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第61話 熱狂?


 何事もなく……ではないけど、無事に門を抜けて王都に入ることができた。


「ここが、ノウゼン王国の王都……!」


 シエルが街の様子を見て、そう呟いた。

 僕もアイリさんの腕から抜けて、シエルの肩に乗りながら王都のあちこちを眺める。


 スイセンの街も結構人はいたけど、王都はもっと人の数が多い。

 いっぱいの人が馬車の周りにいる。


「すごい人だね。スイセンの街以上にいっぱい」

「王都っすからねー。だけど今はちょっと、人が集まりすぎてるっす」


 車の方に乗っている二人が、そう喋っているのが聞こえた。


 今現在、御者席にいるのはアイリさんと僕だ。


 アイリさんは僕をもふもふしながら、馬車を操っている。

 スイセンの街から王都に来るまではずっとアリシアが御者をやっていたが、アイリさんも一応できるのだ。


 アリシアの方が上手いから整備しきれていない道中をやっていたが、王都の中だったらアイリさんでもできるので代わっているんだけど……。


「キャーー! アイリさまぁぁぁぁ!!」

「こっち見てくださぁぁぁい!!」

「ああ、今日もお美しい……!」

「結婚してください!!」

「何しゃしゃり出てんだてめぇ! てめぇごときがアイリ様と釣り合うわけねえだろ!」


 ……ナニコレ?


 馬車の周りに集まってる人たちは、アイリさんを見て熱狂している。

 いや、もはや発狂している。


 人が集まりすぎて、馬車の進みがとても遅くなってしまうぐらいだ。


「んー、ふわふわ……」


 こんだけの人が集まっているのに、アイリさんは僕を撫でながらそんなことを呟いている。

 いつも通りのアイリさんだ。


「キャーー! ふわふわですって!」

「ふわふわのアイリ様も愛おしいぃぃ!」


 アイリさんの一挙一動に興奮する人たち。


 前世ではアイドルみたいな人たちがいて、そんな人がこんな扱いを受けていると聞いたことがあるけど……まさかアイリさんがそんな存在だったなんて。


「こんなにアイリさんって人気者だったの?」

「そうっすね。顔は良いっすから。あと無愛想なのがカッコいいみたいに思われてるっぽいすよ。まああたしもカッコいいとは思うっすけど」


 まあいつも無表情だけど、とても綺麗な顔立ちだよね。

 僕に抱きついているアイリさんの顔を見てみる。


 うん、やっぱり綺麗だね。

 前世だったらこんな人に抱きつかれてたら緊張したかもしれないけど、今は鳥だからか特に何も思わない。

 撫でられて気持ちいいとか、抱きつかれて苦しいぐらいかな。


「キョー……」

「ふふふ……」

「「キャーー!!」」


 僕が小さく鳴くと、アイリさんがそれを聞いて微かに笑う。

 そしてその笑顔を見て人々が沸く。


「アイリ様がお笑いになられたぁ!」

「初めて見た……今日多分俺は、死ぬんだな……良い人生だった」

「ああ、尊い……!」


 すごいなぁ、もうよくわからないけど。


 まさかアイリさんがこんなに人気だったとは。


 スイセンの街ではそんなことなかったのは、あまり顔が知られてなかったからかな?

 それでもあっちですれ違う男性の人が、アイリさんに見惚れてるところを何度も見たことがあるな。


 それぐらい美人で、S級冒険者だったらそれだけ人気が出るのか。


「アリシアぁぁ!!」

「可愛いぞぉぉぉ!!」

「はいはーい、どうもっす」


 アイリさんの歓声に紛れて、時々アリシアへの声も飛んでくる。

 それにしっかり反応して笑顔で返しているアリシア。

 なんか手慣れてる感じがある。


「アリシアも人気なんだね」

「姉貴には敵わないっすけどね。それに姉貴と一緒にいたら、ついでにあたしを呼んでくれるって感じっす」


 アリシアも可愛いから、アイリさんの隣にいたら、一緒になって人気になったようだ。


 だけどこれだけの人がいっぱいいて、今から馬車を置くためにアイリさんの家に行くのは大丈夫なのかな?


 前世の頃はそういうアイドルの人は、ファンの人にストーカーされて困ってる見たいのを聞いたことがある。


 家まで知られたら、大変そうだけど。

 それに夜道とかに襲われたら……。


 あ、そうだ、アイリさんはS級冒険者なんだから、襲われても返り討ちか。


 人が溢れてる中を進んでいき、アイリさんの家に向かう。


 進むごとに少なくなるとは思いきや、逆に多くなっていってしまう。


「もふもふ……」


 どれだけ人が集まっても、動じないでいつも通りのアイリさんだった。



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