一歩が踏み出せないのなら、私が背中を蹴りとばそう
———ゆかり視点———
「なんで怒ってたの?」
ベッドで泣き止んでからずっと撫でられて、フニャフニャになったゆうくんが訊いてきた。
「それはね、ゆうくんの才能が羨ましくなっちゃったからだよ。」
「才能ってなに?」
「ゆうくんはピアノがとっても上手に弾けるってこと。」
「ゆかりさんの音の方がキラキラしてて綺麗だよ?」
「んー、ちょっと楽しい音でドレミファソラシド弾いてみて。」
ピアノの前まで歩いて行ったゆうくんが、当たり前のように”楽しい音”を乗せてピアノを弾く。
「そしたら次は悲しい音で弾いてみて。」
また当たり前のように”悲しい音”を乗せてピアノを弾く。
「”楽しい”と”悲しい”、どうやって弾いたの?」
「楽しいことを思い出して弾いたり、悲しいことを思い出して弾いたりする。光がキラキラしたり暗くなったりするから、色々試してると楽しい。」
いま、私、とんでもないことを聞いてる気がするぞ。
本人はすごさに全く気づいてないんだろうなぁ…
「思ったことを音に乗せるのって、簡単にはできないことなんだよ。それが才能があるってことなの。」
「そうなんだ?」
ぽかんとしてる。完全にわかってない。かわいい。
「思い出しながら弾くと音が変わるって、どうやって見つけたの?」
「学校ですごく嫌なことがあった時に、もやもやが溜まってて、それを音にしてみたら少しずつ楽になった。音も暗い色からだんだん普通の色に変わっていったし。」
ゆうくんの両親から、イジメられてたって聞いたしそれのことかな…
こんな美少年をイジメるとか許すまじ。
「その後、いい気持ちだと明るい色が出るのかな?と思って試してみたら、明るい色が出たんだよね。あとはたまに遊んでた。」
「なるほどねぇ…」
私は数秒考えた後に、提案してみた。
「ねぇ、ゆうくん、ピアノ習ってみない?」
ゆうくんは少し戸惑っていた。
前にピアノの先生とうまくいかなったらしいからなぁ…
そりゃ、この才能を前にしたら対抗心とか嫉妬も生まれるわ。
「ピアノの先生、怖いから嫌。」
迷っていたようだが、やはり答えは否だった。
「そっかぁ。わかった。今日はそろそろ帰るね。」
「もう帰っちゃうの…?」
おい、そんな顔してたらお持ち帰りして食べちゃうぞ。
「また明日ね。」
まぁ、ゆうくんにピアノを弾かせるのを諦めるつもりはないんだけどね。
ちゃんとした曲を弾いた時に、ゆうくんがどこまで行くのか見てみたい。
明日のレッスンで先生に相談してみるかな。
こういう悪巧みは嫌いじゃないはず。あの人も年下好きなはずだし…
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大感謝です!!
こんなおねショタシチュエーションが好き!というのを感想欄で教えてくれたら
作者のリビドーが刺激された場合のみ、どこかで登場するかもしれません。