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第81話 オルウルフ


 王都から数キロ離れた森。


 そこに僕たちが受けた依頼の討伐対象がいる。


 とても生い繁っていて、黒雲で元から暗い上にさらに暗い。


 僕たちはそこを進んでいる。

 いまだに討伐すべき魔物は現れないが、油断はできない。


 探している魔物は闇に紛れて攻撃してくるようだ。


 だから姿が見えなくても、いつ襲われるかわからない。


 いつもふざけ気味のアリシアも、真剣な表情で周りに気を配っている。

 僕もシエルの肩に乗っていたらすぐに攻撃ができないので、魔力を使って空中に浮かびながら移動していく。


 暗い森の中、先数メートルがギリギリ見えるくらいだ。

 その中でずっと警戒しているのはキツイ。


 シエルも最初は緊張していたのだが……今はなぜかとてもリラックスしているのが見てわかる。


 真っ直ぐと前を見て、周りはほとんど見渡していない。

 なぜ見渡さないのかはわからないけど、油断してるわけじゃないみたいだ。


 むしろ今まで以上に、隙がない。

 やはり訓練の成果が出ているのだろうか?



 そうして森の中を歩くこと、数分。


 全然出てこないので、今日はその魔物がいないのかと思い始めたとき……。


「……そこ!」

「えっ!?」


 シエルがいきなり声を出して、左前に手を向けた魔法を放った。

 おそらく風魔法だろう。


 僕とアリシアはいきなりのことで身体をビクッと震わせた。


「ビ、ビックリしたっす……」

「ご、ごめんね。そこに魔物がいたから」

「ほんとっすか? 気づかなかったっす」


 シエルが魔法を放った方向へ歩いていくと、数メートル先の木の陰に魔物が倒れていた


「おー、ほんとだったっす」

「これって依頼の魔物?」

「そうっすよ。お手柄っすね」


 ――オルウルフ。

 四足歩行の狼のような魔物で、今回の討伐対象だ。


 この魔物が普通の狼と違うのは、頭が二つあるということだ。

 体長は大きい方ではないが、アリシアが言うにはとにかく速いらしい。


 この暗闇の中、息を潜めていきなり襲われるし、襲ってくるスピードは常人じゃ反応できない。


 数々の冒険者がこいつを討ち取ろうとするのだが、対処できずに身体の一部を噛み千切られてしまう。

 しかも頭が二つあるから、一気に足を二本もってかれることが多いらしい。


 だからA級以上の冒険者じゃないとこの依頼を受けられないようだ。


 しかしまさか、シエルが最初に魔物を見つけて討伐するとは……。


「すごいっすねシエルちゃん。なんでわかったんすか?」

「ヘレナさんとの訓練で、一番力を入れてるのは空気中の魔力の流れを感じ取ることなの」

「あー、あたしもやったっすけど、全然わからなくてすぐやめたっす」


 空気中の魔力の流れって、そんなのあるんだ。

 だから訓練のときに魔法とか何も撃たずに、ずっと集中してやってるんだ。


「まだ私は半径五メートルぐらいしか感じ取れないけど、こういう暗い場所だったら役に立つね」

「そうっすね、あたし一人でオルウルフと戦うときは襲ってきたところを避けて斬る、っていう後手に回る感じだったんすけど、シエルちゃんがいれば先手を打てるのは心強いっすよ」

「私は後手に回ったら多分避けられないから、避けられるアリシアもすごいけどね」


 常人が反応できないスピードを避けて、なおかつ攻撃できるのは確かにすごい。

 だけど安全で確実なのは、先に攻撃ができるシエルの方法だろう。


「半径五メートルぐらいだから、それ以上のところからいきなり襲いかかってきたら反応できないと思うよ」

「そのときはあたしに任せてほしいっす。シエルちゃんを守るくらいならできるっすよ」

「キョー!」


 もちろん僕も守るよ。

 この身体になってから、反射神経は自信があるんだ。


「ありがとうアリシア、キョースケ」


 そして僕たちは、その後も順調にオルウルフを狩っていく。


 アリシアが前を歩いて、その後ろにシエル。

 僕は二人の頭上を飛ぶという陣形だ。


 前から突如飛び込んでくるオルウルフをアリシアが対応し、後ろと横は僕が対応する。

 そして半径五メートル以内にいたら、シエルが一撃で仕留める。


 ほとんど完璧にオルウルフを狩っていたんだけど、難点が一つ。


 いや、これは僕だけがやっちゃうことなんだけど……。


「あーあ、またっすね……」

「キョー……」

「だ、大丈夫だよキョースケ。倒してくれるだけでありがたいから」


 僕が倒すオルウルフは炎の槍の一撃で消し飛んでしまうから、討伐の証明をする部位が残らないのだ。

 アリシアは短剣で、シエルは風魔法で真っ二つにするからしっかりと討伐証明部位が残る。


「これで何匹目っすか? 一番倒す数が多いのに討伐部位が残らないから、依頼を考えるといまだにキョースケが狩った数は0匹なんすよね」


 うぅ……。

 オルウルフが襲ってくるときは完全に不意打ちだから、手加減とか狙いをつける暇がないんだよ……。


「あと数匹で依頼達成っすから、別にいいっすけど。強すぎるのもちょっと考えものっすね」

「……そうだね」

「キョー……」


 この依頼には僕の攻撃が全く向いてないということはわかったけど、それでも安全のためには僕が担当する陣形の範囲を変えない方がいい。


 ということでそれからも横と後ろから来るオルウルフを僕が倒したが、一匹も討伐部位を残すことはできず……。


 シエルとアリシアが狩ったオルウルフが依頼達成の数に到達して、僕たちは帰ることになった。


 


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