的に異なる存在。少なくとも価値観は共有しないんだわ」
エルフは不満げにつぶやく。
確かに童女は邪悪な侵略者を撃退してくれた。結果としては。
もっとも、瓦礫街リュッダの防衛を考えてくれたわけではない。
侵攻してきたフォモール族の数を素因数分解した結果が美しくなかった。
ついでに襲われたおっさんが『ブタよりも小さいアスタさん』と妙ちきりんな形容つきで助けを求めた。
おそらく、この辺が理由なのだ。
「いやいや、仕方ありませんよ。もしも、彼女が本気で瓦礫街リュッダを愛し、平和を守ろうなどと考えてくれるのならば……」
博物学者は凄惨な笑みを浮かべる。
「この街が暁の女帝様に魅入られたってことになりますからね」
爆弾が爆発する身振り手振りを示す。
「あ、あぁ…そうね。そうだったわね…それはゴメンだわ……」
これにはナンシーも納得するしかない。
個人であれ、国家であれ、幻獣に魅入られて不幸になった話なんていくらでも転がっている。
ましてや、相手が暁の女帝様だ。
魅入られたら破滅を免れ得ないだろう。
うん。
『やってきたフォモール族の頭数を素因数分解した結果が美しくない』ていどの理由くらいでちょうどよいのだ。
「ま、まぁ、とりあえず、23と529と12157くらいは憶えておきましょ。いろいろ使えそうだわ」
頭を切り替える。
侵略者は撃退されて自分は生きている。
おまけにアスタについて貴重な情報も得られた。
全て望ましい結果に終わったのだ。
実に喜ばしい。
これ以上、何を望むのか。
「ええ。そうですね。そうです……」
博物学者はうなずくしかない。
もとより、人間にできることなど限りがある。
暁の女帝様が手ずから侵略者を撃退し遊ばされたのだから、甘んじてそれを喜ぶべきだ。
感謝するべきだ。
「せめて、クレメンティーナがいてくれれば……」
今、ここにいない龍の巫女に想いを馳せる。
怒れるドラゴンをなだめるのは巫女の役目だ。
ましてや、そのドラゴンが暁光帝であるならば、今、それができるのは幼女のクレメンティーナのみ。
早く戻ってきて欲しい。
つくづくそう願うのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
最後に残った謎、どうして暁光帝♀はフォモール族の大軍を見て「多すぎる!」と悪態をついたのか!?
その謎が明かされましたwww
「1025は美しくない!」…大変わかり易い理由ですねww
あー…高校数学の数Ⅱ辺りですかね。Σで表記される級数の和の問題、ほら、初項から第n項までの和を変数nで表わせ的な問題ありますよね。
問題自体はわかりにくいだけで意味がわかってしまうと公式を間違えずに当てはめるだけの雑魚なんですが!!!
答えがたくさんあるwww
数学なのにwwww
いや、たくさんあるわけじゃなくて1つなんですが! 「nで表された式を因数分解しておかなくてはならない」的な謎仕様が求められますwwww
いや、そのままでいいじゃんwww
えっ、答え合わせが面倒?
それやんのが教師の仕事やんwww
そして、この因数分解した結果と言うか、式なんですけどね。
キレイにまとめないと言われる、「美しくない!」ですよ。
んでもって、「美しくないから×」とかwwww
えっ、何?
学生に数学を嫌いにさせたいの?
だいたい、「美しくない!」って何よ?
あ〜 高校数学程度に“ε^jπ+1=0”レベルの“美しさ”を求めてんの?
頭オカシイんじゃない?
そりゃ、ギュディト百卒長も目を回しますわ(^_^;)
…
……
………
…ってなわけで人間に暁光帝は扱えませんwww
無理に手を出すと皇帝アプタル8世のように無残に破滅しますww
ひどい〜〜〜
さて、そういうわけで次回は『えっ、哀れな男達が泣き叫んでいる? それじゃあ、暁光帝の出番かな?』です。
請う、ご期待!




