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第75話 ヤバい人


 その後僕たちは、アイリさんの屋敷に帰った。


「で、マリーちゃんもついてくるんすか?」

「当たり前じゃない! 久しぶりにアイリと会ったんだから、もっと喋りたいじゃない!」


 ということで、マリーさんも来ることになった。

 なんか最初は『アイリさん愛』を少し隠していた気がするけど、今は全開だなぁ。


 もう夜も遅いが、まだ街は賑やかだ。

 街灯で明るいから、商店街もまだやっている。


 これだけ人がいると、やはりまたアイリさんは気づかれる。


「あっ、アイリ様……!」

「いや、ちょっと待て……隣に野獣がいるぞ」

「ほ、本当だ……今は関わらない方がいい」


 ……まさか、野獣ってマリーさんのこと?


 うん、多分そうだ。

 アイリさんの後ろで、ヤバい目をしてすれ違う人を睨んでいる。


「はぁ、めんどくさいっすね。昔はマリーちゃんもあっち側の人間だったじゃないっすか」

「アイリは戦いのときは完璧だけど、街中だと油断してるときがあるわ! それを私が守らないと!」

「一番危険そうなのはマリーちゃんっぽいっすけどね」


 うん、同感。

 顔というか、目が怖い。

 今にもビームが出そうだ。


 マリーさんのお陰……ではないと思うけど、街中で騒がれて足止めを食らうことなく、屋敷まで戻れた。


「久しぶりね、この屋敷に来たのは……」


 屋敷の前で、マリーさんが遠い目をしながらそう言った。


「そうなんですか? マリーさんなら結構来てると思ったんですけど」

「それってどういう意味?」

「えっ、あ、その……アイリさんと、仲良いから」

「ふっ、そうね」


 シエルの言葉を聞いて、満足げに頷くマリーさん。

 多分シエルは、マリーさんみたいなストーカーっぽい人なら、もっと来てると思ったんだろうなぁ。


「……なんかその魔獣、失礼なこと考えてる気がするんだけど?」

「キョ!?」


 肩に乗っている僕をジト目で見てくるマリーさん。

 僕は顔をブンブンと横に振って否定する。


 久しぶりに心の中を読まれるようなことがあって、ドキドキした。

 いや、本当になんでわかるんだろう?


「アイリと仲良くする前に何回か来てたけど……」

「付け加えるとそれは招待されたからじゃなくて、姉貴を追ってきたってことっす」

「うるさいわね! いいじゃないそれくらい!」

「よくあんな攻撃された後も来たっすよね……バカっす」

「バカじゃないわよ!」


 やっぱりこの家の周りには何回も来ていたようだ。

 だけど中には入ったことがあまりないのかな?


 そうこうしている間に、屋敷の門を開いて庭に入っていく。

 庭にも魔道具で明かりが灯されていて、足元は見えるようになっている。


 そして屋敷の扉の前に立つと、また勝手に開いていく。


「おかえりなさいませ、皆様」


 扉が開いたところに、ヘレナさんが頭を下げて立っていた。


 それぞれ「ただいま」と言いながら中に入っていくが、マリーさんは違った。


「まだいたんですね……」

「マリー様、いらっしゃいませ。お久しぶりでございます」

「お久しぶりです、ヘレナさん」


 マ、マリーさんが敬語を使ってる……!


 しかもこの二人、面識あったんだ。

 アイリさんのストーカーをしてれば、屋敷に住んでるヘレナさんに会うこともあるか。


「今日はちゃんと招待されてきたのですね」

「……はい」

「よかったです。この前みたいに裏口から侵入しようとしてたら、また追い出すところでした」


 あっ、やっぱりそういう感じなんだ。

 マリーさんならやりかねないと思ってたけど、もうやってたんだね。


「……今度こそ入ってみせます」


 いや、そんな宣言するの?

 犯罪予告だけど?


「頑張ってください。私が気づかないのであれば、どうぞご自由に」

「……っ!」


 うわー、すごい嫌味な言い方。

 どうせ絶対に気づく、みたいな感じなんだろう。

 わざとなのかな? いや、ヘレナさんって何も包み隠さずに言うから、本気でそう思っているのかも。


「ご夕食を準備してまいります。皆様は食堂でお待ちください」


 ヘレナさんはそう言って、厨房に行った。


 僕たちは食堂に着いて、各々席に着く。

 僕にも席があって、みんなの椅子より座るところが高くなっていて、テーブルとほぼ同じ高さだ。

 だから僕がそこに立つと、テーブルに置かれた食べ物を上手く食べることができる。


 いつもはテーブルに直接乗っていたけど、なんか行儀が悪い気がしていたからありがたい。


「そういえば、姉貴とマリーちゃんへの依頼ってなんだったんすか?」


 席に着いて、アリシアが二人にそう問いかけた。


 僕たちが依頼に行っている間、ギルド長からS級二人への依頼があったんだった。

 すっかり忘れていた。


「ああ、それね。一応詳細は他人に言ってはいけないってことになってるわ」

「へー、S級二人への依頼なんて、どんなエグい依頼か気になったんすけど。それならしょうがないっすね」


 エグいって……。

 まあ僕も気になるけど。

 どれだけ難しい依頼だと、S級二人が受けることになるんだろうか。


「ああ、それと多分明後日ぐらいから、私とアイリは二週間ぐらい王都を離れることになるから、あんたたちとは別行動ね」

「えっ、そうなんすか?」


 そうなんだ。

 二週間も……大変な仕事だなぁ。


「……えっ? そうなの?」

「いや、なんでアイリが驚いてるのよ」


 目をまん丸にして、驚きながら問いかけたアイリさん。

 ギルド長の話聞いてたんじゃないの?


「キョースケと離れるのが苦痛すぎて、ほとんど聞いてなかったから」

「聞きなさいよ! 結構大事な仕事よ!」


 なんか、さすがアイリさんって感じだな……。



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