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第52話 同じ妹分


「へー、契約してるんすか。すごいっすね」

「アリシアは契約って知ってるの?」

「もちろんすよ。こう見えてA級冒険者なんで」


 シエルの肩に乗っている僕をじーっと見ながら、アリシアさんはそう言った。


 あ、シエルがアリシアって呼び捨てにするなら、僕もそうしようかな。

 うん、今後心の中で呼ぶときは敬称無しで。


「昔に犬の魔物と契約してる奴は見たことあるけど、鳥と契約してる人は初めて見たっす」

「そうなんですか?」

「いやー、シエルちゃんは才能あるんじゃないっすか?」


 アリシアは僕の頰をツンツンと突っついている。

 いや、鳥の頰ってそんなに気になるものかな?


 それするのって人間の赤ちゃんとかじゃない?

 鳥に触るんだったら普通は羽とかじゃない?


「いや、私じゃなくてキョースケがすごいんですよ。ね、キョースケ」

「キョー」


 いやいや、そんなこと……ちょっとあるけど、シエルもすごいよ。


「あははっ、変な鳴き声っすね!」


 むっ、久しぶりに笑われた。

 しかも直球に変な鳴き声って言われた。


 僕も初めて自分の鳴き声を聞いたときにそう思ったけど。


「キョ、キョー!」

「変な鳴き声じゃない! って言ってるよ」

「えっ、そういうの気にするんすか? キョースケは」

「うん、気にするみたい」

「へー、魔物とかなら別に気にしないと思ったすけど、なんか人間みたいっすね」


 さらに興味深そうに僕のことを見てくるアリシア。


 まあ僕はもともと人間だったし、今も心は人間に近いんじゃないかな?


「まあ変って言って悪かったす。よく聞けば可愛い声っすね」

「キョー……」

「可愛いもあまり嬉しくない、って」

「えっ、雄なんすか? うーん、だけどカッコいいとはお世辞にも言えないっす」


 うっ、それは僕も同感だけど……。


「それに姿も可愛い系っすよね」

「うん、もふもふ」


 今まで黙っていたアイリさんが、僕の翼を撫でながらそう言った。


「そうなんすか? どれどれ……ほー、確かにもふもふっす! もふもふのふわふわっす!」


 一緒になって反対側の翼をアリシアが触ってくる。


「あー、だから姉貴は帰ってこなかったんすね」

「だからってどういうこと?」

「姉貴は可愛いものには目がないっすから」

「あー、そうだね。今までのアイリさんを見てたらわかる気がするよ」


 シエルの肩に乗っていた僕を、奪い取るようにして抱きかかえ、本格的にもふもふし始めた。


 こっちを見てなんか納得しているシエルとアリシア。


 アイリさんは少しでも暇があったら、僕をもふもふする。


 なんかもう慣れたけど、長い時間やられるとさすがに疲れる。


「あ、そうだ姉貴! あたしがなんでここに来たかっていうと、姉貴に依頼が来てるからっすよ!」

「依頼? なんの?」

「いろいろっす! 王都で姉貴に依頼を出してる人がいっぱいいるんすよ!」


 そうか、アイリさんはもともと王都で活動していたんだった。

 しかもS級冒険者という、冒険者の中でも最高位のランクだから、難しい依頼とかがいっぱいアイリさんに来るのだろう。


「全部断っといて」

「無理っすよ! 何件かは貴族から来てるんすから!」

「き、貴族からって……すごいね……」


 貴族って、国のお偉いさんみたいな人たちでしょ?

 そんな人たちからも依頼って来るんだ。


 だけど貴族からの依頼ってどういうのなんだろう?


「貴族からだったらなおのこと。あいつらは自分の警護をしてくれっていう依頼で、私をパーティに呼ぶことしかしない。微塵も興味ない」

「えっ、そうなんですか?」

「あー、まあそうっすね。ほら、姉貴って見た目はいいじゃないっすか。だから貴族の馬鹿どもが姉貴をパーティに呼んで、あわよくば自分の女に、みたいな感じっすね」

「そ、そうなんだ……」


 アリシアの説明に、シエルは苦笑して引いている。


 そんな貴族がいるんだね、そりゃ依頼を受けたくないよね。


「だから断っといて」

「いや、貴族からの依頼はわかったすけど、他の依頼は無理っすよ」

「むっ……」

「それに貴族からのを断るために、他の依頼を受けてた方がいいっすよ。忙しいから無理、って理由づけするために」

「むむっ……」


 アイリさんが僕を撫でながら、めんどくさそうに声を漏らす。


「王都に戻らないと、いけない?」

「そうっすね」

「キョースケと離れるのは、やだ」


 僕を抱きしめてそう言い切るアイリさん。


「じゃあキョースケを連れていけばいいんじゃないっすか?」

「んっ、良い提案」

「いや、キョースケは私の相棒ですよ!」

「あっ、そうっすね。じゃあシエルちゃんも来ればいいんじゃないっすか?」

「えっ……?」

「キョ?」


 アリシアの言葉に、僕とシエルは呆けてしまった。



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