第三話 どこの馬の骨
黄金色の髪を掻き、男があくびをする。
ソイツをにらみながら、シーツをひったくるようにして、体を隠す。
ここ、私の部屋よね?ちらっと確認したから間違いない。
となると、正当性は私に有る。はず。だと思う。
どうする?叫ぶ?叫ぶ?いや、騒ぎを起こしてはウールリアライナ家に何の得もない。ましてや国中の貴族たちが集う宴会の翌日の朝に。
と言うか、これ、どう説明すればいいの?どう見たって私が不利なのでは……?
年頃の娘が若い男を連れ込んで一夜を……
いやいやいや、まずい、まずい。こんなどこの馬の骨とも知らない男より、断然貴族の私の名誉がやばい。
両親とウールリアライナ家の使用人たちは信じてくれるだろうけど、問題はこの屋敷には来賓用の屋敷に行かない一部の物好きな貴族も居るということ。
……もしかして私、絶体絶命のピンチ?
男は完全に眠りから目覚めたのか、先から余裕綽々の態度で周りを観察している。
そして視線は私へと。
「……意外と大きいんだね」
何処見てんのよ、殺す。
拳を繰り出したが、ひょいと躱された、うぐぐ……
失敗だわ。シーツは肌を隠せてはいるが、体のラインが丸見えだ。
加えて隠し続けなければならない。文字通り手も足も出ない状態だ。
「まあ俺も鬼ではない。こうなれば責任を取るさ」
悪いが全く解決していないんですけど。
まずあんたが何処の誰かはっきりしなさい。話はそれからだ。
「――ん、あ、俺?」
そうね……と彼は軽く顎に手を当てながら考え込む。
「……ルークレオラ・ロンレルってとこかな」
と、言い放った。