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第89話 薄い?

あとがきを書いているので、よかったらご覧ください。


 今まではシエルにしか、僕の言葉の意味が通じなかった。

 僕は「キョー」しか喋れないから、人間と意思疎通ができなくて当然だろう。


 アイリさんやアリシア、他にも色んな人と関わってきたけど、誰一人言葉が通じる人はいなかった。


 だけどヘレナさんは、僕の言葉がわかるらしい。


「キョ?」


 なんでわかるの? と問いかける。

 何か特別な魔法や体質とかなのだろうか?


 シエルは僕と契約してるからっていう理由があるけど、ヘレナさんはなんで理解できているのか。


「さあ、わかりません」

「キョ……」


 わからないんだ……。

 魔法とか使ってないの?


「通訳魔法、というものがあると聞いたことはありますが、私は使えません」


 そんなのあるんだ。

 というか前世では国が違うと使う言葉が違ったけど、この世界はどうなんだろう?


「言葉が違うか、と? いいえ、全世界共通の言葉と文字だと思われます」


 あ、そうなんだ。

 じゃあなんで通訳魔法なんて魔法があるの?


「使役した魔獣と言葉を交わすためです。シエル様とキョースケ様は契約をなさってるから意思疎通ができていますが、使役しただけの魔獣はそうはいきません。なので使役者は通訳魔法を覚えた方が良いと言われていました」


 そうか、普通は魔物と契約って出来ないらしいもんね。

 通訳魔法を覚えたら魔獣と意思疎通ができて、連携も楽にできそうだ。


「それで、どうするのですか? ギルドに侵入しますか?」


 あ、そうだった。

 ヘレナさんが僕の言葉が理解できるっていう出来事に驚きすぎて、忘れていた。


 もちろん行きます!


「おそらく相当な機密事項なので、ギルド長の部屋などに書類があるでしょう」


 確かに、S級二人だけが行く極秘依頼だ。

 閉鎖的なエルフの国に黒雲病の完治薬を取りに行くというのが本当だったら、とても重要なことだろう。


「ギルド長の部屋は最上階あたりだったと思います。なので正面からではなく、飛んで行きましょう」


 飛んで行くって、僕はもちろん出来るけど、ヘレナさんは鳥じゃないんだから――。


 できないでしょ、と思ったら、ヘレナさんは余裕で浮かび上がった。


「これくらい出来て当たり前です」


 ……まあヘレナさんなら出来るか。

 僕も魔力で飛ぶのは生まれて一ヶ月ぐらいで出来たしね。



 ということで、屋敷のベランダから僕たちは飛んで、夜の街の上空を静かに飛行している。


 僕は真っ赤な鳥だから目立つかと思ったけど、深夜で真っ暗だし、人もいないので誰にも気づかれない。


 ヘレナさんは直立して手を前で重ねた状態で、スーッと上空を移動しているから、なんかシュールだ。

 しかも身長的には子供でメイド服だから、なおさら変な感じ。


 そして誰にも気づかれず、王都のギルドの最上階あたりに到着した。


 最上階の部屋、おそらくギルド長の部屋には一つだけ窓があり、そこから侵入しようとするが、やはり鍵がかかっていた。


 さすがに窓を割るわけにはいかないからなぁ……。


「キョースケ様だったら、炎になれば隙間からでも通り抜けられますよね?」


 あ、そうだ。

 僕は全身が炎になれるから、小さい隙間でも通り抜けられることができる。


 肉眼では見えないけど、この窓にもわずかに隙間がある。

 そこを炎になって……抜けた!


 よし、侵入できた。


 僕は中から窓の鍵を開けて、ヘレナさんも中に入る。

 小さめな窓だけど、ヘレナさんは小柄だからギリギリ入れた。


 なんか前世でいうスパイみたいで、ドキドキするなぁ。

 ……泥棒じゃないよ? 情報を見るだけだから、うん、スパイっぽいでしょ?


 部屋は真っ暗で見えなかったけど、ヘレナさんが光の魔法で明るくしてくれた。

 中はギルド長の部屋というだけあって豪華で広い。


 この中から機密事項を探して、アイリさんとマリーさんがどういう道筋でエルフの国に行ったかを見つけないといけないのか。


 いや、というか僕は読めないから、探せない。

 完全にヘレナさん任せになってしまう、ごめんなさい……。


「いえ、大丈夫です。なんとなくわかりますから」


 なんとなくわかる?

 どういうこと?


 ヘレナさんは部屋を見渡し、豪華な机に近づいていった。

 おそらくギルド長はこの机で仕事をいつもしているのだろう。


 机の上にはいろんな書類が乱雑していた。

 この中に僕たちが探しているものがあるんだったら、すごい大変そうだ……。


 だけどヘレナさんは迷うことなく、机の引き出しを開けて書類をパラパラと見ていく。

 一枚一枚を一瞬しか見てないけど、あれで探せているのかな?


「ないですね。ギルド長は大事なものほど、身近なところに仕舞っておく人間ではないようです」


 あー、なんかわかるかも。

 自分の大事なものって近くにあった方が安心するよね。


 前世でいう、携帯とかのことだろう。

 ……僕は持ってなかったけど。


「ではどこかに隠している可能性は……」


 ヘレナさんはそう言うと、目を瞑って魔法を発動した。

 おそらく風魔法なんだろうけど、何をしているのかわからない。


 数秒すると、目を開けて魔法を発動したまま本棚の方に歩き出した。


「ここだけ風を送ったときに、他のところとは風の感触が違いました。おそらく仕掛けが……ありました」


 か、風の感触って何?

 なんでそんなのわかるの?


 しかも本当に仕掛けがあったらしく、本棚の奥から何冊か本が出てきた。


 結構薄い本だけど、これに機密事項が書いてあるのか?


 ヘレナさんはその本を開いて――バンッと、勢いよく閉じた。

 そして何冊かあったのにそれらを開かず、仕掛けのところに戻した。


 ど、どうして一冊だけ見て他のやつは読まなかったの?


「いえ、ただの『薄い本』でしたので」


 いや、うん、見たらわかる、薄い本だったけど?


「……機密事項を隠していたわけじゃないみたいです。他を探しましょう」


 よくわからないけど、さっき隠していたやつは違うみたいだ。


 その後、僕たちが探している情報はすぐに見つかったけど、あの『薄い本』はなんだったんだろう?



更新遅れてすいません!

自分のTwitterを見てくれている方なら知っているかもしれませんが、沖縄に行ってました笑

もちろん取材ですよ?(本当はただの家族旅行です)


本作

「不死鳥への転生 ドラゴン倒せるって普通の鳥じゃないよね?」

の1巻ですが…。

重版することに決定いたしました!!

これも読者の皆様のお陰です!

ありがとうございます!本当にありがとうございます!


これからもご愛読のほど、よろしくお願いします!

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