仲直りと肩に顔を埋める
———ゆかり視点———
「あんた、嫉妬してない?」
学校で昼を食べている時に、みかにさらりと言われた。
こいつ、黒髪ロング美少女という大和撫子のくせに、歯に衣着せぬタイプなのだ。
ちなみに高身長スレンダータイプ。
「ドだけで感情を表現する?曲を弾く?正直、意味不明だけど、凄いことなんだろうなっていうのはあんたの反応を見ていれば分かる。」
「うん。本当に凄い。こんなことが出来るなんて発想さえなかった感じ」
「わかんないんだけど、ピアニストとしての才能に嫉妬する?みたいなこと無いの?」
「ある..かも…」
「いやー、でも、あんたが美少年を襲った話じゃなくて良かったわ」
「なっ…!?」
「だってあんた、綺麗系の美少年が大好物じゃん。」
そう、ゆうくんは超好みなのだ。
「だったら、好みの男の子のいいところを1つ見つけたってだけじゃないの?」
衝撃が走った。
あ、それでいいか。と思えた。
「ごめん、ゆうくんに会ってくるわ」
「はいはい、学校より大事だわな」
———ゆう視点———
ベッドに横たわって思い出していた。
『ゆかりさんの声、すごくトゲトゲしてた。ピアノもギラギラ斬りつけるような音だったし・・・』
ピアノの先生の時と全く同じだった。すごく怒っていた。
初めて誰かと仲良くなれたかと思ったのに。
世界にも誰にも要らないと言われてるみたいで、涙が出てくる。
『どうして僕がピアノを弄るだけで、みんな怒るんだろう・・・』
「ゆうくんっ!」
急に部屋の扉が開かれ、息を切らせたゆかりさんが飛び込んできた。
「ピアノ弾かせて!それで伝わるでしょ!!」
ピアノ椅子に座って二回、深呼吸。ほんの少し落ち着いてから弾き始める。
すぐにキラキラと部屋中に光が舞った。
ちょっとだけ硬い感じなのは緊張しているからなのか。だけど、嫌な感じは全くしなかった。
ベッドから起き上がり、部屋中を眺めてた。
ゆかりさんが弾き終わる。
「どうだった?」
やっぱりちょっと緊張しながら訊いてくる。
「すごく綺麗だった、いつもよりちょっとだけ音が硬かったけど。」
「また怒ってるって言われないかちょっと緊張したの。」
「だって、怒ってないよね?」
「そうなんだけどね・・・」
自分の左側をポンポン叩きながら言う。
「ちょっと隣に来て」
「え、ちょっとそれは・・・」
「やだ?」
「嫌じゃないです。」
ゆかりさんが隣に座ったので、肩のあたりに顔を埋めながら話す。
「誰かと仲良くなったの、久しぶりだった」
ゆかりさん、固まってる。
「学校の人はみんな気持ち悪いって言うし」
こわごわと手を伸ばして頭をポンポンしてくれた。
「お父さんとお母さんも、最近はずっと僕のこと怖がってる」
ゆーっくりと撫でてくれてる。
「でもまたダメかと思って怖かった」
温かいし気持ちいいし、幸せ。
「戻ってきてくれてありがとう」
顔上げてゆかりさんを見たら、顔が真っ赤だった。
なぜ?