コピープリンセス
スマートフォンアプリ。「カスタムキャスト」で作った画像をもとにして作った作品です。
いわば画像が主で、小説が従という逆転現象ですが、この実験作お読みいただけると幸いです。
「なんだよ。こんなところに呼び出して」
俺は休みのところを呼び出されて不機嫌。そして不愉快だった。
呼び出されたのはとある旅館だった。
旅館だけに和風だが「モダン」な部屋だった。
そんなことはどうでもいいか。
呼び出した理由が下らなかったら怒るぞ。
「すまんな。友海」
サラリーマン風のスーツ姿の男。風原が言うが、あんた絶対口だけだろ。
オールバックで目つきも鋭いからその筋の人にも見えるギリギリ。
「実はな、お嬢様がお前と一緒に買い物に行きたいとおっしゃっておられる」
「え? 愛優美お嬢様が?」
俺は瞬間的にほほが熱くなる。
俺、中原友海の仕事は私設シークレットサービス。その一員。
名前の通りでもっぱら護衛が任務だ。
「ああ。それもお前だけとお望みだ」
「俺とだけ!?」
美しいお嬢様のご指名に俺は舞い上がる。
「勘違いするな。SSぞろぞろ引き連れてじゃ落ち着かんし、人迷惑という理由だ」
「へいへい。わかってますよ」
俺は正直がっかりしてた。まぁもっともな話だが。
「そんなにへこむな。年の近いお前をお望みなのは確かだ」
俺とお嬢様は一つ違い。俺が上。
「つまり俺はお嬢様の買い物か何かに付き合えばいいんだな」
一人でとなるといつもよりはきついな。
さらに言うと普段はそもそも「やらせない」ないのが目的だ。
だから意図して目立つ姿で護衛とわかるようにして、にらみを利かせている。
しかしこの場合はそれもダメだろう。
怖い顔していたらお嬢様も気分を悪くする。
面倒だが仕事じゃやらないわけにはいかない。
それにお嬢様と二人きりでというのも役得だ。
休みをつぶされたがお嬢様のデートというなら文句はない。
「OK。分かったぜ。それじゃ着替えに一度戻るわ」
お嬢様相手に下手な恰好ではいけない。
少なくとも今のこの格好のままじゃな。
「その通りだ。だからお前にはふさわしい格好になってもらう。お嬢様と釣り合う姿にな」
「どういう意味……だ!?」
俺はその場にうずくまる。
体が熱い。鼓動も速い。くらくらする。
「言葉通りだよ。お嬢様と同じ姿になってもらう」
三つ上の風原が悪役じみた口調で言う。
「この部屋は特殊な『力場』でな。ある種の結界だ。そしてこれだ」
風原がカバンから取り出したのは藁人形。まさか
「この中にはお前の髪の毛が入っている。そして特殊な処置をしたうえでお前をここに呼んだ。あとは望む姿へと代えることができる。そら。そろそろまたぐらもさみしくなったんじゃないか?」
そんなっ!?
俺は意識もうろうとしながら股間に手をやるが…ない!?
24年間ともにあった男のシンボルが。
代わりに胸が痛い。猛烈な勢いで膨らみ始めている。
ふくらはぎがへたりこんだ床に当たっている?
もしかしてズボンも変化しているのか?
なんだかか膨らんだ胸にも締め付けがあるし、シンボルを失った股間にぴったりと下着が張り付いているようにも感じる。
俺は自分の姿を観たくなり、何とか立ち上がり鏡を見る。
すでに女の顔だ。白い肌をしているし優しげだ。
服まで女物へと変化している。
やっと体の異変が収まる。
落ち着いた俺はまた鏡を見て驚く。
お嬢様とうり二つだ。
「勝手にこんな姿にしやがって」
俺はぶぜんとした表情でいう。
声まで済んだものになっている。
「そういきり立つな。ここからの任務に差し障るぞ」
「ここから?」
「お嬢さま。お入りください」
風原は俺を無視して声を上げる。
ここにお嬢様いるのかよ!?
そう思っている矢先に本人が。
この姿の元である西城愛優美様が入ってくる。
「いかがですか?」
風原が「出来栄え」を尋ねる。
「不思議な気分です。わたくしを鏡でなく見つめようとは」
口調こそ穏やかだが少し呼吸が荒い。
「それでは」
いうなり俺に抱き着いてきた。
「ええっ」
戸惑う俺にお嬢様はお構いなく抱きしめる。
「では愛優美お嬢様。私は外に控えてますので」
まるで別の仕事にでも行くと言わんばかりの平然とした口調で風原が出ようとするので呼び止めた。
「ちょ、ちょっと待て。なんかおかしいぞ」
「こんな部屋に呼んだ理由を察しろというのは酷か」
やたらに上から目線で言う。
「実はな、お嬢様は女性同性愛者でな。それでいてお前がタイプだったんだそうだ。だからお前を女にできないかと相談されてな。まぁちょっと心得があったのでご要望にお応えしたというわけだ」
なんだよその雑な話は?
「同じ顔が二人いれば不心得者のかく乱にもなる。影武者というわけだ」
そこまで風原が言ったところでお嬢様は俺の唇を唇でふさいできた。
「おっと。お邪魔ですな」
無責任に言うと風原は出て行った。
「お、お嬢様。買い物に行かれるのでは?」
「ええ。貴女のお洋服やランジェリーを買いに行きますわ。そのためにも体をよく調べないと」
かくして俺は着たばかりの女性服を完全にはぎとられてしまった。そして……
三か月後。
「ともみ。出かけますわよ」
「はい。お姉さま。愛優美お姉さまとならどこにでも」
うり二つの姿のわたくしたちは双子のようです。
この三か月でお嬢様と同じ仕草や口調を叩きこまれ、わたくしすっかり女の子。
だって、夜のたびにお姉さまに愛されてもうすっかり女の体になじんでしまったんですもの。