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第二十二話 王妃の懐事情




 早めの昼食を済ませた私と王子は、今度は大通りから離れ、のんびりした雰囲気を醸し出している路地を散策。


 大通りの活力と元気溢れる様相は、路地に入り、角を曲がれば――少し離れただけでも、喧騒は遠ざかり、穏やかな店構えをしていたショップが、静謐な旋律を奏でる。


 意識しているのだろうか、手を繋いでこない。此処はあまり人は通らなく、静かな場所だから、特につなぐ理由も必要も感じない。


 店の品物を眺めている私の視線に気が付き、ルークレオラ王子は、


「どれが欲しい」


 と尋ねてきたが、軽く首を振り、答える。


「ご厚意、お気遣い、とても感謝しております。ですが…」


 ウールリアライナでは、王国中心部のデートの時は男に貢がせる、そういう固有文化がないから。辺境は基本助け合い。どちらかが払うんではなく、一緒にというのが基本で。

 今日は色々ドタバタしていたのもありますが、私、故郷から持ってきたお金はもう殆ど残っておらず、財布がピンチなのです。


 ロンレル王国の歴史上、歴代の王妃は皆、一部例外を除いて、位階の高い貴族ばかり。そして慣習なのか、王妃の資金はすべて実家からの支援。もちろん国や夫からお金をもらうこともあるが……。


 なぜこんな慣習になっている原因は――王妃は自分の家柄を誇示するためです。貴族としての実力を示すため、どれだけ実家の金で贅沢な生活を送れるかが、その貴族の力を示している。まあ、ウールリアライナみたいな辺境貴族とは到底、縁のない話だ。


「…無理強いは、良くないだろうね。いつか、俺のプレゼントを受け取って、喜ぶ顔が見たい」


 ルークレオラ王子のそのつぶやきに、私はただ苦笑を浮かべるだけだった。




 疲れた……。

 結局、あの後は普通に王都を練り歩いて、普通に楽しかった。不覚。


 王子様に城の厩舎まで送ってもらい、そこで彼と別れた。

 政務の合間を抜け出して、無理やり時間を作ったせいで、今から大急ぎで仕事に戻らないといけない。

 慌てて走り去る、遠ざかっていく彼の背中。――その背中を、見つめながら手を振り――


「――楽しかったですか、メーフィリア様」


 ――背中から、いきなり声を掛けられた。全身がビクッと震えた。

 振り返り、声の主に、唇を尖らせながら、ため息を吐く。


「お…驚かさないでよ、エリン…」


 ――そこには、ニコニコ笑顔を湛えていたエリンが立っていた。


「――どうでしたか、メーフィリア様」


 エリンは妙に軽やかな足取りで近付いてきて、ニコニコ笑顔の中、漏れ出しているニヤニヤが見え隠れする。


「…何でもありませんわ。普通、普通ですわ」


 プイッと顔を横に向くも、エリンは私に合わせて身をひょいと移動させ、真正面に立ちニコニコニヤニヤのまま見据えてくる。

「是非、聞かせてください、メーフィリア様――口調、変わっていますよ」

「だ、だから、なんでもないんだってば」


 エリンの追及から逃れるように、私は早足で自分の部屋へと向かうのだった。背後に、


「あ、待ってください、メーフィリア様」


 と、どこか楽しそうな声を発しながら、追いかけてくるエリンの足音が聞こえた。




これまで王子に対する呼び方が、殿下ではなく、陛下なのは、物語の進行に合わせ、適切なところで説明したいと考えていましたが、思いの外そこに違和感や疑問を感じた読者が多くいたので、ネタバレにならない程度に言うと、王国の現状を表した結果、分類としては世界観です。


すでに出ている情報から、ある程度の推測はできると思いますが、冗長にならぬよう、いつになるかは分かりませんが、後には説明します。


ちなみに第二王子は普通に殿下です。作者としては、疑問を呈してくれた読者がいることに、とても喜んでいます。ちゃんと世界観は伝わっているなって。

途中に人物相関図や裏事情の説明を入れるか、それとも終わってから説明するか、悩みどころです。本編の中に入れるか、資料集に入れるか、物語の進行を優先しながら考えています。

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