5 速攻収穫しよう
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先ずは、健全な種の確保か。
あの商人から買ったものは信用できない。
ちょっと試したい事があるのよ。
少しあれば…増やせるかもしれないの。
何処かに良質な種がないだろうかと悩んでいたら、少しだけだが、自分の家に残っていたものがあると、農家の代表らしき人が名乗り出た。
毎年の収穫の種籾の中から、一握り程残して来たのだという。
年ごとの出来、不出来を比べる為にとっておいてあったものらしい。
でも、古いから発芽するかどうかもわからないと、言われたけど、構わない。
それを頂いて、屋敷に帰った。
応接室でその古い種籾を袋から手のひらに取り出し、元のちゃんとした種になる様に念じた。
すると、見るからに古そうな濃い茶色で、カサカサ乾燥して軽かった種籾が、白っぽくぷっくりした綺麗な種籾に変化した。
父は目を丸くし驚いた。
どうやったのか聞かれたけれど、私はこんな魔法が使えるのだとだけ答えた。
屋敷の庭に出て、花壇を利用し、早速蒔いた。
水をやり、手をかざして、今度は成長するように念じた。
思った通り、花壇いっぱいに蒔いた一握りの種は全てすぐに芽を出し、ぐんぐん大きくなり、あっという間に穂をつけた。
上手くいったよ。使えるわーこの魔法。
「ふう…お父様。これを収穫して、もっと増やします。領民全てに配る為の種籾ですから、かなりの量になるでしょう。この横に保管小屋を建てて頂けますか?」
父は急いで、我が家の使用人達を呼び、村の廃屋から廃材などを運ばせた。
今の我が家には新しい木材なんて買えないので仕方ない。
だけど、大丈夫。
これも新しさを取り戻すことができるよ。
古い朽ちかけの木材に手をかざして、なぞっていくとまるで新品の木の板となった。
「私には何かを綺麗に出来る魔法が使えるだけなんですよ。ただそれだけです。」
お父様や使用人達は素晴らしい力だと喜んでくれた。
扉とかも再利用した簡単な小屋なので、半日程で組み上がった。
皆が小屋を建ててくれている間に、侍女たちに収穫など手伝ってもらい、日が暮れるまでに麻袋3袋まで増やす事が出来た。
よし…明日はこの増やした種籾を村の畑に蒔き直してもらえば、今年の収穫は大丈夫だろう。
…だって、私のこの力があれば、何度でも収穫できるもの。
明日、皆に蒔いてもらって、夜中にこっそりと成長させたらどうだろう。
皆がびっくりするか…気味悪がるか…。
そうすればこれで、これ以上の借金はしなくてもいい。
まぁ、もう貸さないと言って来たんだけどね。
借りたものは返さなきゃ。
借金返済への一歩よ。
あーめっちゃ疲れた…もう駄目。立ってられない。
そして…私はぶっ倒れた。
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