出会い(裏)
-------ゆかり視点---------
『え、この子、可愛すぎない!?』
扉を開けて一瞬だけ見えた感想がそれだった。
クリっとした大きな目に、ちょっと長めのサラサラ黒髪、
小さな身体、細い手足、真っ白い肌、
もうなにもかもが完璧。
一瞬でベッドの方まで逃げられたのはちょっとショックだけど、
人が苦手って話だし、これから仲良くなれば良いよね。
良いとこ見せるために、ピアノ弾いちゃお。
最近は調子悪いけど、昔は神童なんて呼ばれてたんだから。
そう思ってピアノを弾き始める。
調律は狂ってないし、結構良い音が鳴るピアノみたい。
自分なりに満足な出来でゆうとくんの方を見ると、
めちゃ泣きながらアンコールくれた。泣き顔そそる。
「もう一回」
「いいよ?」
弾き終わる。
いつの間にか、手を伸ばせば届くくらいまで来ている。
「もう一回」
「え、また同じの?」
弾き終わる。
隣には来てくれないみたい。
「もう一回」
「そろそろ疲れたんだけど…」
「もう一回」
「わ、わかった。」
弾き終わったら、不機嫌そうな顔をしていた。
「最後、色の混ざり方が綺麗じゃなかった。」
ちょっとだけ手を抜いたの、ばれてる。
「あと、ところどころ、痛い」
「痛いってなにが?」
「眩しすぎたり、色が濃すぎたり、見えなかったりする」
なにを言ってるんだろう。
「どういうこと?」
「もう一回弾いて」
またかぁ。
ま、美少年のリクエストならなんでも答えますよ!
弾いている途中で彼が言う。
「そこ。」
ちょっと戻って同じフレーズを弾く。
「ここの光が眩しすぎて、次の色がハッキリ見えない。」
少し弱く弾けって意味かな?
言われた通りに少し弱く弾くと、自分でも驚くほどスムーズに曲が流れるのを感じた。
ゆうとくんを見ると、超笑顔だった。
可愛すぎる、天使かよ。と思いつつ弾き続けるとまた声がかかる。
「そこ。赤の光が強すぎ。」
赤ってなんだ。
「赤ってなに?」
「赤は赤だよ。」
と言って、ドの鍵盤を押す。
赤はドのことらしい。
ドを少し弱くするように気をつけて弾き直す。確かに、音の重なりのバランスが綺麗な気がする。
ゆうとくんを見る。やっぱり超笑顔だった。
可愛すぎる。
ゆうとくんを見ながら弾いていると、
笑顔、無表情、不機嫌を行ったり来たりしている。
不機嫌な顔が来た。
「今のところはなにがダメだった?」
「緑が隠れちゃってる。」
と言いながらミの鍵盤を押す。
ミを強くすれば良いのか。
そんなことをしていたらいつの間にか夕方になっていた。
「また明日も来る?」
美少年の上目遣いでそんなことを聞かれた。断れるはずがない。
「来るよ」
「まってる」
こんな感じで、美少年の家に通う生活が始まった。
そんなある日、私は驚きに襲われることになる。