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第51話 待っていた人物


 オルヴォさんの家にお邪魔して、リアナちゃんと遊んだ、翌日――。


 いつも通り、シエルに抱きしめられたまま起き、アイリさんに抱きしめられたまま朝食を食べ、ギルドに向かう。


 なんか最近ずっと抱きしめられている気がする。

 昨日もリアナちゃんにもふもふされていた。


 リアナちゃんが作ったというハンバーグは、とても美味しかった。

 少し形は歪だったけど、あれだけのものを八歳で作れるなんて本当にすごい。


 シエルを通して、美味しい、と伝えると、リアナちゃんはとても嬉しそうに笑ってくれた。

 それで夕飯を食べ終わったあとは、抱きしめられ、僕たちが帰るときはいつも悲しそうな顔をする。


 また行くって約束して、僕たちは家に帰った。

 カリナさんとアイリさんが散らかした食べ物とかを、片付けさせてから寝た。



 ギルドに着いて、カウンターに行く。

 そこで依頼を受けようとすると、受付の人に待ったをかけられる。


「すいません、アイリ様にお会いしたいという方がいらしております」

「私に?」

「はい、少々お待ちください、お呼びしてまいります」


 受付の人は一礼してから、カウンターの奥に入っていった。


「アイリさん、心当たりはあるんですか?」

「……ない」


 しばらく考えたあと、アイリさんはそう答えた。


 だけどアイリさんはS級冒険者だ。

 その実力を買われて、いろんなところから依頼が来るだろう。


 お偉いさんから依頼が来ることも珍しくない。


 今回もアイリさんは相手を知らないけど、そういった依頼者なのかもしれない。


 少し待つと、先程の人が戻ってきた。


 そして一緒に来た人を見て、


「あ、アリシア」


 アイリさんがそう呟いた。


「えっ、知り合いですか?」


 シエルが驚いてそう問いかける。


 アリシアと呼ばれた人は、アイリさんを見て一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに顔をしかめた。

 怒っているような顔をしている。


 赤髪で肩ぐらいの長さ、少しウェーブがかかったような髪の感じだ。

 碧眼で綺麗な色をしていて、顔もおそらく可愛いとは思うんだけど、今は怒っている感じなので怖い。


 というか、アイリさんを睨んで怒っている。


「姉貴! ここにいたんすか!?」


 そう叫んで、カウンターを華麗に飛び越えてこちらに近づいてきた。


 いや、飛び越え方がカッコいいし、口調もちょっと予想外だったけど……それ以上に気になった点が。


「あ、姉貴……?」


 シエルが呆然としながら呟いたのが聞こえた。


 そう、僕もそこが気になった。


 あねき、って、姉貴?

 お姉ちゃんってこと?


「久しぶり、アリシア」

「久しぶり、じゃないっすよ! すぐ帰ってくるって言ってたじゃないっすか!」

「そうだっけ?」

「そうっす!」


 アリシアと呼ばれた人は詰め寄って怒っているようだが、怒られているアイリさんは特に気にした様子もない。


「はぁ、まあ姉貴なら死んではないとは思ったけど、待たされるこっちの身にもなってくださいよ」

「ん、ごめんね?」

「いえ、無事なら良かったっす。こちらこそ怒鳴って悪かったっす」

「うん、大丈夫、足が一回折れたぐらい」

「折れたんすか!? 無事じゃないじゃないすか!?」

「じゃないじゃない、すか? どういう意味?」

「無事じゃないのかよ! ってことっす!」


 お、おお、僕とシエルが入る隙もない。

 いろいろと気になるから聞きたいことがあるんだけど。



 その後、アリシアさんは「どこが折れてるんすか!?」とアイリさんの全身をくまなく触ったり、右足と聞いて「痛くないんすか!? おんぶしますか!?」と言ってしゃがんだりと、忙しく動いて、やっと落ち着いた。


「じゃあ全部治ったってことっすね。早く言ってくださいよ」

「言わせてくれなかったのは、アリシア」

「そうっすか? じゃあお互い様ってことで」

「あ、あの!」


 やっと話が区切れたところで、シエルが声を上げて話しかける。


「ん? あたしになんか用っすか?」

「は、初めまして! シエル・クルームです! アイリさんには大変お世話になっています!」

「そうなんすか? お世話になってる? お世話してるんじゃなくて?」

「えっ? あ、はい、魔法とか鍛えてもらっていて……」

「あー、そうっすね、姉貴のそこはお世話になるところっすよね」


 そこは、って……他はないみたいに言うんだ。


 確かに、アイリさんはシエルの家で暮らしていて、家事とかは一切やっていない。

 魔法の訓練以外は、お世話をしていると言っても過言ではないかもしれない。


 いや、僕もお世話になってる身だから、あまり人のこと言えないけど。


「あたしはアリシアっす! 同じ妹分として、仲良くしましょう!」

「えっ? 妹分……?」

「ん? もしかして、あたしのこと姉貴の妹だと思ったっすか?」

「は、はい」

「あはは、違うっすよ。あたしも姉貴の力に惚れ込んで、妹分になっただけっすよ。血は繋がってないっす」

「そうなんですね」


 そうなんだ。

 確かに髪色も違うし、顔も似ていない。


 アイリさんは美人な感じで、アリシアさんは可愛いって感じだ。


 しかも性格も全然違いそうだ。

 さっきから喋るたびに喜怒哀楽がわかりやすく顔に出るアリシアさんに比べて、アイリさんは全然表情が変わらない。

 変わるときは僕をもふもふしてるときぐらいだ。


「同じ妹分だし、敬語じゃなくていいっすよ」

「ほんと? じゃあよろしくね、アリシア!」

「よろしくっす!」


 お互いに笑顔で握手している。

 というか、シエルっていつからアイリさんの妹分になったのだろう?


「あ、紹介するね。私の相棒のキョースケ」

「ん? うおっ!? 魔物じゃないっすか!?」


 アリシアさんは肩に乗っている僕を見て、目を見開いて後退する。


 おー、なんか久しぶりの反応だ。


 いや、というかさっきからシエルの肩に乗ってたのに、いまさら驚くの?



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