9 帳尻合わせ
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『ほほう。本当にそなた、時を戻せるのだな。だが、戻しただけでは、時が過ぎれば、「その」傷や事象はまた現れるのではないか?有った事を無かった事にする魔法ではあるまい。』
え…?
あ…そう…か。
アクセサリーなら問題ない。
いずれまた古くなるものだ。
だが、お父様達は…。
このままでは、また傷が現れる?
どうしたら?
『教えてやっても良い。そなたになら出来るかもしれん。我は退屈しておったのだ。面白いものを見せてもらった礼だ。教えてやった通りにすれば、もう一つ面白いものを観られるだろうしな。』
何をすれば良いの?どうしたらいい?教えて!
『その目の前の敵に、そなたの起こした事象を移してやればいいのだ。』
私の…起こした事象?お父様の傷とかを怪我する前の元に戻したやつの事?
『そうだ。その切り取った「時」を敵と入れ替えてやればよい。そうすれば、そなたの父の傷はその刺客の身に移り成されるだろう。歪めた時は修正される。ただ、起こった場所を変えてやるだけで良い。そなたにはその力がある。』
「時」を切り取って、入れ替える…。
プラマイゼロってことかな?
ありがとう。わかった。やってみる。
『ほれ、早くやって観せてくれ。』
切り取った「時」。
さっきの逆再生の映像だろうか。
触りたくなかったけど、お父様の前に立っている刺客に触れ、さっきの映像の反対…再生する様に念じた。
…すると、忽ち男は身体中に傷を負い、腹から血を吹き出し、出血し始めた状態になった。
さっきの刺された直後だったお父様の状態を再現して静止した。
『おお!流石だ!大昔に伝え聞いた通りだな。かの幻の時空魔法をこの目で観られるとは、長生きした甲斐があるぞ。』
ええー…そんなにレアなの?
『ああ!そうともよ。そなたの言うレア中のレアだな!それは、神の領域だ。』
ええー…あの神様、二つ返事でくれたけど、ヤバいもん貰ってしまったのかもしれない。
でも、そのおかげで領地の立て直しは出来そうだし、こうしてお父様も助けられるんだけとね。
よし!じゃあもう1人…使用人の方の怪我を、今にも逃げようと踵を返して止まっている奴にも…お返ししてあげましょうね。
自分で繰り出した攻撃を時間差で自分の身に受けるのは、どんな気持ちでしょう。
さぞや驚くでしょうね。
と言っても、もう、その時は…死んでるかもね。
私が手をくだした訳ではない。
戻してあげただけ。
それは…自業自得でしょ?
ある意味自殺じゃないかな。
あと一人。
残りの1人は捕らえよう。
首謀者を尋ねるなら1人で充分だものね。
ロープかなんかないかしら?
『手と足、着ている衣服を脱がせるだけでよいぞ。』
ええー…出来るだけ触りたくない…。
しかも、10歳の幼気な少女が、そんな痴女みたいな事したくないんだけど。
けど、仕方ないよね。
ーーいーやぁー!触りたくないっ!ひゃぁー!見たくないっ!
ズボンを足首まで下ろして、ウエストを留めていた紐を絞ってきつく縛った。
腰の剣を外し、他に凶器を持ってないか調べて、取り上げておく。
背伸びしてシャツの上の方のボタンを外し、肩をゆるめて袖を引っ張り、先を固く結んでおく。
これでいいかな?
あれ?もしかして…こんなズボン下ろすなんてしなくても良かったんじゃ…?
例えば、イリーナのエプロンとか?
『くはははは!本当にやるとはな!流石だな、娘!』
ええー…騙されたー。
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