28 商業ギルド
お読みいただきありがとうございます。
平民街の商業ギルド前で馬車から降り、お父様の後ろに付いて扉をくぐる。
新しい場所はとても緊張する。
すぐに受付カウンターがあって、受付嬢が3人座っている。
その横に各部屋へ続く廊下の入り口があるのがわかる。
あの沢山の部屋はなんの部屋かな。
一番左の受付にお父様が話しかけた。
「商人登録したいのだが。」
受付の女性…ちょっと顔が紅くなっているのは、お父様が割といい男だからかもしれない。
そりゃあね、元々お父様の容姿は割と整ってて、銀髪紫眼だからね。お母様が他の求婚者達を蹴ったのがわかるくらいの容姿。
お母様が亡くなってからのやつれようが酷かったせいで、今は少し陰のあるいい男だ。ちょっと前までは疲れ果ててくたびれたおっさんだったけども。
最近食料事情が良くなったお陰か、お父様も私も顔色が良くなって、お父様はフツメンからイケメンの中の下ってトコかな。私も病的な貧弱娘から普通の娘にランクアップできたと思う。
受付嬢さんキチンと仕事だけはしてよ。そう思いながら、私がじっと見つめると、少しドギマギして更に紅くなった…何故だろうか。
「…いらっしゃいませ。新規商人登録でございますね。では、こちらにご記入ください。登録料として金貨1枚、預託金として金貨1枚申し受けます。登録はお二人まで出来ます。それ以上の登録はお一人につき大銀貨1枚が必要となります。」
新規?再登録とかあるの?それに登録料高い…。お父様お金足りるかな?
お父様と私の名で登録した。
「なお、毎年の更新料として金貨1枚を納めて頂きます。もしそれが納められなければ、商人登録解除となってしまいます。再登録は金貨10枚で出来ますが、信用を取り戻す金額と思って頂ければ宜しいかと存じます。」
…金の亡者だ。さすが商人のギルド。
「もし、小売店舗などで商売を始めるだけの時は、商人登録及び登録料は要りません。商売申請登録だけしておけば大丈夫です。ですが、その場合はこの商業ギルドを通しての優先仕入れ、卸しなどはご利用できません。独自で仕入れなど行って頂くことになります。」
じゃあ、こんな大金払って登録しなくても、商売してる人はいる…小売とかだけなら登録料払わなくってもいけるのか。
でも、ウチは農家ってか生産業が主だから、ギルドに卸した方が楽だよね。
まあ、ギルドより高く買ってくれるってトコがあれば、そっちに売ってもいいし。
「商会の名前はどうなさいますか。そのままプリビオン商会で宜しいでしょうか。貴族様でございますので、そのまま家名をご利用になる方が多ございますが。」
やっぱり、商会つくってる貴族、多いんだ。
「プリビオン商会で。」
「もし、お売りになりたい商品などがございましたら、その都度そちらの各商談部屋にて買取査定を行っておりますので、お申し出下さいませ。」
あの部屋は商談部屋なんだね。やっぱりお金の絡むものだから、秘密保持は必須よね。
「預託金の金貨1枚はギルド口座に預けられております。この口座はギルドでの売買時のご利用が便利です。預託金以外の金額の出し入れは、ギルドが開いていれば無料でいつでもご利用できます。預託金は、更新料が納められなかった時の補償金に当てられますのでご注意を。その場合、1年間は登録が継続されます。その猶予期間中に更新料を納める事が出来れば、登録解除は回避されます。以上で登録は完了です。」
じゃあ更新料が払えなくても、1年猶予期間があるんだ…ってか、それを払えないくらい儲からないなら、商人なんて無理だという事だ。
ふぅ…長かった…。これでやっと塩とか売れる。
「あ、早速ですけど、買取査定お願いします。」
「畏まりました。そちらの通路、1番のお部屋でお待ちください。」
あ…街の屋台とかで価格調査してないわ。ま、いっか。




