誰かと繋がるたった一つの方法
————ゆう視点--------
『やっとわかった。一緒にピアノを弾けば仲良くなれるんだ。』
友だちの作り方がずっとわからなかった。
なんでみんな、本当は嫌なのに一緒にいるのか分からないし、みんながやってるものの面白さが分からなかった。
昨日、あやの先生とピアノを弾いて、初めて”おもしろい”と感じた。
おもしろいってこういうことだったんだ。
ピアノを弾いて音を出して、誰かと音でお喋りして。
これは、おもしろい。
音楽やる人がたくさんいるのは、これが楽しいからなんだ。
ゆかりさんと一緒に遊ぼう。
一緒にピアノを弾こう。
昨日は断られちゃったけど…
ドアの外から、ゆかりさんの足音がする。
ドアが開いた瞬間に飛びついていた。
「ゆかりさんっ!!」
ゆかりさんの身体、柔らかいし、なんだか甘くていい匂いする。
頭撫でてくれる、すごい気持ちいい。
「ん……もう…」
くすぐったいのに…ゆかりさんは耳触るの好きみたいなんだよね。
見上げて言う。
「一緒にピアノ弾こ?」
すごくびっくりしたゆかりさんの顔がこっちをみていた。
————ゆかり視点-------
『どうやってゆうくんを説得して、一緒にピアノ教室行こうかな…』
そんなことを考えながらゆうくんの部屋の扉を開ける。
トンッ
なにかが胸に飛び込んでくる。
「ゆかりさんっ!!」
腕の中に天使がいた。
とりあえず頭を撫でる。よしよし。
耳を触ると、嬉しくすぐったそうにする。
最近は耳触られたがっている節があるよね。
満面の笑顔で上目遣い。破壊力…
「一緒にピアノ弾こ?」
「うーん…」
「一緒に弾くの嫌…?」
すぐ泣きそうになる。
この涙目みてるともっと意地悪したくなる。
「それよりも、ピアノ教室に遊びに行かない?」
「やだ…外怖い…。みんな見てくるし、全部灰色で目が痛くなる…」
正直なところ、ゆうくんと一対一でピアノでお喋りできる自信がなかったりする。
うまく出来なくて嫌われたりしたらと思うとかなり怖い。
「教室でなら一緒に弾いてあげる。」
「そしたら…」
右手が、ゆうくんの両手で包まれる。
「手、繋いで一緒に行ってくれる?」