34 平民街の調査
お読みいただきありがとうございます。
商業ギルドを出ると、貴族街へとは反対の方向に歩く。
冒険者ギルドに行く為だ。
冒険者ギルドは平民街のど真ん中にあるそうで、貴族街近くの商業ギルドとは少し離れている。
本当は商業ギルドで登録したから、冒険者ギルドで身分証は作らなくてもいいのだけれど、冒険者の肩書きもあった方が、商人ってだけより、各町で優遇されるらしい。
討伐などの依頼を受けて、町を移動して出入りする度に税金を取られていたら、冒険者は仕事にならない。
ちょっとセコいが、お金を少しでも節約できるなら、やらない選択はないのだ。
勿論、低ランクではナメられてしまうから、そこそこ頑張って中の下くらいまではランクを上げてやろうと考えている。
まだ説明も受けてないから、よくわかってないけど。
お父様はこれでも剣を扱えるし、魔法も使える。職業を聞かれたら剣士で登録すれば良い。
私はヒーラー兼ポーターが出来る。職業を聞かれたら僧侶で良いかな。ほんとは治癒魔法使ってるんじゃないんだけどね。効果はほぼ同じだからいけると…思う。
お父様と依頼をこなしてランク上げをするつもりなので、別にパーティメンバーも探す必要はない。
貴族なんだから、こんな苦労はしなくてもいい筈なんだけど、ウチは貧乏すぎて没落間近だったから、ほぼ村人たちと同じ平民感覚で育ってきてしまっているし、前世の記憶も一般庶民のものだから、今更貴族だとかの自覚が持てない。
貴族達の間でも、きっとウチの評判は良くないだろう。
良くないどころかむしろ、知られていない可能性大だ。
そんな空腹の足しにもならない事なんて気にしていられない。
とにかく、衣食住を充実させて、快適な領地生活を確立できればそれで良い。
その為のこの苦労は投資だと考えて頑張るのだ。
そんな事を考えながら歩いていて、ふと思い出した。
あの胡散臭い隣領の商人の評判を、商業ギルドで聞くのを忘れていた。
…うん。貴族街へ途中にあるんだから、帰り道にもう一度寄って聞くことにしよう。
まずは…昼食、食べ歩き!
お金は少し余裕ができたし、市場調査だ!
王都なんだから、きっと美味しい屋台とかお店とかあるんじゃないかな。
少し歩くとすぐに市場らしき場所があり、屋台の立ち並ぶ一角も見えて来た。何か焼物の香ばしい匂いも漂ってきて楽しみだ。
手始めに、何かの肉を木の串に刺して焼いたものを見つけて、お父様に許可を取る。
私は金貨しか持っていないので、払えない。こんな所で金貨なんか出したら、絶対絡まれる。
代金は小銭を持っているお父様が出してくれた。
ナニカの串焼き、1本銅貨5枚、それを2本もらい、大銅貨1枚を払う。
お父様と1本づつ食べた…うーん、塩気が足りないのか、あんまり美味しく思えなくて、少しテンションダウンした。
きっと、前世で食べていた焼き鳥とかの串焼きは、塩胡椒や醤油ダレって思ってしまっていて、薄い塩味だけでは物足りないからそう感じたんだ。
塩はやっぱり貴重なんだね。
パン屋もあったから、研究の為にいくつか購入した。
酵母とか使ってる感じはしなくて、普通に固い保存の効きそうなパンだった。
もしかしてふかふかの焼きたてパンとか売ってるんじゃないかと期待してたのに…。
また、テンションが下がった。
この世界は食に関してあまり期待できない世界だと改めて認識してしまった。
空腹を満たすのと食欲を満たすのは違う。
ますます、自分の領地で美味しいものを開発しなくてはと心に誓った。




