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第49話 一週間後


 ここ何日か、僕は同じように目が覚める。


 洞窟で暮らしていた頃とは違い、あの白いふわふわのベッドはない。

 だけど前世で過ごしていた、病院のベッドよりは柔らかいところで目が覚める。


 そしていつも通り、翼は動かせない。

 目を開けると、可愛い寝顔が見える。


 僕の目の前にいる女の子は、いつも僕より少し遅く起きる。

 というか、僕が起きると女の子は一緒に起きるみたいだ。


 しばらく待つと、女の子が目を開ける。


 そして薄目を開けて、僕の姿を確認すると、微かに笑って挨拶をしてくれる。


「おはよう、キョースケ……」

「キョー」


 ゆったりとした喋り方で、まだ夢うつつなシエル。


 抱き枕にしていた僕を離して、上半身を起こして伸びをする。

 僕もようやく自由になったので、ベッドから飛んでシエルの頭に乗る。


「んん……! よし、今日も頑張ろう、キョースケ」

「キョー!」


 そして、僕とシエルの一日が始まる。



 あのタキシムが出た森の調査から、一週間ほど経った。


 アイリさんの足の怪我は、街の病院に行ったらすぐに治った。

 前世だったら骨が折れるような怪我を治すには、一ヶ月ぐらいかかりそうだけど、この世界では魔法があるからね。


 そしてアイリさんだが……。


「おはようございます、アイリさん」

「おはようシエル、キョースケ」

「キョー」

「ふふふ……」


 僕とシエルがリビングに行くと、アイリさんがソファに座っていた。


 そう、なぜかアイリさんはこの家、シエルとカリナさんの家に泊まっている。


 理由はまあ、僕をもふもふしたいからということらしい。


「今から朝ごはん作るんで、待っててください」

「もふもふ……」

「キョー」


 シエルが朝ごはんを作ってる間、僕はアイリさんに抱きつかれて、もふもふされている。


 森の調査の依頼は、あの後何回か行って、タキシムやアンデッドが出た以外に異常はなかった。

 だからアイリさんの仕事は終わって、王都に帰ってもいいみたいな感じだったらしいけど。


『キョースケと離れるなんて、ありえない』


 そう言って、このスイセンの街に留まっている。


 S級冒険者ということもあって、冒険者ギルドは大歓迎らしい。


 シエルと仲良くなってるから、カリナさんもアイリさんが家に泊まることは全然良いみたいだ。


 女性が三人の家に僕は住んでいるけど、まあ鳥だから大丈夫かな。

 時々アイリさんとカリナさんが酒を飲んで脱いでるけど、鳥だからか何も感じない。



 そして僕達は朝食を食べて、冒険者ギルドに向かう。


 ギルドに着くと、見知った顔に話しかけられる。


「おう、シエル嬢ちゃん、それにキョースケ」

「おはようございます、オルヴォさん」

「キョー」


 前に一緒に依頼を受けたオルヴォさんだ。


 三日前ぐらいに、またオルヴォさんに誘われて夕飯を一緒に食べた。

 オルヴォさんの娘のリアナちゃんに会って、一緒に遊んだ。


 やっぱり子供は可愛いよなぁ。

 僕もそこまで大人ではないけど、八歳の女の子が楽しそうに遊んでくれるのは楽しいし、嬉しい。


「今日また来れるか? ティアナにも許可は取ってるぞ」

「今日ですか? 多分大丈夫だと思いますよ」

「おー、そうか! ありがとうな、嬢ちゃんとキョースケが来ると、リアナが喜ぶからな」

「私たちもリアナちゃんと遊ぶの楽しいですよ、ね、キョースケ」

「キョー」


 そんなことを話していると、隣にいるアイリさんがムッとしているのが見えた。


 多分、僕がオルヴォさんの家に行くと、夜にもふもふできないからだろう。


「アイリさんも来ますか? いいですよね、オルヴォさん」

「ああ、もちろんだ」

「……いい、今回は行かない」

「そうですか? わかりました」


 三日前にオルヴォさんの家に行ったときは、アイリさんも来た。

 だけど僕がリアナちゃんとばっかり遊んでいたら、拗ねてしまったのだ。


 その後シエルの家に帰ったら、めちゃくちゃもふもふされた。



 オルヴォさんと別れ、受付カウンターに向かう。


 そこで少し強めの魔物討伐依頼を受けて、僕とシエル、アイリさんはギルドを出た。


 森の調査が終わってから、僕たちは毎日適当に依頼を受けて森の近くまで行く。


 今日も同じように、街を出て森に向かう。

 その道中で討伐依頼の魔物を倒す。


 森に着く頃には、今日の討伐依頼はほとんど終わっている。

 あとは帰りにもう少し魔物を倒せばいいだけだ。


 森の前辺りで、僕たちが何をしているかというと……。


「じゃあ、いきますね」

「うん、いいよ」

「『炎波フレイムウェイブ』!」

「『風圧ウインドプレス』」


 シエルとアイリさんが、向かい合って魔法を唱える。


 大きな炎の波がアイリさんを襲うと思いきや、炎が全て潰れるようにして消えていった。


「火力が弱い。もっと魔力操作を意識して」

「はい!」


 シエルが強く返事をし、次の魔法を唱える準備をする。


 ここ一週間ほど、森の前でアイリさんがシエルを鍛えている。


 シエルはいきなり強くなった魔力をしっかり制御できていないから、アイリさんにお願いしたのだ。

 アイリさんは快く承諾してくれた。


 アイリさんが言うには、しっかりと魔力操作や魔法の質を上げれば、すぐにA級冒険者ぐらいに強くなれるだろうとのこと。


 僕とシエルの目標は、黒雲の調査をすること。

 黒雲の調査をするには、A級冒険者にならないといけない。


 だからシエルは、もっと強くなるために訓練をしているのだ。


 僕も二人が訓練している間に、上空で鍛えている。


 僕も鍛えればもっと炎の威力とか、スピードとか上がると思う。


 それに、奥の手というのも開発してみたいしね。


 こうして僕とシエル、アイリさんの一日は過ぎていく。



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