22 民は宝
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白竜さんの庭にはなかったけど、小動物が身を隠す際に体に擦り付ける、臭い消しの低木が亡者ゾーンに生えているらしい。
うーん…臭い消しか。
無いよりマシかもね。
その低木にはたくさんの白い小さな実がなっていた。
えっと、臭い消しは葉っぱの汁を擦り付けてるんだよね。
この白い実にも同じ効果があるんだろうか。
いくつかこの木ごと村に移植して研究してみよう。
動物が付けても安全なら、多分人にも大丈夫でしょ。
まあ、石鹸とはいかなくても、消臭効果があるだけでも助かるんだから。
だって、悪臭って結構ストレスになるもの。
臭いのを香水で被せても、更に臭くなる事の方が多いからね。
トイレとか間違いなく役に立つはずだよ。
上手くいけば、消臭剤として売り出せるかもしれないし。
その時は、たくさん栽培しよう。
あと、綿花も見つけた。
普段着の麻の服はゴワゴワしてあまり着心地が良くないからなんとかしたい。はっきり言ってスレて痛い。
早急に綿花の大量栽培も頑張ろう。草花で淡く綺麗な色に染めて、可愛い普段着を作りたい。ついでに下着も!
亡者ゾーンの植物なら問題無く移植出来る。
因みに白竜さんの庭と亡者ゾーンの間にある魔獣ゾーンの植物も何とか村に移植可能なのだ。
移植不可なのは白竜さんの庭の雑草である、万能薬草だけ。あれは白竜さんの魔力を糧に育った薬草だから、村に植え替えても、枯れてしまうのだ。
収納魔法のおかげで、万能薬草は鮮度を保ったまま、結構ストック出来ている。売るつもりはないけど。
私の常備薬みたいなもんね。
だけど、もし村の人達が重篤な病気に罹ったときは、迷わず使う。
民は宝だもの。
民あればこその領主だからね。
皆んなが居ないと、ウチの借金返せないもん。
だから、働きやすくて、飢えなくて、住みやすい環境を領主が整えてあげれば、住民は幸せで領主も幸せ、win-winの関係になれると思う。
領主に依存するだけの働き蟻にはなって欲しくない。
だから、このプリビオン領の皆んなには色んな能力を身につけて欲しい。
私をこの世界に転生させた神様は、この世界を剣と魔法の世界とか何とか言っていたけど、実はそんなに魔法は普及していない。そう、お父様が言っていた。
一体全体、どうやって魔法を広めるつもりなのか。
人が生まれた時、神の恩恵とかは与えてなさそうだし、ステータスは見られないし、こんなんじゃ只の剣の世界だよ。魔法はどこ行った!?
白竜さんとかの存在が魔法の概念を保つらしいけど、魔法が使える人がいなければ、意味ないよね。
私は前世の記憶を思い出したから、時空間魔法持ってるって気づいたんだし、知らない人は気づかないまま一生を終えてしまうよ。
この世界の人々の身体は元々魔力を持ってるし、私は、適性のある魔法の属性と触れ合う内に、魔法が発動するんではないかと仮説を立てている。
現にウチの村では既に半数以上が錬金スキルを習得できている。
その中には、土魔法らしきものを使える人も出てきたんだよ。元々農家だしね。
錬金スキルを使う時の魔力使用の流れに慣れた為なのか、畑を耕すのに魔力を使うことを考えた。その時、土を動かす事に成功したらしい。苗や種を植える為の穴を開けたりね。これは土魔法っぽい。
きっと、この世界の人々は訓練次第で自分に合った魔法をちゃんと使えるんだよ。
後々錬金スキルは錬金魔法、採取スキルは鑑定魔法っていう感じになっていったらいいんだけどな。
他の街や王都に行ったら、どれくらいの生活水準で魔法とかはどうなっているのか調べてみたい。
まあ、お母様の残してくれたドレスや宝飾品を見れば、王都は中世ヨーロッパくらいじゃないかなぁとは思っているけど。
麻の下着…そりゃスレて痛い。




