いつもと違う朝といつもと同じ学校
朝が来た。
暗闇の中で誰かが俺の身体を揺する。
声も聞こえる気がする。その声は発するたびにどんどん大きくなって聞こえてくる。
「太陽くんっ起きて! 太陽くんっ起きて! 」
俺は目を開けると先生が俺を呼びかけながら身体を揺すっていたのだ。
「先生....むにゃ...おやすみなさい。 」
「太陽くんっ!眠っちゃダメっ!学校だよっ!学校っ! 」
俺はハッとした。普通に学校があることを忘れていた。俺は勢いよく身体を起こした。
その瞬間先生と額をぶつけた。
その弾みで先生は後ろに尻餅をついた。
足が広がっていて黒いタイトスカートの中から少しピンク色のパンツが見えた。
(先生のパンツ....てか、謝らないと)
「有梨華先生すいません。」
俺は立ち上がり頭を深く下げた。
「ううん。大丈夫だよ。テテテ...」
先生は大丈夫と言いながらもお尻と額に手を当てていた。俺は申し訳ない気持ちになった。
俺は服を着替えるとキッチンへ向かった。
キッチンには朝食が並べられていた。
有梨華先生はオレンジのエプロンを着けてキッチンに立っていた。
紗奈蘭さんの姿が見当たらないので既に学校へ行ったみたいだ。
「太陽くん。朝食召し上がれっ!」
右目で軽くウインクする先生に俺は朝っぱらからHPを0にさせられた。
朝食は食パン2枚に目玉焼き、ウインナー、キャベツのサラダに味噌汁だった。
特に目玉焼きとウインナーに関しては人の顔のように作られていた。ウインナー2本が目、1本は口にして目玉焼きのきみの部分は鼻にしていた。
「ねぇ、太陽くんって朝は白ご飯派?それともパン派? 」
「どちらでもいいですけど。どちらかといえばパン派ですね。」
「良かった〜。パンにしておいて。悩んだんだよねー。」
キッチンに有梨華先生が立っている光景が新鮮すぎてムズムズしていた。
いつもと違う朝に俺はニコニコしながらパンにかぶりついた。
朝食を食べ歯磨きをして準備をしていると先生が先に家を出た。
「一緒に行くのもあれだから私先に行くからね。戸締りだけお願いねっ。」
有梨華先生はニコッとして右手を軽く振った。
(可愛すぎだろ....)
俺はいつもより早く起きたものの学校に着いた時間はいつもと同じぐらいの時間になっていた。
教室に入り席に座ると昔からの古い友人である長門 涼 が話しかけてきた。
「よっ太陽。昨日の神アニメ見たか? 」
「いや、見てないなー。色々してたからね。」
先生と住んでいることは内緒にした方がいいので詳しい事情が言えないのが難しい所だ。
「らしくないなー。昨日は最高だったぜ?」
「そうなんだー。」
涼が熱心にアニメのことを話そうとした時チャイムが鳴り担任の先生である双葉 秋奈(ふたば あきな ) 先生が教室に入ってきた。
有梨華先生と仲良いということは俺でも知っているぐらい生徒たちに認知されている。
「さぁみんな授業始まるわよ。」
こうして俺の学校での1日が始まった。いつもと同じような時間が流れる。特に変化もなく変わりのない1日だ。
俺は昨日有梨華先生が言っていた今日の夕食が何なのか気になって授業に集中できなかった。
そんなことを考えながら授業を受けていると気づけば昼の休み時間になっていた。
生徒は教室で弁当を食べたり食堂で食べる人もいる。人それぞれだ。
俺は朝、有梨華先生がお弁当を用意したということを言っていたような気がして鞄を開けたがそれらしきものは見当たらなかった。
「まっいいか。食堂あるし。」
俺は財布を片手に教室から出て食堂へと向かった。
「星月く〜ん!」
後ろから有梨華先生の声が聞こえて俺は振り返った。廊下をコツッ コツッと音を立てながら有梨華先生は俺に向かって走ってくる。
「ゆり...有栖川先生どうしたんですか?」
「はぁ...はぁ...これ.お弁当 」
有梨華先生は黒い袋を俺に渡した。
片方の手にはピンクの袋を持っていた恐らく先生のお弁当だろう。
「ありがとうございます。」
俺はその場で袋を覗き込みお弁当箱をチラッと開けて見た。
炒飯とハンバーグ、ウインナーにマカロニサラダだ。
弁当の中身に感動した俺だがあることに気づいた。
「先生...お箸入ってないですよ?」
「えっ!?ほんとに?」
俺は先生に袋を渡した。
受け取った先生は覗き込み必死に探していた。
「ほんとだ...ないね。.ごめん。」
「ははは。いいですよ。お弁当作ってもらっただけでも嬉しいですから。」
「星月くん...お昼..先生と一緒に食べる?」
有梨華先生はモジモジしながら言った。