才能と衝突
———ゆかり視点———
今まで聴いた人は、気づかなかったんだ。
ただひたすらドを押してるだけだと思って。
違うよ。
あれは、ドだけで曲を弾いていたんだ。
「ゆうくん、私に何していたか教えて?」
いまだに布団被って泣いているゆうくんに話しかける。
布団から顔だけ出して泣いてる美少年、マジでやばい。
「何もしてない。」
「何もしてなくはないでしょ」
「ゆかりさん、怒ってる」
「怒ってないよ?」
「声がトゲトゲしてる」
「別に怒ってないんだけどなぁ。」
ゆうくんがベッドの上から、ピアノを指差す。
「じゃあゆかりさん弾いて」
お、やっといつもの流れに戻った。
私はピアノを弾き始めた。
この部屋でいつも弾いている曲だ。
その瞬間、ゆうくんが金切り声で叫んだ。
「だめ!!やめて!!!」
びっくりして弾くのをやめた。
「どこかダメだったの?」
「音がトゲトゲしてて痛い。ゆかりさん、やっぱり怒ってる」
そう言って布団を被ってしまった。
「怒ってないんだけどなぁ・・・」
今日はもうダメそうだ。
どうやったら仲直りできるかなぁ。
そう思いながらゆうくんの部屋を出る。
ゆうくんが、私が怒っていると言ったのは何故なのか。
その理由は、次の日、学校で友達に指摘されて気づくことになる。