パラレルワールド
二日酔いの朝はつらい
『さなえ〜さなえ〜味噌汁できてるか〜』と当たり前のように言う
『……』返事が無い。どんなに怒っている時でも返事位はしていたのに……
なにか不思議な違和感を感じてしまう…(何か起きたのかも)
急いで寝室を出たが誰もいない……
町も音も静かだ…
何か異変が起きたに違いない!!
外に出たが人や車が走っていないのを除けばいつも通りの風景だ
人が居ないというこの違和感……
何かが起きている
思い浮かぶのは飲んだ帰りに、占い師になにかをいわれた記憶がある。
その後、公園で様たして鏡を見た瞬間からの記憶がない!!
携帯も通じずにこの風景……
しばらくは様子を見ることにしよう
しばらく様子を見てみるといくつか判ったことがある
時間は動いているらしい
信号や自動ドアも開く
車は人が乗っていない状態で停車をしている
そして、自分以外にもこの世界に入り込んだ人が居るらしい
なぜなら、こんな張り手紙をみつけたからだ
『もしこの世界に来た人は○×公園に来てください
みんなそこにいます』
みんなという表現から自分一人じゃなく少なくても数人は
こちらの世界に入り込んだみたいだ
そして…○×公園とは私が記憶をなくした公園でもあった
もうしばらく様子を見てから行って見ようと公園のほうへ歩き出した
公園に行く前にいくつか確認をしておきたい事があった。
自分が元いた世界に自分は生息しているのか、行方不明常態なのか?
今いる世界と元の世界の境界線はどこかにあるのか?
いくつかの謎を考えながらビルの屋上に登ってみた
人影がまったくといっても良いほど無い……
人のいた形跡は有る
ふとTVを付けてみて謎がいくつか解け出した
ニュースを普通にやっていて、そこには街で歩く人々の映像が流されている
時間もこちらの世界と同じだ……
行方不明者のニュース等はしばらくみた記憶に無い……
つまり、元にいた世界とこちらの世界は同じ時間軸で動き、
元の世界ではいつも通りの生活を送っている。
自分たち以外の人が居なくなった訳でもなく、自分だけ居なくなった訳でもない
同じ世界で同じ時間軸で、だけれども別の世界に居るということだ。
そして、今日のところは公園に行くのは止めて自宅で考えをまとめながら
眠る事とした。
明日の朝には元の世界に戻っている事を祈りながら……
朝目覚めたが、やはり家族が居ない
街の人々も姿が見えない。
考えていても仕方がないので
張り紙にあった公園にいってみる事にした
そこには、数十人の人たちが集まっていた
『あの〜この張り紙を見てきたんですけど……』
おそるおそる話しかけてみると
おそらく一番年上であろうおじさんが
『ほぉ〜お宅もこの世界に迷い込まれたか、私はここではタクと呼ばれている』
『お宅さんの名前は?』
迷い込まれたとか、名前が通称で呼び合っている点など不思議なところはあるが
別に通称を使う必要も感じなかったので
『私はシンジと言います。昨日の朝起きたらこんな状況になってまして…』
それから1時間ほど話をしただろうか、やはり自分の思っていた通りに
元の世界では自分を含めて普通の生活を送っているらしい。
長い人で一ヶ月前くらいから居るらしいし、元の世界に戻った人もいるようだ
元の世界に戻るにはいくつかの条件が必要になってくると教えてもらえた
その条件とは……
元の世界に戻る条件……
ある程度の苦難は覚悟をしていたが聞いて絶望をしてしまった
その1 元の世界の自分が鏡に映っているときに一緒に映る事
その2 元の自分がこちらの世界に気が付き呼び戻してくれる事
その3 元の世界の自分もこちらの世界に来てしまう事
このいずれかが当てはまれば、戻れるらしい。
そして占い師が言っていたセリフが頭をよぎった
『この世界は鏡によって繋がっている。鏡は時に歪みを生じる』と…
今居るこの世界は占い師に言う所の歪みなのだろう。
その1の条件は絶望的だ……
なぜなら自分や今ここに居る人たち以外の人間の姿が見えないのに
どうやって自分が鏡に映ればよいのだろう。
他の条件はあくまでも元の世界の自分に頼るしかなく自力ではどうしようもないからだ……
それにしてもこちらの世界の人間は自分を含めてだが、
なぜこんなに落ち着いているのだろう?
もっとパニックになったり発狂してもよさそうなのだが……
そして元の世界に戻った人間がいるということは、
絶望的な条件をクリアーできたのだろうか?
それとも他の方法でもどったのであろうか???
