溜息の数だけ本当に幸せは逃げてるの?
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月と街灯が雪を照らしていた。
何故か晴れた空に降る雪を、なんとなしに追いかけるように眺めていた。
はあ…
不意に出た溜め息は寒空を白く濁した。
白く染まった溜め息を追いかける様に見上げると、月が浮かんでいた。
それが下弦か上弦かは分からないが、細く浮かぶ繊月がまるで嘲笑っている口の様に見えて、イラッと来る
「何笑ってんだお月様! そんなに俺の不幸がおもしれーか? 俺だって真面目にやってるっちゅーの。つーか何が接客じゃボケ。何がおもてなしの心じゃ。俺のはおもてなしじゃねーって言うのか!」
月に悪態を吐くなんて末期だな。と、自分でもそう思うが止まらない。
「絶対お客様は喜んでただろーが! 確かに勝手にドライアイスを発注して忙しい時に勝手に店の電気を落として、勝手にBGM変えて勝手にサプライズバースディして! 勝手に自作のバースデイケーキを提供したせいで保健所から指導が来て営業停止になったけど!」
そう言いながら落ちていた空きカンを蹴っ飛ばす。ゴミの収集所に上手いこと飛んでいく。こんなに綺麗に飛ぶことなんて早々ないだろう。その綺麗に描く放物線が嬉しくてつい目で追ってしまった。
怒り?ノーノー、今この瞬間を楽しもう。そうゆう野暮な感情はちょっと横に置いとこう。
「おーめっちゃ飛んだ。スゲースゲー。仕事もこんな上手くいけばいいのに」
ゴミ収集所にガサっと入った。
「おっしゃー! ストライク!」
イエス!とガッツポーズ。感覚的にはボウリングでパーフェクトゲームを取った気持ち。取った事ないけど。
イヤでもこれすんげー気持ちいいわ。ボウリングでパーフェクトゲーム取るとこんな気持ちいいのか。まあ取った事は無いんだけどさ。
「イテッ」
「……ん?」
何か声が聞こえた気がした。辺りを見回してみるが人っ子1人居ない。街灯に照らされた住宅街に、切れそうな外灯が『ブブッ』とか言って鳴らしてるだけ。それ以上音はしない。んー?気のせいかな?
暫くキョロキョロと暫く見回したけど、その後何のアクションも無かった。やっぱ気のせいか。てか流石に冬はまだ冷えるしサッサと帰ろう。
バイトもまたクビになったし次の仕事探さなきゃだしなぁ。
ぶるっと身体を震わせて足早に帰路を急ぐ。
「はあ…人を喜ばせるって難しい。喜んで欲しいだけなんだけど」
白い息がまた、溶ける様に空気に滲む。クビになった居酒屋で言われた一言が頭を過る。
___なんでお前は人の気持ちを分からないんだ! もう明日から来るな! お前のせいで…!
「…人の気持ちかぁ、分かってるっちゅーに」
赤く染まる鼻をズビッと啜る。泣いてるわけじゃないよ?花粉症なだけ。雪の花って花粉が凄いよね。
あー目が痒い。拭ったとしてもそれは目が痒いからだから。涙をじゃないから。
今宵何度目になるか、幸せが逃げるって分かってても出てしまう。
「はあ…喜んでもらえると思ったのにな」
お客様のためにしたことで店長に責められ、仕事仲間から責められ、挙げ句の果てに営業停止。自作のケーキがアウトだなんて普通知らねーだろ。みんなその情報知ってるのかよ。
「…俺が悪いのかよ」
悔しい。でも、それ以上に苦しい。仕事をクビになったことじゃない。喜ばせようとした事を、仕事仲間にも認めてもらえなかった事をだ。
こんな事を考えても、もうクビになった職場だ。もう一緒に働くこともないんだ。意識を切り替えよう
はぁ…
……次こそは。
「次は…何しよっかな」
俺の名前は望月 夢
歳は23
旧フリーターの、現在進行形無職だ。
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