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第64話 感性の違い


 アイリさんはヘレナさんに近づき、目線を合わせる。


 身長が違うので、アイリさんは見下ろすように、冷たい視線を浴びせている。


 こ、怖い……。

 すごい怒ってる……。


「ヘレナ、今なんて言った?」


 アイリさんは抑揚のない声でそう問いかけた。

 いつも以上に冷淡な声だ。


「鳥を可愛いと言える感性がわかりません、と言いましたが?」


 アイリさんが怒っていることがわかっていないのか、淡々と答えたヘレナさん。


 いや、本当にわかっていなさそうだ。

 ヘレナさんはハテナマークが浮かんでいるような顔をしている。


「この可愛さが、わからないの?」

「わかりません」

「ふわふわは、可愛い」

「ふわふわなだけで、可愛くないのでは?」

「もふもふは、正義」

「もふもふなだけで、正義ではないのでは?」

「……可愛いは、正義」

「可愛いは正義、というのはなんとなくわかりますが、鳥が可愛いというのはわかりません」


 なんという平行線……!

 二人の意見は、絶対に交えることはないと断言できるような会話だ。


「……死にたいの?」

「いえ、死にたくありません」


 いやいや、なんでそんな突拍子もないところまで飛んでるの!?

 少し意見というか、感性が違うだけでしょ!


「あ、姉貴、落ち着いてくださいっす」

「黙って」

「はい」


 止めに入ろうとしたアリシアは、すぐに撃沈した。


 シエルも二人の様子をあたふたしながら見ていて、止められない。


「……戦争」

「別に私は構いませんが。アイリ様、また私に負けたいのですか?」

「今度こそ勝つ」


 アイリさんが魔法を行使したのか、この屋敷の中に風が吹いてシエルやアリシアの髪がふわりと浮かんだ。


 しかしなぜか、ヘレナさんの髪は微動だにしなかった。


 いや、というか今の会話を聞く限り、ヘレナさんってアイリさんに勝ってるの?

 S級冒険者のアイリさんに?


「……アイリ様はすぐに熱くなりますね。一度落ち着いてください」

「ヘレナがキョースケを可愛くないって言ったから」

「ええ、全くわかりませんが」


 あの、すいませんヘレナさん、一応僕にも、傷つく心があるというか。

 別に可愛いと言われたいわけじゃないけど、そこまで断言されるとなんだか凹みます……。


 僕の気持ちに気づかない二人は、そのまま会話を続ける。


「それなら戦争」

「はぁ、わかりました。ちょっと戦って、この話は終わりにしましょう」


 えっ、本当に戦うの?



 ということで場所は変わって、前に間違ってアイリさんが更地にしたところに来た。

 ここなら多少の大きな魔法を放っても、近くに何の建物もないので大丈夫だろう。


「いやー、まさかいきなりこんな展開になるなんて思ってなかったっすね」


 アリシアは今にも戦いを始めようとしている二人を見てそう言った。


 シエルとアリシアは巻き込まれないように、少し遠くから観戦している。

 僕もシエルの肩に乗って、二人の戦いを見る。


「ヘレナさんって、アイリさんより強いの? さっきの会話を聞いてたら、前にヘレナさんが勝ったみたいなことを言ってたけど……」


 シエルはアリシアにそう問いかけた。

 うん、僕もそこは気になっていた。


「ヘレナちゃんは強いっすよ。もともと、姉貴の師匠だったんすから」

「えっ? アイリさんの、師匠……?」

「そうっす。S級冒険者になったあとに、少し教わったとからしいっすよ」

「そ、そうなんだ……」


 いや、S級冒険者になったアイリさんの師匠になるってどういうこと?

 アイリさんがそんなに強くなったあとに教えることができるほど、ヘレナさんが強いってことだよね?


「ヘレナさんってそんなに強いんだ……」

「まあダテに百年以上も生きてないっすよね」


 アリシアは笑いながらそう言った。

 なんか失礼な言い方な気がするけど。


「アリシア様。貴女も久しぶりに模擬戦しましょうか。準備をしておきなさい」

「ええっ!? まじっすか!?」

「はい、まじです」


 どうやら先程の言葉が聞こえたようで、アリシアもヘレナさんと戦闘することになった。


「ヘレナ、私と戦ったあとにそんな余裕があると思うの?」

「はい、もちろん」


 ヘレナさんはその問いかけに、即答した。

 絶対に勝てると断言するように。


「……絶対に倒す」

「頑張ってください」


 王都に来てアイリさんの家に行って、メイドさんを紹介されたら戦いが始まった。


 ……なんだこのよくわからない展開は。



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