疑問が謎を呼び謎が疑問を呼び起こす。
明日はもう少し色々な人からも話を聞いてみよう……
こちらの世界に来て数日がたった
判った事は
『自力じゃどうしようもない』
『こちらの住人は他人には無関心だ』
みんな、元の世界に戻る事は諦めているのであろう
いや、もしかしたら、こちらの世界のほうが居心地が良いのかもしれない
実際、自分自身も最初はパニックになったが、今となっては落ち着き
冷静に物事を見れるようになっている。
とにかく楽なのだ
誰にも干渉される事もなく、人の目を気にする必要もなく
仕事に追われる事もなく……
生活に困る事は何一つ無い。
だから、だれも元の世界に戻ろうとしないのかもしれない……
自分もその一人に入りつつある事にはきがついていた
今日は最初に話をしたタクさんと話をする機会があった
タク 『どうじゃこっちの世界は?悪い気はしないだろう』
そう言われると返事に一瞬躊躇をしながらも
『やっぱり、元の世界が気になるし戻りたいって気持ちもありますね』
それが今言える精一杯の返事だった。
自分でも気が付いているのだこっちの世界のほうが居心地がよいと……
そう気が付いているのだ
こちらの世界でいるほうが気楽だと
しかしその反面、何をしたら良いのか不安に駆られるときもある
タクさんが言うには
『こっちの世界に来た人間はもう人間じゃ無い』
『思考回路の無いロボットだ』
と……
確かに何も起こらなく、平凡で、誰からも干渉されない
何も考える必要も無く、ただ時間が過ぎるのを待つばかりだ
何も変化の無い毎日、干渉されない日々、他人の目を気にする必要の無い生活
求めていたものはここにはある。
ただ実際に与えられると、確かに
『思考回路の無いロボット』になっている
この世界の果てはどうなるのかは判らないが
自分だけでも元の世界に戻ろうと決意をした。
方法は、みあたらないが……
『思考回路の無いロボット』
確かにここにいる人々はまさにそんな感じだ。
自分だけは、そうはならまいと思いつつ戻る方法を考える
元の世界の自分に頼るのはよそう。
自力で、なおかつ正確に戻れる方法を考えた
自分の生活リズム、性格、癖など…
まさか、自分自身をここまで見直すとはおもいもしなかった
そして気が付いた。毎朝、顔を洗う時に鏡の前にいるではないか!!
その時に自分がその場所に行けば上手くいけば戻れる
タクさんにその話をしたとき
『それは良かった…で、お主はそれで良いのかね』
元の世界には戻りたい、でもこちらの世界も居心地が良い…
返事は出来なかった
ただ『思考回路の無いロボット』だけにはなりたくは無いのはたしかである
自分の生活リズム、性格、癖など…
まさか、自分自身をここまで見直すとはおもいもしなかった
そして気が付いた。毎朝、顔を洗う時に鏡の前にいるではないか!!
その時に自分がその場所に行けば上手くいけば戻れる
タクさんにその話をしたとき
『それは良かった…で、お主はそれで良いのかね』
元の世界には戻りたい、でもこちらの世界も居心地が良い…
返事は出来なかった
ただ『思考回路の無いロボット』だけにはなりたくは無いのはたしかである
毎朝自宅の鏡の前に立つ
これが予想以上に苦痛だ
鏡には自分の姿は映っている
ただ、家族も誰も映らない
ましてや、自分自身も映らない
ただ、時間だけが過ぎていく
数日間、鏡の前に立ちっぱなしになったが
戻れる気配が無い
旅行に出かける予定も無かったのになぜだろう
何故だろう……
確実に自分自身と鏡で会っていてもよさそうなのに。
タクさんに話をしたが、皆同じようにもどれなかったらしい
何故なんだろう
疑問だけが残りつつも数日間は河岸の前に立っている事にした
絶望的な気持ちになりながら。
数日後夢の中に自分が出てきてこう言い放った・
『苦労してるみたいだな、どうだい自分の望んでいた世界に入れた感想は」
『俺はお前を戻さないぜ、自ら選んだ道なのだから』
『せいぜい思考回路の無いロボットにでもなるんだな!!』
時間軸をずらしてまで作った世界だ。
自分の中での本当の答えを見つけるんだな』
と言い放って行った
元の世界の自分は気が付いていたのだ、自分がこの世界にいることも、
呼びよこせる事も、こっちの世界に来る事も
可能たということを……
元の世界の自分は気が付いている
呼び戻そうとしない。
『自分の望んでいた世界』
確かにそうである。
誰にも邪魔されず、干渉もかれない世界…
来てみて始めてわかった
人間っていうのは無意識に繋がりを求めているのだと
自分自身の中で皆、格闘しているのだと
『自由になりたい。空を飛びたい』
『誰の目も気にせずに生きて生きたい』と…
この世界は自分が作り上げた世界
自分の中で時間軸をずらしてまで作り上げた世界
ここに居るほかの人もきっと自分が作り上げたんだろう
『思考回路の無いロボットになりたい』と…
きっと元の世界に戻る事は無いだろう
自分の意識下に抑えられ、心のどこかで安心をして
居心地の良いこの世界から……
こちらの世界に来て何年が立つのだろう
意識化の自分は年を取る事も無く、当然まわりも年を取らない
朝起きて、昼間はぼーとして、夜になったら寝る
代わり映えの無い毎日……
本当に自分で望んでいた世界なのだろうか??
しかし、今となっては無駄な事であろう
自分自身が、動き出さなければ
元の世界に居る自分に問いかけ、語り…
戻してもらうしか方法は無い
いずれ問いかけに来る自分に自信を持って
『戻りたい』といえる日までは
この世界で、つまらなく、刺激も何にも無いが
留まる事にしよう。