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第96話 交渉へ


 エルフの男性に合格だ、と言われてようやくフォセカ王国に入ることが出来た。


 馬車ごと壁の上まで来た人たちはあまりいないらしく、そこにいた人たちは驚いていた。


「当たり前よ! なんたってアイリなんだから!」


 と、マリーさんは自分が褒められるよりも嬉しそうに胸を張っていた。


 壁の中の方には昇降機、エレベーターのようなものがあって、馬車を乗せられるぐらい大きかったのでそれで降りることが出来た。


 こんな大きいエレベーターあるんだ、すごいなぁ……。

 前世の病院のも結構大きかった気がするけど、さすがに馬と荷車を乗せられるほどではなかった。



 そして下に降りて、ドアが開くとそこにはエルフの街並みが広がっていた。

 ノウゼン王国の街並みとあまり変わらないが、建物が軒並み大きい。


 横ではなく、縦に、つまりとても高い。

 ほとんどの建物が四階以上だ。


 土地は限られているから、階が増えれば増えるほど良いのかもしれない。

 だけど技術的に難しかったりするので、大きい建物はノウゼン王国はあまり無かった。


 だけどなんか前世からのイメージとしては、エルフは森の中に暮らしてる、みたいな感じだったのに……。

 むしろノウゼン王国よりも都会っぽい。

 特にショックでもないけど、イメージが壊れて少し驚いた。



「さて、君たちがここに来た理由は知っている。黒雲病の完治薬のことだな」


 馬車などの管理を任せて、街の中を歩く。

 どこかに案内されながら、城壁の上で僕たちと話していた男性がそう言った。


「そうよ。しっかり伝わってるのに、なんで攻撃を仕掛けてきたのかしら」

「それに関してはすまない。先程も言ったが、私たちの情報伝達不足だった」

「ふん、本当にそうかしら……まあいいわ」


 不機嫌なのを隠さないで、マリーさんが会話をする。


「で、どこに向かってるの? 完治薬が売ってるお店?」

「いや、違う。まずは落ち着いて話せるところに」

「別に私たちは話に来たわけじゃないわよ。完治薬を取りに来ただけだから、渡してくれたらすぐに帰るわ」

「……簡単に渡せないから、交渉しようと言っているのだ」


 ……今回のフォセカ王国での依頼は、ほとんどマリーさんが交渉をしてくれるはずだ。


 アイリさんはそういう交渉とかは苦手みたいだし、僕はもう……うん、論外だから。


 だけど交渉をしてくれるマリーさんが、これほど喧嘩腰なのは大丈夫なのだろうか?



 その後、すぐ近くの大きな建物に着いた。

 他国から来た人を案内するような建物のようで、中は結構豪華だった。


 ヘレナさんの言う通り、全く外交をしていない、というわけではないみたいだ。

 していないのであればこんな建物ないだろう。


 綺麗な応接室に通されて、ふかふかそうなソファに二人が座る。

 僕はずっとアイリさんに抱きしめられているから、アイリさんの膝の上で話を聞く体勢だ。


「自己紹介をしていなかったな。私はキール、しがない外交官だ」

「本当に『しがない』わね。私たちの名前は……知ってるわよね?」

「ああ、もちろん。ノウゼン王国で三人しかいないS級冒険者のアイリさんと、マリーさんだろう?」

「ええ、だけど『様』と言いなさい。特にアイリには絶対に」


 マリーさんはめっちゃ上から言うなぁ……アイリさんには様付けって、自分はいいのかな?


「ではマリーさんとアイリ様とお呼びしよう。紅茶を持ってこさせる、少々待っていてくれ」

「良いのを持ってきなさいよ」

「もちろん、最上級のを」

「不味かったら吐くわよ」


 案内してくれたキールさんは応接室から出て行った。



 三人だけになると、マリーさんが大きなため息をついた。


「アイリ、悪いんだけど魔法で声を周りに聞こえないようにして」

「わかった」


 アイリさんはそう言われてすぐに風魔法を操って、僕たち三人にしか聞こえない空間のようなものを作った。

 城壁に登る前にこっちの声が聞かれてたから、それの対策としてしたのか。


「はぁ……慣れないわね、演技なんて。上手く出来てるかしら?」


 えっ、演技というか、わざとだったの?


「出来てると思うけど、なんでそんなことを演じてるの?」


 アイリさんは驚くこともなく、なぜと問いかける。

 もしかして気付いていたのか?

 僕は全くわからなかった……。


「舐められないように、ってのが主な理由よ。交渉をこちらが有利に運びやすくするためにね」


 そんな意図があったんだ。

 だけどあれだけ横暴な態度を取って良かったのかな?


「それにあんだけ馬鹿みたいな感じで演じたら、あっちもこっちを舐めてくれるでしょ? 『馬鹿な相手が来た』って。そう思われるのは少しウザいけど、こっちが有利になればいいわ」


 そ、そこまで考えて演じてたなんて……!

 ただただイラついていたから、馬鹿みたいに怒ってたわけじゃなかったんだ!


 マリーさんって意外と頭良いのかな?


「あっ、だけどアイリは絶対に舐められないようにするから」

「別に私はいいけど」

「私が許さないわ!」


 ……いつも通りのマリーさんだった、安心した。


 だけどこの依頼、マリーさんに凄い負担かかってるよなぁ。


 本当ならギルドの役員の人が同行してるはずだから、交渉ごとは任せれば良かったと思うんだけど。

 マリーさんがアイリさんと二人で旅したいから、来てないんだよね。


 だからとても大変そうで、疲れないか心配だけど……。


「わかった、マリーに任せる。頑張って」

「も、もちろん! 完璧にやりこなすわ!」


 アイリさんに一言応援されるだけで、とても嬉しそうにして疲れなど吹き飛んでいるようなマリーさん。


 ……うん、大丈夫そうだね。


「キョー」


 僕も応援してるよー。

 頑張ってください!


「うるさいわね、静かにして」


 酷くない!?

 アイリさんとの反応が違すぎる……。

 


自分のTwitterを見ている方ならご存知かもしれませんが、発表です。

本作品、「不死鳥への転生 ドラゴン倒せるって普通の鳥じゃないよね?」


コミカライズが決定いたしました!!


いぇーい、ぱちぱち。


いつも読んでくださっている皆様のお陰です!

これからもご愛読のほどよろしくお願いいたします!

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