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8 森

お読みいただきありがとうございます

 森の入り口には…馬が4頭…いた。


 どうして!?


 1頭はお父様の馬。


 じゃあ、残りの3頭は?


 ああ…マズい、マズイ…マズいよ…。


 これ、絶対だめなやつだ。


 怠い身体で無理矢理走る。


 これじゃ間に合わない。


 早く早く…行かなきゃ。


 焦る私達が森の中で見たものは…。


 …倒れているお父様。


 …お父様に剣を突き立てている男。


 や…なに?やだ…何してるのよ…。


「やだ…嫌ぁ…いやぁぁぁーーっ!お父様ーーっ!」


 やめて…やめて…なんでそんなもので刺してんのよ!


 死んじゃう…お父様が死んじゃうよ。


「誰か…助けて…!誰かぁーーっ!」


 途端にふっと周りから音が消えた。


 未だに刺客はお父様を剣で刺して、抜いた姿勢のまま…微動だにしない。


 隣で両手で顔を覆って中腰の姿勢のままのイリーナ。


 お父様を助けようと走り出す途中の村人達。


 ーーーー動いているのは、私だけだった。


 あ…と…時が…止まってるの?


 …お父様を…助けなきゃ…まだ助かるかもしれない。


 私は自分だけ動けるこの状態を神様に感謝した。


 お父様に駆け寄り…


 あ…あ…酷い傷。


 どうしたらいい?


 回復魔法なんて使えない。


 あの時、神様に回復魔法を貰った方が良かったかもしれないと後悔した。


 でも、もしも、あのアクセサリーの様に時を戻せたら?


 人に対して使えるかはわからない。


 でも、お願い…元の傷のない身体に。


 お願い…!


 その様は映像の逆再生の様で…少し気持ち悪かった。


 抱きしめるお父様の傷や切られた衣服、吹き出していた血液さえ幻の様に消えていった。


 しかし、この後、一体どうしたら良いのかわからない。


 だって、未だに敵は目の前にいる。


 …怒りがふつふつと湧いてきた。


 時が止まっている今…殺してやろうか…。


 ナイフ1本無防備な首に刺してやればいい。


 そんな事を考えていると…


『娘。なかなか面白い力をもっておるな。』


 突然誰かの声が頭の中に響いた。


「え…?誰?」


 その声に周りを見回すと、木立の間に白い…馬?がいて此方を見ていた。


 馬?なのは形は馬っぽいけれど、身体の表面が硬そうな『鱗』の様なもので覆われていて、頭には鋭いツノ。


 そして、尻尾はフサフサな馬の尻尾…じゃなく、トカゲみたいな尻尾。


『この森を止めているのは、娘、そなただな?恐ろしい程の空間の変異を感じて出てきたが、その男に起こした事といい、それは神に匹敵する力だな。』


 時が止まっているはずなのに、この馬もどきはどうして動けるのかしら。


『馬もどきではないぞ。森の中、動きやすい形に成っておるだけだ。我は白竜。この森の主だ。』


「竜…?心を読んだの…?」


『読んだ訳ではない。心話だから思い浮かべるだけで我には聴こえるだけだ。』


 やだわ…下手な事考えられないじゃん。


『ふふん…それよりも、この魔法はいつまで保つのだ?解ける前に何とかせねばならんのではないのか?』


 そうだった!


 私がまたぶっ倒れる前になんとかしなきゃ。


 お父様はもう大丈夫だけれど、お父様の供をした使用人が近くに倒れている。


 まだ助かることを信じて、彼の身体に触れながら願う。


 お父様と同じように逆再生が始まる。


 …これで良い。


 後は…


 刺客は3人。


 1人はこのお父様の目の前にいる。


 こいつは…殺す。


 前世の自分の常識では考えられない程の残酷な思考。


 この世界に生まれ落ちて、10年しか生きていないが、この世界では人の命がとても軽い。


 弱ければ…すぐに死ぬ。


 殺さなければ、殺される。


 そんな世界に転生して、自然とそれは新たな自分の常識となっている。


 犯罪者には死あるのみ。


 金の為かなんか知らないけれど、こいつらを生かしておけば、再び他でも悪事を繰り返すかもしれない。


 何より、何も悪いことをしていないお父様が、こんな風にされた事自体許せない。


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