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第53話 王都への誘い


「私たちも、王都に?」


 突然の話でついていけないシエルが、そう呟いた。


「そうっす。そうすれば姉貴も王都に来れるっす」

「いや、私とキョースケが行ってもあんまりメリットが……」


 確かに、王都はここから結構離れてるようだし、行っても特にやることはない。

 これじゃあ本当にアイリさんの弟子みたいだ。


 僕たちはアリシアみたいに弟子にはなってない。

 まあシエルは今魔法を教えられているから、弟子みたいなもんか。


「ほら、王都は楽しいっすよ! 遊べるところいっぱいあるし!」

「特に王都に行ってまで遊びたいは思わないけど……」

「王都は大きいっすよ!」

「そんなに大きさは関係ない気が。というか大きすぎると移動とか大変だし」

「……王都は楽しいっす!」

「それはさっきも聞いたけど」


 僕たちを王都に、というかアイリさんを王都に連れていくためにアリシアは必死になっているが、特に魅力的な話はなかった。


「……王都に行けば、難しい依頼がある」


 僕を抱きしめながら、考えごとをするように顎に手を当てていたアイリさんが、話し始める。


「そうなんですか?」

「うん、シエルはA級に早くなりたい?」

「はい、なりたいです」


 シエルの目標は、お兄さんと同じA級冒険者になること。

 そして、黒雲の調査をすることだ。

 A級にならないと、黒雲の調査ができない。


「難しい依頼をした方が、A級になりやすい。それにA級へ上がるための試験は、この辺りでは王都でしか受けられない」

「っ! 本当ですか?」


 それは初耳だ。

 この街には何人かA級冒険者がいる。

 知り合いではオルヴォさんがそうだ。


「あー、そうっすね。あたしもA級の試験は王都で受けたっす」

「そうなんだ……」


 そういえばアリシアもA級だった。

 なんか話しててそうは見えないから忘れてた。

 さっき聞いたばっかりなのに。


「んん? キョースケ、なんか言いたそうっすね? なんすか?」

「キョー!」


 な、なんでわかったんだ。

 心の中で思ったことが見えているのか、というほど正確なタイミングで問いかけてくる。

 カリナさんもそうだったけど、アリシアもなぜか僕が悪いイメージを思った瞬間に察知してくる。


「だから王都で難しい依頼を受けて、実績が積まれればそのまま試験を受けられる。だからA級になるのは確実に早くなる」


 アイリさんは珍しく饒舌で、僕とシエルが王都に行くメリットを話す。


 ……それだけ僕をもふもふしたいのか。

 いや、嬉しいんだけど、そこまでなんだ。


「……キョースケ、どうしよっか」


 シエルが僕にそう問いかけてくる。

 どうやら迷ってるようだ。


「キョー」


 僕はシエルについていくよ。

 王都に行くんだったら、もちろん一緒に。


「ありがとう、キョースケ」


 僕の言葉に、シエルは笑顔で答える。


 そしてちょっと迷いながら、


「……今日お姉ちゃんに、相談してみます」


 最後にはそう言った。


 王都に行くとなったらこのスイセンの街を出て、王都に何日、何週間も泊まって依頼を受けることになる。

 そしたら家族のカリナさんに相談するのは当たり前だろう。


「んっ、わかった」

「姉貴とあたしは二日後にはこの街を出るから、それまでに答えを出せばいいっす」

「うん、ありがとう」

「王都に行くとしたら、私の家に泊まればいい。今までのお返し」

「ありがとうございます、アイリさん」

「あたしもそこに住んでるから、家事は任せるっす!」

「ふふふ、ありがとう、アリシア」


 シエルが王都に行くとなった際の不安を和らげるように、二人はそう話しかける。


 アイリさんとアリシアがいれば、王都に行っても大丈夫だろう。

 それに僕もいるからね。


「……アイリさん、いつまでキョースケをもふもふしてるんですか?」


 この話を始めてからずっと、僕はアイリさんの腕の中にいた。



 その後、昨日と同じように魔物討伐依頼を受けて、街を出る。


 今回はアリシアも一緒に受けることになった。


「キョースケって強いんすか? レッドバードっすよね?」


 森に向かう道中、アリシアが話しかけてくる。


「姿は似てるけど、多分違うんだよね。レッドバードにしては強すぎるから」

「そうなんすか? どれくらい強いんすか?」

「私より、強い」

「……はっ?」


 アイリさんの言葉に、アリシアの歩いていた足が止まった。


「姉貴より、強い? な、なんの冗談すかそれ」

「嘘じゃない。キョースケは私より強い。そして可愛い、つまり最強」

「後半は意味わからないっすけど。いや、ちょっと前半も意味わからないっす……」


 シエルの肩に乗っている僕をまじまじと見つめ、「ほへー」と変なため息をつく。


「本当に姉貴より強いんすか? いや、姉貴が強さに関して嘘をつかないとは思うっすけど、信じられないっす」

「キョースケは特別なんですよ。私と契約したとき、力が上がったのは私の方ですから」


 魔物と契約したとき、強い方の力が弱い方に与えられる。

 与えた力は、時間が経つと戻るらしい。


「おー、すごいっす。まあ姉貴より強かったら、そりゃシエルちゃんの方が強くなるっすよね」


 アリシアは僕の翼を触ってくる。


「こんなふわふわの可愛い鳥が、姉貴より強いなんて……S級の魔物っすか? だけどこんな魔物見たことないっすけど」

「可愛いから問題ない」

「姉貴はブレないっすね、さすがっす」


 そんなことを喋りながら、森に着く。


 そしていつも通り適当に魔物を倒して、討伐依頼を終わらせてから訓練に入った。


 今日はアリシアもいて、三人で訓練をしていた。

 僕も少し混ざったりして、結構楽しかった。



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